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第31話:やっぱりカルロス様はカルロス様です
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あの頃の記憶が蘇り、ポツリと呟いた。するとカルロス様が、目を大きく見開き、私の方を見つめる。
「ルミタン、あの時の事を覚えているのかい?」
「ええ、正式には今日思い出しましたの。あなた様の姿がなんだか兄と重なって…兄もあんな風に、カルロス様をしごいていなって…あっ、でも兄はもっと酷かったですね…」
お兄様のカルロス様に対する扱いは酷かった。でもそれだけお兄様がカルロス様に期待していたという事なのだろう。現にお兄様は、カルロス様に自分の夢を託した様だし…
それなのに私ったら、勝手にカルロス様を目の敵にして…過去の自分を思い出し、急に恥ずかしくなる。
「俺はあの日、ルミタンに恋をしたんだ。君の為に、絶対に騎士団長になるって決めたんだよ。だから俺が強くなれたのも、ルミタンのお陰なんだ。君は俺の力の源、生きる希望なんだ」
「私は、そんな人間ではありませんわ…」
現に一方的にカルロス様を嫌っていたのだから…
「君がなんと言おうと、俺にとってルミタンはかけがえのない人なんだ。アナリス殿下の事で、君にも辛い思いをさせてすまなかったね。あの女には絶対に君を傷つけさせないから。そうだ、また騎士団の稽古を見に来てくれるかい?明日から毎日」
「えっ?明日から毎日?それは…」
「そうすれば、毎日ルミタンに会えるもんね。うん、それがいい。あの女は騎士団長によって、騎士団の稽古場には入れないし。あの女が今日、学院に来た時は絶望したが、これなら毎日ルミタンに会える。やっぱり俺は、毎日ルミタンに会わないと生きていけないから…」
「あの…さすがに毎日は…」
「騎士団に着いたら、通信機で連絡を入れて欲しい。あっ、でも、毎日あの女が押しかけてくるだろうから、追い出してからルミタンが入った方が安全だね。俺が入っていいか通信機で連絡を入れるよ」
「あの、カルロス様、私は…」
「あぁ、これで毎日ルミタンに会えると思ったら、嬉しくてたまらないよ。それでもあの女がこの国にいる時点で警戒をしないと。本当に陛下め、全く役に立たないのだから。とにかく早く王太子殿下に帰国してもらって、さっさとあの女を隣国に送りこまないと!そうすれば、学院でも一緒にいられるもんね…ルミタン、寂しい思いをさせてごめんね。俺のルミタン」
再び頬ずりを始めるカルロス様。どさくさに紛れて、手がお尻に触れているのが気になるが…
やっぱりカルロス様はカルロス様ね。相変わらず私の話はあまり聞かないし、気持ち悪い事を言っているし、変態っぷりは健在のようだ。少しでも不安になった私がバカみたいだわ。
でも…
なんだか心の中が温かいもので包まれるのはなぜだろう。それにカルロス様と一緒にいると、安心する。皆が言った通り、私はカルロス様の事が好きなのかしら?
