42 / 55
第42話:絶対に渡したくない~ローイン視点~
しおりを挟む
不安の中、伯爵家に着いてしまった。とにかく今日の件、伯爵たちに話しをしないと。そんな思いで、マーガレット嬢と一緒に馬車を降りた。
急に来たにも関わらず、伯爵もバロン殿も笑顔で向か入れてくれた。
「ローイン殿、マーガレットはどうでしたか?ジェファーソン殿は…」
心配そうに伯爵が話しかけてくる。
「ジェファーソン殿は、マーガレット嬢に言い寄っていました。予想通り、ジェファーソン殿はマーガレット嬢を諦めていない様です」
「おのれジェファーソンめ。あれだけマーガレットを苦しめ傷つけておいて、今更まだ言い寄ってくるだなんて!もう我慢できない。あの男を八つ裂きにして参ります!」
俺の話を聞いたバロン殿が剣を腰に差し、部屋から出ていこうとしている。
「待て、バロン。落ち着いてくれ!とにかく座れ。ローイン殿、見苦しい姿をお見せして申し訳ございません」
伯爵に促され、不満そうではあるが一旦席に着いたバロン殿。
「俺もバロン殿と同じ気持ちでいますので…それでお願いがあるのですが。万が一ジェファーソン殿が伯爵家を訪ねて来ても、マーガレット嬢には会わせないで欲しいのです」
我ながら我が儘な事を言っているという事は分かっている。でも、どうしても俺の知らないところで、彼らを会わせたくはないのだ。
「もちろんです。もしあの男が来たら、八つ裂きにしてやります。ローイン殿、あなた様には本当に妹の件で色々とお世話になりました。あいつは少し抜けているところはありますが、芯は通っております。どうか妹を信じてやってください」
バロン殿が頭を下げて来たのだ。マーガレット嬢を信じるか…そもそもマーガレット嬢は、俺の事をどう思っているのだろう…
伯爵家で話をした後、屋敷へと戻ってきた。するとなぜかノエルが待っていたのだ。
「やあ、ローイン。随分面白い顔をしているね」
俺の顔を見るなり、ノエルがクスクスと笑っている。相変わらず失礼な男だ。
「俺の顔のどこが面白いんだ!失礼にも程があるぞ。俺をからかいに来たのなら、帰ってくれ」
「別にからかいに来たわけじゃないよ。親友が心乱しているみたいだから、心配で様子を見に来たんだ。それにしてもマリン譲と不貞を行った令息たち、見苦しいね。今頃元婚約者に必死に取り入ろうとして。ローインも大変だね。でも、マーガレット嬢はきっと大丈夫だよ」
「ノエルが俺を慰めてくれるだなんて、珍しいな。一体何を企んでいるのだい?」
「別に企んでいないよ。ただ…大切なものを失った男は、何をするか分からないからね。ローインに忠告をしに来たんだ。あの男には気を付けた方がいいとね」
「そんな事、俺だってわかっているよ。だから今、ジェファーソン殿が彼女に近づかない様に手を打っているじゃないか」
「手を打っている?僕には何にもしていない様に見えるけれど。ローイン、君はマリン嬢を追い詰め、彼らを断罪しただけの行動力のある人間だ。今回も持ち前の行動力で、ジェファーソン殿の動きを封じた方がいいのではないのかい?手遅れになる前に…」
「ジェファーソン殿の動きを封じる?一体何を言っているのだ?」
「君が思っている以上に、ジェファーソン殿は厄介だよ。僕はちゃんと忠告したからね。それじゃあ、これで失礼するよ」
笑顔でノエルが去っていく。
確かにノエルの言う通り、もしもジェファーソン殿が無理やりマーガレット嬢を手に入れようとしたら…考えただけで怒りがこみあげてくる。
でも、既に崖っぷちの彼が、そんな事をするだろうか?
ふとマーガレット嬢の笑顔が脳裏に浮かんだ。俺はもう、彼女を失いたくはない。その為にも俺がやらなければいけない事は…
結局その日も色々と思い詰めてしまい、あまり眠れなかった。
翌日も、その翌日も、マーガレット嬢に近づこうとするジェファーソン殿をけん制する日々が続く。
マーガレット嬢もジェファーソン殿にはっきりと
“あなたとはもうやり直すことはありません。どうか諦めて下さい”
と、何度も伝えているが、全く動じる気配がない。これほどまでに拒絶されているのに、全くひるまないだなんて…
そんな日々が1ヶ月ほど続いた。他の令息たちも、元婚約者を毎日の様に迫っていた。そんな中、数名の令嬢たちがついに折れてしまい、不貞を働いた令息たちと寄りを戻そうという動きが出始めたのだ。
元々令嬢たちも婚約者を愛していたのだろう。それにしても、許してしまう令嬢がいるだなんて…
ふとマーガレット嬢を見る。もし彼女もジェファーソン殿の猛アプローチに折れてしまったら…
考えただけでめまいがしそうだ。
俺は一体何をしているのだ。このまま指をくわえて見ているだけでいいのか?また7年前の様に、同じ失敗を繰り返すのか?そんなのは絶対に嫌だ!
このままではダメだ。俺も腹をくくらないと!あんな男に、絶対にマーガレット嬢は渡さない!どんな手を使っても、マーガレット嬢を、今度こそ手に入れて見せる!
※次回、マーガレット視点に戻ります。
よろしくお願いいたします。
急に来たにも関わらず、伯爵もバロン殿も笑顔で向か入れてくれた。
「ローイン殿、マーガレットはどうでしたか?ジェファーソン殿は…」
心配そうに伯爵が話しかけてくる。
「ジェファーソン殿は、マーガレット嬢に言い寄っていました。予想通り、ジェファーソン殿はマーガレット嬢を諦めていない様です」
「おのれジェファーソンめ。あれだけマーガレットを苦しめ傷つけておいて、今更まだ言い寄ってくるだなんて!もう我慢できない。あの男を八つ裂きにして参ります!」
俺の話を聞いたバロン殿が剣を腰に差し、部屋から出ていこうとしている。
「待て、バロン。落ち着いてくれ!とにかく座れ。ローイン殿、見苦しい姿をお見せして申し訳ございません」
伯爵に促され、不満そうではあるが一旦席に着いたバロン殿。
「俺もバロン殿と同じ気持ちでいますので…それでお願いがあるのですが。万が一ジェファーソン殿が伯爵家を訪ねて来ても、マーガレット嬢には会わせないで欲しいのです」
我ながら我が儘な事を言っているという事は分かっている。でも、どうしても俺の知らないところで、彼らを会わせたくはないのだ。
「もちろんです。もしあの男が来たら、八つ裂きにしてやります。ローイン殿、あなた様には本当に妹の件で色々とお世話になりました。あいつは少し抜けているところはありますが、芯は通っております。どうか妹を信じてやってください」
バロン殿が頭を下げて来たのだ。マーガレット嬢を信じるか…そもそもマーガレット嬢は、俺の事をどう思っているのだろう…
伯爵家で話をした後、屋敷へと戻ってきた。するとなぜかノエルが待っていたのだ。
「やあ、ローイン。随分面白い顔をしているね」
俺の顔を見るなり、ノエルがクスクスと笑っている。相変わらず失礼な男だ。
「俺の顔のどこが面白いんだ!失礼にも程があるぞ。俺をからかいに来たのなら、帰ってくれ」
「別にからかいに来たわけじゃないよ。親友が心乱しているみたいだから、心配で様子を見に来たんだ。それにしてもマリン譲と不貞を行った令息たち、見苦しいね。今頃元婚約者に必死に取り入ろうとして。ローインも大変だね。でも、マーガレット嬢はきっと大丈夫だよ」
「ノエルが俺を慰めてくれるだなんて、珍しいな。一体何を企んでいるのだい?」
「別に企んでいないよ。ただ…大切なものを失った男は、何をするか分からないからね。ローインに忠告をしに来たんだ。あの男には気を付けた方がいいとね」
「そんな事、俺だってわかっているよ。だから今、ジェファーソン殿が彼女に近づかない様に手を打っているじゃないか」
「手を打っている?僕には何にもしていない様に見えるけれど。ローイン、君はマリン嬢を追い詰め、彼らを断罪しただけの行動力のある人間だ。今回も持ち前の行動力で、ジェファーソン殿の動きを封じた方がいいのではないのかい?手遅れになる前に…」
「ジェファーソン殿の動きを封じる?一体何を言っているのだ?」
「君が思っている以上に、ジェファーソン殿は厄介だよ。僕はちゃんと忠告したからね。それじゃあ、これで失礼するよ」
笑顔でノエルが去っていく。
確かにノエルの言う通り、もしもジェファーソン殿が無理やりマーガレット嬢を手に入れようとしたら…考えただけで怒りがこみあげてくる。
でも、既に崖っぷちの彼が、そんな事をするだろうか?
