15 / 66
第15話:カルロス様とお兄様は仲良しです
しおりを挟む
カルロス様と婚約を結んだ翌日、いつもの様に貴族学院に向かう準備をする。昨日はあの後、カルロス様の家族も一緒に、夕食を食べた。
どうやらお兄様は、カルロス様に“騎士団長になる夢”を託していた様で、お酒が入ったお兄様は、嬉しそうにカルロス様に絡んでいた。
私はずっと、カルロス様をお兄様がなるはずだった地位を奪った人と、勝手に恨んでいたが、どうやらそうではなかった様だ。お兄様とカルロス様の間には、深い絆で結ばれていたらしい。
さらにクラッセル公爵は、お父様が亡くなってからずっと他の貴族と一緒に、お兄様を支えてくれていたらしい。
今までずっと、私たち家族がお兄様を支えていたと思っていたけれど、実際はたくさんの貴族がお兄様を必死に支えてくれていたのね。他の貴族が協力してくれているのは知っていたが、まさかここまでとは思ってもみなかった。
自分の無知さを嫌というほど思い知らされた私は、改めて公爵様にお礼を言った。すると
“元騎士団長がとても素敵な人だったからね。だから皆、何が何でもドリトル殿とカリオスティーノ侯爵家を支えないとと思ってね。特に騎士団員たちの行動力は凄まじかったよ。それだけ元騎士団長が、皆から愛されていたという事だ。そんな素敵な方のお嬢様をお嫁に貰えるだなんて、家はラッキーだな”
そう言って笑っていた。改めてお兄様や公爵様の話を聞いて、お父様が亡くなってから、本当にたくさんの方たちに支えられてきたのだと痛感した。もちろん、私の友人たちの家からも、かなり協力してもらったとの事。明日皆に、改めてお礼を言わないとね。
ただ…
昨日はずっとカルロス様がベッタリで、正直疲れた。お兄様や公爵様が、カルロス様に苦言を呈していたが、全く聞く耳を持っていない様だった。
帰り際も私と離れたくないと駄々をこねるカルロス様を、護衛騎士5人がかりで馬車に押し込み無事帰って行ったが…
それにしても、騎士5人がかりって、一体どれだけ力が強いのかしら。さすがのお兄様も、顔が引きつっていた。
「お嬢様、浮かない顔をしてどうしたのですか?昨日はあのカルロス様とご婚約できたのでしょう?この国で今一番人気の高い殿方と、まさかお嬢様がご婚約なさるだなんて。お嬢様はまさに、今一番幸せな令嬢ですわね」
何が今一番幸せな令嬢よ…ミリーはあの男の本性を知らないから、そんな事を言えるのよ。
その時だった。
「お嬢様、カルロス様がいらしております」
「えっ…カルロス様が?」
「お嬢様、よかったですわね。きっとお優しいカルロス様が、婚約者でもあるあなた様をお迎えに来てくださったのです。騎士団の稽古もありお忙しいというのに。なんてお優しい方のかしら?ほら、カルロス様をお待たせする訳にはいきませんわ。さあ、参りましょう」
なぜかミリーの方が張り切っている。まさか迎えに来るだなんて…
重い足取りで玄関に向かうと、お兄様とカルロス様が楽しそうに話しをしていた。それでも私を見つけると、カルロス様が嬉しそうにこちらに走って来る。
「おはよう、ルミナス。君に早く会いたくて、朝練を早々に切り上げて迎えに来たんだよ」
「おはようございます。カルロス様。あなた様は次期騎士団長になられるお方です。私の事よりも、騎士団の稽古を優先してください」
私にあまり構わないで、騎士団の稽古に日々を費やしてください。そんな思いで伝えたのだが…
「俺は今まで血の滲む様な稽古をして来たから、大丈夫だよ。それよりもこれからは、君の為に時間を使いたいんだ」
「よかったな、ルミナス。カルロス殿はお前を一番に考えてくれているんだぞ。実はさっきカルロス殿と打ち合いをしたのだが、まるで相手にならなかったよ。昔父上と打ち合いをしたときの様なありさまだった。彼は本当に強い。きっと父上を超える、立派な騎士団長になってくれるよ」