カルロス様の方を見ると、バッチリ目があった。その瞬間、唇に柔らかい感触が…
「カルロス様、何をなさるのですか?」
今唇に口づけをしましたよね。びっくりして彼から離れようとするが、ガッチリと腰を押さえつけられていて動けない。
「何って口づけだよ。ルミタンが可愛い顔をしてこちらを見ていたから。俺、ずっとルミタンと口づけがしたかったんだ…やっぱりルミタンの唇は柔らかくて温かくて…病みつきになりそうだ…」
ニヤリと笑うと、再び近づいてくるカルロス様。その瞬間、背筋が凍り付くようなゾクリとした感覚に襲われる。
「カルロス様…私は…ンンンンッ」
恐怖から必死に逃げようとするが、もちろん逃げられる訳がなく、そのまま何度も何度も唇を塞がれたのだった。
「俺のルミタン…愛しているよ…」
「カルロス様、どうか落ち着いて…ンンンンンンッ」
いい加減解放して欲しい!切実にそう思った時、我が家についた。
「あぁ…残念、もう着いてしまったね…」
やっと…やっと着いたわ。これで解放される。
フラフラと馬車から降りようとする私を抱きかかえたカルロス様。
「フラフラしていて危ないから、俺が抱っこで送ってあげるね」
満面の笑みで私を抱きかかえるカルロス様。既に抵抗する元気は私には残っておらず、そのまま抱きかかえられ屋敷に向かう。
「ルミナス、カルロス殿もお帰り。ずいぶん遅かったね。2人で帰って来たという事は、俺の取り越し苦労だった様だ。よかったよ」
お兄様が笑顔で迎えてくれる。
「いいえ、侯爵の言った通り、アナリス殿下は学院に登院してきていましたよ。どうやら陛下が許可を出したようです」
「それじゃあ、どうして2人一緒に帰って来たのだい?」
「それは、俺に会いにルミタンがわざわざ騎士団の稽古場まで会いに来てくれたのです。騎士団の稽古場には、アナリス殿下は立ち入り禁止になっていますので。今日も騎士団長に追い返されていましたから。ねっ、ルミタン!!」
「そうか…ルミナス自ら会いに行ったのか。それは良かった。でも、騎士団の稽古場も安全とは言えないから、十分気を付けるんだぞ」
なぜかお兄様が満面の笑みで呟いている。
「王太子殿下が帰ってくるまでは、しばらく騎士団の稽古場にルミタンが来てくれるという事で話はまとまりました。ルミタンにもこれで寂しい思いをさせなくてよくなります。俺も毎日ルミタンに会えるし。本当に今日ルミタンが騎士団の稽古場に来てくれてよかった」
私を抱きかかえながら頬ずりをするカルロス様。だからお願い、お兄様の前でやめて。それにいつの間にか、お兄様の前でもルミタンと呼んでいるし…
「そうか、2人が仲睦まじくて安心したよ。ただ、アナリス殿下の件は、十分気を付けるんだぞ」
「もちろんです」
何だかんだで、これから毎日カルロス様に会えそうだが…
本当にこれでよかったのだろうか?実は会えないままの方が良かったのでは…
ついそんな事を考えてしまうのであった。
「ルミタン、あの時の事を覚えているのかい?」
「ええ、正式には今日思い出しましたの。あなた様の姿がなんだか兄と重なって…兄もあんな風に、カルロス様をしごいていなって…あっ、でも兄はもっと酷かったですね…」
お兄様のカルロス様に対する扱いは酷かった。でもそれだけお兄様がカルロス様に期待していたという事なのだろう。現にお兄様は、カルロス様に自分の夢を託した様だし…
それなのに私ったら、勝手にカルロス様を目の敵にして…過去の自分を思い出し、急に恥ずかしくなる。
「俺はあの日、ルミタンに恋をしたんだ。君の為に、絶対に騎士団長になるって決めたんだよ。だから俺が強くなれたのも、ルミタンのお陰なんだ。君は俺の力の源、生きる希望なんだ」
「私は、そんな人間ではありませんわ…」
現に一方的にカルロス様を嫌っていたのだから…
「君がなんと言おうと、俺にとってルミタンはかけがえのない人なんだ。アナリス殿下の事で、君にも辛い思いをさせてすまなかったね。あの女には絶対に君を傷つけさせないから。そうだ、また騎士団の稽古を見に来てくれるかい?明日から毎日」
「えっ?明日から毎日?それは…」
「そうすれば、毎日ルミタンに会えるもんね。うん、それがいい。あの女は騎士団長によって、騎士団の稽古場には入れないし。あの女が今日、学院に来た時は絶望したが、これなら毎日ルミタンに会える。やっぱり俺は、毎日ルミタンに会わないと生きていけないから…」
「あの…さすがに毎日は…」
「騎士団に着いたら、通信機で連絡を入れて欲しい。あっ、でも、毎日あの女が押しかけてくるだろうから、追い出してからルミタンが入った方が安全だね。俺が入っていいか通信機で連絡を入れるよ」
「あの、カルロス様、私は…」
「あぁ、これで毎日ルミタンに会えると思ったら、嬉しくてたまらないよ。それでもあの女がこの国にいる時点で警戒をしないと。本当に陛下め、全く役に立たないのだから。とにかく早く王太子殿下に帰国してもらって、さっさとあの女を隣国に送りこまないと!そうすれば、学院でも一緒にいられるもんね…ルミタン、寂しい思いをさせてごめんね。俺のルミタン」
再び頬ずりを始めるカルロス様。どさくさに紛れて、手がお尻に触れているのが気になるが…
やっぱりカルロス様はカルロス様ね。相変わらず私の話はあまり聞かないし、気持ち悪い事を言っているし、変態っぷりは健在のようだ。少しでも不安になった私がバカみたいだわ。
でも…
なんだか心の中が温かいもので包まれるのはなぜだろう。それにカルロス様と一緒にいると、安心する。皆が言った通り、私はカルロス様の事が好きなのかしら?
