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第16話:陛下から呼び出しを受けました

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オスカー様が約束事項を書いた紙を貼り終えた頃

「お嬢様、ファビアナ嬢がいらっしゃいました。居間にご案内しております」

「ありがとう、今すぐ行くわ」

急いでファビアナの元に行こうとした私を、なぜか不満げな顔で引き留めるオスカー様。

「アメリア、僕を置いて勝手にファビアナ嬢のものに向かおうとしたね。ダメだよ、勝手に行ったら」

そう言うと、私の腰に手を回したオスカー様
正直面倒くさいわ…


メイドたちも苦笑いしている。ふと別のメイドを見ると、目を見開いて約束事項を見ている。口もポカンと開けているわ。見終わったメイドに、可哀そうな者を見るような目つきで見つめられた。

そうよね、あんな約束事項を貼られたら、私に同情したくもなるわよね。私も、自分が可哀そうに思えて来たわ…

ご機嫌のオスカー様に連れられ、居間へと向かう。

「ファビアナ、待たせてごめんね。わざわざ来てくれてありがとう」

「そんな事は気にしないで。まずは再婚約おめでとう!オスカー様、今度こそアメリアを泣かせないでね」

「大丈夫だ!二度とアメリアを失わない様に、しっかり繋ぎ止めておくから!」
ギューっと抱きしめ、唇に口付けをするオスカー様。

「…そうね、もう問題はなさそうね。それで、アメリアと2人で話をしたいのだけれど」

「分かっているよ。でも30分だけだからね。それじゃあ、アメリア。30分後に迎えに来るから」

そう言うと、オスカー様は出て行った。

「アメリア、とりあえず30分しか時間が無いから、昨日何があったのか教えてくれる?」

ファビアナに言われ、昨日の出来事を詳しく話した。さらに、約束事項を勝手に決められた事も詳しく話す。

「私の意見なんてまるで無視なのよ!昔はいつも私の意見をまずは聞いてくれていたのに、今はまるで聞いてくれないの!酷いと思わない?」

オスカー様に対する不満をファビアナにぶちまけた。

「そうね。でも、それだけあなたの事を好きという事ではなくって?昔のオスカー様は、アメリアに遠慮している節があったから、少し気になっていたのよ。でも、まさかここまで豹変するとは思わなかったけれどね」

そう言って苦笑いするファビアナ。

「確かに愛されているって言うのは分かるけれど、でも極端なのよ!」

鼻息荒くして怒っている私を見て、笑い出すファビアナ。

「何が可笑しいの?こっちは真剣に悩んでいるのに!」

「ごめんごめん。でも、まさかあなたがオスカー様に愛されすぎて、戸惑う日が来るなんてね。なんだか可笑しくって!それに、いつもクールなイメージのオスカー様が、180度変わってしまったのですもの。本当に人生何が起こるか分からないなって思ったの」

「もう、他人事だと思って!」

ぷっくり頬を膨らませて抗議をした。

「大丈夫よ、アメリアは適応能力が優れているもの。きっとすぐに慣れるわ!ああ、そろそろ30分経つわね」

ふと時計を見ると、確かに話し始めて30分が経とうとしていた。

その時だった。

「アメリア、そろそろ時間だよ!」

オスカー様が時間ピッタリに入って来たのだ。その姿を見て、再び笑い出すファビアナ。何がそんなにおかしいのかしら?

「もう、オスカー様ったら、時間ぴったりに入ってくるのですもの!きっちりしているところは変わっていないのだと思ったら、可笑しくって」

お腹を抱えて笑っているファビアナ。その後は3人でお茶をした後、ファビアナは帰って行った。

帰り際
「色々と大変だろうけれど、アメリアならきっと大丈夫よ!何かあったらいつでも言って、相談に乗るから」
そう言って私の頭を撫でたファビアナ。なんだかファビアナにそう言われると、大丈夫な気がして来たわ。ありがとう、ファビアナ。


ファビアナが言った通り、最初は物凄く戸惑ったが、なんだかんだ言ってオスカー様の溺愛っぷりにも慣れて来た。ただ、約束事項だけはどうしても守れない事もある。

そもそも、令息と話す事が禁止だなんて、学院に通っていれば無理に等しい。それに、怪我が治ったオスカー様に連れられ、毎日騎士団の稽古場にも行っているのだ。稽古場には沢山の騎士様がいる為、どうしても話しかけられてしまう。

そのたびに怒り狂ったオスカー様に、物凄く怒られる。2時間近く正座でお説教されたこともあったし、暗い部屋に長時間閉じ込められたりもした。

ただ、最近は私からオスカー様に口付けをすると機嫌が直る事が分かったので、すかさず口付けをして事なきを得ている。ただし、怒らせてすぐにしないと効果が無いので、人が居ようが居まいが関係なく口付けをしなければいけない。

さらに、相変わらずオスカー様の溺愛っぷりは続いており、人目を気にせず抱きしめたり頬ずりしたり口付けをして来る。もちろん、「愛している、可愛いアメリア!ずっと一緒に居たい」と、毎日の様に囁いているのだ。そのせいで、社交界でも有名なバカップルになってしまった。

そんな私たちを見たミア様が

「アメリア様、あの時は本当にごめんなさい。こんなにアメリア様を愛しているオスカー様に恋をするなんて、私本当にどうかしていたわ…そもそも、私はクールで優しいオスカー様が好きだったの!アメリア様には申し訳ないけれど、あんなにデレデレした男だなんて思わなかったわ…」

そう言って遠い目をしたミア様。

「いいえ、こちらこそ、オスカー様がご迷惑をお掛けしてごめんなさい。私も、オスカー様があんなふうになるなんて、思いませんでしたわ…」

そう伝えておいた。そんな私を、可哀そうな目で見るミア様。私との接触を禁止されているミア様だが、オスカー様の目を盗んでそっと話しかけてくれた。きっとこんな事が無ければ、良いお友達になれてかもしれない。

そんな日々を送っているうちに月日は流れ、婚約を結び直す日まで、残り1ヶ月に迫ったある日、お父様に呼び出された。

なぜかあまり顔色の良くないお父様。一体どうしたのかしら?

「アメリア、実は陛下から呼び出しがあったんだ。それで、今週末私と一緒に王宮に来て欲しい」

「陛下ですって!嘘でしょう?」

もしかして、あまりの私たちのバカップルっぷりに、貴族社会を乱すなというお叱りでも受けるのかしら?一気に血の気が引く。

「陛下は温厚なお方だから、そんなに怯えなくてもいいよ。とにかく、今週末は私と一緒に王宮だ!いいな」

「わかったわ、お父様」

確かにお父様の言う通り、陛下は温厚な人だと聞いた事がある。2年前、前陛下から現陛下に王位が移された。まだ21歳と言うのに、非常に優れている陛下。世界にも目を向けており、積極的に他国との貿易を行っていると聞く。さらに、既に2人の王子にも恵まれていて、公私ともに順調だ。

そんな陛下が、私に一体何の用があると言うのかしら?その時、オスカー様から通信が入った。約束事項にもある通り、家にいる時は寝る前まで1時間おきに通信が入る事になっている。急いで通信をONにすると

“アメリア、元気にしているかい?”

「オスカー様、さっきもお話したばかりですわよ。それより、オスカー様も陛下に呼び出されたりしていますか?」

“陛下に?そんな話は聞いていないよ!アメリアは呼び出されたのかい?”

「ええ、今週末、お父様と一緒に王宮に行く事になっていますの」

“そうか、心配だから僕も行くよ!今週末だね”

「待ってオスカー様、さすがに陛下からの呼び出しですので、オスカー様が勝手に行くのは良くないかと」

“僕は君の婚約者なんだ!僕が行けないなんておかしいだろう!とにかく、一緒に行くからそのつもりで。それじゃあお休み、アメリア”

そう言うと、通信が切れてしまった。それにしても、オスカー様が呼ばれていないという事は、私たちのバカップルぶりに対するお叱りではないのかしら?それなら一体何の用なの?考えれば考える程分からない。

結局週末まで、不安な日々を過ごす事になったアメリアであった。
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