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第13話:この気持ちは封印しよう~イジャ視点~
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電車を降りると、エリーの希望で2人手を繋いで浜辺に向かう事にした。海を見ると、これまた嬉しそうに走って行くエリー。本当に無邪気だ。楽しそうに遊ぶエリーを、ただボーっと見つめる。
そう言えば、僕はエリザの笑顔をあまり見た事がなかったな…そのせいか、エリーの嬉しそうな顔は、物凄く新鮮だ!エリーはとにかくよく笑う。まだ2日しか一緒にいないが、それでもエリーの笑顔は何度も僕を癒してくれた。
エリザもこんな風に笑っていたのかな…そう思ったら、胸の奥がズキリと痛んだ。僕はまだ、エリザへの思いを引きずっているのだろう…だからエリーの事も、エリザと重ねて見ているに違いない!
そうでなかったら、出会って2日目の少女に、こんな感情を抱く訳がないから…そう自分に言い聞かせる。その時だった。
「イジャ様もこっちにいらしてはいかがですか?」
嬉しそうに僕に声を掛けて来るエリー。
「僕はいいよ」
そう断ると、心底残念そうに再び海に入って行った。本当にあの子は自分の感情を隠さないな…そう思ったら、なんだか笑いが込み上げて来た。そう、エリーはずっと見ていても飽きないくらい、感情豊かなのだ!
げんに貝殻を嬉しそうにこっちに見せに来たエリー。かと思いきや、今度は真剣な表情で貝殻を探している。そんなエリーを見つめていると、時間が経つのも忘れてしまう。気が付いた時には、すっかり日が傾いていた。しまった!せっかくだから街も見たいと思っていたんだった!
急いでエリーを呼び戻し、街を見て回った。嬉しそうに真珠をじっと見つめるエリーに、つい買い与えてしまった。正直財布には響くが、それでもエリーの嬉しそうな顔を見たら、プレゼントした事に後悔はない。むしろ良かったとすら思っている。
その後は、近くのお店で食事を済ます。目を輝かせて「海の見える街に住みたい!」そう話すエリー。そんなエリーの顔を見ていたら、つい
「ちょうど次に行く国は海があるから、海沿いにしばらく住む事にしよう」
そう答えてしまった。本当は次の国は通過するだけにしようと思っていたのだが、エリーが喜んでくれるならそれでいい。とにかく僕は、エリーの喜ぶ姿が見たいんだ。エリーが喜べば、なんだかしっかり罪滅ぼしが出来ている気になるから!そう自分に言い聞かせた。
食後はバスに乗り、飛行船で次の国へと向かう。ここでも目を輝かせているエリー。そんなエリーは何を思ったのか、僕が読んでいる本を読みたいと言い出した。でも…
すぐに僕にもたれかかって眠ってしまった。本は1ページ目を開いた状態で。このままでは風邪を引いてしまう。そっと魔法で毛布を出し、エリーに掛ける。スヤスヤと気持ちよさそうな顔で眠っている。そんなエリーを見ていたら、なんだか僕まで眠くなってきた。
そう言えば、昨日の夜はほとんど寝られなかったんだったな…回復魔法を掛けたものの、やはり万全ではない。結局エリーの温もりを感じながら、心地よい眠りについてしまったのだった。
次に目を覚ました時は、既に目的地に到着し、皆が続々と降り始めている時だった。しまった!寝過ごした!急いで毛布を消し、出発の準備を整えてエリーを起こした。そして空港を後にし、事前に予約しておいたホテルに向かった。
それにしてもこのホテル、かなり可愛らしい作りになっている。正直落ち着かないが、エリーが気に入ったのならいいか!早速荷物を置いて、街に出た。でも物凄く人が多くて、途中でエリーとはぐれてしまった!
クソ!しっかり手を繋いでいたはずなのに!急いでエリーを探すと、どうやら別の魔力も近くに感じる!もしかして、エリーの両親が?そう思ったが、違った様だ!
エリーの元に駆け付けると、中年の女性が出迎えてくれた。きっと僕が来る事を知っていたのだろう。嬉しそうに僕に抱き着くエリー!可愛くてつい抱きしめ返してしまった。
でも、これ以上エリーに触れては駄目だ!そう自分に言い聞かせ、エリーを引き離した。エリーと一緒にいたヴィクトリアさんと言う女性は、なんと僕達に住む家と仕事を与えてくれると言い出したのだ。
魔力から読み取る限り悪い人ではなさそうだし、エリーも気に入っている様だったので、お世話になる事になった。ただエリーには知らない人には付いて行かない様に、改めてきつく言い聞かせた。
こうしてアレグラ王国の生活が始まった。毎日僕の為に食事を準備してくれるエリー。さらに、僕の為にお弁当まで準備してくれる様になった。また持ち前の魔力量で、かなりの数のアクセサリーも作っている様で、ヴィクトリアさんが喜んでいた。
僕も何も出来なかったエリーが、色々と出来る様になって嬉しい…そう思わないといけないはずなのに…
心のどこかで、エリーはずっと何も出来ずに僕にだけに頼っていればいいのに…そうすれば、ずっと一緒にいられるのに…
そんな醜い感情が生まれていた。駄目だ!このままだと、前世でエリザを傷つけたように、今度はエリーも傷つけてしまう!それに、もし僕が前世でエリザの元婚約者で、ザードと共にエリザ達と戦った人物と知ったら…
きっとエリーは僕を軽蔑し、離れていくだろう…
正直今の僕には耐えられない…
そう、僕は自分でもびっくりするくらい、エリーを好きになってしまっていたのだ。でもこの気持ちは、報われてはいけない!僕はエリーにとって、大切な曾祖母を傷つけた男なんだ!とにかくエリーに僕の気持ちを、伝えてはいけない!この気持ちは、一生封印するんだ…そう…一生…
そう言えば、僕はエリザの笑顔をあまり見た事がなかったな…そのせいか、エリーの嬉しそうな顔は、物凄く新鮮だ!エリーはとにかくよく笑う。まだ2日しか一緒にいないが、それでもエリーの笑顔は何度も僕を癒してくれた。
エリザもこんな風に笑っていたのかな…そう思ったら、胸の奥がズキリと痛んだ。僕はまだ、エリザへの思いを引きずっているのだろう…だからエリーの事も、エリザと重ねて見ているに違いない!
そうでなかったら、出会って2日目の少女に、こんな感情を抱く訳がないから…そう自分に言い聞かせる。その時だった。
「イジャ様もこっちにいらしてはいかがですか?」
嬉しそうに僕に声を掛けて来るエリー。
「僕はいいよ」
そう断ると、心底残念そうに再び海に入って行った。本当にあの子は自分の感情を隠さないな…そう思ったら、なんだか笑いが込み上げて来た。そう、エリーはずっと見ていても飽きないくらい、感情豊かなのだ!
げんに貝殻を嬉しそうにこっちに見せに来たエリー。かと思いきや、今度は真剣な表情で貝殻を探している。そんなエリーを見つめていると、時間が経つのも忘れてしまう。気が付いた時には、すっかり日が傾いていた。しまった!せっかくだから街も見たいと思っていたんだった!
急いでエリーを呼び戻し、街を見て回った。嬉しそうに真珠をじっと見つめるエリーに、つい買い与えてしまった。正直財布には響くが、それでもエリーの嬉しそうな顔を見たら、プレゼントした事に後悔はない。むしろ良かったとすら思っている。
その後は、近くのお店で食事を済ます。目を輝かせて「海の見える街に住みたい!」そう話すエリー。そんなエリーの顔を見ていたら、つい
「ちょうど次に行く国は海があるから、海沿いにしばらく住む事にしよう」
そう答えてしまった。本当は次の国は通過するだけにしようと思っていたのだが、エリーが喜んでくれるならそれでいい。とにかく僕は、エリーの喜ぶ姿が見たいんだ。エリーが喜べば、なんだかしっかり罪滅ぼしが出来ている気になるから!そう自分に言い聞かせた。
食後はバスに乗り、飛行船で次の国へと向かう。ここでも目を輝かせているエリー。そんなエリーは何を思ったのか、僕が読んでいる本を読みたいと言い出した。でも…
すぐに僕にもたれかかって眠ってしまった。本は1ページ目を開いた状態で。このままでは風邪を引いてしまう。そっと魔法で毛布を出し、エリーに掛ける。スヤスヤと気持ちよさそうな顔で眠っている。そんなエリーを見ていたら、なんだか僕まで眠くなってきた。
そう言えば、昨日の夜はほとんど寝られなかったんだったな…回復魔法を掛けたものの、やはり万全ではない。結局エリーの温もりを感じながら、心地よい眠りについてしまったのだった。
次に目を覚ました時は、既に目的地に到着し、皆が続々と降り始めている時だった。しまった!寝過ごした!急いで毛布を消し、出発の準備を整えてエリーを起こした。そして空港を後にし、事前に予約しておいたホテルに向かった。
それにしてもこのホテル、かなり可愛らしい作りになっている。正直落ち着かないが、エリーが気に入ったのならいいか!早速荷物を置いて、街に出た。でも物凄く人が多くて、途中でエリーとはぐれてしまった!
クソ!しっかり手を繋いでいたはずなのに!急いでエリーを探すと、どうやら別の魔力も近くに感じる!もしかして、エリーの両親が?そう思ったが、違った様だ!
エリーの元に駆け付けると、中年の女性が出迎えてくれた。きっと僕が来る事を知っていたのだろう。嬉しそうに僕に抱き着くエリー!可愛くてつい抱きしめ返してしまった。
でも、これ以上エリーに触れては駄目だ!そう自分に言い聞かせ、エリーを引き離した。エリーと一緒にいたヴィクトリアさんと言う女性は、なんと僕達に住む家と仕事を与えてくれると言い出したのだ。
魔力から読み取る限り悪い人ではなさそうだし、エリーも気に入っている様だったので、お世話になる事になった。ただエリーには知らない人には付いて行かない様に、改めてきつく言い聞かせた。
こうしてアレグラ王国の生活が始まった。毎日僕の為に食事を準備してくれるエリー。さらに、僕の為にお弁当まで準備してくれる様になった。また持ち前の魔力量で、かなりの数のアクセサリーも作っている様で、ヴィクトリアさんが喜んでいた。
僕も何も出来なかったエリーが、色々と出来る様になって嬉しい…そう思わないといけないはずなのに…
心のどこかで、エリーはずっと何も出来ずに僕にだけに頼っていればいいのに…そうすれば、ずっと一緒にいられるのに…
そんな醜い感情が生まれていた。駄目だ!このままだと、前世でエリザを傷つけたように、今度はエリーも傷つけてしまう!それに、もし僕が前世でエリザの元婚約者で、ザードと共にエリザ達と戦った人物と知ったら…
きっとエリーは僕を軽蔑し、離れていくだろう…
正直今の僕には耐えられない…
そう、僕は自分でもびっくりするくらい、エリーを好きになってしまっていたのだ。でもこの気持ちは、報われてはいけない!僕はエリーにとって、大切な曾祖母を傷つけた男なんだ!とにかくエリーに僕の気持ちを、伝えてはいけない!この気持ちは、一生封印するんだ…そう…一生…
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