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第15話:やっと見つけた~ワイアーム視点~
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「殿下、今日も海に出掛けられるのですか?」
「ああ、そうだよ。あの子はきっとまた、海に現れるはずだから」
運命の出会いをしてから、早1ヶ月。父上の指示の元、密かにあの子を探しているが、中々見つからない。海で歌っていた少女と言う手がかりしかないため、捜査は難航しているのだ。ただ、あんな海で歌を歌っているという事は、平民だろうという事で、平民を中心に捜査が行われているのだ。
何人か心当たりのある女性が王宮に連れてこられたが、皆違った。
僕もじっとしていることが出来ずに、毎日海に向かっている。きっとあの海に行けば、いつかあの子がまた来てくれるはずだ。そう思っている。
今日も朝から海で張り込みだ。
「殿下、私共が海で見張っておりますので、どうか殿下は宮殿にお戻りください」
「いいや、僕が一番にあの子を見つけたんだ。それに僕しかあの子の事を知らないだろう?」
「確かに私は、あの少女の顔をはっきりとは覚えておりませんが…」
「それならやっぱり、僕しかわからないだろう?今日は来てくれるかな?」
あの子と出会ったこの場所に来るだけで、僕の心は弾む。海になんて全く興味がなかったが、あの子が見つめていたと思うと、海ですら愛おしく感じる。
「殿下、既に4時間海におります。そろそろ帰りましょう」
「もう4時間も経ったのかい?」
あの子の事を考えていると、時間があっという間に過ぎるから不思議だ。仕方ない、そろそろ帰るか。そう思い、クルリと反対を向いた時だった。
「やっと海に来られたわ。もう、お父様は心配性なのだから」
「1週間も意識を失われていたのですから、当然ですわ。とにかく、今日は海を見たらすぐに帰りましょう。また旦那様が心配いたします」
「ええ、分かっているわ。お父様も海は大好きと言っていたのに、なぜか私が海に行く事は、あまり快く思わないのよね…どうしてかしら?」
「旦那様には旦那様のお考えがあるのでしょう」
この声は…
ゆっくり後ろを振り向くと、そこにはあの時の少女がいた。間違いない、あの子だ…
「見つけた…やっと見つけた。僕の大切な子…」
「殿下、まさかあの方が…」
あの子に会えた嬉しさから、一気に感情が溢れ出す。その瞬間、嵐の様な風が吹き荒れる。
触れたい…あの子に…僕のものにしたい…
「きゃぁぁ、急になに?嵐が来たの?」
「お嬢様、すぐに馬車にお戻り下さい」
急いで馬車に戻っていくあの子。待って…もう逃がさないよ。
彼女を追って走り出そうとした時だった。
「殿下、いけません」
近くにいた執事が、僕の腕に何かを刺したのだ。これは、鎮静剤…しまった…
感情がまだコントロールできない僕は、鎮静剤を打たれるとそのまま意識を失う。案の定僕は、その場で意識を失ったのだった。
ただ、すぐに目を覚ました。
「あの子は?あの子はどこにいるのだい?せっかく会えたのに!どうして僕の邪魔をした?」
再び感情が溢れ出す。そんな僕に対し
「落ち着いて下さい、殿下。今日ははっきりと顔を見る事が出来ましたので、あの方が誰なのか分かっております。陛下や王妃殿下に話しをし、すぐに婚約話を進めましょう」
なぜか笑顔の執事。どうしてこんなにも、嬉しそうなんだ?まあいい、あの子が誰なのか、知っている様だ。それにすぐに婚約話を進めると言っていたし…
王宮に着くと、執事は僕を連れ、両親の元へと向かった。
「陛下、王妃殿下、殿下のお相手が分かりました」
「それは本当か?それで一体、どこの娘なんだい?やはり平民か?」
「いえ、お相手はマレディア侯爵家のセーラ嬢です」
執事が自信満々に、父上たちに告げたのだ。そうか、あの子はセーラと言うのか。セーラ…早く会いたい…
「マレディア侯爵家のセーラ嬢だと?」
「はい、間違いありません。私は貴族のお顔とお名前は、ほぼ全員把握しております。あの方は間違いなく、マレディア侯爵家のセーラ嬢です」
「そう、マレディア侯爵家のセーラ嬢なら、身分的にも問題はないわ。ただ…マレディア侯爵がなんと言うか…」
「確かに厳しそうだな。だが、そんな事は言っていられない。ワイアームが執着してしまった以上、きっと侯爵を亡き者にしてでも、手に入れようとするはずだ。とにかく明日にでも、マレディア侯爵を呼び出そう。それに彼は、一応この国の貴族だ。何が何でも、了承を得ないと」
「そうね、マレディア侯爵には全てを話して、何とか協力してもらわないと。すぐに侯爵家に使いを出して」
母上が近くにいた使用人に、指示を出している。明日侯爵が来るのか。それなら…
「それでしたら、セーラも一緒に連れて来てください。僕はセーラに会いたくてたまらない。今すぐにでも、僕の傍に置きたいくらいだ…」
「ワイアーム、落ち着きなさい。そうだな、執事が言うのだから間違いはないと思うが、本当にセーラ嬢がワイアームの運命の相手なのか、確認しないといけないし。明日セーラ嬢と一緒に登城する様に、マレディア侯爵に伝えよう」
明日やっと、セーラに会える…
セーラ…
彼女の笑顔を思い出しただけで、胸が熱くなる。セーラ、早く会いたい…
早く明日にならないかな…
「ああ、そうだよ。あの子はきっとまた、海に現れるはずだから」
運命の出会いをしてから、早1ヶ月。父上の指示の元、密かにあの子を探しているが、中々見つからない。海で歌っていた少女と言う手がかりしかないため、捜査は難航しているのだ。ただ、あんな海で歌を歌っているという事は、平民だろうという事で、平民を中心に捜査が行われているのだ。
何人か心当たりのある女性が王宮に連れてこられたが、皆違った。
僕もじっとしていることが出来ずに、毎日海に向かっている。きっとあの海に行けば、いつかあの子がまた来てくれるはずだ。そう思っている。
今日も朝から海で張り込みだ。
「殿下、私共が海で見張っておりますので、どうか殿下は宮殿にお戻りください」
「いいや、僕が一番にあの子を見つけたんだ。それに僕しかあの子の事を知らないだろう?」
「確かに私は、あの少女の顔をはっきりとは覚えておりませんが…」
「それならやっぱり、僕しかわからないだろう?今日は来てくれるかな?」
あの子と出会ったこの場所に来るだけで、僕の心は弾む。海になんて全く興味がなかったが、あの子が見つめていたと思うと、海ですら愛おしく感じる。
「殿下、既に4時間海におります。そろそろ帰りましょう」
「もう4時間も経ったのかい?」
あの子の事を考えていると、時間があっという間に過ぎるから不思議だ。仕方ない、そろそろ帰るか。そう思い、クルリと反対を向いた時だった。
「やっと海に来られたわ。もう、お父様は心配性なのだから」
「1週間も意識を失われていたのですから、当然ですわ。とにかく、今日は海を見たらすぐに帰りましょう。また旦那様が心配いたします」
「ええ、分かっているわ。お父様も海は大好きと言っていたのに、なぜか私が海に行く事は、あまり快く思わないのよね…どうしてかしら?」
「旦那様には旦那様のお考えがあるのでしょう」
この声は…
ゆっくり後ろを振り向くと、そこにはあの時の少女がいた。間違いない、あの子だ…
「見つけた…やっと見つけた。僕の大切な子…」
「殿下、まさかあの方が…」
あの子に会えた嬉しさから、一気に感情が溢れ出す。その瞬間、嵐の様な風が吹き荒れる。
触れたい…あの子に…僕のものにしたい…
「きゃぁぁ、急になに?嵐が来たの?」
「お嬢様、すぐに馬車にお戻り下さい」
急いで馬車に戻っていくあの子。待って…もう逃がさないよ。
彼女を追って走り出そうとした時だった。
「殿下、いけません」
近くにいた執事が、僕の腕に何かを刺したのだ。これは、鎮静剤…しまった…
感情がまだコントロールできない僕は、鎮静剤を打たれるとそのまま意識を失う。案の定僕は、その場で意識を失ったのだった。
ただ、すぐに目を覚ました。
「あの子は?あの子はどこにいるのだい?せっかく会えたのに!どうして僕の邪魔をした?」
再び感情が溢れ出す。そんな僕に対し
「落ち着いて下さい、殿下。今日ははっきりと顔を見る事が出来ましたので、あの方が誰なのか分かっております。陛下や王妃殿下に話しをし、すぐに婚約話を進めましょう」
なぜか笑顔の執事。どうしてこんなにも、嬉しそうなんだ?まあいい、あの子が誰なのか、知っている様だ。それにすぐに婚約話を進めると言っていたし…
王宮に着くと、執事は僕を連れ、両親の元へと向かった。
「陛下、王妃殿下、殿下のお相手が分かりました」
「それは本当か?それで一体、どこの娘なんだい?やはり平民か?」
「いえ、お相手はマレディア侯爵家のセーラ嬢です」
執事が自信満々に、父上たちに告げたのだ。そうか、あの子はセーラと言うのか。セーラ…早く会いたい…
「マレディア侯爵家のセーラ嬢だと?」
「はい、間違いありません。私は貴族のお顔とお名前は、ほぼ全員把握しております。あの方は間違いなく、マレディア侯爵家のセーラ嬢です」
「そう、マレディア侯爵家のセーラ嬢なら、身分的にも問題はないわ。ただ…マレディア侯爵がなんと言うか…」
「確かに厳しそうだな。だが、そんな事は言っていられない。ワイアームが執着してしまった以上、きっと侯爵を亡き者にしてでも、手に入れようとするはずだ。とにかく明日にでも、マレディア侯爵を呼び出そう。それに彼は、一応この国の貴族だ。何が何でも、了承を得ないと」
「そうね、マレディア侯爵には全てを話して、何とか協力してもらわないと。すぐに侯爵家に使いを出して」
母上が近くにいた使用人に、指示を出している。明日侯爵が来るのか。それなら…
「それでしたら、セーラも一緒に連れて来てください。僕はセーラに会いたくてたまらない。今すぐにでも、僕の傍に置きたいくらいだ…」
「ワイアーム、落ち着きなさい。そうだな、執事が言うのだから間違いはないと思うが、本当にセーラ嬢がワイアームの運命の相手なのか、確認しないといけないし。明日セーラ嬢と一緒に登城する様に、マレディア侯爵に伝えよう」
明日やっと、セーラに会える…
セーラ…
彼女の笑顔を思い出しただけで、胸が熱くなる。セーラ、早く会いたい…
早く明日にならないかな…
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