10 / 46
第10話:裁判が始まりました
しおりを挟む
案内された部屋に入ると、傍聴席には既にたくさんの方たちが座っていた。そして私とお兄様は、並んでイスに座る。お兄様の隣には、なぜかクレイジー公爵様の次兄夫婦の姿も。
確かクレイジー元公爵夫妻が事故で亡くなった後、次男と三男(現クレイジー公爵様)による、激しいお家争いが起こったのだ。本来なら次男の方が継ぐはずだったのだが、三男でもある現クレイジー公爵様が自分が継ぎたいと訴えて、色々と大変だったそうだ。
一族を巻き込む骨肉の争いが繰り広げられたと聞く。結局最終的には、次男の方が病気を患った事で、三男でもある現公爵が爵位を継ぐという事で話は纏まったらしい。
彼らも被害者として出廷しているという事は、お家争いでも何か問題があったのだろう。
そして私達の向かいには、ワイアーム殿下と陛下、何人かの公爵様たちも座っていた。さらに裁判長と思われる男性、その周りには裁判官と思われる方たちが数人いる。
何なの、この重苦しい空気は…
その時だった。
鎖で繋がれたクレイジー公爵様とレイリス様がやって来たのだ。公爵家の人間とは思えない程、質素な服を着ている2人。それに何だか2人ともやつれている。彼らの姿を見た傍聴席の貴族たちも、騒めいている。それくらい、衝撃的な姿だったのだ。
愛する女性があのような姿になってしまって、さぞ殿下はショックを受けているだろう。極力殿下を見ない様にしていたが、つい気になって殿下の方を見てしまった。
すると…
真っすぐ私を見つめる殿下と目が合った。その瞬間、嬉しそうに微笑んだのだ。どうして私を見て笑っているの?急いで視線をそらした。
“セーラ様、顔色がよくありませんが、大丈夫ですか?あなた様の証言まで、別室へ休憩する事も出来ますよ”
すぐに侍女が話しかけてきてくれる。
“お心使いありがとうございます。ですが私は大丈夫ですわ”
そう笑顔で伝えた。私ったらダメね、殿下の顔を見ただけで、動揺するだなんて。とにかくこの裁判が終わったら、再び領地に戻ろう。その為にも、この裁判を見届けないと。
再びレイリス様たちの方を見つめた。俯き唇をかむクレイジー公爵様に対し、今にも泣きそうな顔をしているレイリス様。
そして裁判が始まった。
「それではクレイジー公爵と、レイリス嬢の裁判を始めます。ワイアーム殿下より、今回彼らの罪について証言をして頂きます」
お兄様が言っていた通り、ワイアーム殿下が今回の件を調べた様だ。証言台に立った殿下は、クレイジー公爵とレイリス様の悪事について説明し始めた。
「まずはこちらの資料をご覧ください。クレイジー公爵は自分の娘、レイリス嬢を私の妻にするべく、レイリス嬢を私に近づかせました。そして私の婚約者、セーラに対する悪い噂を流したのです。それはどれも事実無根の内容ばかり。こちらの資料に詳細が書かれております」
スクリーンに映し出された資料には、レイリス様の証言と、それが嘘であった証拠が次々と映し出されていく。
「貴族社会では、特定の人物を嘘の証言で陥れる事を禁止する法律があります。レイリス嬢が行った行為は、セーラに対する侮辱罪及び、名誉棄損に当たる重大な罪です。セーラは彼女の嘘に追い詰められ、自ら命を絶とうとしたほどです。私の婚約者を追い詰め、命まで奪おうとした行為は、重罪に処されるべきです」
ワイアーム殿下が裁判長に向かって訴えている。まさかワイアーム殿下が、私の為にこんな風に言って下さるだなんて…誰も私の事なんてわかってくれない、そう思っていたけれど、そうではなかったのね…
実際ワイアーム殿下の話を聞いて、なんだか心が温かい気持ちになった。
「セーラ嬢、証言台に来ていただけますか?」
「はい」
よくわからないが、私も何か証言をしないといけない様だ。
“セーラ様、参りましょう。大丈夫ですよ、あなた様は聞かれた事に対し、正直に答えればよいだけですから”
耳元でマーラがそっと呟いた。マーラに連れられ、証言台までやって来る。まさか自分が証言台に立つだなんて。皆が私に注目をしている、何だか緊張するわ。
「セーラ嬢、あなたはレイリス嬢の嘘で、随分傷ついたと聞いております。自ら海に身を投げたのは本当ですか?」
