全てを捨てて消え去ろうとしたのですが…なぜか殿下に執着されています

Karamimi

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第31話:この幸せがずっと続きますように

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「セーラ、どこに行くのだい?急にいなくなったから、心配したよ」

「ごめんなさい。ワイアーム様のお部屋に飾るお花を探しに、中庭に出ていたのです」

「部屋に飾る花なら、使用人に頼めばいいだろう?黙って僕の傍から消えないでくれ。心配してあちこち探したのだよ」

「ごめんなさい、ワイアーム様は眠っていらしたので。起こすのもよくないかと…」

「君の温もりを感じられない時点で、僕は起きるから。さあ、部屋に戻ろう」

 裁判から3ヶ月が経とうとしていた。再びワイアーム様との婚約を結び直した後、お兄様とワイアーム様、陛下や王妃殿下との話し合いがもたれ、ワイアーム様の体に加え、精神面も不安定との事で、しばらく私も王宮で生活をする事になった。

 その際、改めて陛下と王妃殿下から、ワイアーム様について話があった。ワイアーム様はやはり、龍の血を色濃く受け継いでいる影響もあり、何かに執着すると死ぬまで離さない性質があるらしい。

 その対象が、私なのだとか。ただ、ワイアーム様は人間なので、今までは理性で気持ちを抑えていたらしい。そんな中、長時間私から距離を置いていた事、命の危険に晒されるほど龍の力を使いすぎたことで、これ以上感情を抑える事は、ワイアーム様の体にとって良くないと判断されたらしい。

 その為私は、ワイアーム様が少しでも穏やかに過ごせるように、四六時中彼の傍にいて、彼の心のケアに重点を置く事になったのだ。

 ちなみにワイアーム様の体調だが、随分と回復してきている。特に私があの歌を歌うと、劇的によくなるのだが、なぜか私が歌を歌う事を嫌がるのだ。あんなにも私の歌声が好きだと言ってくれていたのに…

 とはいえ、ワイアーム様との日々は、幸せ以外何物でもない。レイリス様が現れてから、ずっと辛くて苦しかった。もうワイアーム様は私を愛していない、そう思い涙を流した日もあった。

 でも、まさかここまで愛されていただなんて。

「セーラ、僕といるのは辛いかい?すまない、もっと僕が強ければ、君をこんなに縛り付けずに済んだのに…」

 ポツリとワイアーム様が呟いたのだ。その瞳はどこか不安げで、悲しそうに見える。

「あなた様は、十分すぎる程お強いお方ですわ。それに私は、昔のクールで紳士的なワイアーム様よりも、感情をぶつけてくださる、今のワイアーム様の方が好きです。ですからどうか、ご自分に素直に生きて下さい。それにお医者様もおっしゃっていたではありませんか?今は無理な我慢は禁物と」

「確かにそうなのだが…正直言うと、今僕は幸せでたまらない。でもいつか、地獄に叩き落されるのではないか…セーラがどこかに行ってしまうのではないかと不安で…」

「私はどこにも行きませんわ。ずっと傍におります。さあ、そろそろ昼食を頂きましょう」

 食事中も、片時も私から離れないワイアーム様。以前までの彼は、クールで正直何を考えているのかよくわからないところもあったが、今は何を考えているのか手に取る様にわかるのだ。

 それがなんだか嬉しい。

「セーラ、来月は君の16歳のお誕生日だね。君のお誕生日は、王宮で盛大にお祝いをしよう。もちろん、2人きりで」

「もう来月なのですね。マレディア侯爵家では、16歳のお誕生日は特別な意味を持つそうなのです。私も詳しく教えてもらっていないのですが、どうやら体の中に眠っていた力が目覚めるのだそうで。我が家は海神ネプチューンの娘、ネリーヌの子孫なのですって。私にも何か特別な力が眠っているのではないかと、密かに楽しみにしておりますの」

 ワイアーム様は、この地で最強と言われた龍の血を色濃く受け継いでいる。だから私も、ネリーヌの力を少しでも受け継いでいるといいな。そうしたら、もっともっとワイアーム様の手助けが出来るはずだ。

「セーラ!君は海神の娘の血を色濃く受け継いでいたいと、願っているのかい?」

 今まで聞いた事のないほど低い声で、ワイアーム様が呟いたのだ。そのまま体を引き寄せられ、ギュッと抱きしめられた。一体どうしたのかしら?

「受け継ぎたいというよりも、私にも何か特別な力があれば、ワイアーム様のお役に立てるのではないかと考えただけで…そんなに深い意味はありませんわ…」

「そうか…それならいいのだよ。セーラ、僕を捨てたりしないよね?ずっと一緒にいてくれるよね。もし君を失ったら、僕は…」

 美しい銀髪が逆立ち、エメラルドグリーンの瞳が赤色に替わる。確かこの姿、法廷でレイリス様に見せた姿だわ。ワイアーム様の周りには、竜巻の様な強風が吹き荒れる。きっと感情が暴走しているのだわ。

 とにかく落ち着いてもらわないと、彼の体への負担が大きすぎる。

「ワイアーム様、落ち着いて下さい。私はあなた様の傍を離れたりしませんから。どうか心穏やかに」

 そう伝え、彼の唇に自分の唇を重ねた。すると風は落ち着き、ワイアーム様の姿も元に戻った。

「ごめんね、つい興奮してしまって。僕はまだ、感情が上手くコントロールできない様だ」

「いえ…私が要らぬことを申したのがいけないのですわ。興奮したせいで、龍の力を使ってしまったのではありませんか?とにかく、すぐにお休みください。まだあなた様は、本調子ではないのです。たとえ少しの力でも、体には大きな負担がかかりますわ」

 急いで寝室に連れて行き、ベッドに寝かせた。

「セーラも一緒に寝てくれるかい?君がないと、寝られなくて」

「ええ、もちろんです。ずっと傍にいますから、ご安心を」

 私の言葉を聞いたワイアーム様によって、布団に引きずり込まれた。そしてギュッと抱きしめられる。こうやって彼は、私を抱き枕にして眠るのだ。

 あっと言う間にワイアーム様が眠ってしまった。少し重いと感じる事はあるが、それでも私にとって、彼との時間は幸せそのものだ。このままずっと、こんな日々が続くとにいな。
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