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第36話:心が落ち着かない~ワイアーム視点~
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“ワイアーム様、ごめんなさい。やっぱりキース様の元に行きますわ。さようなら”
「待ってくれ、セーラ。行かないでくれ。ずっと一緒にいてくれると、約束してくれただろう?僕の事を愛していると、言ってくれたのに。どうして?」
あの男に連れられ、海の中に消えていくセーラ。絶対にセーラは渡さない。必死に付いていこうとするが、足が全く動かない。嫌だ、行かないでくれ!嫌だ!!!
パチリと目を覚ますと、薄暗いが見慣れた天井が目に飛び込んできた。隣には規則正しい寝息を立てて眠るセーラの姿が。
「よかった…セーラ」
ギュッとセーラを抱きしめる。この温もりが落ち着く。
セーラの誕生日まで、後2週間足らず。少し前に、マレディア侯爵と元夫人から、セーラが海神ネプチューンの娘の血を色濃く受け継いでいる事が伝えられた。それと同時に、セーラはあの男の記憶も取り戻したようだ。
それでもセーラは、僕の傍にいてくれると言っていた。
“私はワイアーム様を心から愛しております。ですから、どうかご心配なさらないで下さい”
そう言って笑っていたセーラ。この3ヶ月半、僕は本当に幸せだった。にっくきクレイジー元公爵とレイリスを地獄に叩き落すため、かなり無理をした。正直言うと、龍の力を使いすぎたから僕の体はボロボロになった訳ではない。
セーラに触れる事が出来ないストレスが、僕の体を蝕んでいったのだ。あの頃の僕は、本当に地獄だった。セーラ不足で瀕死の僕を助けてくれたのは、もちろんセーラだ。セーラに触れられなかった後遺症から、感情がコントロールできなくなった僕の傍に寄り添い、ずっと一緒にいてくれた。
僕の我が儘にも、嫌な顔をせずに聞いてくれたセーラのお陰で、僕は随分元気になった。
ただ…
幸せを噛みしめれば噛みしめるほど、不安も大きくなる。万が一、セーラを失ったら…
16歳の誕生日の日、あの男はきっと、セーラを奪いに来る。もちろん、僕はこの命を懸けてでも、セーラを助け出すつもりだ。
マレディア元侯爵も、現侯爵も、セーラが僕を愛していれば、海の神は手出し出来ない。そう言っていた。でも僕は、そうは思わない。
確かにマレディア侯爵家の先祖の手記によれば、愛する夫の傍にいるため、海の神の迎えを拒み、地上に留まった娘がいたことが記されていた。ただ、その後の彼女について、全く記載されていなかったのだ。
いいや、その後の彼女の事は、きっと記載されていたのだろう。でも、その後のページは、乱暴に破られていたのだ。一体なぜ、破られていたのか僕にはわからない。もしかしたら、よくない事が記載されていたのかもしれない。
もしセーラが、海の神を拒んだことで、セーラの身に良くない事が起こったとしたら…考えただけで、不安で押しつぶされそうになる。それにあの男が、簡単にセーラの事を諦めるのだろうか?
マレディア侯爵の話では、セーラはネリーヌに瓜二つと聞く。もしあの男が、無理やりセーラを奪いに来たら…
考えただけで、不安になるのだ。今の僕は、龍の力を完全に使えるほど、体が回復していない。もしかしたら、僕は負けてしまうかもしれない。そうしたら僕は、セーラを失うかもしれないのだ。
セーラを失うだなんて…
恐怖から、体がガタガタと震える。その時だった。温かくて柔らかい感覚が、僕の背中を包んだ。この温もりは…
「ワイアーム様。こんな夜中に、どうされたのですか?すっかり体が冷えてしまっておりますわ。まだ夜中です。ゆっくりお休みください」
そう、セーラだ。僕が起きていた事に気が付き、ギュッと抱きしめてくれたのだ。セーラの温もりを感じるだけで、僕は幸せに包まれる。
この温もりを、絶対に誰にも奪われたくはない。
そうだ、僕は何を弱気になっているのだ。セーラと婚約を結んだあの日、僕は決意したんだ。どんな事があっても、セーラをあの男になんて渡さない。たとえこの命を奪われる結果になっても。
そもそも僕は、セーラなしでは生きていけないのだ。だから僕がやらなければいけない事は、ただ1つ。セーラを守る事だ。
「セーラ、起こしてしまったのだね。ごめんね。さあ、ゆっくり休もう」
「ワイアーム様、どうかそんなに心配しないで下さい。私は絶対に、何があってもあなた様から離れたりはしませんから」
そう言うと、僕にギュッと抱き着いて来たセーラ。なんて可愛いんだ!僕の大切なセーラ、運命の日まで、後2週間足らず。絶対に君を失ったりしないから。
海の神、僕は絶対にセーラを渡さないからな。命に代えても、必ずセーラを守り切るから。
※次回、セーラ視点に戻ります。
よろしくお願いします。
「待ってくれ、セーラ。行かないでくれ。ずっと一緒にいてくれると、約束してくれただろう?僕の事を愛していると、言ってくれたのに。どうして?」
あの男に連れられ、海の中に消えていくセーラ。絶対にセーラは渡さない。必死に付いていこうとするが、足が全く動かない。嫌だ、行かないでくれ!嫌だ!!!
パチリと目を覚ますと、薄暗いが見慣れた天井が目に飛び込んできた。隣には規則正しい寝息を立てて眠るセーラの姿が。
「よかった…セーラ」
ギュッとセーラを抱きしめる。この温もりが落ち着く。
セーラの誕生日まで、後2週間足らず。少し前に、マレディア侯爵と元夫人から、セーラが海神ネプチューンの娘の血を色濃く受け継いでいる事が伝えられた。それと同時に、セーラはあの男の記憶も取り戻したようだ。
それでもセーラは、僕の傍にいてくれると言っていた。
“私はワイアーム様を心から愛しております。ですから、どうかご心配なさらないで下さい”
そう言って笑っていたセーラ。この3ヶ月半、僕は本当に幸せだった。にっくきクレイジー元公爵とレイリスを地獄に叩き落すため、かなり無理をした。正直言うと、龍の力を使いすぎたから僕の体はボロボロになった訳ではない。
セーラに触れる事が出来ないストレスが、僕の体を蝕んでいったのだ。あの頃の僕は、本当に地獄だった。セーラ不足で瀕死の僕を助けてくれたのは、もちろんセーラだ。セーラに触れられなかった後遺症から、感情がコントロールできなくなった僕の傍に寄り添い、ずっと一緒にいてくれた。
僕の我が儘にも、嫌な顔をせずに聞いてくれたセーラのお陰で、僕は随分元気になった。
ただ…
幸せを噛みしめれば噛みしめるほど、不安も大きくなる。万が一、セーラを失ったら…
16歳の誕生日の日、あの男はきっと、セーラを奪いに来る。もちろん、僕はこの命を懸けてでも、セーラを助け出すつもりだ。
マレディア元侯爵も、現侯爵も、セーラが僕を愛していれば、海の神は手出し出来ない。そう言っていた。でも僕は、そうは思わない。
確かにマレディア侯爵家の先祖の手記によれば、愛する夫の傍にいるため、海の神の迎えを拒み、地上に留まった娘がいたことが記されていた。ただ、その後の彼女について、全く記載されていなかったのだ。
いいや、その後の彼女の事は、きっと記載されていたのだろう。でも、その後のページは、乱暴に破られていたのだ。一体なぜ、破られていたのか僕にはわからない。もしかしたら、よくない事が記載されていたのかもしれない。
もしセーラが、海の神を拒んだことで、セーラの身に良くない事が起こったとしたら…考えただけで、不安で押しつぶされそうになる。それにあの男が、簡単にセーラの事を諦めるのだろうか?
マレディア侯爵の話では、セーラはネリーヌに瓜二つと聞く。もしあの男が、無理やりセーラを奪いに来たら…
考えただけで、不安になるのだ。今の僕は、龍の力を完全に使えるほど、体が回復していない。もしかしたら、僕は負けてしまうかもしれない。そうしたら僕は、セーラを失うかもしれないのだ。
セーラを失うだなんて…
恐怖から、体がガタガタと震える。その時だった。温かくて柔らかい感覚が、僕の背中を包んだ。この温もりは…
「ワイアーム様。こんな夜中に、どうされたのですか?すっかり体が冷えてしまっておりますわ。まだ夜中です。ゆっくりお休みください」
そう、セーラだ。僕が起きていた事に気が付き、ギュッと抱きしめてくれたのだ。セーラの温もりを感じるだけで、僕は幸せに包まれる。
この温もりを、絶対に誰にも奪われたくはない。
そうだ、僕は何を弱気になっているのだ。セーラと婚約を結んだあの日、僕は決意したんだ。どんな事があっても、セーラをあの男になんて渡さない。たとえこの命を奪われる結果になっても。
そもそも僕は、セーラなしでは生きていけないのだ。だから僕がやらなければいけない事は、ただ1つ。セーラを守る事だ。
「セーラ、起こしてしまったのだね。ごめんね。さあ、ゆっくり休もう」
「ワイアーム様、どうかそんなに心配しないで下さい。私は絶対に、何があってもあなた様から離れたりはしませんから」
そう言うと、僕にギュッと抱き着いて来たセーラ。なんて可愛いんだ!僕の大切なセーラ、運命の日まで、後2週間足らず。絶対に君を失ったりしないから。
海の神、僕は絶対にセーラを渡さないからな。命に代えても、必ずセーラを守り切るから。
※次回、セーラ視点に戻ります。
よろしくお願いします。
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