そう言って嬉しそうに笑っているお兄様。
「何をおっしゃっているのですか。あなた様だって、きちんと練習をしていれば、俺よりもずっと強くなっていたでしょう。どうですか?今から騎士団に再入団しては」
「俺はもう騎士団には未練がないからいいよ。カルロス殿が俺の夢をしっかり叶えてくれそうだし。本当にありがとう。また昔の様な関係になれたらと、今更ながら思っている」
「昔の関係ですか…あの時のドリトル先輩は鬼みたいでしたからね。でも、あの頃の様に色々な話が出来たらと思っております。これからもよろしくお願いします。ドリトル義兄上」
「義兄上だなんて、なんだか照れ臭いな」
完全に2人で盛り上がっている。何なの…このおかしな光景は。ただ、お兄様とカルロス様が、非常に仲が良いという事だけは分かった。
「それでは義兄上、行って参ります」
「ああ、気をつけて行けよ。ルミナス、本当にいい男と婚約出来てよかったな。幸せになれよ」
満面の笑みでお兄様が呟く。こんな嬉しそうなお兄様の顔、久しぶりに見たわ…
「それでは行って参ります」
お兄様に見守られ、馬車に乗り込んだのだった。
どうやらお兄様は、カルロス様に“騎士団長になる夢”を託していた様で、お酒が入ったお兄様は、嬉しそうにカルロス様に絡んでいた。
私はずっと、カルロス様をお兄様がなるはずだった地位を奪った人と、勝手に恨んでいたが、どうやらそうではなかった様だ。お兄様とカルロス様の間には、深い絆で結ばれていたらしい。
さらにクラッセル公爵は、お父様が亡くなってからずっと他の貴族と一緒に、お兄様を支えてくれていたらしい。
今までずっと、私たち家族がお兄様を支えていたと思っていたけれど、実際はたくさんの貴族がお兄様を必死に支えてくれていたのね。他の貴族が協力してくれているのは知っていたが、まさかここまでとは思ってもみなかった。
自分の無知さを嫌というほど思い知らされた私は、改めて公爵様にお礼を言った。すると
“元騎士団長がとても素敵な人だったからね。だから皆、何が何でもドリトル殿とカリオスティーノ侯爵家を支えないとと思ってね。特に騎士団員たちの行動力は凄まじかったよ。それだけ元騎士団長が、皆から愛されていたという事だ。そんな素敵な方のお嬢様をお嫁に貰えるだなんて、家はラッキーだな”
そう言って笑っていた。改めてお兄様や公爵様の話を聞いて、お父様が亡くなってから、本当にたくさんの方たちに支えられてきたのだと痛感した。もちろん、私の友人たちの家からも、かなり協力してもらったとの事。明日皆に、改めてお礼を言わないとね。
ただ…
昨日はずっとカルロス様がベッタリで、正直疲れた。お兄様や公爵様が、カルロス様に苦言を呈していたが、全く聞く耳を持っていない様だった。
帰り際も私と離れたくないと駄々をこねるカルロス様を、護衛騎士5人がかりで馬車に押し込み無事帰って行ったが…
それにしても、騎士5人がかりって、一体どれだけ力が強いのかしら。さすがのお兄様も、顔が引きつっていた。
「お嬢様、浮かない顔をしてどうしたのですか?昨日はあのカルロス様とご婚約できたのでしょう?この国で今一番人気の高い殿方と、まさかお嬢様がご婚約なさるだなんて。お嬢様はまさに、今一番幸せな令嬢ですわね」
何が今一番幸せな令嬢よ…ミリーはあの男の本性を知らないから、そんな事を言えるのよ。
その時だった。
「お嬢様、カルロス様がいらしております」
「えっ…カルロス様が?」
「お嬢様、よかったですわね。きっとお優しいカルロス様が、婚約者でもあるあなた様をお迎えに来てくださったのです。騎士団の稽古もありお忙しいというのに。なんてお優しい方のかしら?ほら、カルロス様をお待たせする訳にはいきませんわ。さあ、参りましょう」
なぜかミリーの方が張り切っている。まさか迎えに来るだなんて…