裁判長から質問された。素直に、正直に答えればよいのよね。
「はい、本当でございます。私は身に覚えのない事を色々と噂され、さらに私がレイリス様を暗殺しようとした罪で、裁かれるという話を聞いて…父を亡くし、母はショックで倒れ、兄や義理姉が必死に侯爵家を立て直そうとしている中、私が生きているせいで、皆に迷惑がかかる。私はいない方がいい…そう思い、身を投げました」
あの時の事を思い出し、涙が溢れ出る。
「辛い話をさせてしまいましたね。セーラ嬢がレイリス嬢を毒殺しようとしたという噂も、レイリス嬢が流したという証拠があります。その嘘のせいで、セーラ嬢は追い詰められ、自ら海に身を投げたという事ですね?」
「確かにそうなのですが…私の心が弱かった事も、問題だったと考えております。あの時は、全てが嫌になってしまって…決してレイリス様のせいで、身を投げた訳ではありません」
確かにレイリス様には色々と追いつめられたのは確かだが、全てがレイリス様のせいと言う訳ではない。
確かクレイジー元公爵夫妻が事故で亡くなった後、次男と三男(現クレイジー公爵様)による、激しいお家争いが起こったのだ。本来なら次男の方が継ぐはずだったのだが、三男でもある現クレイジー公爵様が自分が継ぎたいと訴えて、色々と大変だったそうだ。
一族を巻き込む骨肉の争いが繰り広げられたと聞く。結局最終的には、次男の方が病気を患った事で、三男でもある現公爵が爵位を継ぐという事で話は纏まったらしい。
彼らも被害者として出廷しているという事は、お家争いでも何か問題があったのだろう。
そして私達の向かいには、ワイアーム殿下と陛下、何人かの公爵様たちも座っていた。さらに裁判長と思われる男性、その周りには裁判官と思われる方たちが数人いる。
何なの、この重苦しい空気は…
その時だった。
鎖で繋がれたクレイジー公爵様とレイリス様がやって来たのだ。公爵家の人間とは思えない程、質素な服を着ている2人。それに何だか2人ともやつれている。彼らの姿を見た傍聴席の貴族たちも、騒めいている。それくらい、衝撃的な姿だったのだ。
愛する女性があのような姿になってしまって、さぞ殿下はショックを受けているだろう。極力殿下を見ない様にしていたが、つい気になって殿下の方を見てしまった。
すると…
真っすぐ私を見つめる殿下と目が合った。その瞬間、嬉しそうに微笑んだのだ。どうして私を見て笑っているの?急いで視線をそらした。
“セーラ様、顔色がよくありませんが、大丈夫ですか?あなた様の証言まで、別室へ休憩する事も出来ますよ”
すぐに侍女が話しかけてきてくれる。
“お心使いありがとうございます。ですが私は大丈夫ですわ”
そう笑顔で伝えた。私ったらダメね、殿下の顔を見ただけで、動揺するだなんて。とにかくこの裁判が終わったら、再び領地に戻ろう。その為にも、この裁判を見届けないと。
再びレイリス様たちの方を見つめた。俯き唇をかむクレイジー公爵様に対し、今にも泣きそうな顔をしているレイリス様。
そして裁判が始まった。
「それではクレイジー公爵と、レイリス嬢の裁判を始めます。ワイアーム殿下より、今回彼らの罪について証言をして頂きます」
お兄様が言っていた通り、ワイアーム殿下が今回の件を調べた様だ。証言台に立った殿下は、クレイジー公爵とレイリス様の悪事について説明し始めた。
「まずはこちらの資料をご覧ください。クレイジー公爵は自分の娘、レイリス嬢を私の妻にするべく、レイリス嬢を私に近づかせました。そして私の婚約者、セーラに対する悪い噂を流したのです。それはどれも事実無根の内容ばかり。こちらの資料に詳細が書かれております」
スクリーンに映し出された資料には、レイリス様の証言と、それが嘘であった証拠が次々と映し出されていく。
「貴族社会では、特定の人物を嘘の証言で陥れる事を禁止する法律があります。レイリス嬢が行った行為は、セーラに対する侮辱罪及び、名誉棄損に当たる重大な罪です。セーラは彼女の嘘に追い詰められ、自ら命を絶とうとしたほどです。私の婚約者を追い詰め、命まで奪おうとした行為は、重罪に処されるべきです」
ワイアーム殿下が裁判長に向かって訴えている。まさかワイアーム殿下が、私の為にこんな風に言って下さるだなんて…誰も私の事なんてわかってくれない、そう思っていたけれど、そうではなかったのね…
実際ワイアーム殿下の話を聞いて、なんだか心が温かい気持ちになった。
「セーラ嬢、証言台に来ていただけますか?」
「はい」
よくわからないが、私も何か証言をしないといけない様だ。
“セーラ様、参りましょう。大丈夫ですよ、あなた様は聞かれた事に対し、正直に答えればよいだけですから”
耳元でマーラがそっと呟いた。マーラに連れられ、証言台までやって来る。まさか自分が証言台に立つだなんて。皆が私に注目をしている、何だか緊張するわ。
「セーラ嬢、あなたはレイリス嬢の嘘で、随分傷ついたと聞いております。自ら海に身を投げたのは本当ですか?」
裁判長から質問された。素直に、正直に答えればよいのよね。
「はい、本当でございます。私は身に覚えのない事を色々と噂され、さらに私がレイリス様を暗殺しようとした罪で、裁かれるという話を聞いて…父を亡くし、母はショックで倒れ、兄や義理姉が必死に侯爵家を立て直そうとしている中、私が生きているせいで、皆に迷惑がかかる。私はいない方がいい…そう思い、身を投げました」
あの時の事を思い出し、涙が溢れ出る。
「辛い話をさせてしまいましたね。セーラ嬢がレイリス嬢を毒殺しようとしたという噂も、レイリス嬢が流したという証拠があります。その嘘のせいで、セーラ嬢は追い詰められ、自ら海に身を投げたという事ですね?」
「確かにそうなのですが…私の心が弱かった事も、問題だったと考えております。あの時は、全てが嫌になってしまって…決してレイリス様のせいで、身を投げた訳ではありません」
確かにレイリス様には色々と追いつめられたのは確かだが、全てがレイリス様のせいと言う訳ではない。
1,422
あなたにおすすめの小説
7年ぶりに私を嫌う婚約者と目が合ったら自分好みで驚いた
小本手だるふ
恋愛
真実の愛に気づいたと、7年間目も合わせない婚約者の国の第二王子ライトに言われた公爵令嬢アリシア。
7年ぶりに目を合わせたライトはアリシアのどストライクなイケメンだったが、真実の愛に憧れを抱くアリシアはライトのためにと自ら婚約解消を提案するがのだが・・・・・・。
ライトとアリシアとその友人たちのほのぼの恋愛話。
※よくある話で設定はゆるいです。
誤字脱字色々突っ込みどころがあるかもしれませんが温かい目でご覧ください。
私の息子を“愛人の子の下”にすると言った夫へ──その瞬間、正妻の役目は終わりました
放浪人
恋愛
政略結婚で伯爵家に嫁いだ侯爵令嬢リディアは、愛のない夫婦関係を「正妻の務め」と割り切り、赤字だらけの領地を立て直してきた。帳簿を整え、税の徴収を正し、交易路を広げ、収穫が不安定な年には備蓄を回す――伯爵家の体裁を保ってきたのは、いつも彼女の実務だった。
だがある日、夫オスヴァルドが屋敷に連れ帰ったのは“幼馴染”の女とその息子。
「彼女は可哀想なんだ」
「この子を跡取りにする」
そして人前で、平然と言い放つ。
――「君の息子は、愛人の子の“下”で学べばいい」
その瞬間、リディアの中で何かが静かに終わった。怒鳴らない。泣かない。微笑みすら崩さない。
「承知しました。では――正妻の役目は終わりましたね」
冷徹公爵の誤解された花嫁
柴田はつみ
恋愛
片思いしていた冷徹公爵から求婚された令嬢。幸せの絶頂にあった彼女を打ち砕いたのは、舞踏会で耳にした「地味女…」という言葉だった。望まれぬ花嫁としての結婚に、彼女は一年だけ妻を務めた後、離縁する決意を固める。
冷たくも美しい公爵。誤解とすれ違いを繰り返す日々の中、令嬢は揺れる心を抑え込もうとするが――。
一年後、彼女が選ぶのは別れか、それとも永遠の契約か。
〖完結〗では、婚約解消いたしましょう。
藍川みいな
恋愛
三年婚約しているオリバー殿下は、最近別の女性とばかり一緒にいる。
学園で行われる年に一度のダンスパーティーにも、私ではなくセシリー様を誘っていた。まるで二人が婚約者同士のように思える。
そのダンスパーティーで、オリバー殿下は私を責め、婚約を考え直すと言い出した。
それなら、婚約を解消いたしましょう。
そしてすぐに、婚約者に立候補したいという人が現れて……!?
設定ゆるゆるの、架空の世界のお話しです。
妹の身代わりの花嫁は公爵様に溺愛される。
光子
恋愛
お母様が亡くなってからの私、《セルフィ=ローズリカ》の人生は、最低なものだった。
お父様も、後妻としてやってきたお義母様も義妹も、私を家族として扱わず、家族の邪魔者だと邪険に扱った。
本邸から離れた場所に建てられた陳腐な小さな小屋、一日一食だけ運ばれる質素な食事、使用人すらも着ないようなつぎはぎだらけのボロボロの服。
ローズリカ子爵家の娘とは思えない扱い。
「お義姉様って、誰からも愛されないのね、可哀想」
義妹である《リシャル》の言葉は、正しかった。
「冷酷非情、血の公爵様――――お義姉様にピッタリの婚約者様ね」
家同士が決めた、愛のない結婚。
貴族令嬢として産まれた以上、愛のない結婚をすることも覚悟はしていた。どんな相手が婚約者でも構わない、どうせ、ここにいても、嫁いでも、酷い扱いをされるのは変わらない。
だけど、私はもう、貴女達を家族とは思えなくなった。
「お前の存在価値など、可愛い妹の身代わりの花嫁になるくらいしか無いだろう! そのために家族の邪魔者であるお前を、この家に置いてやっているんだ!」
お父様の娘はリシャルだけなの? 私は? 私も、お父様の娘では無いの? 私はただリシャルの身代わりの花嫁として、お父様の娘でいたの?
そんなの嫌、それなら私ももう、貴方達を家族と思わない、家族をやめる!
リシャルの身代わりの花嫁になるなんて、嫌! 死んでも嫌!
私はこのまま、お父様達の望み通り義妹の身代わりの花嫁になって、不幸になるしかない。そう思うと、絶望だった。
「――俺の婚約者に随分、酷い扱いをしているようだな、ローズリカ子爵」
でも何故か、冷酷非情、血の公爵と呼ばれる《アクト=インテレクト》様、今まで一度も顔も見に来たことがない婚約者様は、私を救いに来てくれた。
「どうぞ、俺の婚約者である立場を有効活用して下さい。セルフィは俺の、未来のインテレクト公爵夫人なのですから」
この日から、私の立場は全く違うものになった。
私は、アクト様の婚約者――――妹の身代わりの花嫁は、婚約者様に溺愛される。
不定期更新。
この作品は私の考えた世界の話です。魔法あり。設定ゆるゆるです。よろしくお願いします。
【完】夫から冷遇される伯爵夫人でしたが、身分を隠して踊り子として夜働いていたら、その夫に見初められました。
112
恋愛
伯爵家同士の結婚、申し分ない筈だった。
エッジワーズ家の娘、エリシアは踊り子の娘だったが為に嫁ぎ先の夫に冷遇され、虐げられ、屋敷を追い出される。
庭の片隅、掘っ立て小屋で生活していたエリシアは、街で祝祭が開かれることを耳にする。どうせ誰からも顧みられないからと、こっそり抜け出して街へ向かう。すると街の中心部で民衆が音楽に合わせて踊っていた。その輪の中にエリシアも入り一緒になって踊っていると──
幼馴染同士が両想いらしいので応援することにしたのに、なぜか彼の様子がおかしい
今川幸乃
恋愛
カーラ、ブライアン、キャシーの三人は皆中堅貴族の生まれで、年も近い幼馴染同士。
しかしある時カーラはたまたま、ブライアンがキャシーに告白し、二人が結ばれるのを見てしまった(と勘違いした)。
そのためカーラは自分は一歩引いて二人の仲を応援しようと決意する。
が、せっかくカーラが応援しているのになぜかブライアンの様子がおかしくて……
※短め、軽め
その眼差しは凍てつく刃*冷たい婚約者にウンザリしてます*
音爽(ネソウ)
恋愛
義妹に優しく、婚約者の令嬢には極寒対応。
塩対応より下があるなんて……。
この婚約は間違っている?
*2021年7月完結
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる