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第39話:よくない方向に進んでいる様な気が…

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「さあヴィクトリア、そろそろ部屋に戻ろう。僕が抱っこして部屋まで連れて行ってあげるから、大丈夫だよ」

どさくさに紛れて、私を抱きかかえている殿下。これ以上この男の言いなりに何てなるものですか!

「殿下、私は1人で歩けますわ。降ろしてください!」

「でも、まだあの蛇、君を見ているよ。もしかしたらヴィクトリアの事が気に入ったのかもしれないね。一応檻に入っているけれど、僕が降ろしたら君の方にやってくるかもしれないね」

何ですって、あの大蛇がまだ私の方を見ているですって。

ゆっくり檻の方に目をやると、あの大蛇と目があった。ぎゃぁぁぁ、やっぱり無理だわ。ギュッと殿下にしがみつく。

「やっぱり自分の足では歩けそうにない様だね。君たち、悪いけれどマーリン嬢を地下牢に入れておいてくれるかい?それからすぐにフィドーズ公爵家も家宅捜索を行ってくれ」

ちょっと待って、殿下に全てバレていたという事は、マーリン様は。

「殿下、もしかしてマーリン様は、お妃候補ではなくなるという事ですか?」

それは困るわ。彼女がお妃候補を辞退する事になったら、誰がお妃になるのよ。もしかして、また一からお妃候補を選ぶとか言わないでしょうね。また6ヶ月、王宮で生活するの?

「マーリン嬢は今回重大な罪を犯したんだ。マーリン嬢はもちろん、多分彼女に協力していたフィドーズ公爵も逮捕され、場合によって公爵家は取り潰される事になるだろう。そんな令嬢が、このままお妃候補でいられる訳がないだろう」

「そんな…最有力候補のマーリン様が脱落したら、一体誰がお妃になるのですか?まさかまた、一からお妃候補者選びを行うとかですか?その様な事態になったら、今度こそ私は辞退させていただきますわ」

私はこの6ヶ月、色々と頑張って来たのだ。そしてマーリン様から売られた喧嘩にも無事勝利を治めた…はずだ。もう私にやり残したことはないはず…

「もう一度お妃候補を選び直すなんて事はしないから、安心して欲しい。とにかくヴィクトリアは、何も心配しなくていいのだよ。明日は予定通り、お妃を発表するつもりだ。ただ、この土壇場にマーリン嬢の悪事が判明したからね。明日はちょっと混乱するかもしれないね」

本当に心配しなくてもいいのかしら?なんだか物凄く嫌な予感がするのだけれど…こうなったら、アマリリス様をお妃に仕立て上げるしかないわね。それとも、カルティア様を呼び戻す?

「ヴィクトリア、また考え事かい?そんなに心配しなくても、お妃はもう初期の段階から決まっていたのだよ。だから君が今更心配する事はない。さあ、ゆっくりお休み」

いつの間にか部屋まで戻って来ていた様で、そのままベッドに置かれた。

「それじゃあ僕は、後始末があるからちょっと行ってくるね。ごめんね、本当は傍にいてあげたいのだけれど。とりあえずもう部屋から出ない方がいいよ。万が一あの蛇が逃げ出してウロウロとしていたら大変だからね」

ちょっと、なんて恐ろしい事を言うのよ。私はこの世で蛇というものが一番嫌いなのよ。本当に勘弁して欲しいわ。あの男、相当性格が悪いわね。あんな男に助けられるだなんて、やっぱり悔しいわ!

「お嬢様、また勝手な事をして。とても心配していたのですよ。それにしても、大きな蛇でしたね。さすがにあそこまで大きな蛇は、領地には出ませんが。それでも領地にも1メートルくらいの蛇ならいますわ。私も見たことがありますし」

私の元にやって来たのは、クロハだ。

「クロハ、領地には小さなのしかいないはずよ。そんな1メートルのものだなんて、見たことがないわ」

「それはお嬢様が幸運だったのですね。私は2度程見たことがありますわ。お嬢様が怖がると思って、急いで追い払いましたが。それよりもお嬢様、汗をかいたのでしょう。すぐにお着替えと湯あみをしましょう。本当にお嬢様は!」

クロハに連れられ、湯あみを済ますと、ベッドに入った。それにしてもあの蛇、恐ろしかったわ。世の中には爬虫類をこよなく愛する人たちがいると聞いたことがある。きっとマーリン様もそう言うタイプなのだろう。

マーリン様との勝負には勝利したけれど、なんだかモヤモヤする。それにとても嫌な予感がするし…

とにかく今日はもう寝よう。そう思い、ゆっくり瞳を閉じたのだった。
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