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第40話:お妃が決まります

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翌日、最悪な気分で朝を迎えた。私は昨夜、大蛇に襲われる夢を見たのだ。本当に最悪だわ…

こんな日は朝からクリーに乗って…いや、まだあの蛇がいるかもしれない。そう思ったら、なんだか部屋から出る気にはなれない。

一刻も早く、この王宮から出て領地に戻ろう。早速1人荷造りを開始する。

「お嬢様、おはようございます…て、お嬢様は何をなさっているのですか?」

「何って、荷造りよ。今日でお妃候補もお終いだものね。さっさと領地に戻りましょう。私は貴族学院にも行かなくていいとの事だから、これからは今まで通り、のびのびと領地で生活をするわ」

「何をおっしゃっているのですか?それよりも今日は、ディーノ殿下の正式なお妃が決まる日なのです。すぐにお着替えを」

クロハ含めた沢山のメイドたちによって、あっと言う間に浴槽に連れてこられ、磨き上げられる。そしてドレスに着替えさせられ、化粧までされた。

「なんてお美しいのでしょう。さあ、お嬢様、参りましょう」

なぜかご機嫌のクロハに連れられ、控室へとやって来た。そこにはお妃候補の1人、アマリリス様の姿も。ただ、やっぱりマーリン様はいらっしゃらないのね…彼女がお妃で決まりだったのに…私ったら一体何をしているのかしら?

王宮に来てから、なんだか調子を狂わされまくっているわ。それもこれも、殿下のせいよ。まあ、その殿下と過ごすのも今日で最後だけれどね。そう、最後…

なぜだろう、もう殿下と会う事もないと思うと、胸がチクリと痛む。どうしてこんな気持ちになるのよ。私は殿下の事なんて、好きじゃないはずなのに…

「ヴィクトリア様、おはようございます。昨日は大変だったそうですね。フィドーズ公爵が失脚するだなんて。昨日マーリン様とひと悶着あったそうではありませんか。それにしても、あのマーリン様の尻尾を掴むだなんて、さすがですわ」

嬉しそうに私に話しかけてくるアマリリス様。

「昨日の事を既に知っていらっしゃるだなんて、あなたもなかなかやりますね。どうやって情報を仕入れたのですか?」

「実は朝一番で貴族たちが集められ、昨日の夜の件で陛下や殿下から話しがあったそうですわ。フィドーズ公爵家を家宅捜索した結果、色々と悪事に関する情報が出て来たとの事。父の話では、フィドーズ公爵家は今後裁判にかけられたのち、公爵家は取り潰しになるとの事ですわ」

「そうだったのですね。私はまだ父に会っておりませんので、何にも情報を仕入れておりませんの」

お父様ったら、大事な情報を娘によこさないのだから!肝心なところが抜けているのだから、本当に嫌になるわ。

「これでヴィクトリア様も、心置きなく殿下に嫁げますね。ヴィクトリア様、半年後には貴族学院入学も控えておりますし、これからもぜひ仲良くしてくださいませ」

私の手を握り、目を輝かせて私を見つめるアマリリス様。この人は相変わらず、訳のわかない事を言っている。

「アマリリス様、私は殿下と結婚する事はありま…」

「お待たせいたしました。ご準備が整いましたので、どうぞこちらへ」

「ヴィクトリア様、いよいよ始まる様ですわ。参りましょう」

ちょっと、まだ話が済んでいないのよ…まあいいわ、今から行われるお妃決定の儀で、全てがわかるのだから。

さっさと終わらせて、早く領地に帰ろう。

執事の合図で、アマリリス様と一緒に入場する。軽く周りを見渡すと、沢山の貴族の姿が。お父様やお母様、お兄様家族やお姉様家族もいる。あれはカルティア様だわ。なぜか笑顔で手を振っているし…

わざわざ見に来るだなんて、もの好きね。

陛下や王妃様、殿下の前まで来ると、そのまま立ち止まった。

「皆の者、今日は忙しい中よく集まってくれた。朝も話をしたが、残念ながらお妃候補の1人だったマーリン嬢が、ここにいるヴィクトリア嬢を何度も暗殺しようとした罪で投獄された。本来起きてはならない事件を王宮内で起こしてしまった事、王族としてまずは詫びさせてくれ。本当に申し訳なかった」

陛下と王妃様、さらに殿下が皆に頭を下げた。

「二度とこのような事が起こらないように、マーリン嬢及びフィドーズ公爵は厳罰に処す考えだ。また、フィドーズ公爵家を家宅捜索した結果、他にも犯罪に手を染めていたことが発覚した。近々裁判を開き、正式に処罰を与えるつもりでいる。ディーノのお妃を発表する場で、この様な話をしなければいけない事を、どうか許して欲しい」

やっぱりアマリリス様が言っていた通り、マーリン様やフィドーズ公爵は厳罰に処されるのね。私はこんな大事にしたくなかったのだが…これは私の完全な失態だわ…

ただ、なぜか貴族たちは皆納得している様だ。

「それでは本題に入ろう。ディーノの婚約者だが…この件に関しては本人でもあるディーノから発表したいとの事だ。ディーノ」

いよいよお妃が正式に決まる様だ。

ゆっくりと前に出る殿下。その瞬間、なぜか目があった。どうして私を見るのよ!そんな思いで、目をそっとそらした。
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