74 / 75
デイビッドとのIFストーリー
デイビッドとのIFストーリー5
しおりを挟む
次に私が向かった先は、デイビッド様のお屋敷だ。デイビッド様だけでなく、ご両親まで一緒に待っていてくれた。私にとてもよくしてくださったデイビッド様のご両親。彼らの顔を見たら、なんだか懐かしい気持ちになった。
「アンジュ、元気そうでよかったよ」
「アンジュ嬢、よく来てくれたね。さあ、中には入ってくれ」
「アンジュちゃんが誘拐されたと聞いた時は、本当に心配したのよ。でも、元気そうでよかったわ」
「おじ様、おば様、ご無沙汰しております。デイビッド様、今日はお時間を作って下さり、ありがとうございます。少しだけお話ししたいのですが、よろしいでしょうか?」
「ああ、もちろんだ。さあ、中に入って」
デイビッド様に促され、案内された部屋は、いつもの客間ではなく、デイビッド様のお部屋だ。
「子供の頃、よくデイビッド様とこのお部屋で遊びましたわね。あの頃と、あまり変わっておりませんわ。懐かしい…」
まだ私とデイビッド様が仲良しだった頃、よくデイビッド様のお部屋で一緒に遊んだのだ。あの頃と、ほとんど変わっていない部屋を見て、なんだか懐かしい気持ちになる。
「そうだったね。アンジュ、俺はあの頃からずっと、アンジュが大好きだ。もちろん、その気持ちは今も変わらない。アンジュが誘拐されて、俺のせいで怪我をしてしまった時、どうしても自分が許せなかった。言い訳がましいと思われるかもしれないが、アンジュを守るためには、何が何でも騎士団長にならないといけない。騎士団長になるまでは、俺にはアンジュの傍にいる権利はないとずっと思いこんでいた。でも、その思い込みが、アンジュを傷つけているとも気が付かずに…俺はアンジュを失って、初めてその事に気が付いたんだ。本当に愚かな男だ…」
そう呟くと、悔しそうに唇をかむデイビッド様。そして、再び私の方を真っすぐ見つめる。
「それでも俺は、誰よりもアンジュを愛している。もしアンジュが俺を選んでくれると言うのなら、もう二度とアンジュを悲しませない。ずっとずっと、アンジュが俺といるのが嫌だと言うくらい、傍にいる。俺にとってアンジュは、生きる希望、アンジュがいるから俺は頑張れるんだ。俺は不器用で視野が狭いどうしようもない男だけれど、アンジュを愛している気持ちは誰にも負けない。だから、どうかもう一度俺にチャンスを下さい」
デイビッド様が頭を下げた。
「デイビッド様、頭をお上げください。確かにデイビッド様に冷たく当たられた日々は、私にとって辛く悲しい時間でした。全てが嫌になり、ミラージュ王国に留学したこともありました。でも、帰国後は昔の優しいデイビッド様に戻っていて…正直戸惑いの方が大きかったです。今更どういうつもりだろうと、怒りを覚える事もありました。それでもデイビッド様と過ごしていくうちに、あなた様はずっと私を愛してくれていたのだという事に気が付いたのです」
私は不安そうな顔のデイビッド様を見つめ、そっと手を握った。
「ラミネス様に襲われ熱を出した時、私は全てを思い出しました。盗賊に襲われたあの日、デイビッド様を庇って怪我をして、熱を出した日の事を…涙を流し、何度も何度も謝るあなた様の姿を…デイビッド様がなぜそこまで騎士団長にこだわっていたのか、今なら何となくわかるのです。あなた様はあの日、私を助けられなかった事を酷く後悔し、騎士団長になるまでは、ご自分のお気持ちを封印しようと決めたのでしょう?あなた様は一度決めたら絶対曲げない、頑固なところがありますものね。その証拠に、もう私を泣かせないと決めた後は、ご自分すら傷つけないように、あのような服まで着て。お父様に聞きましたが、あの服は重くて動きにくくて、よほどのことがないと着ない服だと言っておりましたわ」
本当にこの人は、一度決めたら絶対に曲げない、頑固なところがあるのだ。まさかあんな服まで着ていただなんて。それでも私をもう二度と悲しませないために、彼なりに必死に考えての事だろう。
「デイビッド様、私はそんな真っすぐなデイビッド様が、大好きだったのです。一度は過去のものにしようとしたこの気持ちですが、やはり私には過去のものにする事は出来ない様ですわ。だって私は、デイビッド様が大好きなのですもの。少し不器用でこうと決めたら絶対に曲げない、デイビッド様が。私もデイビッド様を愛しています。あなたと共に、未来を歩んでいきたい、そう思っておりますわ」
「それは本当かい?本当に俺の傍にいてくれるのかい?」
「ええ、もちろんですわ。すれ違ってしまった時間を、これからは2人でゆっくり埋めていきましょう」
「ありがとう…ありがとう、アンジュ。俺、ずっと不安だった。いつかアンジュが、ダルク殿とミラージュ王国に行ってしまうのではないかと…夜もろくに眠れなくて…」
ポロポロと涙を流すデイビッド様が、ギュッと抱きしめてくれる。やっぱりデイビッド様の腕の中は、温かくて落ち着く。私もデイビッド様にギュッと抱き着いた。
「アンジュ、もう二度と君を悲しませたりしないし、絶対に離さない!アンジュ、愛している。これからはずっと一緒だ」
「ええ、これからはずっと一緒です」
ゆっくりとデイビッド様から離れると、どちらともなくゆっくり近づき、そして唇が重なった。この日やっと、すれ違っていた2人の想いが1つになったのだった。
次回、最終話です。
よろしくお願いしますm(__)m
「アンジュ、元気そうでよかったよ」
「アンジュ嬢、よく来てくれたね。さあ、中には入ってくれ」
「アンジュちゃんが誘拐されたと聞いた時は、本当に心配したのよ。でも、元気そうでよかったわ」
「おじ様、おば様、ご無沙汰しております。デイビッド様、今日はお時間を作って下さり、ありがとうございます。少しだけお話ししたいのですが、よろしいでしょうか?」
「ああ、もちろんだ。さあ、中に入って」
デイビッド様に促され、案内された部屋は、いつもの客間ではなく、デイビッド様のお部屋だ。
「子供の頃、よくデイビッド様とこのお部屋で遊びましたわね。あの頃と、あまり変わっておりませんわ。懐かしい…」
まだ私とデイビッド様が仲良しだった頃、よくデイビッド様のお部屋で一緒に遊んだのだ。あの頃と、ほとんど変わっていない部屋を見て、なんだか懐かしい気持ちになる。
「そうだったね。アンジュ、俺はあの頃からずっと、アンジュが大好きだ。もちろん、その気持ちは今も変わらない。アンジュが誘拐されて、俺のせいで怪我をしてしまった時、どうしても自分が許せなかった。言い訳がましいと思われるかもしれないが、アンジュを守るためには、何が何でも騎士団長にならないといけない。騎士団長になるまでは、俺にはアンジュの傍にいる権利はないとずっと思いこんでいた。でも、その思い込みが、アンジュを傷つけているとも気が付かずに…俺はアンジュを失って、初めてその事に気が付いたんだ。本当に愚かな男だ…」
そう呟くと、悔しそうに唇をかむデイビッド様。そして、再び私の方を真っすぐ見つめる。
「それでも俺は、誰よりもアンジュを愛している。もしアンジュが俺を選んでくれると言うのなら、もう二度とアンジュを悲しませない。ずっとずっと、アンジュが俺といるのが嫌だと言うくらい、傍にいる。俺にとってアンジュは、生きる希望、アンジュがいるから俺は頑張れるんだ。俺は不器用で視野が狭いどうしようもない男だけれど、アンジュを愛している気持ちは誰にも負けない。だから、どうかもう一度俺にチャンスを下さい」
デイビッド様が頭を下げた。
「デイビッド様、頭をお上げください。確かにデイビッド様に冷たく当たられた日々は、私にとって辛く悲しい時間でした。全てが嫌になり、ミラージュ王国に留学したこともありました。でも、帰国後は昔の優しいデイビッド様に戻っていて…正直戸惑いの方が大きかったです。今更どういうつもりだろうと、怒りを覚える事もありました。それでもデイビッド様と過ごしていくうちに、あなた様はずっと私を愛してくれていたのだという事に気が付いたのです」
私は不安そうな顔のデイビッド様を見つめ、そっと手を握った。
「ラミネス様に襲われ熱を出した時、私は全てを思い出しました。盗賊に襲われたあの日、デイビッド様を庇って怪我をして、熱を出した日の事を…涙を流し、何度も何度も謝るあなた様の姿を…デイビッド様がなぜそこまで騎士団長にこだわっていたのか、今なら何となくわかるのです。あなた様はあの日、私を助けられなかった事を酷く後悔し、騎士団長になるまでは、ご自分のお気持ちを封印しようと決めたのでしょう?あなた様は一度決めたら絶対曲げない、頑固なところがありますものね。その証拠に、もう私を泣かせないと決めた後は、ご自分すら傷つけないように、あのような服まで着て。お父様に聞きましたが、あの服は重くて動きにくくて、よほどのことがないと着ない服だと言っておりましたわ」
本当にこの人は、一度決めたら絶対に曲げない、頑固なところがあるのだ。まさかあんな服まで着ていただなんて。それでも私をもう二度と悲しませないために、彼なりに必死に考えての事だろう。
「デイビッド様、私はそんな真っすぐなデイビッド様が、大好きだったのです。一度は過去のものにしようとしたこの気持ちですが、やはり私には過去のものにする事は出来ない様ですわ。だって私は、デイビッド様が大好きなのですもの。少し不器用でこうと決めたら絶対に曲げない、デイビッド様が。私もデイビッド様を愛しています。あなたと共に、未来を歩んでいきたい、そう思っておりますわ」
「それは本当かい?本当に俺の傍にいてくれるのかい?」
「ええ、もちろんですわ。すれ違ってしまった時間を、これからは2人でゆっくり埋めていきましょう」
「ありがとう…ありがとう、アンジュ。俺、ずっと不安だった。いつかアンジュが、ダルク殿とミラージュ王国に行ってしまうのではないかと…夜もろくに眠れなくて…」
ポロポロと涙を流すデイビッド様が、ギュッと抱きしめてくれる。やっぱりデイビッド様の腕の中は、温かくて落ち着く。私もデイビッド様にギュッと抱き着いた。
「アンジュ、もう二度と君を悲しませたりしないし、絶対に離さない!アンジュ、愛している。これからはずっと一緒だ」
「ええ、これからはずっと一緒です」
ゆっくりとデイビッド様から離れると、どちらともなくゆっくり近づき、そして唇が重なった。この日やっと、すれ違っていた2人の想いが1つになったのだった。
次回、最終話です。
よろしくお願いしますm(__)m
2
お気に入りに追加
4,405
あなたにおすすめの小説
忘れられた幼な妻は泣くことを止めました
帆々
恋愛
アリスは十五歳。王国で高家と呼ばれるう高貴な家の姫だった。しかし、家は貧しく日々の暮らしにも困窮していた。
そんな時、アリスの父に非常に有利な融資をする人物が現れた。その代理人のフーは巧みに父を騙して、莫大な借金を負わせてしまう。
もちろん返済する目処もない。
「アリス姫と我が主人との婚姻で借財を帳消しにしましょう」
フーの言葉に父は頷いた。アリスもそれを責められなかった。家を守るのは父の責務だと信じたから。
嫁いだドリトルン家は悪徳金貸しとして有名で、アリスは邸の厳しいルールに従うことになる。フーは彼女を監視し自由を許さない。そんな中、夫の愛人が邸に迎え入れることを知る。彼女は庭の隅の離れ住まいを強いられているのに。アリスは嘆き悲しむが、フーに強く諌められてうなだれて受け入れた。
「ご実家への援助はご心配なく。ここでの悪くないお暮らしも保証しましょう」
そういう経緯を仲良しのはとこに打ち明けた。晩餐に招かれ、久しぶりに心の落ち着く時間を過ごした。その席にははとこ夫妻の友人のロエルもいて、彼女に彼の掘った珍しい鉱石を見せてくれた。しかし迎えに現れたフーが、和やかな夜をぶち壊してしまう。彼女を庇うはとこを咎め、フーの無礼を責めたロエルにまで痛烈な侮蔑を吐き捨てた。
厳しい婚家のルールに縛られ、アリスは外出もままならない。
それから五年の月日が流れ、ひょんなことからロエルに再会することになった。金髪の端正な紳士の彼は、彼女に問いかけた。
「お幸せですか?」
アリスはそれに答えられずにそのまま別れた。しかし、その言葉が彼の優しかった印象と共に尾を引いて、彼女の中に残っていく_______。
世間知らずの高貴な姫とやや強引な公爵家の子息のじれじれなラブストーリーです。
古風な恋愛物語をお好きな方にお読みいただけますと幸いです。
ハッピーエンドを心がけております。読後感のいい物語を努めます。
※小説家になろう様にも投稿させていただいております。
私は幼い頃に死んだと思われていた侯爵令嬢でした
さこの
恋愛
幼い頃に誘拐されたマリアベル。保護してくれた男の人をお母さんと呼び、父でもあり兄でもあり家族として暮らしていた。
誘拐される以前の記憶は全くないが、ネックレスにマリアベルと名前が記されていた。
数年後にマリアベルの元に侯爵家の遣いがやってきて、自分は貴族の娘だと知る事になる。
お母さんと呼ぶ男の人と離れるのは嫌だが家に戻り家族と会う事になった。
片田舎で暮らしていたマリアベルは貴族の子女として学ぶ事になるが、不思議と読み書きは出来るし食事のマナーも悪くない。
お母さんと呼ばれていた男は何者だったのだろうか……? マリアベルは貴族社会に馴染めるのか……
っと言った感じのストーリーです。
君を愛す気はない?どうぞご自由に!あなたがいない場所へ行きます。
みみぢあん
恋愛
貧乏なタムワース男爵家令嬢のマリエルは、初恋の騎士セイン・ガルフェルト侯爵の部下、ギリス・モリダールと結婚し初夜を迎えようとするが… 夫ギリスの暴言に耐えられず、マリエルは神殿へ逃げこんだ。
マリエルは身分違いで告白をできなくても、セインを愛する自分が、他の男性と結婚するのは間違いだと、自立への道をあゆもうとする。
そんなマリエルをセインは心配し… マリエルは愛するセインの優しさに苦悩する。
※ざまぁ系メインのお話ではありません、ご注意を😓
【完結】憧れの人の元へ望まれて嫁いだはずなのに「君じゃない」と言われました
Rohdea
恋愛
特別、目立つ存在でもないうえに、結婚適齢期が少し過ぎてしまっていた、
伯爵令嬢のマーゴット。
そんな彼女の元に、憧れの公爵令息ナイジェルの家から求婚の手紙が……
戸惑いはあったものの、ナイジェルが強く自分を望んでくれている様子だった為、
その話を受けて嫁ぐ決意をしたマーゴット。
しかし、いざ彼の元に嫁いでみると……
「君じゃない」
とある勘違いと誤解により、
彼が本当に望んでいたのは自分ではなかったことを知った────……
【完結】気味が悪いと見放された令嬢ですので ~殿下、無理に愛さなくていいのでお構いなく~
Rohdea
恋愛
───私に嘘は通じない。
だから私は知っている。あなたは私のことなんて本当は愛していないのだと──
公爵家の令嬢という身分と魔力の強さによって、
幼い頃に自国の王子、イライアスの婚約者に選ばれていた公爵令嬢リリーベル。
二人は幼馴染としても仲良く過ごしていた。
しかし、リリーベル十歳の誕生日。
嘘を見抜ける力 “真実の瞳”という能力に目覚めたことで、
リリーベルを取り巻く環境は一変する。
リリーベルの目覚めた真実の瞳の能力は、巷で言われている能力と違っていて少々特殊だった。
そのことから更に気味が悪いと親に見放されたリリーベル。
唯一、味方となってくれたのは八歳年上の兄、トラヴィスだけだった。
そして、婚約者のイライアスとも段々と距離が出来てしまう……
そんな“真実の瞳”で視てしまった彼の心の中は───
※『可愛い妹に全てを奪われましたので ~あなた達への未練は捨てたのでお構いなく~』
こちらの作品のヒーローの妹が主人公となる話です。
めちゃくちゃチートを発揮しています……
【完結】私、殺されちゃったの? 婚約者に懸想した王女に殺された侯爵令嬢は巻き戻った世界で殺されないように策を練る
金峯蓮華
恋愛
侯爵令嬢のベルティーユは婚約者に懸想した王女に嫌がらせをされたあげく殺された。
ちょっと待ってよ。なんで私が殺されなきゃならないの?
お父様、ジェフリー様、私は死にたくないから婚約を解消してって言ったよね。
ジェフリー様、必ず守るから少し待ってほしいって言ったよね。
少し待っている間に殺されちゃったじゃないの。
どうしてくれるのよ。
ちょっと神様! やり直させなさいよ! 何で私が殺されなきゃならないのよ!
腹立つわ〜。
舞台は独自の世界です。
ご都合主義です。
緩いお話なので気楽にお読みいただけると嬉しいです。
運命は、手に入れられなかったけれど
夕立悠理
恋愛
竜王の運命。……それは、アドルリア王国の王である竜王の唯一の妃を指す。
けれど、ラファリアは、運命に選ばれなかった。選ばれたのはラファリアの友人のマーガレットだった。
愛し合う竜王レガレスとマーガレットをこれ以上見ていられなくなったラファリアは、城を出ることにする。
すると、なぜか、王国に繁栄をもたらす聖花の一部が枯れてしまい、竜王レガレスにも不調が出始めーー。
一方、城をでて開放感でいっぱいのラファリアは、初めて酒場でお酒を飲み、そこで謎の青年と出会う。
運命を間違えてしまった竜王レガレスと、腕のいい花奏師のラファリアと、謎の青年(魔王)との、運命をめぐる恋の話。
※カクヨム様でも連載しています。
そちらが一番早いです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる