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第60話:アンジュが誘拐された~デイビッド視点~
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いつもの様に学院に向かっている時だった。アンジュの護衛から通信が入ったのだ。
“…デイビッド様…申し訳ございません…お嬢様が…何者かに連れ去られました…”
息も途絶えそうな声で、そう訴える護衛。アンジュが連れ去られただと?
一瞬にして、血の気が引いていくのを感じた。落ち着け、落ち着くんだ!
「何者とは誰だ?とにかく今どこにいるのだ?」
“王都…3丁目の…レンガ通りです“
「わかった、すぐに向かう」
王都3丁目のレンガ通り…ここから5分くらいの場所だ。あそこはアンジュが学院に向かう時、通る場所だ。王都内でも唯一人気が少ない場所ではあるが、それでも護衛を5人も付けていたのに…
やはり俺が自らアンジュを護衛すればよかった!
今更後悔しても遅い。とにかく現場に向かわないと!そうだ、騎士団長や騎士団本部にも知らせないと!
俺は通信機で、すぐに騎士団長と本部にもアンジュが誘拐された事を報告した。
もっと早く走ってくれ。一刻も早く現場に向かいたいのに!
5分の距離なのに、なぜかとてつもなく長く感じる。
やっと現場に到着した。すると、既にアンジュの父親と、なぜかダルク殿も来ていた。
「スィークルン侯爵、ダルク殿!一体何があったのですか?アンジュは…」
周りを見ると、護衛たちが無残にもやられていた。さらにパンクした馬車と、馬車の近くにはレイズも倒れている。
「どうやら麻酔銃の様なもので、眠らされている。私達に通信をして来てくれた者は、奇跡的に意識を失わなかった様だが、その者の話では、アンジュは黒ずくめの男たちに連れ去られた様だ。とにかくアンジュを探さないと!」
真っ青な顔でそう呟くと、スィークルン侯爵はその場に座り込んでしまった。よほど娘が連れ去られた事がショックなのだろう。とにかくアンジュを早く見つけないと!このままではアンジュが…
ん?
「ダルク殿、何をしているのだ?」
近くにあった木に登り、辺りを見渡しているダルク殿。すぐに木から降りると、地面を確認している。
「多分あちらの方向に進んだのでしょう。昨夜は雨が降っておりましたから、わずかながら車輪の後が残っております。他の道には車輪の後がないので。今ならまだ間に合うはずです。急ぎましょう」
確かにわずかながら、車輪の跡が残っている。まさかダルク殿にそんな知識があっただなんて…て、感心している場合ではない、すぐに向かわないと!
皆で馬車に乗り込もうとした時、ちょうど騎士団長たちがやって来た。
「デイビッド、アンジュ嬢が誘拐されたと聞いたが?」
「はい、この場で襲われた様です。護衛たちも麻酔銃で眠らされておりましたが、唯一意識が残っていた者が、通信を入れてくれました。今から、アンジュを探しに行きます。車輪の跡から、こっちに向かったものと思われますので」
「分かった、私も行こう」
騎士団長も合流し、皆でアンジュが連れて行かれたであろう場所へと目指す。あれほどまでに警戒していたはずなのに、まんまとアンジュを攫われてしまうだなんて!悔しくて唇を噛む。
一刻も早く、アンジュを救い出さないと!
車輪の跡をたどり、馬車で追いかける事にした。しばらく走ると、沢山の倉庫が並んでいる場所までやって来たのだ。そこに馬車も停まっている。
あそこにアンジュがあるのではないか?そんな思いから、急いで馬車へと向かう。
「アンジュ、アンジュは無事か?」
馬車の扉を思いっきり開けたが、アンジュの姿はない。それどころか、人の姿も全く見当たらないのだ。
「もしかして、乗り捨てていったのか?それとも、ここが目的地なのか?それにしても、倉庫が沢山あるな」
「そうですね、とにかくこの場所にアンジュ嬢がいるのでしょう。手分けして探しましょう。それに、わざわざこんな場所で、馬車を乗り捨てるだなんて考えられない。犯人は車輪の跡が付いている事すら気が付かない人間の様だし…」
ダルク殿の言う通りだ。この倉庫のどこかに、アンジュがいる可能性が高い。
「それじゃあ俺は、あっちの倉庫を探します」
「それでは私は反対側の倉庫から探していきます」
俺とダルク殿は、それぞれ反対方向へと進む。アンジュの父や騎士団長も、別方向にある倉庫を探す様だ。
とにかくダルク殿はもちろん、誰よりも先にアンジュを探し出さないと。アンジュを守るのは、俺の役目なのだから!
俺はアンジュを守りたい一心で、今まで騎士団の稽古を続けてきたのだ。もしここでアンジュを守れなければ、俺は…
いいや、大丈夫だ!アンジュは必ず俺が見つけ出す。大丈夫だ、きっと大丈夫…
※次回、アンジュ視点に戻ります。
よろしくお願いいたしますm(__)m
“…デイビッド様…申し訳ございません…お嬢様が…何者かに連れ去られました…”
息も途絶えそうな声で、そう訴える護衛。アンジュが連れ去られただと?
一瞬にして、血の気が引いていくのを感じた。落ち着け、落ち着くんだ!
「何者とは誰だ?とにかく今どこにいるのだ?」
“王都…3丁目の…レンガ通りです“
「わかった、すぐに向かう」
王都3丁目のレンガ通り…ここから5分くらいの場所だ。あそこはアンジュが学院に向かう時、通る場所だ。王都内でも唯一人気が少ない場所ではあるが、それでも護衛を5人も付けていたのに…
やはり俺が自らアンジュを護衛すればよかった!
今更後悔しても遅い。とにかく現場に向かわないと!そうだ、騎士団長や騎士団本部にも知らせないと!
俺は通信機で、すぐに騎士団長と本部にもアンジュが誘拐された事を報告した。
もっと早く走ってくれ。一刻も早く現場に向かいたいのに!
5分の距離なのに、なぜかとてつもなく長く感じる。
やっと現場に到着した。すると、既にアンジュの父親と、なぜかダルク殿も来ていた。
「スィークルン侯爵、ダルク殿!一体何があったのですか?アンジュは…」
周りを見ると、護衛たちが無残にもやられていた。さらにパンクした馬車と、馬車の近くにはレイズも倒れている。
「どうやら麻酔銃の様なもので、眠らされている。私達に通信をして来てくれた者は、奇跡的に意識を失わなかった様だが、その者の話では、アンジュは黒ずくめの男たちに連れ去られた様だ。とにかくアンジュを探さないと!」
真っ青な顔でそう呟くと、スィークルン侯爵はその場に座り込んでしまった。よほど娘が連れ去られた事がショックなのだろう。とにかくアンジュを早く見つけないと!このままではアンジュが…
ん?
「ダルク殿、何をしているのだ?」
近くにあった木に登り、辺りを見渡しているダルク殿。すぐに木から降りると、地面を確認している。
「多分あちらの方向に進んだのでしょう。昨夜は雨が降っておりましたから、わずかながら車輪の後が残っております。他の道には車輪の後がないので。今ならまだ間に合うはずです。急ぎましょう」
確かにわずかながら、車輪の跡が残っている。まさかダルク殿にそんな知識があっただなんて…て、感心している場合ではない、すぐに向かわないと!
皆で馬車に乗り込もうとした時、ちょうど騎士団長たちがやって来た。
「デイビッド、アンジュ嬢が誘拐されたと聞いたが?」
「はい、この場で襲われた様です。護衛たちも麻酔銃で眠らされておりましたが、唯一意識が残っていた者が、通信を入れてくれました。今から、アンジュを探しに行きます。車輪の跡から、こっちに向かったものと思われますので」
「分かった、私も行こう」
騎士団長も合流し、皆でアンジュが連れて行かれたであろう場所へと目指す。あれほどまでに警戒していたはずなのに、まんまとアンジュを攫われてしまうだなんて!悔しくて唇を噛む。
一刻も早く、アンジュを救い出さないと!
車輪の跡をたどり、馬車で追いかける事にした。しばらく走ると、沢山の倉庫が並んでいる場所までやって来たのだ。そこに馬車も停まっている。
あそこにアンジュがあるのではないか?そんな思いから、急いで馬車へと向かう。
「アンジュ、アンジュは無事か?」
馬車の扉を思いっきり開けたが、アンジュの姿はない。それどころか、人の姿も全く見当たらないのだ。
「もしかして、乗り捨てていったのか?それとも、ここが目的地なのか?それにしても、倉庫が沢山あるな」
「そうですね、とにかくこの場所にアンジュ嬢がいるのでしょう。手分けして探しましょう。それに、わざわざこんな場所で、馬車を乗り捨てるだなんて考えられない。犯人は車輪の跡が付いている事すら気が付かない人間の様だし…」
ダルク殿の言う通りだ。この倉庫のどこかに、アンジュがいる可能性が高い。
「それじゃあ俺は、あっちの倉庫を探します」
「それでは私は反対側の倉庫から探していきます」
俺とダルク殿は、それぞれ反対方向へと進む。アンジュの父や騎士団長も、別方向にある倉庫を探す様だ。
とにかくダルク殿はもちろん、誰よりも先にアンジュを探し出さないと。アンジュを守るのは、俺の役目なのだから!
俺はアンジュを守りたい一心で、今まで騎士団の稽古を続けてきたのだ。もしここでアンジュを守れなければ、俺は…
いいや、大丈夫だ!アンジュは必ず俺が見つけ出す。大丈夫だ、きっと大丈夫…
※次回、アンジュ視点に戻ります。
よろしくお願いいたしますm(__)m
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