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第48話:ダルク様が心配です

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祈る様な気持ちで、ダルク様を見つめる。

すると、今まで苦しそうにしていた呼吸が随分と落ち着いてきたのだ。

「これでもう大丈夫だろう。私がダルク殿を病院まで運ぼう。誰か運ぶのを手伝ってください」

私達の担任の先生が、周りの皆に声を掛けた。何人かの先生や騎士団員たちがダルク様を運ぼうとしている。

「アンジュ、それでダルク殿が襲われたときの状況だが。アンジュ?大丈夫かい?顔色が悪いよ。君も帰った方がよさそうだ。俺が送っていくから…」

「私は大丈夫ですわ。それよりもダルク様が心配です!」

デイビッド様にそう伝えると、そのまま急いでダルク様の元へと向かう。

「私もどうか連れて行ってください!ダルク様は私のせいで怪我をしたのです。どうかお願いです。ダルク様が心配なのです」

「アンジュ嬢、ありがとう…」

必死に頭を下げる私の手を握るダルク様。先ほどとは打って変わって穏やかな表情をしている。でも、怪我をしているのは確かだ。

「ダルク様、私が一緒に病院まで参ります。さあ、行きましょう」

ダルク様と一緒に馬車に乗り込んだ。

「待って、アンジュ。君は当事者なんだ!君が現場を離れたら、誰が状況を説明するんだい?とにかくダルク殿はもう大丈夫だ。だからこっちに来るんだ!」

デイビッド様が、無理やり私を馬車から降ろそうとする。

「どうしてそんな酷い事を言うのですか?私はダルク様が心配なのです。私のせいで怪我をしたのですよ。状況を説明すればいいのですよね。後ろからダルク様に突き飛ばされたかと思ったら、少し先に矢が刺さっていて、後ろには倒れたダルク様の姿がありました。あの場にはたくさんの貴族たちがおりましたので、彼らの証言を聞いた方がいいのですないでしょうか?それでは私はこれで」

「待ってくれ!それなら俺も行くよ。ダルク殿にも状況を聞かないといけないし。先生、申し訳ないのですが、俺が付き添ってもいいでしょうか?幸い解毒剤も飲んでおりますし、ダルク殿の怪我はそこまで酷くない様です。今回令息たちがクマに襲われたり、毒矢の事件が起こったりと、生徒たちはかなり動揺しているはずです。どうか残された生徒たちのケアの方をお願いします」

デイビッド様が先生に頭を下げている。

「…わかりました…それではデイビッド殿、頼みましたよ」

そう言うと、先生は降りて行った。

「ダルク様、怪我は大丈夫ですか?私のせいで本当にごめんなさい」

思い出したら涙が溢れて来た。私のせいで、ダルク様が怪我をしたのだ。謝っても謝り切れない程の罪悪感が、私を襲う。

「泣かないでくれ、アンジュ嬢。私は大丈夫だ。怪我も先ほど騎士団員の方が応急処置をしてくれたし。解毒剤も飲んだから」

「そうだよ、アンジュ。ダルク殿の怪我はそこまで酷くない。そんなに心配しなくても…」

「デイビッド様は黙っていてください!どうしてその場にいなかったあなた様が、怪我の状況を理解しているのですか?」

「その程度の包帯の巻き方で、血が滲んでいないという事は、既に止血しているって事だよ…とにかくアンジュは少し落ち着いたらどうだい?ほら、ダルク殿の傍にいないで、イスに座って」

私をイスに座らせようとするデイビッド様を振りほどき、ダルク様の手を握る。

「アンジュ!馬車は揺れるんだよ。君が怪我をしたらどうするんだ?」

「私は怪我をしてもかまいませんわ。とにかく、ダルク様が心配なのです」

「アンジュ嬢、私は大丈夫だから、どうか席に着いて欲しい。君まで怪我をしたら、私も悲しいから」

ダルク様…

私のせいで怪我をしたのに、そんな優しい言葉をかけて下さるのね。彼の優しさに応えるために、スッと席に座った。

「俺のいう事は聞かないのに、ダルク殿のいう事はちゃんと聞くんだね…」

ポツリとデイビッド様が呟いていたが、プイっとあちらの方向を向いておいた。

そうこうしているうちに、病院に着き、そのままダルク様は処置室に運ばれていった。ダルク様の状況が気になって、処置室の前でウロウロする。

「アンジュ、座ったらどうだい?ほら、こっちにおいで」

デイビッド様が私を椅子に座らせようとするが。

「ゆっくり座っていられませんわ。私はこのままで大丈夫ですから」

そう伝えて、再び処置室の扉を見つめる。

「アンジュ、そんなにダルク殿が心配かい?君はもしかして、ダルク殿の事が好きなのかい?」

切なそうな顔で私に問いかけるデイビッド様。

「何をおっしゃっているのですか?今はその様な話をしている場合ではないでしょう?そもそもダルク様は、私のせいで怪我をしたのですよ。ですから…」

「彼はきっと…君に好意があるよ…だからこそ俺は心配なんだ。アンジュがいつか、ダルク殿とミラージュ王国に行ってしまうのではないかと…アンジュ、頼む。行かないでくれ…」

スッと立ち上がり、デイビッド様が切なそうに私の手を握ったのだ。
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