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第19話:ピクニックは楽しいです
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馬車に乗り込み、出発だ。なぜか私の隣に座っているサフィール様。
「カロリーナ、今日行く場所は、とても自然が豊かなんだ。森の奥にはクマや毒蛇もいるから、絶対に僕から離れたらだめだよ。分かったね」
「ええ、分かりましたわ。私はもう15歳なので、ご安心ください」
確かに始めてサフィール様に会った時は、お茶会そっちのけで中庭を散歩したり、挙句の果てに鬼ごっこをしたりしていたけれど、さすがにもうそんなおバカな事はしない。
「それならいいのだが…」
なぜかサフィール様が心配そうにこちらを見ている。もう、失礼ね。プイっとあちらの方を向いた。
「カロリーナは本当に分かりやすい性格をしているね。そんなに怒らないで。ほら、カロリーナの好きなクッキーを持ってきたよ。向こうで食べようと思っていたのだが、特別に1つあげるよ」
そう言って私の口に、クッキーを放り込んだのだ。もう、クッキーなんかで私はごまかされないのだから!でも…
「やっぱりこのクッキー、美味しいですわね」
つい頬が緩んでしまう。しまった、サフィール様の戦略に、まんまと引っかかってしまったわ。
「ハハハハハ、本当にカロリーナは可愛いね。何を考えているのか、手に取る様にわかるよ。だからこそ…怖い事もあるのだけれどね…」
ん?怖い事?一体どういう意味だろう?
「ごめんごめん、何でもないよ。カロリーナ、窓の外を見てごらん。あの森が今日行く綺麗な湖がある場所だよ」
目の前には、立派な森が見えて来た。あそこに今日行くのね。確かにクマがいそうだわ。クマがいたら、死んだふりをすればいいのかしら?
そんな事を考えているうちに、どんどん森の中へと入って行く。ただ、森の中は整備されている様で、馬車でも普通に行ける様だ。しばらく進むと、開けた場所に出て来た。そこには、大きな湖も見える。
「サフィール様、あの湖ですか?」
「ああ、そうだよ。早速行こうか。いいかい、僕の手を放してはいけないからね。君はすぐに飛んで行ってしまいそうだから」
「もう、サフィール様ったら。大丈夫ですわ。さあ、参りましょう」
ギュッとサフィール様の手を握り、馬車から降りる。なんて空気が美味しいのかしら?つい深呼吸をしてしまう。
「サフィール様、見て下さい。本当に綺麗な湖ですわね。あれは白鳥かしら?私、生の白鳥なんて初めて見ましたわ。綺麗ですわね」
「王都にいたら、野鳥を見る機会もほとんどないものね。ほら、あそこには、リスもいるよ」
「本当ですわ、可愛いですわね」
「せっかくだから、ボートに乗ろう。今日の為に手配しておいたんだ」
サフィール様が指さす先には、確かに立派なボートが。さすがサフィール様、準備万端だ。早速2人でボートに向かう。
「ボートは揺れるから、気を付けて」
先にボートに乗り込んだサフィール様が、手を差し伸べてくれる。その手を握り、ゆっくりボートに乗った。やっぱりサフィール様は優しいわね。
そんなサフィール様が、ゆっくりとボートを漕いでくれる。
「サフィール様、この湖、本当に綺麗ですわね。お魚が泳いでいるのが見えますわ。それに、底も見えますし」
「カロリーナ、あまり身を乗り出すと危ないよ。こう見えて、結構この湖、深いんだ」
「まあ、そうなのですね。底が見えるから、そうは思いませんでしたわ。あっ、見て下さい。白鳥がこんなに近くで泳いでいますよ。綺麗ですわ」
初めて見る白鳥や生きた魚に大興奮。あっという間に岸についてしまった。
当たり前の様に手を差し伸べてくれるサフィール様の手を握り、岸に上がろうとしたのだが、バランスを崩してしまい、そのままサフィール様の胸へと飛び込む形になってしまった。
ガッチリとした胸板、それになんだかいい匂いがするわ。一気に鼓動が早くなる。
「ご…ごめんなさい」
急いでサフィール様から離れた。
「僕は大丈夫だよ。それよりカロリーナは大丈夫かい?」
「え…ええ、大丈夫ですわ」
まだ心臓がドクドクしているが、極力平静を装う。大丈夫よ、私、落ち着くのよ。そう言い聞かせる。すると
グゥゥゥ~
ん?今の音は、まさか…
「申し訳ございません、本当にごめんなさい」
あろう事か、私のお腹が鳴ったのだ。なんて空気を読まないお腹なの?そもそも令嬢がお腹を鳴らすだなんて、さすがに恥ずかしくて死にそうだ。ちょっと早く朝ご飯を食べすぎたのね…本当に私は何をしているのだか…
「そう言えばもうお昼だね。お昼ご飯にしよう」
サフィール様が笑顔で真っ赤な顔の私の手を引いてくれる。すると木陰にメイドたちが、シートを敷いてくれていた。早速そこに並んで座った。気を取り直して
「サフィール様、サンドウィッチを料理長に作ってもらってきましたの。どうか食べて下さい」
早速料理長自慢の、分厚いお肉が入ったサンドウィッチを勧める。サフィール様は、お肉が大好きなのだ。
「ありがとう、カロリーナ。僕も持ってきたんだ。交換して食べよう」
その後は2人でサンドウィッチを交換しながら、美味しく頂いたのだった。
「カロリーナ、今日行く場所は、とても自然が豊かなんだ。森の奥にはクマや毒蛇もいるから、絶対に僕から離れたらだめだよ。分かったね」
「ええ、分かりましたわ。私はもう15歳なので、ご安心ください」
確かに始めてサフィール様に会った時は、お茶会そっちのけで中庭を散歩したり、挙句の果てに鬼ごっこをしたりしていたけれど、さすがにもうそんなおバカな事はしない。
「それならいいのだが…」
なぜかサフィール様が心配そうにこちらを見ている。もう、失礼ね。プイっとあちらの方を向いた。
「カロリーナは本当に分かりやすい性格をしているね。そんなに怒らないで。ほら、カロリーナの好きなクッキーを持ってきたよ。向こうで食べようと思っていたのだが、特別に1つあげるよ」
そう言って私の口に、クッキーを放り込んだのだ。もう、クッキーなんかで私はごまかされないのだから!でも…
「やっぱりこのクッキー、美味しいですわね」
つい頬が緩んでしまう。しまった、サフィール様の戦略に、まんまと引っかかってしまったわ。
「ハハハハハ、本当にカロリーナは可愛いね。何を考えているのか、手に取る様にわかるよ。だからこそ…怖い事もあるのだけれどね…」
ん?怖い事?一体どういう意味だろう?
「ごめんごめん、何でもないよ。カロリーナ、窓の外を見てごらん。あの森が今日行く綺麗な湖がある場所だよ」
目の前には、立派な森が見えて来た。あそこに今日行くのね。確かにクマがいそうだわ。クマがいたら、死んだふりをすればいいのかしら?
そんな事を考えているうちに、どんどん森の中へと入って行く。ただ、森の中は整備されている様で、馬車でも普通に行ける様だ。しばらく進むと、開けた場所に出て来た。そこには、大きな湖も見える。
「サフィール様、あの湖ですか?」
「ああ、そうだよ。早速行こうか。いいかい、僕の手を放してはいけないからね。君はすぐに飛んで行ってしまいそうだから」
「もう、サフィール様ったら。大丈夫ですわ。さあ、参りましょう」
ギュッとサフィール様の手を握り、馬車から降りる。なんて空気が美味しいのかしら?つい深呼吸をしてしまう。
「サフィール様、見て下さい。本当に綺麗な湖ですわね。あれは白鳥かしら?私、生の白鳥なんて初めて見ましたわ。綺麗ですわね」
「王都にいたら、野鳥を見る機会もほとんどないものね。ほら、あそこには、リスもいるよ」
「本当ですわ、可愛いですわね」
「せっかくだから、ボートに乗ろう。今日の為に手配しておいたんだ」
サフィール様が指さす先には、確かに立派なボートが。さすがサフィール様、準備万端だ。早速2人でボートに向かう。
「ボートは揺れるから、気を付けて」
先にボートに乗り込んだサフィール様が、手を差し伸べてくれる。その手を握り、ゆっくりボートに乗った。やっぱりサフィール様は優しいわね。
そんなサフィール様が、ゆっくりとボートを漕いでくれる。
「サフィール様、この湖、本当に綺麗ですわね。お魚が泳いでいるのが見えますわ。それに、底も見えますし」
「カロリーナ、あまり身を乗り出すと危ないよ。こう見えて、結構この湖、深いんだ」
「まあ、そうなのですね。底が見えるから、そうは思いませんでしたわ。あっ、見て下さい。白鳥がこんなに近くで泳いでいますよ。綺麗ですわ」
初めて見る白鳥や生きた魚に大興奮。あっという間に岸についてしまった。
当たり前の様に手を差し伸べてくれるサフィール様の手を握り、岸に上がろうとしたのだが、バランスを崩してしまい、そのままサフィール様の胸へと飛び込む形になってしまった。
ガッチリとした胸板、それになんだかいい匂いがするわ。一気に鼓動が早くなる。
「ご…ごめんなさい」
急いでサフィール様から離れた。
「僕は大丈夫だよ。それよりカロリーナは大丈夫かい?」
「え…ええ、大丈夫ですわ」
まだ心臓がドクドクしているが、極力平静を装う。大丈夫よ、私、落ち着くのよ。そう言い聞かせる。すると
グゥゥゥ~
ん?今の音は、まさか…
「申し訳ございません、本当にごめんなさい」
あろう事か、私のお腹が鳴ったのだ。なんて空気を読まないお腹なの?そもそも令嬢がお腹を鳴らすだなんて、さすがに恥ずかしくて死にそうだ。ちょっと早く朝ご飯を食べすぎたのね…本当に私は何をしているのだか…
「そう言えばもうお昼だね。お昼ご飯にしよう」
サフィール様が笑顔で真っ赤な顔の私の手を引いてくれる。すると木陰にメイドたちが、シートを敷いてくれていた。早速そこに並んで座った。気を取り直して
「サフィール様、サンドウィッチを料理長に作ってもらってきましたの。どうか食べて下さい」
早速料理長自慢の、分厚いお肉が入ったサンドウィッチを勧める。サフィール様は、お肉が大好きなのだ。
「ありがとう、カロリーナ。僕も持ってきたんだ。交換して食べよう」
その後は2人でサンドウィッチを交換しながら、美味しく頂いたのだった。
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