ふとマーガレット嬢の笑顔が脳裏に浮かんだ。俺はもう、彼女を失いたくはない。その為にも俺がやらなければいけない事は…
結局その日も色々と思い詰めてしまい、あまり眠れなかった。
翌日も、その翌日も、マーガレット嬢に近づこうとするジェファーソン殿をけん制する日々が続く。
マーガレット嬢もジェファーソン殿にはっきりと
“あなたとはもうやり直すことはありません。どうか諦めて下さい”
と、何度も伝えているが、全く動じる気配がない。これほどまでに拒絶されているのに、全くひるまないだなんて…
そんな日々が1ヶ月ほど続いた。他の令息たちも、元婚約者を毎日の様に迫っていた。そんな中、数名の令嬢たちがついに折れてしまい、不貞を働いた令息たちと寄りを戻そうという動きが出始めたのだ。
元々令嬢たちも婚約者を愛していたのだろう。それにしても、許してしまう令嬢がいるだなんて…
ふとマーガレット嬢を見る。もし彼女もジェファーソン殿の猛アプローチに折れてしまったら…
考えただけでめまいがしそうだ。
俺は一体何をしているのだ。このまま指をくわえて見ているだけでいいのか?また7年前の様に、同じ失敗を繰り返すのか?そんなのは絶対に嫌だ!
このままではダメだ。俺も腹をくくらないと!あんな男に、絶対にマーガレット嬢は渡さない!どんな手を使っても、マーガレット嬢を、今度こそ手に入れて見せる!
※次回、マーガレット視点に戻ります。
よろしくお願いいたします。
59
お気に入りに追加
4,716
あなたにおすすめの小説
断罪シーンを自分の夢だと思った悪役令嬢はヒロインに成り代わるべく画策する。
メカ喜楽直人
恋愛
さっきまでやってた18禁乙女ゲームの断罪シーンを夢に見てるっぽい?
「アルテシア・シンクレア公爵令嬢、私はお前との婚約を破棄する。このまま修道院に向かい、これまで自分がやってきた行いを深く考え、その罪を贖う一生を終えるがいい!」
冷たい床に顔を押し付けられた屈辱と、両肩を押さえつけられた痛み。
そして、ちらりと顔を上げれば金髪碧眼のザ王子様なキンキラ衣装を身に着けたイケメンが、聞き覚えのある名前を呼んで、婚約破棄を告げているところだった。
自分が夢の中で悪役令嬢になっていることに気が付いた私は、逆ハーに成功したらしい愛され系ヒロインに対抗して自分がヒロインポジを奪い取るべく行動を開始した。
婚約破棄されないまま正妃になってしまった令嬢
alunam
恋愛
婚約破棄はされなかった……そんな必要は無かったから。
既に愛情の無くなった結婚をしても相手は王太子。困る事は無かったから……
愛されない正妃なぞ珍しくもない、愛される側妃がいるから……
そして寵愛を受けた側妃が世継ぎを産み、正妃の座に成り代わろうとするのも珍しい事ではない……それが今、この時に訪れただけ……
これは婚約破棄される事のなかった愛されない正妃。元・辺境伯爵シェリオン家令嬢『フィアル・シェリオン』の知らない所で、周りの奴等が勝手に王家の連中に「ざまぁ!」する話。
※あらすじですらシリアスが保たない程度の内容、プロット消失からの練り直し試作品、荒唐無稽でもハッピーエンドならいいんじゃい!的なガバガバ設定
それでもよろしければご一読お願い致します。更によろしければ感想・アドバイスなんかも是非是非。全十三話+オマケ一話、一日二回更新でっす!
俺の婚約者は地味で陰気臭い女なはずだが、どうも違うらしい。
ミミリン
恋愛
ある世界の貴族である俺。婚約者のアリスはいつもボサボサの髪の毛とぶかぶかの制服を着ていて陰気な女だ。幼馴染のアンジェリカからは良くない話も聞いている。
俺と婚約していても話は続かないし、婚約者としての役目も担う気はないようだ。
そんな婚約者のアリスがある日、俺のメイドがふるまった紅茶を俺の目の前でわざとこぼし続けた。
こんな女とは婚約解消だ。
この日から俺とアリスの関係が少しずつ変わっていく。
王太子から婚約破棄され、嫌がらせのようにオジサンと結婚させられました 結婚したオジサンがカッコいいので満足です!
榎夜
恋愛
王太子からの婚約破棄。
理由は私が男爵令嬢を虐めたからですって。
そんなことはしていませんし、大体その令嬢は色んな男性と恋仲になっていると噂ですわよ?
まぁ、辺境に送られて無理やり結婚させられることになりましたが、とってもカッコいい人だったので感謝しますわね
貴方が選んだのは全てを捧げて貴方を愛した私ではありませんでした
ましゅぺちーの
恋愛
王国の名門公爵家の出身であるエレンは幼い頃から婚約者候補である第一王子殿下に全てを捧げて生きてきた。
彼を数々の悪意から守り、彼の敵を排除した。それも全ては愛する彼のため。
しかし、王太子となった彼が最終的には選んだのはエレンではない平民の女だった。
悲しみに暮れたエレンだったが、家族や幼馴染の公爵令息に支えられて元気を取り戻していく。
その一方エレンを捨てた王太子は着々と破滅への道を進んでいた・・・
今さら、私に構わないでください
ましゅぺちーの
恋愛
愛する夫が恋をした。
彼を愛していたから、彼女を側妃に迎えるように進言した。
愛し合う二人の前では私は悪役。
幸せそうに微笑み合う二人を見て、私は彼への愛を捨てた。
しかし、夫からの愛を完全に諦めるようになると、彼の態度が少しずつ変化していって……?
タイトル変更しました。
溺愛されている妹がお父様の子ではないと密告したら立場が逆転しました。ただお父様の溺愛なんて私には必要ありません。
木山楽斗
恋愛
伯爵令嬢であるレフティアの日常は、父親の再婚によって大きく変わることになった。
妾だった継母やその娘である妹は、レフティアのことを疎んでおり、父親はそんな二人を贔屓していた。故にレフティアは、苦しい生活を送ることになったのである。
しかし彼女は、ある時とある事実を知ることになった。
父親が溺愛している妹が、彼と血が繋がっていなかったのである。
レフティアは、その事実を父親に密告した。すると調査が行われて、それが事実であることが判明したのである。
その結果、父親は継母と妹を排斥して、レフティアに愛情を注ぐようになった。
だが、レフティアにとってそんなものは必要なかった。継母や妹ともに自分を虐げていた父親も、彼女にとっては排除するべき対象だったのである。
ふしだらな悪役令嬢として公開処刑される直前に聖女覚醒、婚約破棄の破棄?ご冗談でしょ(笑)
青の雀
恋愛
病弱な公爵令嬢ビクトリアは、卒業式の日にロバート王太子殿下から婚約破棄されてしまう。病弱なためあまり学園に行っていなかったことを男と浮気していたせいだ。おまけに王太子の浮気相手の令嬢を虐めていたとさえも、と勝手に冤罪を吹っかけられ、断罪されてしまいます。
父のストロベリー公爵は、王家に冤罪だと掛け合うものの、公開処刑の日時が決まる。
断頭台に引きずり出されたビクトリアは、最後に神に祈りを捧げます。
ビクトリアの身体から突然、黄金色の光が放たれ、苛立っていた観衆は穏やかな気持ちに変わっていく。
慌てた王家は、処刑を取りやめにするが……という話にする予定です。
お気づきになられている方もいらっしゃるかと存じますが
この小説は、同じ世界観で
1.みなしごだからと婚約破棄された聖女は実は女神の化身だった件について
2.婚約破棄された悪役令嬢は女神様!? 開国の祖を追放した国は滅びの道まっしぐら
3.転生者のヒロインを虐めた悪役令嬢は聖女様!? 国外追放の罪を許してやるからと言っても後の祭りです。
全部、話として続いています。ひとつずつ読んでいただいても、わかるようにはしています。
続編というのか?スピンオフというのかは、わかりません。
本来は、章として区切るべきだったとは、思います。
コンテンツを分けずに章として連載することにしました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる