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第67話:旅立ちの時です
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翌朝、いつもより少し早く起きた私は、荷物の最終確認を行った。昨日ほとんどメイドたちが荷造りを行ってくれたのだが、やはり大切な物などは、自分の手で持って行きたい。また、今日持って行けないものは、後日ミラージュ王国に送るという事になっている。
ちなみに専属メイドのカリアも、一緒に付いて来てくれている事になっている。
次々と馬車に積み込まれていく荷物たち。前回とは違い、今回はずっとミラージュ王国で生活をするのだ。とはいっても、まずは正式にダルク様と婚約を結ぶため、後日家の両親がダルク様のご両親に会うため、ミラージュ王国に来ることになっている。
ダルク様は私との結婚が決まったら、お母様のご実家でもあるファレックス公爵家を継ぐことが決まっていたらしい。その為、私とダルク様は結婚後ファレックス公爵家でお世話になるらしい。
と言っても、私たちはまだ学生の身なので、帰国後はまたミラージュ王国の貴族学院に通う予定だ。お部屋も準備してもらっているらしい。ただ、部屋が空いていないとの事なので、私は客間を使う事になっている。とはいえ、卒業まで3ヶ月程度なので、問題ないだろう。
それでもまた、スカーレット様たちと過ごせると思うと、楽しみでたまらない。
ある程度準備ができたところで、お父様と一緒に別の馬車に乗り込んだ。向った先は、貴族学院だ。私はあの事件の後、一度も学院にいけていない。最後にお世話になったクラスメイトや先生方に挨拶をするためにやって来たのだ。
正直デイビッド様に会うのは気まずいが、このまま黙ってミラージュ王国に行くなんてことはしたくない。そんな思いで、学院に立ち寄ったのだ。
ただ、デイビッド様はお休みだった様で、姿が見えなかった。
貴族学院の皆に挨拶をした後は、再び家に戻る。すると、既にダルク様が待っていてくれた。
「アンジュ、貴族学院に行っていたのだね。声を掛けてくれたら、私も一緒に行ったのに」
「ごめんなさい、急遽行く事が決まりましたので」
「それで、デイビッド殿に絡まれたりしなかったかい?大丈夫だったかい?」
「ええ、彼は学院をお休みしている様だったので、顔を合わせる事はありませんでしたわ。まだデイビッド様の事を気にされているのですね。私が優柔不断だったばかりに、ごめんなさい」
ダルク様もきっと、不安なのだろう。彼の手をギュッと握り、ほほ笑んだ。
「アンジュが悪い訳ではないよ。私の器がまだまだ小さいんだ。さあ、そろそろミラージュ王国に向かおうか」
「はい」
見送りの為出てきてくれている両親とレイズの方を向いた。後ろにはたくさんの使用人たちも待っていてくれている。
「お父様、お母様、レイズ、行って参ります。17年間、大切に育てていただき、ありがとうございました。どんな時でも私の気持ちに寄り添ってくれた家族がいたからこそ、今の私があるのです。ミラージュ王国への留学を勧めて下さったお父様、私の意見をいつも尊重してくださったお母様、姉想いの優しいレイズ。それに私の事を気にかけてくれる使用人たち。たくさんの大切な人たちに囲まれて、毎日が幸せの連続でしたわ。私、必ずダルク様と幸せになります。だから、安心してください」
「「アンジュ!!」」
「姉上」
両親とレイズが泣きながら抱きしめてくれる。後ろで使用人たちも泣いている。私もいつの間にか涙が溢れていた。
家族をギュッと抱きしめると、涙をぬぐった。
「それでは行って参ります」
「アンジュ、君は私の自慢の娘だ。私達の元に生まれてきてくれて、本当にありがとう。ダルク殿、どうかアンジュの事をよろしくお願いします」
「アンジュ、どうか体には気を付けるのよ。また近々ミラージュ王国に行くから」
「姉上、どうかお幸せに。ダルクの義兄上、どうか姉上の事を幸せにしてやってください。もし泣かせたら、タダじゃおきませんからね」
「レイズ殿、心配はいらない。必ず私が、アンジュを幸せにするから。それじゃあアンジュ、行こうか」
ダルク様から差し出された手をギュッと握り、2人で馬車に乗り込んだ。
ゆっくり走り出す馬車の窓から身を乗り出し、皆に手を振る。両親やレイズ、さらに使用人たちも皆手を振り返してくれていた。中にはまだ泣いている人たちもいる。
私、本当にたくさんの人たちに支えられて生きて来たのね。皆、本当にありがとう。私、必ず幸せになるからね。
段々と小さくなっていく両親やレイズ、使用人たち、侯爵家の屋敷を見つめながら、そっと心の中で、お礼を言ったのだった。
ちなみに専属メイドのカリアも、一緒に付いて来てくれている事になっている。
次々と馬車に積み込まれていく荷物たち。前回とは違い、今回はずっとミラージュ王国で生活をするのだ。とはいっても、まずは正式にダルク様と婚約を結ぶため、後日家の両親がダルク様のご両親に会うため、ミラージュ王国に来ることになっている。
ダルク様は私との結婚が決まったら、お母様のご実家でもあるファレックス公爵家を継ぐことが決まっていたらしい。その為、私とダルク様は結婚後ファレックス公爵家でお世話になるらしい。
と言っても、私たちはまだ学生の身なので、帰国後はまたミラージュ王国の貴族学院に通う予定だ。お部屋も準備してもらっているらしい。ただ、部屋が空いていないとの事なので、私は客間を使う事になっている。とはいえ、卒業まで3ヶ月程度なので、問題ないだろう。
それでもまた、スカーレット様たちと過ごせると思うと、楽しみでたまらない。
ある程度準備ができたところで、お父様と一緒に別の馬車に乗り込んだ。向った先は、貴族学院だ。私はあの事件の後、一度も学院にいけていない。最後にお世話になったクラスメイトや先生方に挨拶をするためにやって来たのだ。
正直デイビッド様に会うのは気まずいが、このまま黙ってミラージュ王国に行くなんてことはしたくない。そんな思いで、学院に立ち寄ったのだ。
ただ、デイビッド様はお休みだった様で、姿が見えなかった。
貴族学院の皆に挨拶をした後は、再び家に戻る。すると、既にダルク様が待っていてくれた。
「アンジュ、貴族学院に行っていたのだね。声を掛けてくれたら、私も一緒に行ったのに」
「ごめんなさい、急遽行く事が決まりましたので」
「それで、デイビッド殿に絡まれたりしなかったかい?大丈夫だったかい?」
「ええ、彼は学院をお休みしている様だったので、顔を合わせる事はありませんでしたわ。まだデイビッド様の事を気にされているのですね。私が優柔不断だったばかりに、ごめんなさい」
ダルク様もきっと、不安なのだろう。彼の手をギュッと握り、ほほ笑んだ。
「アンジュが悪い訳ではないよ。私の器がまだまだ小さいんだ。さあ、そろそろミラージュ王国に向かおうか」
「はい」
見送りの為出てきてくれている両親とレイズの方を向いた。後ろにはたくさんの使用人たちも待っていてくれている。
「お父様、お母様、レイズ、行って参ります。17年間、大切に育てていただき、ありがとうございました。どんな時でも私の気持ちに寄り添ってくれた家族がいたからこそ、今の私があるのです。ミラージュ王国への留学を勧めて下さったお父様、私の意見をいつも尊重してくださったお母様、姉想いの優しいレイズ。それに私の事を気にかけてくれる使用人たち。たくさんの大切な人たちに囲まれて、毎日が幸せの連続でしたわ。私、必ずダルク様と幸せになります。だから、安心してください」
「「アンジュ!!」」
「姉上」
両親とレイズが泣きながら抱きしめてくれる。後ろで使用人たちも泣いている。私もいつの間にか涙が溢れていた。
家族をギュッと抱きしめると、涙をぬぐった。
「それでは行って参ります」
「アンジュ、君は私の自慢の娘だ。私達の元に生まれてきてくれて、本当にありがとう。ダルク殿、どうかアンジュの事をよろしくお願いします」
「アンジュ、どうか体には気を付けるのよ。また近々ミラージュ王国に行くから」
「姉上、どうかお幸せに。ダルクの義兄上、どうか姉上の事を幸せにしてやってください。もし泣かせたら、タダじゃおきませんからね」
「レイズ殿、心配はいらない。必ず私が、アンジュを幸せにするから。それじゃあアンジュ、行こうか」
ダルク様から差し出された手をギュッと握り、2人で馬車に乗り込んだ。
ゆっくり走り出す馬車の窓から身を乗り出し、皆に手を振る。両親やレイズ、さらに使用人たちも皆手を振り返してくれていた。中にはまだ泣いている人たちもいる。
私、本当にたくさんの人たちに支えられて生きて来たのね。皆、本当にありがとう。私、必ず幸せになるからね。
段々と小さくなっていく両親やレイズ、使用人たち、侯爵家の屋敷を見つめながら、そっと心の中で、お礼を言ったのだった。
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