重い足取りで玄関に向かうと、お兄様とカルロス様が楽しそうに話しをしていた。それでも私を見つけると、カルロス様が嬉しそうにこちらに走って来る。
「おはよう、ルミナス。君に早く会いたくて、朝練を早々に切り上げて迎えに来たんだよ」
「おはようございます。カルロス様。あなた様は次期騎士団長になられるお方です。私の事よりも、騎士団の稽古を優先してください」
私にあまり構わないで、騎士団の稽古に日々を費やしてください。そんな思いで伝えたのだが…
「俺は今まで血の滲む様な稽古をして来たから、大丈夫だよ。それよりもこれからは、君の為に時間を使いたいんだ」
「よかったな、ルミナス。カルロス殿はお前を一番に考えてくれているんだぞ。実はさっきカルロス殿と打ち合いをしたのだが、まるで相手にならなかったよ。昔父上と打ち合いをしたときの様なありさまだった。彼は本当に強い。きっと父上を超える、立派な騎士団長になってくれるよ」
そう言って嬉しそうに笑っているお兄様。
「何をおっしゃっているのですか。あなた様だって、きちんと練習をしていれば、俺よりもずっと強くなっていたでしょう。どうですか?今から騎士団に再入団しては」
「俺はもう騎士団には未練がないからいいよ。カルロス殿が俺の夢をしっかり叶えてくれそうだし。本当にありがとう。また昔の様な関係になれたらと、今更ながら思っている」
「昔の関係ですか…あの時のドリトル先輩は鬼みたいでしたからね。でも、あの頃の様に色々な話が出来たらと思っております。これからもよろしくお願いします。ドリトル義兄上」
「義兄上だなんて、なんだか照れ臭いな」
完全に2人で盛り上がっている。何なの…このおかしな光景は。ただ、お兄様とカルロス様が、非常に仲が良いという事だけは分かった。
「それでは義兄上、行って参ります」
「ああ、気をつけて行けよ。ルミナス、本当にいい男と婚約出来てよかったな。幸せになれよ」
満面の笑みでお兄様が呟く。こんな嬉しそうなお兄様の顔、久しぶりに見たわ…
「それでは行って参ります」
お兄様に見守られ、馬車に乗り込んだのだった。
56
お気に入りに追加
1,899
あなたにおすすめの小説
外では氷の騎士なんて呼ばれてる旦那様に今日も溺愛されてます
刻芦葉
恋愛
王国に仕える近衛騎士ユリウスは一切笑顔を見せないことから氷の騎士と呼ばれていた。ただそんな氷の騎士様だけど私の前だけは優しい笑顔を見せてくれる。今日も私は不器用だけど格好いい旦那様に溺愛されています。
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
【完結】愛を知らない伯爵令嬢は執着激重王太子の愛を一身に受ける。
扇 レンナ
恋愛
スパダリ系執着王太子×愛を知らない純情令嬢――婚約破棄から始まる、極上の恋
伯爵令嬢テレジアは小さな頃から両親に《次期公爵閣下の婚約者》という価値しか見出してもらえなかった。
それでもその利用価値に縋っていたテレジアだが、努力も虚しく婚約破棄を突きつけられる。
途方に暮れるテレジアを助けたのは、留学中だったはずの王太子ラインヴァルト。彼は何故かテレジアに「好きだ」と告げて、熱烈に愛してくれる。
その真意が、テレジアにはわからなくて……。
*hotランキング 最高68位ありがとうございます♡
▼掲載先→ベリーズカフェ、エブリスタ、アルファポリス
婚約者候補を見定めていたら予定外の大物が釣れてしまった…
矢野りと
恋愛
16歳になるエミリア・ダートン子爵令嬢にはまだ婚約者がいない。恋愛結婚に憧れ、政略での婚約を拒んできたからだ。
ある日、理不尽な理由から婚約者を早急に決めるようにと祖父から言われ「三人の婚約者候補から一人選ばなければ修道院行きだぞ」と脅される。
それならばと三人の婚約者候補を自分の目で見定めようと自ら婚約者候補達について調べ始める。
