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第19話:王太子殿下の性格が変わりすぎていませんか?
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お妃候補として王宮にやって来てから、2ヶ月が過ぎた。それなりに王宮での生活を楽しんでいる。今日も朝から王妃教育を受けたが、教育係の先生から絶賛の嵐。
この人、褒めて延ばすタイプなのね。あっという間に王妃教育も終わり、さあ、自由時間だ。着替えを済ませ部屋から出ると、満面の笑みを浮かべた殿下が立っていた。
「ヴィクトリアは相変わらず優秀だね。もう王妃教育が終わるだなんて。今日も乗馬をするのだろう?僕がエスコートするよ」
「殿下、馬を手配してくださりありがとうございます。ただ、私は乗馬は1人で楽しみたい人間ですので、どうか私の事は気になさらずに」
侯爵令嬢らしく殿下に微笑み、その場を後にしようとした。いつの間にか私の事を呼び捨てにするし、いつもこうやって私が出てくるのを待っているのだ。はっきり言って、鬱陶しい。
「待って、ヴィクトリア。僕の事は名前で呼んで欲しいと伝えたよね?君は僕の妻になるかもしれないのだから。というか、もう君が僕の妻で決まりなんだけれどね…」
殿下がニヤニヤとしながら、訳の分からない事を呟いている。完全に最後の方は聞こえなかったが、ニヤニヤしている間にそっと彼から離れた。
正直私は、面倒なお妃候補争いなんかに興味はないのだ。急いで馬小屋に向かうと
「ヴィクトリア様、お待ちしておりました。クリー様の手入れは済んでおりますので、存分に乗馬をお楽しみください」
「ありがとう。それじゃあ、早速クリーを借りるわね」
殿下が私の為に手配してくれた馬、クリー。大人しくてとても賢い馬なのだ。早速馬にまたがろうとした時だった。
「ヴィクトリア、落ちると危ないよ。僕が支えてあげるね」
どこからか湧いて来た殿下が、私の世話を焼く。この人、本当にどこにでも現れるのね。
「ありがとうございます。でも、大丈夫ですわ。それでは失礼いたします」
殿下のアシスタントをさりげなく遮り、クリーにまたがるとすぐに走り出す。
「待って、僕も行くよ」
後ろから殿下の叫び声が聞こえるが、もちろん待つわけがない。颯爽と走るクリー。私の手綱さばきに忠実に答えてくれる賢い子だ。
しばらく乗馬を楽しんだ後は、剣の稽古に励む。相変わらず家の護衛たちは相手にならない。その為、なぜか殿下が優秀な王宮騎士団たちを手配してくれたのだ。そのお陰で、最近また私の腕が上がったのだ。
ちなみにあのひ弱そうな殿下も、せっかくなので叩き潰してやろうと思い、勝負を挑んだ。さすがに令嬢にコテンパンにやられれば、殿下も私に怯え近づかなくなると思ったのだが…
あの男、ひょろっこい体をしている割に、物凄く強かったのだ。それも私を傷つけないように、上手に私を倒すのだ!この私がこんなひ弱に負けるだなんて!悔しくて最近では毎日勝負を挑んでは負ける始末。
あのひ弱、一体どんな稽古をしているのかしら?今日もあっけなく負けてしまい、悔しくて地面を叩く。
「ヴィクトリア、地面なんて叩いたら君の可愛い手が傷ついてしまうよ。剣はこのくらいにして、お昼にしよう」
殿下が涼しい顔で私の手を取り、笑顔を向けている。やっぱり悔しいわ!絶対にこの男を倒して見せるのだから!
ただ、運動したためお腹はペコペコだ。既に丘の上には、私たちが食事を楽しめるように、地面に敷物が敷かれている。
本来なら敷物が敷いてあるとはいえ、侯爵令嬢と王太子殿下が地べたに座って食事をするなど、言語道断。最初は文句を言って来た護衛やメイドたちだったが、王宮内なのだから何をしようと勝手だろう、人前ではこんな事はしないともっともらしい理由を並べたら、何も言わなくなった。
殿下もいつの間にか当たり前に一緒に地べたに座って食べているし、問題ないだろう。
「ヴィクトリア、今日は君の好きなスイートポテトを沢山持ってきたよ。それから、お肉たっぷりのサンドウィッチも」
「まあ、それは嬉しいですわ。早速頂きましょう」
これまた貴族令嬢では有るまじき、手づかみでサンドウィッチを掴み、そのままかぶりつく。何度も言うが、ここは王宮という名の、プライベートゾーン。何をしようが文句を言われる筋合いはないと思っているのだ。
殿下も当たり前のように手づかみで食べているし、やはり問題ないだろう。それにしても殿下、随分変わったわね。出会った時は人形みたいだったのに。今じゃあ表情も豊かになったし、やる事も豪快になったわ。
「殿下、お肉のソースが頬についておりますわ」
ハンカチでそっと頬を拭いてあげる。本当に手のかかる子供みたいね。
「ありがとう。ヴィクトリアに拭いてもらえるだなんて嬉しいよ。今日も天気がいいし、外で食べる食事は一段と美味しいね。いくらでも食べられそうだ」
「沢山運動をしたのですもの。さあ、殿下、もっと食べて下さい。あなた様はただでさえひょろっこいのですから」
「僕はひょろっくないよ。第一、僕に一度も剣で勝てないくせに」
「あれは私が手加減をしてあげているからですわ。明日こそ、殿下をコテンパンにして差し上げますわ!」
初めて会った時は当たり障りのない事ばかり言っていた殿下だが、今じゃあ言いたい事をズケズケと言う様になったのだ。本当にこの人、あの時の殿下と同一人物なのかしら?そう思うほど、性格が変わったのだ。
でも、私はあの人形みたいな殿下より、今の人間味あふれる殿下の方が好きだけれどね。
「いつまでも頬を膨らませて怒っていると、僕が全部食べちゃうよ」
そう言って殿下がいたずらっぽく笑った。
「そうはさせませんわ」
私が急いでお肉サンドとスイートポテトを捕獲する。そんな私見て、再び殿下が笑った。本当にこの人、性格が変わったわね。
この人、褒めて延ばすタイプなのね。あっという間に王妃教育も終わり、さあ、自由時間だ。着替えを済ませ部屋から出ると、満面の笑みを浮かべた殿下が立っていた。
「ヴィクトリアは相変わらず優秀だね。もう王妃教育が終わるだなんて。今日も乗馬をするのだろう?僕がエスコートするよ」
「殿下、馬を手配してくださりありがとうございます。ただ、私は乗馬は1人で楽しみたい人間ですので、どうか私の事は気になさらずに」
侯爵令嬢らしく殿下に微笑み、その場を後にしようとした。いつの間にか私の事を呼び捨てにするし、いつもこうやって私が出てくるのを待っているのだ。はっきり言って、鬱陶しい。
「待って、ヴィクトリア。僕の事は名前で呼んで欲しいと伝えたよね?君は僕の妻になるかもしれないのだから。というか、もう君が僕の妻で決まりなんだけれどね…」
殿下がニヤニヤとしながら、訳の分からない事を呟いている。完全に最後の方は聞こえなかったが、ニヤニヤしている間にそっと彼から離れた。
正直私は、面倒なお妃候補争いなんかに興味はないのだ。急いで馬小屋に向かうと
「ヴィクトリア様、お待ちしておりました。クリー様の手入れは済んでおりますので、存分に乗馬をお楽しみください」
「ありがとう。それじゃあ、早速クリーを借りるわね」
殿下が私の為に手配してくれた馬、クリー。大人しくてとても賢い馬なのだ。早速馬にまたがろうとした時だった。
「ヴィクトリア、落ちると危ないよ。僕が支えてあげるね」
どこからか湧いて来た殿下が、私の世話を焼く。この人、本当にどこにでも現れるのね。
「ありがとうございます。でも、大丈夫ですわ。それでは失礼いたします」
殿下のアシスタントをさりげなく遮り、クリーにまたがるとすぐに走り出す。
「待って、僕も行くよ」
後ろから殿下の叫び声が聞こえるが、もちろん待つわけがない。颯爽と走るクリー。私の手綱さばきに忠実に答えてくれる賢い子だ。
しばらく乗馬を楽しんだ後は、剣の稽古に励む。相変わらず家の護衛たちは相手にならない。その為、なぜか殿下が優秀な王宮騎士団たちを手配してくれたのだ。そのお陰で、最近また私の腕が上がったのだ。
ちなみにあのひ弱そうな殿下も、せっかくなので叩き潰してやろうと思い、勝負を挑んだ。さすがに令嬢にコテンパンにやられれば、殿下も私に怯え近づかなくなると思ったのだが…
あの男、ひょろっこい体をしている割に、物凄く強かったのだ。それも私を傷つけないように、上手に私を倒すのだ!この私がこんなひ弱に負けるだなんて!悔しくて最近では毎日勝負を挑んでは負ける始末。
あのひ弱、一体どんな稽古をしているのかしら?今日もあっけなく負けてしまい、悔しくて地面を叩く。
「ヴィクトリア、地面なんて叩いたら君の可愛い手が傷ついてしまうよ。剣はこのくらいにして、お昼にしよう」
殿下が涼しい顔で私の手を取り、笑顔を向けている。やっぱり悔しいわ!絶対にこの男を倒して見せるのだから!
ただ、運動したためお腹はペコペコだ。既に丘の上には、私たちが食事を楽しめるように、地面に敷物が敷かれている。
本来なら敷物が敷いてあるとはいえ、侯爵令嬢と王太子殿下が地べたに座って食事をするなど、言語道断。最初は文句を言って来た護衛やメイドたちだったが、王宮内なのだから何をしようと勝手だろう、人前ではこんな事はしないともっともらしい理由を並べたら、何も言わなくなった。
殿下もいつの間にか当たり前に一緒に地べたに座って食べているし、問題ないだろう。
「ヴィクトリア、今日は君の好きなスイートポテトを沢山持ってきたよ。それから、お肉たっぷりのサンドウィッチも」
「まあ、それは嬉しいですわ。早速頂きましょう」
これまた貴族令嬢では有るまじき、手づかみでサンドウィッチを掴み、そのままかぶりつく。何度も言うが、ここは王宮という名の、プライベートゾーン。何をしようが文句を言われる筋合いはないと思っているのだ。
殿下も当たり前のように手づかみで食べているし、やはり問題ないだろう。それにしても殿下、随分変わったわね。出会った時は人形みたいだったのに。今じゃあ表情も豊かになったし、やる事も豪快になったわ。
「殿下、お肉のソースが頬についておりますわ」
ハンカチでそっと頬を拭いてあげる。本当に手のかかる子供みたいね。
「ありがとう。ヴィクトリアに拭いてもらえるだなんて嬉しいよ。今日も天気がいいし、外で食べる食事は一段と美味しいね。いくらでも食べられそうだ」
「沢山運動をしたのですもの。さあ、殿下、もっと食べて下さい。あなた様はただでさえひょろっこいのですから」
「僕はひょろっくないよ。第一、僕に一度も剣で勝てないくせに」
「あれは私が手加減をしてあげているからですわ。明日こそ、殿下をコテンパンにして差し上げますわ!」
初めて会った時は当たり障りのない事ばかり言っていた殿下だが、今じゃあ言いたい事をズケズケと言う様になったのだ。本当にこの人、あの時の殿下と同一人物なのかしら?そう思うほど、性格が変わったのだ。
でも、私はあの人形みたいな殿下より、今の人間味あふれる殿下の方が好きだけれどね。
「いつまでも頬を膨らませて怒っていると、僕が全部食べちゃうよ」
そう言って殿下がいたずらっぽく笑った。
「そうはさせませんわ」
私が急いでお肉サンドとスイートポテトを捕獲する。そんな私見て、再び殿下が笑った。本当にこの人、性格が変わったわね。
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