カルロス様の方を見ると、バッチリ目があった。その瞬間、唇に柔らかい感触が…
「カルロス様、何をなさるのですか?」
今唇に口づけをしましたよね。びっくりして彼から離れようとするが、ガッチリと腰を押さえつけられていて動けない。
「何って口づけだよ。ルミタンが可愛い顔をしてこちらを見ていたから。俺、ずっとルミタンと口づけがしたかったんだ…やっぱりルミタンの唇は柔らかくて温かくて…病みつきになりそうだ…」
ニヤリと笑うと、再び近づいてくるカルロス様。その瞬間、背筋が凍り付くようなゾクリとした感覚に襲われる。
「カルロス様…私は…ンンンンッ」
恐怖から必死に逃げようとするが、もちろん逃げられる訳がなく、そのまま何度も何度も唇を塞がれたのだった。
「俺のルミタン…愛しているよ…」
「カルロス様、どうか落ち着いて…ンンンンンンッ」
いい加減解放して欲しい!切実にそう思った時、我が家についた。
「あぁ…残念、もう着いてしまったね…」
やっと…やっと着いたわ。これで解放される。
フラフラと馬車から降りようとする私を抱きかかえたカルロス様。
「フラフラしていて危ないから、俺が抱っこで送ってあげるね」
満面の笑みで私を抱きかかえるカルロス様。既に抵抗する元気は私には残っておらず、そのまま抱きかかえられ屋敷に向かう。
「ルミナス、カルロス殿もお帰り。ずいぶん遅かったね。2人で帰って来たという事は、俺の取り越し苦労だった様だ。よかったよ」
お兄様が笑顔で迎えてくれる。
「いいえ、侯爵の言った通り、アナリス殿下は学院に登院してきていましたよ。どうやら陛下が許可を出したようです」
「それじゃあ、どうして2人一緒に帰って来たのだい?」
「それは、俺に会いにルミタンがわざわざ騎士団の稽古場まで会いに来てくれたのです。騎士団の稽古場には、アナリス殿下は立ち入り禁止になっていますので。今日も騎士団長に追い返されていましたから。ねっ、ルミタン!!」
「そうか…ルミナス自ら会いに行ったのか。それは良かった。でも、騎士団の稽古場も安全とは言えないから、十分気を付けるんだぞ」
なぜかお兄様が満面の笑みで呟いている。
「王太子殿下が帰ってくるまでは、しばらく騎士団の稽古場にルミタンが来てくれるという事で話はまとまりました。ルミタンにもこれで寂しい思いをさせなくてよくなります。俺も毎日ルミタンに会えるし。本当に今日ルミタンが騎士団の稽古場に来てくれてよかった」
私を抱きかかえながら頬ずりをするカルロス様。だからお願い、お兄様の前でやめて。それにいつの間にか、お兄様の前でもルミタンと呼んでいるし…
「そうか、2人が仲睦まじくて安心したよ。ただ、アナリス殿下の件は、十分気を付けるんだぞ」
「もちろんです」
何だかんだで、これから毎日カルロス様に会えそうだが…
本当にこれでよかったのだろうか?実は会えないままの方が良かったのでは…
ついそんな事を考えてしまうのであった。
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