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第8話:雛を助けました
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カリアに話しを聞いてもらった翌日、なんだか今日はお腹が痛い。どうやら体は、学院に行く事を拒否している様だ。
「お嬢様、顔色があまり宜しくない様ですが、大丈夫ですか?やはり学院はお休みした方がよろしいのでは?」
心配そうにカリアが問いかけてくる。
「私は大丈夫よ。早く行かないと、遅刻してしまうわ」
気合を入れ直し、制服に着替え、元気よく学院へと向かう。教室につくと、いつもの様に
「皆様、おはようございます」
と挨拶をするが、もちろん、誰も挨拶をしてくれない。この学院に留学して来てから早1ヶ月、毎日こんな感じだ。
「今日も来たわよ、すごいメンタルね」
そう言って令嬢たちがくすくすと笑っている。それが悲しくて仕方がない。やっぱり私、国に帰ろうかしら?ついそんな事を考えてしまう。
今日も午前の授業が終わると、裏庭で昼食を食べるため、売店で買い物をしてから裏庭へと向かった。
あら?あの方は…
クラスメイトの令嬢が1人、うずくまっていたのだ。一体どうしたのだろう?心配になり、彼女の元に駆け寄った。
「あの、どうかされましたか?」
声を掛けると、ゆっくりとこちらを振り向いた令嬢。美しい金色の髪に、紫の瞳をした美少女だ。確か名前は…何だったけ?
私はクラスメイト達とろくに関われていないため、正直名前が分からないのだ。
「あなた様は、アンジュ様。もしかして、この子を奪いに来たのですか?」
何やら訳のわからない事を言う令嬢。よく見ると腕には、雛鳥が抱かれていた。もしかして、巣から落ちたのかしら?
上を見上げるが、巣らしきものは見当たらない。きっと天敵に見つからない様に、上手に隠されているのだろう。
「可哀そうに、きっとこの雛鳥、巣から落ちてしまったのですわ」
上を見ながら呟く。
その時だった。大きな鳥が、こちらに向かって襲い掛かって来たのだ。
「危ない!!」
とっさに令嬢を庇う。
「痛っ!!」
鳥の大きな爪で引っかかれてしまった。なおも襲ってくる鳥。どうやらこの雛鳥を狙っている様だ。
「アンジュ様、大丈夫ですか?」
「ええ、私は大丈夫ですわ。どうやらあの鳥、雛を狙っている様ですわね」
近くにあった石を握り、力いっぱい鳥に投げた。雛を襲おうだなんて、そんな事はさせないわ!なおも襲い掛かって来る鳥に向かって、何度も何度も石を投げ、無事追い払う事が出来たのだ。
「よかったわ、鳥が逃げていきましたね。それよりもこの雛鳥、巣に帰してあげないと。ちょっとよろしいですか?」
雛鳥を令嬢から受け取ると、胸ポケットに入れた。木登りなんて、やった事がない。でも…この子の為だ!やるしかない。
そう思い、必死に木を登って行く。
「アンジュ様、大丈夫ですか?」
「ええ…何とか…とにかくこの子を、巣に戻してあげないと」
もしこの子がいない事に母鳥が気が付いたら、きっと悲しがるだろう。この雛鳥だって、お母さんと離れたくないはず。
なんだかこの雛鳥が自分と重なったのだ。何が何でもこの子を、巣に戻してあげないと。そんな思いで、必死に登って行く。そして
「あった、この巣ね」
そっと胸ポケットに入れていた雛鳥を、巣に戻す。よかったわ。そう思った瞬間。バランスを崩して、木から落ちてしまったのだ。
「キャァァ」
「アンジュ様!!」
地面に激突する!そう思ったのだが、誰かに受け止められたのだ。ゆっくり目を開けると、そこには青色の髪に眼鏡をかけた、賢そうな男性に抱きしめられていた。この人は…
「アンジュ様、大丈夫ですか?傷だらけですわ」
目に涙を浮かべながら、私の方に駆け寄って来る令嬢。
「私は大丈夫ですわ。雛鳥もちゃんと巣に帰しました。それから、どちら様か存じ上げませんが、私を助けて頂き、ありがとうございます」
青色の髪の男性に、頭を下げた。
「スカーレット、それにダルク、大丈夫かい?」
「イカロス様!!」
金色の髪をした男性がこちらにかけて来たと思ったら、令嬢を抱きしめている。しばらく抱き合った2人だったが、ゆっくりと男性から離れると、令嬢がこちらにやってきた。
「アンジュ様、先ほどはお助けいただき、ありがとうございました。とにかく、医務室に行きましょう。手から血が出ておりますわ。申し訳ございません、私のせいで…」
そう言って頭を下げる令嬢。
「あの、私は大丈夫ですわ。大した怪我ではありませんし。それでは私は失礼いたします」
「待って下さい、私も一緒に医務室に行きます」
そう言って私の手をギュッと握った令嬢。
「自己紹介が遅れて申し訳ございません。私は、スカーレット・カルシューファアンと申します。こちらが私の婚約者、イカロス様ですわ。そしてお隣にいらっしゃるのが、ダルク様。皆あなた様と同じクラスメイトです」
そう言って自己紹介をしてくれた令嬢。スカーレット様、どこかで聞いたことがある様な…
「お嬢様、顔色があまり宜しくない様ですが、大丈夫ですか?やはり学院はお休みした方がよろしいのでは?」
心配そうにカリアが問いかけてくる。
「私は大丈夫よ。早く行かないと、遅刻してしまうわ」
気合を入れ直し、制服に着替え、元気よく学院へと向かう。教室につくと、いつもの様に
「皆様、おはようございます」
と挨拶をするが、もちろん、誰も挨拶をしてくれない。この学院に留学して来てから早1ヶ月、毎日こんな感じだ。
「今日も来たわよ、すごいメンタルね」
そう言って令嬢たちがくすくすと笑っている。それが悲しくて仕方がない。やっぱり私、国に帰ろうかしら?ついそんな事を考えてしまう。
今日も午前の授業が終わると、裏庭で昼食を食べるため、売店で買い物をしてから裏庭へと向かった。
あら?あの方は…
クラスメイトの令嬢が1人、うずくまっていたのだ。一体どうしたのだろう?心配になり、彼女の元に駆け寄った。
「あの、どうかされましたか?」
声を掛けると、ゆっくりとこちらを振り向いた令嬢。美しい金色の髪に、紫の瞳をした美少女だ。確か名前は…何だったけ?
私はクラスメイト達とろくに関われていないため、正直名前が分からないのだ。
「あなた様は、アンジュ様。もしかして、この子を奪いに来たのですか?」
何やら訳のわからない事を言う令嬢。よく見ると腕には、雛鳥が抱かれていた。もしかして、巣から落ちたのかしら?
上を見上げるが、巣らしきものは見当たらない。きっと天敵に見つからない様に、上手に隠されているのだろう。
「可哀そうに、きっとこの雛鳥、巣から落ちてしまったのですわ」
上を見ながら呟く。
その時だった。大きな鳥が、こちらに向かって襲い掛かって来たのだ。
「危ない!!」
とっさに令嬢を庇う。
「痛っ!!」
鳥の大きな爪で引っかかれてしまった。なおも襲ってくる鳥。どうやらこの雛鳥を狙っている様だ。
「アンジュ様、大丈夫ですか?」
「ええ、私は大丈夫ですわ。どうやらあの鳥、雛を狙っている様ですわね」
近くにあった石を握り、力いっぱい鳥に投げた。雛を襲おうだなんて、そんな事はさせないわ!なおも襲い掛かって来る鳥に向かって、何度も何度も石を投げ、無事追い払う事が出来たのだ。
「よかったわ、鳥が逃げていきましたね。それよりもこの雛鳥、巣に帰してあげないと。ちょっとよろしいですか?」
雛鳥を令嬢から受け取ると、胸ポケットに入れた。木登りなんて、やった事がない。でも…この子の為だ!やるしかない。
そう思い、必死に木を登って行く。
「アンジュ様、大丈夫ですか?」
「ええ…何とか…とにかくこの子を、巣に戻してあげないと」
もしこの子がいない事に母鳥が気が付いたら、きっと悲しがるだろう。この雛鳥だって、お母さんと離れたくないはず。
なんだかこの雛鳥が自分と重なったのだ。何が何でもこの子を、巣に戻してあげないと。そんな思いで、必死に登って行く。そして
「あった、この巣ね」
そっと胸ポケットに入れていた雛鳥を、巣に戻す。よかったわ。そう思った瞬間。バランスを崩して、木から落ちてしまったのだ。
「キャァァ」
「アンジュ様!!」
地面に激突する!そう思ったのだが、誰かに受け止められたのだ。ゆっくり目を開けると、そこには青色の髪に眼鏡をかけた、賢そうな男性に抱きしめられていた。この人は…
「アンジュ様、大丈夫ですか?傷だらけですわ」
目に涙を浮かべながら、私の方に駆け寄って来る令嬢。
「私は大丈夫ですわ。雛鳥もちゃんと巣に帰しました。それから、どちら様か存じ上げませんが、私を助けて頂き、ありがとうございます」
青色の髪の男性に、頭を下げた。
「スカーレット、それにダルク、大丈夫かい?」
「イカロス様!!」
金色の髪をした男性がこちらにかけて来たと思ったら、令嬢を抱きしめている。しばらく抱き合った2人だったが、ゆっくりと男性から離れると、令嬢がこちらにやってきた。
「アンジュ様、先ほどはお助けいただき、ありがとうございました。とにかく、医務室に行きましょう。手から血が出ておりますわ。申し訳ございません、私のせいで…」
そう言って頭を下げる令嬢。
「あの、私は大丈夫ですわ。大した怪我ではありませんし。それでは私は失礼いたします」
「待って下さい、私も一緒に医務室に行きます」
そう言って私の手をギュッと握った令嬢。
「自己紹介が遅れて申し訳ございません。私は、スカーレット・カルシューファアンと申します。こちらが私の婚約者、イカロス様ですわ。そしてお隣にいらっしゃるのが、ダルク様。皆あなた様と同じクラスメイトです」
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