全てを捨てて消え去ろうとしたのですが…なぜか殿下に執着されています

Karamimi

文字の大きさ
22 / 46

第22話:この命に代えても~ワイアーム視点~

しおりを挟む
 次に目覚めたのは、半月後だった。

 僕が意識を失っている半月の間で、セーラが身投げしたと言う話は、一気に広がっていた。ただ、レイリスを虐め、自分が裁かれる事に恐怖を抱いたセーラが、自ら命を絶ったという、嘘の噂が流れていたのだ。

 ふざけるな!セーラはそんな事はしていない。そんな僕の想いとは裏腹に

「陛下、セーラ嬢は身投げをし、既に半月以上行方不明です。このまま彼女を婚約者にしておくのは、いかがなものかと」

 そう言いだしたのは、クレイジー公爵だ。こいつ、どこまで腐っているのだ!誰のせいで、セーラが身を投げたと思っているのだ!今まで感じた事のない怒りが、こみ上げてくる。

 もちろん僕は、セーラと婚約を解消するつもり何てない。そんな僕の気持ちとは裏腹に、父に代わり新たに侯爵になったルイ殿こと、マレディア侯爵までも

「私も殿下と妹の婚約解消に賛成です。妹は未だ発見されておりません。それにセーラは、自ら身を投げたのです。たとえ生きていたとしても、今後はひっそりと暮らすことを本人も希望するでしょうし」

 セーラが身投げしてから、半月が過ぎている。海の神もまだ15歳のセーラを、ずっと傍に置く事は出来ないはずだ。

 とはいえ、まだ半月しか経っていないため、見つかっていない可能性は大いにある。それでも侯爵は、セーラが近々見つかる事を予想しているのだろう。

 まだセーラはあの男の元にいるのか!考えただけで、怒りが爆発しそうになる。でも今はダメだ。落ち着かないと。

 ゆっくり深呼吸をして、気持ちを落ち着かせる。

「マレディア侯爵殿もこうおっしゃっていますし、一度婚約を解消するという事でよろしいでしょうか?そして新たな婚約者には、我が娘なんていかがでしょう?」

 やはりこの男は、自分の娘を僕の婚約者にしたいのだな。ふざけるな!再び怒りがこみあげてくる。

「クレイジー公爵の気持ちは分かった。それでは、一旦セーラ嬢とワイアームの婚約を、白紙に戻すという事でどうかな?そもそも、婚約解消には本人の同意が必要だ。それにワイアームも、目覚めたばかりで混乱しているだろうし。とにかく、白紙と言う話でお願いしたい」

「僕も父上の意見に賛成です。セーラは全てに絶望し、身を投げたのです。そんな彼女に寄り添えなかった、僕の責任も大きいのです。彼女が見つかった時、極力彼女の意見を聞いてから、婚約は解消するべきだと思います」

 あいつらを地獄に叩き落すまでは、僕の本心をあいつらに知られる訳にはいかない。本当はセーラとの婚約を、白紙になんてしたくない。でも、今は仕方がない。あいつらを地獄に叩き落したら、再びセーラと婚約を結び直せばいい。

 セーラを苦しめたあいつらだけは、絶対に許せないのだ。

「分かりました、陛下と殿下がそうおっしゃるなら、仕方がありませんね。でも、いつまでも亡くなっているかもしれない令嬢を待っていても、仕方がありません。せめて期限を決めた方がよろしいのではないですか?」

「分かりました。それでしたら、3ヶ月時間をください。それまでにセーラが見つからなければ、正式に婚約を解消しましょう」

「承知いたしました。それでは3ヶ月が過ぎてセーラ嬢が見つからない場合は、ぜひ我が娘をよろしくお願いします」

「ああ、そうする事にするよ」

 極力笑顔でそう伝えた。今はあいつらに良い印象を与えないといけない。あいつらにこれからも近づくために…

「殿下、あのようなお約束をされてよいのですか?万が一セーラ様が見つからなかったら…それに見つかったとしても、きっと今のマレディア侯爵なら、婚約を解消する方向で話が進むでしょう」

「そんな事は分かっている。だから…この3ヶ月、いいや…1ヶ月でケリをつける。それにセーラはきっと近々見つかるはずだ」

「殿下の気持ちは分かります。ですがセーラ様は、自ら身を投げたのですよ。本当に海の神は、セーラ様を帰してくださるのでしょうか?」

「君の言い分も分かるが、セーラは必ず近いうちに地上に戻って来る。そしてきっと、マレディア侯爵はセーラを隠すだろう。領地辺りに隠すのかな?」

 セーラの事なら何でもわかるし、マレディア侯爵の口ぶりからして、もうセーラを僕には関わらせたくはないのだろう。マレディア侯爵は出来れば味方に付けておきたい。

 そんな思いで、マレディア侯爵には手紙を書いた。

 詳しい理由は書かずに

 “僕はレイリス嬢を愛していないし、婚約する事も絶対にない。時期が来たら、全てをお話しします”

 という内容だけ書いたのだ。

 それから半月後、マレディア侯爵と夫人、さらにマレディア元侯爵の妹でもあるキレイズ侯爵夫人がお忍びでマレディア侯爵領に向かったという情報が入って来た。きっとセーラが見つかったのだろう。

 領地に向かったという事は、領地の海で発見されたに違いない。

 セーラが見つかった今、これ以上悠長な事を言ってはいられない。この日から僕は、何かに憑りつかれたかのようなスピードで龍の力を使い、証拠を集め始めた。

「はぁ…はぁ…ゴホゴホ…」

「殿下、吐血されているではありませんか?もう十分証拠はそろいました。これ以上力を使えば、殿下のお命が…」

「いいや…まだだ、あいつらを確実に地獄に突き落とすためには、まだやらなければいけないことがある。あいつらの悪事を、徹底的に洗い出してやる」

 体は既に限界だ。それでも僕は、1ヶ月かけ、あいつらを断罪する材料をそろえた。そして

「以上の罪で、今すぐクレイジー公爵とレイリス嬢を捕まえろ。1週間後、裁判を行う。裁判所には既に連絡済みだ。それから、被害者の1人として、領地にいるセーラにも証言台に立ってもらう。侯爵以上の貴族には、今日の午後、父上から話しをしてもらう。ただ、マレディア侯爵には、僕から直接話をするつもりだ」

「承知いたしました。既に騎士団が待機しております。それから、マレディア侯爵にも、至急来ていただくように手配いたしましょう」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

7年ぶりに私を嫌う婚約者と目が合ったら自分好みで驚いた

小本手だるふ
恋愛
真実の愛に気づいたと、7年間目も合わせない婚約者の国の第二王子ライトに言われた公爵令嬢アリシア。 7年ぶりに目を合わせたライトはアリシアのどストライクなイケメンだったが、真実の愛に憧れを抱くアリシアはライトのためにと自ら婚約解消を提案するがのだが・・・・・・。 ライトとアリシアとその友人たちのほのぼの恋愛話。 ※よくある話で設定はゆるいです。 誤字脱字色々突っ込みどころがあるかもしれませんが温かい目でご覧ください。

妹の身代わりの花嫁は公爵様に溺愛される。

光子
恋愛
  お母様が亡くなってからの私、《セルフィ=ローズリカ》の人生は、最低なものだった。 お父様も、後妻としてやってきたお義母様も義妹も、私を家族として扱わず、家族の邪魔者だと邪険に扱った。 本邸から離れた場所に建てられた陳腐な小さな小屋、一日一食だけ運ばれる質素な食事、使用人すらも着ないようなつぎはぎだらけのボロボロの服。 ローズリカ子爵家の娘とは思えない扱い。 「お義姉様って、誰からも愛されないのね、可哀想」 義妹である《リシャル》の言葉は、正しかった。   「冷酷非情、血の公爵様――――お義姉様にピッタリの婚約者様ね」 家同士が決めた、愛のない結婚。 貴族令嬢として産まれた以上、愛のない結婚をすることも覚悟はしていた。どんな相手が婚約者でも構わない、どうせ、ここにいても、嫁いでも、酷い扱いをされるのは変わらない。 だけど、私はもう、貴女達を家族とは思えなくなった。 「お前の存在価値など、可愛い妹の身代わりの花嫁になるくらいしか無いだろう! そのために家族の邪魔者であるお前を、この家に置いてやっているんだ!」 お父様の娘はリシャルだけなの? 私は? 私も、お父様の娘では無いの? 私はただリシャルの身代わりの花嫁として、お父様の娘でいたの? そんなの嫌、それなら私ももう、貴方達を家族と思わない、家族をやめる! リシャルの身代わりの花嫁になるなんて、嫌! 死んでも嫌! 私はこのまま、お父様達の望み通り義妹の身代わりの花嫁になって、不幸になるしかない。そう思うと、絶望だった。 「――俺の婚約者に随分、酷い扱いをしているようだな、ローズリカ子爵」 でも何故か、冷酷非情、血の公爵と呼ばれる《アクト=インテレクト》様、今まで一度も顔も見に来たことがない婚約者様は、私を救いに来てくれた。 「どうぞ、俺の婚約者である立場を有効活用して下さい。セルフィは俺の、未来のインテレクト公爵夫人なのですから」 この日から、私の立場は全く違うものになった。 私は、アクト様の婚約者――――妹の身代わりの花嫁は、婚約者様に溺愛される。 不定期更新。 この作品は私の考えた世界の話です。魔法あり。設定ゆるゆるです。よろしくお願いします。

〖完結〗では、婚約解消いたしましょう。

藍川みいな
恋愛
三年婚約しているオリバー殿下は、最近別の女性とばかり一緒にいる。 学園で行われる年に一度のダンスパーティーにも、私ではなくセシリー様を誘っていた。まるで二人が婚約者同士のように思える。 そのダンスパーティーで、オリバー殿下は私を責め、婚約を考え直すと言い出した。 それなら、婚約を解消いたしましょう。 そしてすぐに、婚約者に立候補したいという人が現れて……!? 設定ゆるゆるの、架空の世界のお話しです。

鈍感令嬢は分からない

yukiya
恋愛
 彼が好きな人と結婚したいようだから、私から別れを切り出したのに…どうしてこうなったんだっけ?

兄にいらないと言われたので勝手に幸せになります

毒島醜女
恋愛
モラハラ兄に追い出された先で待っていたのは、甘く幸せな生活でした。 侯爵令嬢ライラ・コーデルは、実家が平民出の聖女ミミを養子に迎えてから実の兄デイヴィッドから冷遇されていた。 家でも学園でも、デビュタントでも、兄はいつもミミを最優先する。 友人である王太子たちと一緒にミミを持ち上げてはライラを貶めている始末だ。 「ミミみたいな可愛い妹が欲しかった」 挙句の果てには兄が婚約を破棄した辺境伯家の元へ代わりに嫁がされることになった。 ベミリオン辺境伯の一家はそんなライラを温かく迎えてくれた。 「あなたの笑顔は、どんな宝石や星よりも綺麗に輝いています!」 兄の元婚約者の弟、ヒューゴは不器用ながらも優しい愛情をライラに与え、甘いお菓子で癒してくれた。 ライラは次第に笑顔を取り戻し、ベミリオン家で幸せになっていく。 王都で聖女が起こした騒動も知らずに……

婚約破棄の夜の余韻~婚約者を奪った妹の高笑いを聞いて姉は旅に出る~

岡暁舟
恋愛
第一王子アンカロンは婚約者である公爵令嬢アンナの妹アリシアを陰で溺愛していた。そして、そのことに気が付いたアンナは二人の関係を糾弾した。 「ばれてしまっては仕方がないですわね?????」 開き直るアリシアの姿を見て、アンナはこれ以上、自分には何もできないことを悟った。そして……何か目的を見つけたアンナはそのまま旅に出るのだった……。

〖完結〗時戻りしたので、運命を変えることにします。

藍川みいな
恋愛
愛するグレッグ様と結婚して、幸せな日々を過ごしていた。 ある日、カフェでお茶をしていると、暴走した馬車が突っ込んで来た。とっさに彼を庇った私は、視力を失ってしまう。 目が見えなくなってしまった私の目の前で、彼は使用人とキスを交わしていた。その使用人は、私の親友だった。 気付かれていないと思った二人の行為はエスカレートしていき、私の前で、私のベッドで愛し合うようになっていった。 それでもいつか、彼は戻って来てくれると信じて生きて来たのに、親友に毒を盛られて死んでしまう。 ……と思ったら、なぜか事故に会う前に時が戻っていた。 絶対に同じ間違いはしない。 設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。 全四話で完結になります。

【完結】愛しき冷血宰相へ別れの挨拶を

川上桃園
恋愛
「どうかもう私のことはお忘れください。閣下の幸せを、遠くから見守っております」  とある国で、宰相閣下が結婚するという新聞記事が出た。  これを見た地方官吏のコーデリアは突如、王都へ旅立った。亡き兄の友人であり、年上の想い人でもある「彼」に別れを告げるために。  だが目当ての宰相邸では使用人に追い返されて途方に暮れる。そこに出くわしたのは、彼と結婚するという噂の美しき令嬢の姿だった――。 新聞と涙 それでも恋をする  あなたの照らす道は祝福《コーデリア》 君のため道に灯りを点けておく 話したいことがある 会いたい《クローヴィス》  これは、冷血宰相と呼ばれた彼の結婚を巡る、恋のから騒ぎ。最後はハッピーエンドで終わるめでたしめでたしのお話です。 第22回書き出し祭り参加作品 2025.1.26 女性向けホトラン1位ありがとうございます 2025.2.14 後日談を投稿しました

処理中です...