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第15話:カルロス様とお兄様は仲良しです

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カルロス様と婚約を結んだ翌日、いつもの様に貴族学院に向かう準備をする。昨日はあの後、カルロス様の家族も一緒に、夕食を食べた。

どうやらお兄様は、カルロス様に“騎士団長になる夢”を託していた様で、お酒が入ったお兄様は、嬉しそうにカルロス様に絡んでいた。

私はずっと、カルロス様をお兄様がなるはずだった地位を奪った人と、勝手に恨んでいたが、どうやらそうではなかった様だ。お兄様とカルロス様の間には、深い絆で結ばれていたらしい。

さらにクラッセル公爵は、お父様が亡くなってからずっと他の貴族と一緒に、お兄様を支えてくれていたらしい。

今までずっと、私たち家族がお兄様を支えていたと思っていたけれど、実際はたくさんの貴族がお兄様を必死に支えてくれていたのね。他の貴族が協力してくれているのは知っていたが、まさかここまでとは思ってもみなかった。

自分の無知さを嫌というほど思い知らされた私は、改めて公爵様にお礼を言った。すると

“元騎士団長がとても素敵な人だったからね。だから皆、何が何でもドリトル殿とカリオスティーノ侯爵家を支えないとと思ってね。特に騎士団員たちの行動力は凄まじかったよ。それだけ元騎士団長が、皆から愛されていたという事だ。そんな素敵な方のお嬢様をお嫁に貰えるだなんて、家はラッキーだな”

そう言って笑っていた。改めてお兄様や公爵様の話を聞いて、お父様が亡くなってから、本当にたくさんの方たちに支えられてきたのだと痛感した。もちろん、私の友人たちの家からも、かなり協力してもらったとの事。明日皆に、改めてお礼を言わないとね。

ただ…

昨日はずっとカルロス様がベッタリで、正直疲れた。お兄様や公爵様が、カルロス様に苦言を呈していたが、全く聞く耳を持っていない様だった。

帰り際も私と離れたくないと駄々をこねるカルロス様を、護衛騎士5人がかりで馬車に押し込み無事帰って行ったが…

それにしても、騎士5人がかりって、一体どれだけ力が強いのかしら。さすがのお兄様も、顔が引きつっていた。

「お嬢様、浮かない顔をしてどうしたのですか?昨日はあのカルロス様とご婚約できたのでしょう?この国で今一番人気の高い殿方と、まさかお嬢様がご婚約なさるだなんて。お嬢様はまさに、今一番幸せな令嬢ですわね」

何が今一番幸せな令嬢よ…ミリーはあの男の本性を知らないから、そんな事を言えるのよ。

その時だった。

「お嬢様、カルロス様がいらしております」

「えっ…カルロス様が?」

「お嬢様、よかったですわね。きっとお優しいカルロス様が、婚約者でもあるあなた様をお迎えに来てくださったのです。騎士団の稽古もありお忙しいというのに。なんてお優しい方のかしら?ほら、カルロス様をお待たせする訳にはいきませんわ。さあ、参りましょう」

なぜかミリーの方が張り切っている。まさか迎えに来るだなんて…

重い足取りで玄関に向かうと、お兄様とカルロス様が楽しそうに話しをしていた。それでも私を見つけると、カルロス様が嬉しそうにこちらに走って来る。

「おはよう、ルミナス。君に早く会いたくて、朝練を早々に切り上げて迎えに来たんだよ」

「おはようございます。カルロス様。あなた様は次期騎士団長になられるお方です。私の事よりも、騎士団の稽古を優先してください」

私にあまり構わないで、騎士団の稽古に日々を費やしてください。そんな思いで伝えたのだが…

「俺は今まで血の滲む様な稽古をして来たから、大丈夫だよ。それよりもこれからは、君の為に時間を使いたいんだ」

「よかったな、ルミナス。カルロス殿はお前を一番に考えてくれているんだぞ。実はさっきカルロス殿と打ち合いをしたのだが、まるで相手にならなかったよ。昔父上と打ち合いをしたときの様なありさまだった。彼は本当に強い。きっと父上を超える、立派な騎士団長になってくれるよ」

そう言って嬉しそうに笑っているお兄様。

「何をおっしゃっているのですか。あなた様だって、きちんと練習をしていれば、俺よりもずっと強くなっていたでしょう。どうですか?今から騎士団に再入団しては」

「俺はもう騎士団には未練がないからいいよ。カルロス殿が俺の夢をしっかり叶えてくれそうだし。本当にありがとう。また昔の様な関係になれたらと、今更ながら思っている」

「昔の関係ですか…あの時のドリトル先輩は鬼みたいでしたからね。でも、あの頃の様に色々な話が出来たらと思っております。これからもよろしくお願いします。ドリトル義兄上」

「義兄上だなんて、なんだか照れ臭いな」

完全に2人で盛り上がっている。何なの…このおかしな光景は。ただ、お兄様とカルロス様が、非常に仲が良いという事だけは分かった。

「それでは義兄上、行って参ります」

「ああ、気をつけて行けよ。ルミナス、本当にいい男と婚約出来てよかったな。幸せになれよ」

満面の笑みでお兄様が呟く。こんな嬉しそうなお兄様の顔、久しぶりに見たわ…

「それでは行って参ります」

お兄様に見守られ、馬車に乗り込んだのだった。
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