その様子を誰かに見られているとも知らずに…。
*設定はゆるいです。
*この作品は作者の他作品『私の孤独に気づいてくれたのは家族でも婚約者でもなく特待生で平民の彼でした』の登場人物第三王子と婚約者のお話です。そちらも読んで頂くとより楽しめると思います。
【電子書籍化進行中】声を失った令嬢は、次期公爵の義理のお兄さまに恋をしました
八重
恋愛
※発売日少し前を目安に作品を引き下げます
修道院で生まれ育ったローゼマリーは、14歳の時火事に巻き込まれる。
その火事の唯一の生き残りとなった彼女は、領主であるヴィルフェルト公爵に拾われ、彼の養子になる。
彼には息子が一人おり、名をラルス・ヴィルフェルトといった。
ラルスは容姿端麗で文武両道の次期公爵として申し分なく、社交界でも評価されていた。
一方、怠惰なシスターが文字を教えなかったため、ローゼマリーは読み書きができなかった。
必死になんとか義理の父や兄に身振り手振りで伝えようとも、なかなか伝わらない。
なぜなら、彼女は火事で声を失ってしまっていたからだ──
そして次第に優しく文字を教えてくれたり、面倒を見てくれるラルスに恋をしてしまって……。
これは、義理の家族の役に立ちたくて頑張りながら、言えない「好き」を内に秘める、そんな物語。
※小説家になろうが先行公開です
告白さえできずに失恋したので、酒場でやけ酒しています。目が覚めたら、なぜか夜会の前夜に戻っていました。
石河 翠
恋愛
ほんのり想いを寄せていたイケメン文官に、告白する間もなく失恋した主人公。その夜、彼女は親友の魔導士にくだを巻きながら、酒場でやけ酒をしていた。見事に酔いつぶれる彼女。
いつもならば二日酔いとともに目が覚めるはずが、不思議なほど爽やかな気持ちで起き上がる。なんと彼女は、失恋する前の日の晩に戻ってきていたのだ。
前回の失敗をすべて回避すれば、好きなひとと付き合うこともできるはず。そう考えて動き始める彼女だったが……。
ちょっとがさつだけれどまっすぐで優しいヒロインと、そんな彼女のことを一途に思っていた魔導士の恋物語。ハッピーエンドです。
この作品は、小説家になろう及びエブリスタにも投稿しております。
【完結】記憶が戻ったら〜孤独な妻は英雄夫の変わらぬ溺愛に溶かされる〜
凛蓮月
恋愛
【完全完結しました。ご愛読頂きありがとうございます!】
公爵令嬢カトリーナ・オールディスは、王太子デーヴィドの婚約者であった。
だが、カトリーナを良く思っていなかったデーヴィドは真実の愛を見つけたと言って婚約破棄した上、カトリーナが最も嫌う醜悪伯爵──ディートリヒ・ランゲの元へ嫁げと命令した。
ディートリヒは『救国の英雄』として知られる王国騎士団副団長。だが、顔には数年前の戦で負った大きな傷があった為社交界では『醜悪伯爵』と侮蔑されていた。
嫌がったカトリーナは逃げる途中階段で足を踏み外し転げ落ちる。
──目覚めたカトリーナは、一切の記憶を失っていた。
王太子命令による望まぬ婚姻ではあったが仲良くするカトリーナとディートリヒ。
カトリーナに想いを寄せていた彼にとってこの婚姻は一生に一度の奇跡だったのだ。
(記憶を取り戻したい)
(どうかこのままで……)
だが、それも長くは続かず──。
【HOTランキング1位頂きました。ありがとうございます!】
※このお話は、以前投稿したものを大幅に加筆修正したものです。
※中編版、短編版はpixivに移動させています。
※小説家になろう、ベリーズカフェでも掲載しています。
※ 魔法等は出てきませんが、作者独自の異世界のお話です。現実世界とは異なります。(異世界語を翻訳しているような感覚です)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる