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第37話:王都に戻ります
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ピクニックから帰って来たその日。
「ジュリア、そのユニコーンの玉、毎日肌身離さず持っていられる様、ネックレスに加工しようと思っているんだ。だから僕に預からせてもらっていいだろうか?」
「ええ、もちろんですわ。あの…リュカ様、今日はごめんなさい。まだ怒っていますか?」
いつも穏やかなリュカ様をあれほどまでに怒らせたのだ。さすがの私も、反省している。
「もう怒っていないよ。僕の方こそ、ジュリアの性格を知っていながら野放しにしていたのだからね。自分の詰めの甘さを痛感したよ。さあ、明日はまた6時間かけて王都に戻らないといけないからね。そろそろ寝ようか」
「はい」
若干訳の分からない事を言っていたが、どうやらもう怒っていない様で安心した。明日はついに王都に帰る日なのね。この1ヶ月、とても楽しかったわ。皆へのお土産も買ったし。
そうだ、王都に戻ったら、マリアナに美味しいジャガイモ料理を食べさせてあげないと。きっと喜ぶわね。
そんな事を考えながら、眠りについた。
翌日
「皆、1ヶ月間大変お世話になったよ。ありがとう。またジュリアと一緒に来るから、その時はよろしく頼む。それからジャガイモの件、少しずつ進めていこう」
「はい、リュカ殿下とジュリア様のお陰で、この地もまた豊かになりそうです。本当に、お2人には感謝しかありません。どうかこれからもよろしくお願いいたします」
この地を取り仕切っている執事が、深々と頭を下げた。これからも執事と密に連絡を取りながら、色々と進めていくらしい。
「それじゃあ、そろそろ行くよ」
「皆様、お世話になりました。とても楽しい時間を過ごせましたわ。本当にありがとうございました」
使用人に挨拶をして、馬車に乗り込んだ。そして使用人たちが見えなくなるまで、手を振り続ける。
「ジュリア、今回来てくれて本当にありがとう。君のお陰で、この領地もさらに発展しそうだ」
「私はただジャガイモ料理を振舞っただけです。そのお料理を見て、色々と考え動いて下さっているのは、リュカ様ではありませんか。一生懸命取り組むリュカ様の姿を見ていたら、私も何かしたいと思っただけです」
いつも私の為に動いてくれるリュカ様。そんなリュカ様を見ていたら、私もリュカ様の為に何かしたいと自然に思う様になった。
これからもずっと、リュカ様の側にいたいし、支えていきたい。婚約した当初はこんな気持ち全くなかったのに、人間ってこうも簡単に気持ちが変わるものなのね。
彼の為なら、どんな苦労も惜しまない、そう思えるのは、きっとリュカ様だけだろう。
「一生懸命か…ジュリア、僕は前にも話したけれど、何をしても興味が持てなかった。毎日が退屈で、僕は何のために生きているのだろう、このままつまらない日々を何となく生きて、一生を終えるのだろうか。そう思っていた。でも君に出会ってから、毎日が楽しくてたまらなくなった。君が笑うと僕も嬉しい、悲しい顔をすると胸が締め付けられる。僕は生まれて初めて、大切と思える相手を見つけたんだ。ジュリア、君のお陰で、灰色だった世界が、色鮮やかな世界に変わった。本当にありがとう」
「リュカ様…」
「僕はジュリアを誰よりも愛しているし、大切に思っている。ジュリアの為なら何だってしたい。僕が継ぐ予定の領地を良くしようと動いているのも、いずれ結婚するジュリアに苦労を掛けたくないからだ。それに君の料理を、君のすばらしさをもっと世の中の人に知って欲しいとも思っている。その反面、ジュリアには僕だけを見てほしいと言う、矛盾した感情も持っているんだ。こんな僕だけれど、これからも側にいてくれるかい?」
少し恥ずかしそうに、そう言ったリュカ様。
「もちろんですわ。私はずっと、リュカ様の側にいます」
本当は、私もリュカ様が大切で、ずっと側にいたい。あなたの為に出来る事をしたい、そう伝えたいのに、恥ずかしくて言葉にならない。でも、きっとこれでリュカ様には私の気持ちが伝わったわよね。
「ありがとう…ジュリア…」
なぜか少し寂しそうに笑ったリュカ様。一体どうしたのかしら?
その後も行きと同じように、何度も休憩をはさみながら王都に戻って来た。
「それではリュカ様、また貴族学院で」
「ああ、今日は疲れているだろうから、ゆっくり休むんだよ」
わざわざ私を侯爵家まで送り届けてくれたリュカ様に、手を振る。なぜだろう、ずっと一緒にいたせいか、なんだか寂しいわ…
リュカ様の乗る馬車を見つめながら、無性に寂しさを感じるのであった。
「ジュリア、そのユニコーンの玉、毎日肌身離さず持っていられる様、ネックレスに加工しようと思っているんだ。だから僕に預からせてもらっていいだろうか?」
「ええ、もちろんですわ。あの…リュカ様、今日はごめんなさい。まだ怒っていますか?」
いつも穏やかなリュカ様をあれほどまでに怒らせたのだ。さすがの私も、反省している。
「もう怒っていないよ。僕の方こそ、ジュリアの性格を知っていながら野放しにしていたのだからね。自分の詰めの甘さを痛感したよ。さあ、明日はまた6時間かけて王都に戻らないといけないからね。そろそろ寝ようか」
「はい」
若干訳の分からない事を言っていたが、どうやらもう怒っていない様で安心した。明日はついに王都に帰る日なのね。この1ヶ月、とても楽しかったわ。皆へのお土産も買ったし。
そうだ、王都に戻ったら、マリアナに美味しいジャガイモ料理を食べさせてあげないと。きっと喜ぶわね。
そんな事を考えながら、眠りについた。
翌日
「皆、1ヶ月間大変お世話になったよ。ありがとう。またジュリアと一緒に来るから、その時はよろしく頼む。それからジャガイモの件、少しずつ進めていこう」
「はい、リュカ殿下とジュリア様のお陰で、この地もまた豊かになりそうです。本当に、お2人には感謝しかありません。どうかこれからもよろしくお願いいたします」
この地を取り仕切っている執事が、深々と頭を下げた。これからも執事と密に連絡を取りながら、色々と進めていくらしい。
「それじゃあ、そろそろ行くよ」
「皆様、お世話になりました。とても楽しい時間を過ごせましたわ。本当にありがとうございました」
使用人に挨拶をして、馬車に乗り込んだ。そして使用人たちが見えなくなるまで、手を振り続ける。
「ジュリア、今回来てくれて本当にありがとう。君のお陰で、この領地もさらに発展しそうだ」
「私はただジャガイモ料理を振舞っただけです。そのお料理を見て、色々と考え動いて下さっているのは、リュカ様ではありませんか。一生懸命取り組むリュカ様の姿を見ていたら、私も何かしたいと思っただけです」
いつも私の為に動いてくれるリュカ様。そんなリュカ様を見ていたら、私もリュカ様の為に何かしたいと自然に思う様になった。
これからもずっと、リュカ様の側にいたいし、支えていきたい。婚約した当初はこんな気持ち全くなかったのに、人間ってこうも簡単に気持ちが変わるものなのね。
彼の為なら、どんな苦労も惜しまない、そう思えるのは、きっとリュカ様だけだろう。
「一生懸命か…ジュリア、僕は前にも話したけれど、何をしても興味が持てなかった。毎日が退屈で、僕は何のために生きているのだろう、このままつまらない日々を何となく生きて、一生を終えるのだろうか。そう思っていた。でも君に出会ってから、毎日が楽しくてたまらなくなった。君が笑うと僕も嬉しい、悲しい顔をすると胸が締め付けられる。僕は生まれて初めて、大切と思える相手を見つけたんだ。ジュリア、君のお陰で、灰色だった世界が、色鮮やかな世界に変わった。本当にありがとう」
「リュカ様…」
「僕はジュリアを誰よりも愛しているし、大切に思っている。ジュリアの為なら何だってしたい。僕が継ぐ予定の領地を良くしようと動いているのも、いずれ結婚するジュリアに苦労を掛けたくないからだ。それに君の料理を、君のすばらしさをもっと世の中の人に知って欲しいとも思っている。その反面、ジュリアには僕だけを見てほしいと言う、矛盾した感情も持っているんだ。こんな僕だけれど、これからも側にいてくれるかい?」
少し恥ずかしそうに、そう言ったリュカ様。
「もちろんですわ。私はずっと、リュカ様の側にいます」
本当は、私もリュカ様が大切で、ずっと側にいたい。あなたの為に出来る事をしたい、そう伝えたいのに、恥ずかしくて言葉にならない。でも、きっとこれでリュカ様には私の気持ちが伝わったわよね。
「ありがとう…ジュリア…」
なぜか少し寂しそうに笑ったリュカ様。一体どうしたのかしら?
その後も行きと同じように、何度も休憩をはさみながら王都に戻って来た。
「それではリュカ様、また貴族学院で」
「ああ、今日は疲れているだろうから、ゆっくり休むんだよ」
わざわざ私を侯爵家まで送り届けてくれたリュカ様に、手を振る。なぜだろう、ずっと一緒にいたせいか、なんだか寂しいわ…
リュカ様の乗る馬車を見つめながら、無性に寂しさを感じるのであった。
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