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第39話:大切な人達に見守られ幸せになる為の一歩を踏み出します
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「クレア、屋敷に着いたよ。そろそろ起きようか?」
ウィリアム様の声…
ゆっくり目を開けると、ウィリアム様の顔が目に飛び込んできた。どうやら馬で屋敷に帰って来る途中で、寝てしまった様だ。
そのまま馬から降ろしてもらうが、まだ抱きかかえられたままだ。
すると物凄い勢いで屋敷から両親とお兄様、さらにウィリアム様のご両親と各義理兄夫婦達が出て来た。どうやら、全員集合していた様だ。
「クレア!無事でよかったわ!」
女性陣に一斉に抱きしめられた。ただ、マーラお姉様とメリアお姉様が私を奪い合う様に引っ張り合いをしているのが気になるが、それだけ心配してくれていたという事だろう。
「それで、クレアちゃんを連れ去った不届き者は何処のどいつなの?」
物凄い形相で、ウィリアム様に詰め寄るお義母様。
「クレアの元婚約者のサミュエルだ」
「何だって!あの男、クレアをあんなにも傷つけておいて、一体どういうつもりだ!」
すかさず怒り出すお父様とお兄様。なぜか隣でお義母様とマーラお姉様、メリアお姉様も怒っている。
どうやらマーラお姉様とメリアお姉様は、私の過去の出来事を知っていて、かなり気に掛けていてくれていた様だ。
「あの男だけは許せないわ!早速侯爵家に抗議をしましょう!」
「待ちなさい、確かサミュエル殿はカードリッド侯爵から勘当された様だ。だから侯爵家は関係ない」
すかさずお義父様がお義母様を止めたのだが…
「まあ!事前に勘当しておいて、侯爵家に火の粉がかからないようにするなんて!尚更腹が立つわ!とにかく、今直ぐ抗議に行きましょう」
興奮気味のお義母様。さらに
「あんなにも酷い事をしておいて、本当に許せないわ!お義母様、私も一緒に行きますわ!」
「ちょっとマーラ!私がお義母様と一緒に抗議に行くわよ!」
「何ですって!ここは長男の嫁でもある私が行くのが普通でしょう!」
なぜかマーラお姉様とメリアお姉様が喧嘩を始めた。これはまずいわね。
「皆、ちょっと落ち着いてくれ。気持ちは分かるが、今はもう夜中だ!いくら何でも、こんな時間に乗り込むなんて迷惑だろう!とにかく、クレアは無事に帰って来たんだ。サミュエルの処分は俺が決める。口出しするな!」
ウィリアム様がはっきりそう宣言した。
「ウィリアムがそう言うなら…わかったわ…」
どうやら3人共納得した様だ。お義父様含め、義兄様達もホッとしている。改めて言うが、公爵家は女性陣が強い様だ。
「皆様、夜遅いのに、わざわざ私の為に集まっていただき、ありがとうございます。こんな風に心配してくれる家族が増えたという事、とても嬉しく思っています。うっかり誘拐されてしまう様な私ですが、これからもよろしくお願いします」
皆が私の為に夜遅くまで待っていてくれた事が嬉しくて、自分の気持ちをそのまま伝えた。改めてウィリアム様と家族になれる事が、本当に嬉しくてたまらない。
「クレアちゃん、私たちはあなたの事を本当の家族だと思っているのよ。だから、あなたを心配するのは当り前よ。それに、皆クレアちゃんが大好きなのよ」
そう言って優しく微笑んでくれたお義母様。皆も頷いている。
「皆、俺からもお礼を言うよ。心配してくれてありがとう。とりあえずもう遅いし、気を付けて帰ってくれ」
ウィリアム様の言葉で、皆帰って行った。ただお義母様だけは、私が心配だから一緒に寝ると言い張ったが、ウィリアム様が無理やり馬車に押し込んでいた。
「母上がすまん」
そう言ってウィリアム様は謝ってくれたが、逆にそこまで心配してくれる事が、私は物凄く嬉しかった。
そして翌日
話しを聞きつけたカードリッド侯爵が謝罪に来た。どうやら知らなかった様だ。カードリッド侯爵の話によると、私と婚約破棄したのがショックで、しばらく旅に出たいから勘当して欲しいと言われたらしい。
何度も何度も謝罪を受け、慰謝料も払うと言われたが、それは断った。いくら実の息子とは言え、既に勘当しているのだ。はっきり言って、侯爵にそこまでして貰う理由はないと私は思っているからだ。
そして気になるサミュエル様だが、あの後そのまま騎士団の宿舎に連れていかれ、そこで生活をする事になったそうだ。翌日から、鬼の騎士団長(もちろんウィリアム様)から、鬼の様な稽古を受けていて、毎日瀕死の状態との事。
何度も逃げ出そうとしているらしいが、もちろん見つかり、そのたびにウィリアム様から地獄の稽古を受けさせられているらしい。
ちなみにこれらの情報は、ハルやジークが教えてくれている。
「あいつ、マジで死にそうだぞ!騎士団長、本当に容赦ないからな。見ているこっちが気の毒に感じるくらいにな」
そう言って笑っているハルやジーク。ある意味、この2人も鬼かもしれない。私からあまりサミュエル様を虐めるのは止めてあげてくださいと言おうかとも思ったが、そんな事をしたら、余計あいつが拷問に合う!と言って止められた。
まあ、何とか生きているみたいだから、良しとしておこう。
~誘拐事件から2週間後~
今日は私とウィリアム様の結婚式だ。
先日完成したウエディングドレスを着て、髪も短いなりにアップにしてもらった。ティアラを付け、ベールをまとう。
「クレア、本当に今日の君は美しい。正直あいつらには見せたくないが、仕方ないな」
隣にはウィリアム様がいる。美しい銀髪をしっかりまとめ、白のタキシードを着たウィリアム様。どこかの王子様と見間違えるほど美しい。
「さあ、そろそろ行こうか、皆首を長くして待っているはずだ!」
2人で手を繋いで、結婚式の会場へと向かう。沢山の人に見守られ、無事式を終えた後は、結婚披露パーティーだ。もちろん、討伐メンバーも参加している。
「クレア、団長、結婚おめでとうございます。それにしても、クレアは美しいな。もし団長が嫌になったら、俺のところに来てもいいぞ!」
「それなら僕も候補に入れて欲しいな。そもそも、嫉妬深いウィリアムと一緒にいても、後で辛くなるかもね」
「確かにな!よし、逃げるなら今だぞ!まだきっと間に合うはずだ!」
そう言って皆が私の腕や手を掴んだ。
「き~さ~ま~ら~!いい加減にしろ!クレアは俺の大切な嫁だ!誰にも渡すつもりはない!それから、クレアに触るな!」
「うわ、団長が怒ったぞ!逃げろ!」
怒り狂うウィリアム様を見て、嬉しそうに逃げる討伐メンバーたち。
「それにしても、お前が騎士団長と結婚するとはな」
ふと隣を見ると、ジークの姿があった。
「本当に、自分でもびっくりよ」
「なあ、クレア。お前は一度どん底を味わった。そんなお前には、誰よりも幸せになって欲しいと、俺は思っている。嫉妬深いし気が短い騎士団長だけれど、きっとお前の事を幸せにしてくれるはずだ。今度こそ幸せになれよ、クレア」
「ありがとう、必ず幸せになるわ」
全てを失い、大切な人たちを思って挑んだ魔物討伐部隊参加。でもいつの間にか、私を気遣ってくれる仲間が出来た。そして心から信頼できる、誰よりも大切な人も…
あの時の私に教えてあげたい。今は辛くて心が完全に折れてしまっているかもしれない。でも近い将来、きっとあなたは幸せになれるからってね。
「ねえ、ジーク、皆がウィリアム様に締められているわ。助けに行きましょう」
「そうだな、行くか」
大好きな仲間と、最愛の人の元へ
「ウィリアム様!」
ギューッとウィリアム様に抱き着いた。
「ウィリアム様、私を好きになってくれて、ありがとうございます。これから2人で、幸せになりましょうね」
「当たり前だ、必ず幸せになろうな」
嬉しそうに微笑みながらそう言ってくれたウィリアム様。そのままどちらともなく顔が近づき、唇が触れる。
その瞬間、討伐メンバーから大きな歓声が響き渡った。その歓声はいつしか他の参加者にも広がり、幸せそうな2人にしばらく贈られ続けたのであった。
おしまい
~あとがき~
これにて完結です。
切なめの話を書いて見たくて書き始めました。
初期の頃は書くのも結構辛くて、1人で”クレアが可哀そうだろうが!”と怒りながら書いておりました。
そのおかげか、比較的ざまぁも私の中ではしっかり出来た方かなっと勝手に思っています(^^)
最後までお読みいただきありがとうございましたm(__)m
ウィリアム様の声…
ゆっくり目を開けると、ウィリアム様の顔が目に飛び込んできた。どうやら馬で屋敷に帰って来る途中で、寝てしまった様だ。
そのまま馬から降ろしてもらうが、まだ抱きかかえられたままだ。
すると物凄い勢いで屋敷から両親とお兄様、さらにウィリアム様のご両親と各義理兄夫婦達が出て来た。どうやら、全員集合していた様だ。
「クレア!無事でよかったわ!」
女性陣に一斉に抱きしめられた。ただ、マーラお姉様とメリアお姉様が私を奪い合う様に引っ張り合いをしているのが気になるが、それだけ心配してくれていたという事だろう。
「それで、クレアちゃんを連れ去った不届き者は何処のどいつなの?」
物凄い形相で、ウィリアム様に詰め寄るお義母様。
「クレアの元婚約者のサミュエルだ」
「何だって!あの男、クレアをあんなにも傷つけておいて、一体どういうつもりだ!」
すかさず怒り出すお父様とお兄様。なぜか隣でお義母様とマーラお姉様、メリアお姉様も怒っている。
どうやらマーラお姉様とメリアお姉様は、私の過去の出来事を知っていて、かなり気に掛けていてくれていた様だ。
「あの男だけは許せないわ!早速侯爵家に抗議をしましょう!」
「待ちなさい、確かサミュエル殿はカードリッド侯爵から勘当された様だ。だから侯爵家は関係ない」
すかさずお義父様がお義母様を止めたのだが…
「まあ!事前に勘当しておいて、侯爵家に火の粉がかからないようにするなんて!尚更腹が立つわ!とにかく、今直ぐ抗議に行きましょう」
興奮気味のお義母様。さらに
「あんなにも酷い事をしておいて、本当に許せないわ!お義母様、私も一緒に行きますわ!」
「ちょっとマーラ!私がお義母様と一緒に抗議に行くわよ!」
「何ですって!ここは長男の嫁でもある私が行くのが普通でしょう!」
なぜかマーラお姉様とメリアお姉様が喧嘩を始めた。これはまずいわね。
「皆、ちょっと落ち着いてくれ。気持ちは分かるが、今はもう夜中だ!いくら何でも、こんな時間に乗り込むなんて迷惑だろう!とにかく、クレアは無事に帰って来たんだ。サミュエルの処分は俺が決める。口出しするな!」
ウィリアム様がはっきりそう宣言した。
「ウィリアムがそう言うなら…わかったわ…」
どうやら3人共納得した様だ。お義父様含め、義兄様達もホッとしている。改めて言うが、公爵家は女性陣が強い様だ。
「皆様、夜遅いのに、わざわざ私の為に集まっていただき、ありがとうございます。こんな風に心配してくれる家族が増えたという事、とても嬉しく思っています。うっかり誘拐されてしまう様な私ですが、これからもよろしくお願いします」
皆が私の為に夜遅くまで待っていてくれた事が嬉しくて、自分の気持ちをそのまま伝えた。改めてウィリアム様と家族になれる事が、本当に嬉しくてたまらない。
「クレアちゃん、私たちはあなたの事を本当の家族だと思っているのよ。だから、あなたを心配するのは当り前よ。それに、皆クレアちゃんが大好きなのよ」
そう言って優しく微笑んでくれたお義母様。皆も頷いている。
「皆、俺からもお礼を言うよ。心配してくれてありがとう。とりあえずもう遅いし、気を付けて帰ってくれ」
ウィリアム様の言葉で、皆帰って行った。ただお義母様だけは、私が心配だから一緒に寝ると言い張ったが、ウィリアム様が無理やり馬車に押し込んでいた。
「母上がすまん」
そう言ってウィリアム様は謝ってくれたが、逆にそこまで心配してくれる事が、私は物凄く嬉しかった。
そして翌日
話しを聞きつけたカードリッド侯爵が謝罪に来た。どうやら知らなかった様だ。カードリッド侯爵の話によると、私と婚約破棄したのがショックで、しばらく旅に出たいから勘当して欲しいと言われたらしい。
何度も何度も謝罪を受け、慰謝料も払うと言われたが、それは断った。いくら実の息子とは言え、既に勘当しているのだ。はっきり言って、侯爵にそこまでして貰う理由はないと私は思っているからだ。
そして気になるサミュエル様だが、あの後そのまま騎士団の宿舎に連れていかれ、そこで生活をする事になったそうだ。翌日から、鬼の騎士団長(もちろんウィリアム様)から、鬼の様な稽古を受けていて、毎日瀕死の状態との事。
何度も逃げ出そうとしているらしいが、もちろん見つかり、そのたびにウィリアム様から地獄の稽古を受けさせられているらしい。
ちなみにこれらの情報は、ハルやジークが教えてくれている。
「あいつ、マジで死にそうだぞ!騎士団長、本当に容赦ないからな。見ているこっちが気の毒に感じるくらいにな」
そう言って笑っているハルやジーク。ある意味、この2人も鬼かもしれない。私からあまりサミュエル様を虐めるのは止めてあげてくださいと言おうかとも思ったが、そんな事をしたら、余計あいつが拷問に合う!と言って止められた。
まあ、何とか生きているみたいだから、良しとしておこう。
~誘拐事件から2週間後~
今日は私とウィリアム様の結婚式だ。
先日完成したウエディングドレスを着て、髪も短いなりにアップにしてもらった。ティアラを付け、ベールをまとう。
「クレア、本当に今日の君は美しい。正直あいつらには見せたくないが、仕方ないな」
隣にはウィリアム様がいる。美しい銀髪をしっかりまとめ、白のタキシードを着たウィリアム様。どこかの王子様と見間違えるほど美しい。
「さあ、そろそろ行こうか、皆首を長くして待っているはずだ!」
2人で手を繋いで、結婚式の会場へと向かう。沢山の人に見守られ、無事式を終えた後は、結婚披露パーティーだ。もちろん、討伐メンバーも参加している。
「クレア、団長、結婚おめでとうございます。それにしても、クレアは美しいな。もし団長が嫌になったら、俺のところに来てもいいぞ!」
「それなら僕も候補に入れて欲しいな。そもそも、嫉妬深いウィリアムと一緒にいても、後で辛くなるかもね」
「確かにな!よし、逃げるなら今だぞ!まだきっと間に合うはずだ!」
そう言って皆が私の腕や手を掴んだ。
「き~さ~ま~ら~!いい加減にしろ!クレアは俺の大切な嫁だ!誰にも渡すつもりはない!それから、クレアに触るな!」
「うわ、団長が怒ったぞ!逃げろ!」
怒り狂うウィリアム様を見て、嬉しそうに逃げる討伐メンバーたち。
「それにしても、お前が騎士団長と結婚するとはな」
ふと隣を見ると、ジークの姿があった。
「本当に、自分でもびっくりよ」
「なあ、クレア。お前は一度どん底を味わった。そんなお前には、誰よりも幸せになって欲しいと、俺は思っている。嫉妬深いし気が短い騎士団長だけれど、きっとお前の事を幸せにしてくれるはずだ。今度こそ幸せになれよ、クレア」
「ありがとう、必ず幸せになるわ」
全てを失い、大切な人たちを思って挑んだ魔物討伐部隊参加。でもいつの間にか、私を気遣ってくれる仲間が出来た。そして心から信頼できる、誰よりも大切な人も…
あの時の私に教えてあげたい。今は辛くて心が完全に折れてしまっているかもしれない。でも近い将来、きっとあなたは幸せになれるからってね。
「ねえ、ジーク、皆がウィリアム様に締められているわ。助けに行きましょう」
「そうだな、行くか」
大好きな仲間と、最愛の人の元へ
「ウィリアム様!」
ギューッとウィリアム様に抱き着いた。
「ウィリアム様、私を好きになってくれて、ありがとうございます。これから2人で、幸せになりましょうね」
「当たり前だ、必ず幸せになろうな」
嬉しそうに微笑みながらそう言ってくれたウィリアム様。そのままどちらともなく顔が近づき、唇が触れる。
その瞬間、討伐メンバーから大きな歓声が響き渡った。その歓声はいつしか他の参加者にも広がり、幸せそうな2人にしばらく贈られ続けたのであった。
おしまい
~あとがき~
これにて完結です。
切なめの話を書いて見たくて書き始めました。
初期の頃は書くのも結構辛くて、1人で”クレアが可哀そうだろうが!”と怒りながら書いておりました。
そのおかげか、比較的ざまぁも私の中ではしっかり出来た方かなっと勝手に思っています(^^)
最後までお読みいただきありがとうございましたm(__)m
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