上 下
35 / 36
番外編

久しぶりに熱を出しました

しおりを挟む
シャディソン公爵領から帰った翌日、朝目覚めるとなぜか体がだるい。もしかしてこれは!急いで治癒魔法を掛けるが、全く効かない!どうやら風邪を引いてしまった様だ。

そう、私は風邪を引くと一時的に魔力が落ち、治癒魔法が使えなくなると言う欠点を持っている。風邪なんて引いたのは何年ぶりかしら?久しぶりにだるいわ…

でも1日ゆっくり休めば、次の日には元気になっている事も多い。ちょうど今日は仕事も休みだし、ゆっくり寝ていよう。そう思い、再び目を閉じようとした時だった。

コンコン
「あら?セリーナ様がまだベッドの中だなんて珍しいですね」

専属メイドのミレアが不思議そうにこちらを見ている。

「実は体がだるくて…今日1日ゆっくり休んでいるわ」

そう、寝ていれば治るのだ。

「まあ、それは大変ですわ!熱はあるのですか?」

私に駆け寄り、おでこを触っている。

「かなり熱いですね。それに顔も真っ赤ですし!少しお待ちください」

急いで出て行くミレア。しばらくすると、物凄い勢いでルーク様が入って来た。

「セリーナ、熱があるのだって!」

私の元に駆け寄ると、すかさずおでこを触る。

「あぁ、何て事だ!シャディソン公爵領ではかなり無理をしたから、ここに来て一気に疲れが出たんだな!セリーナ、治癒魔法で治せるかい?」

「それが、風邪を引くとなぜか治癒魔法が使えなくなるのです。でも1日寝ていれば元気になりますので、大丈夫ですわ。申し訳ございませんが、今日はゆっくり休ませて頂きますね」

とにかく早く眠りたい。

「そうなのか!分かった、それじゃあ今日は僕がセリーナの看病をするよ!今日もディオの元には母上に行ってもらう事にしよう!少し待っていてくれ」

そう言うと、物凄いスピードで出て行くルーク様。ルーク様が看病してくれるのか。それは嬉しいわ。でも、今はゆっくり寝たいのだけれど…

しばらくすると、食事を持ったルーク様が戻って来た。

「セリーナ、まずは食事をしよう。病気の時はしっかり食べないと治らないからね」

そう言って私を起こしてくれた。さらに食べやすそうなスープを準備してくれている。

「ありがとうございます。お忙しいのに私の為にごめんなさい」

「何を言っているんだ!君は僕の大切な大切な婚約者なんだ!そもそも、僕は君のおかげで元気になれたんだ!正直今日セリーナを看病出来る事が嬉しくてたまらないんだよ。ほら、あ~んして」

本当に優しいルーク様。口を開けると、スープを口の中に入れてくれた。でも、なんだか食欲がない。せっかくルーク様に食べさせてもらっているのに、結局3口ぐらいしか食べられなかった。

「あぁ、何て事だ!ほとんど食べていないじゃないか!今すぐ治癒師を呼ぶから待っていてくれ!」

すぐに近くにいたメイドに指示を出そうとするルーク様。

「お待ちください!治癒師は大丈夫です。私の場合疲れから来ていると思うので、寝ていれば治ります。そもそも私も治癒師なので、自分の体の事は自分がよく分かっていますわ。だからどうか治癒師を呼ぶのはお控えください」

ただでさえ治癒師は多忙だ。そんな治癒師を、わざわざ疲れから体調を崩した私の為に呼びつけるなんて申し訳ない。そもそも私は寝ていれば治るのだ!

「分かったよ、セリーナがそう言うなら、治癒師を呼ぶのは止めよう。少し眠った方がいいね。さあ、ゆっくりお休み!今日はずっとセリーナの側にいるからね。そうだ、セリーナが安心して眠れる様、添い寝をしてあげよう」

なぜかベッドに入り込むルーク様。この人は何を考えているのだろう…

「ルーク様、1人で寝られますわ。それに、万が一ルーク様に移してしまうと大変ですから」

「セリーナの風邪ならぜひ貰いたいよ!それでセリーナが楽になるならね。それにもし僕が風邪を引いても、セリーナが治してくれるだろう」

にっこり笑ってそんなおバカな事を言うルーク様。

「お坊ちゃま、それではセリーナ様がゆっくりお休みになれないのではないでしょうか。お1人でゆっくり休ませてあげた方がよろしいかと…」

近くに控えていたルーク様専属の執事が、見かねて助け舟を出してくれた。

「そうか…分かったよ。それならずっと手を握っていよう!」

とりあえずベッドから出たルーク様に手を握られた。やっとゆっくり眠れそうだ。ゆっくり目を閉じると、あっという間に眠ってしまった。

う~ん、なんだか温かい…

ゆっくり目を開けると、目の前には私を抱きしめているルーク様が一緒に寝ていた。側にいたメイド達を見ると、ゆっくり首を横に振っている。きっとメイドが止めるのも聞かず、私の布団に入り込んだのだろう。

ふと周りを見ると、おでこを冷やすタオルが転がっていた。きっとルーク様なりにしっかり私を看病してくれていたのだろう。そう思ったら、なんだか嬉しくてそのままルーク様の眠るベッドへと潜り込んだ。

そう言えば、体ももうだるくない。きっともう治ったのね。念のため自分に治癒魔法を掛けてみる。よし、普通に使えるわ。これで完全復活ね。外を見ると、薄暗くなっていた。どうやら夜まで眠っていた様だ。そう言えばお腹が空いたわ。早速ルーク様と一緒に食べよう。

「ルーク様、起きてください!ルーク様!」

ルーク様を揺するとゆっくり目を開け、グリーンの美しい瞳と目が合った。その瞬間、物凄い勢いで飛び起きるルーク様。

「ごめんセリーナ、いつの間にか眠ってしまった様だ!」

「ルーク様、私を一生懸命看病してくれていたのでしょう?ありがとうございます!ルーク様のおかげで、すっかり元気になりましたわ!」

「それは本当かい?良かった!」

嬉しそうに私を抱きしめるルーク様。

「元気になったら、お腹が空いてきました!早速晩ご飯を一緒に食べましょう」

「そうだね!でもセリーナは病み上がりだ。すぐにここに料理を運ばせよう。もちろん、僕が食べさせてあげるからね」

その後、ルーク様に食べさせてもらいながら、夕食を楽しんだ。夜、ルーク様が私を心配して同じベッドで寝ようとしたものの、お義父様が無理やりルーク様を部屋に連れて行った。

「放せ!またセリーナの体調が悪くなったらどうするんだ!」

そう叫んでいたが、婚前前に一緒に寝るのは良くない!と、お義父様に一喝されていた。そう言えば、シャディソン公爵邸の最終日、一緒に寝たけれどこれは内緒にしておこう。

翌日、すっかり元気になった私。でもその代わり、ルーク様が体調を崩してしまった。

治癒魔法で治そうとしたのだが

「セリーナに看病して欲しい!」

という強い要望を受けた為、これでもかという程甘えまくるルーク様の相手をしつつ、必死に看病する事になったのだった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

旦那様の様子がおかしいのでそろそろ離婚を切り出されるみたいです。

バナナマヨネーズ
恋愛
 とある王国の北部を治める公爵夫婦は、すべての領民に愛されていた。  しかし、公爵夫人である、ギネヴィアは、旦那様であるアルトラーディの様子がおかしいことに気が付く。  最近、旦那様の様子がおかしい気がする……。  わたしの顔を見て、何か言いたそうにするけれど、結局何も言わない旦那様。  旦那様と結婚して十年の月日が経過したわ。  当時、十歳になったばかりの幼い旦那様と、見た目十歳くらいのわたし。  とある事情で荒れ果てた北部を治めることとなった旦那様を支える為、結婚と同時に北部へ住処を移した。    それから十年。  なるほど、とうとうその時が来たのね。  大丈夫よ。旦那様。ちゃんと離婚してあげますから、安心してください。  一人の女性を心から愛する旦那様(超絶妻ラブ)と幼い旦那様を立派な紳士へと育て上げた一人の女性(合法ロリ)の二人が紡ぐ、勘違いから始まり、運命的な恋に気が付き、真実の愛に至るまでの物語。 全36話

【電子書籍化進行中】声を失った令嬢は、次期公爵の義理のお兄さまに恋をしました

八重
恋愛
※発売日少し前を目安に作品を引き下げます 修道院で生まれ育ったローゼマリーは、14歳の時火事に巻き込まれる。 その火事の唯一の生き残りとなった彼女は、領主であるヴィルフェルト公爵に拾われ、彼の養子になる。 彼には息子が一人おり、名をラルス・ヴィルフェルトといった。 ラルスは容姿端麗で文武両道の次期公爵として申し分なく、社交界でも評価されていた。 一方、怠惰なシスターが文字を教えなかったため、ローゼマリーは読み書きができなかった。 必死になんとか義理の父や兄に身振り手振りで伝えようとも、なかなか伝わらない。 なぜなら、彼女は火事で声を失ってしまっていたからだ── そして次第に優しく文字を教えてくれたり、面倒を見てくれるラルスに恋をしてしまって……。 これは、義理の家族の役に立ちたくて頑張りながら、言えない「好き」を内に秘める、そんな物語。 ※小説家になろうが先行公開です

十三回目の人生でようやく自分が悪役令嬢ポジと気づいたので、もう殿下の邪魔はしませんから構わないで下さい!

翠玉 結
恋愛
公爵令嬢である私、エリーザは挙式前夜の式典で命を落とした。 「貴様とは、婚約破棄する」と残酷な事を突きつける婚約者、王太子殿下クラウド様の手によって。 そしてそれが一度ではなく、何度も繰り返していることに気が付いたのは〖十三回目〗の人生。 死んだ理由…それは、毎回悪役令嬢というポジションで立ち振る舞い、殿下の恋路を邪魔していたいたからだった。 どう頑張ろうと、殿下からの愛を受け取ることなく死ぬ。 その結末をが分かっているならもう二度と同じ過ちは繰り返さない! そして死なない!! そう思って殿下と関わらないようにしていたのに、 何故か前の記憶とは違って、まさかのご執心で溺愛ルートまっしぐらで?! 「殿下!私、死にたくありません!」 ✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼ ※他サイトより転載した作品です。

婚約破棄直前に倒れた悪役令嬢は、愛を抱いたまま退場したい

矢口愛留
恋愛
【全11話】 学園の卒業パーティーで、公爵令嬢クロエは、第一王子スティーブに婚約破棄をされそうになっていた。 しかし、婚約破棄を宣言される前に、クロエは倒れてしまう。 クロエの余命があと一年ということがわかり、スティーブは、自身の感じていた違和感の元を探り始める。 スティーブは真実にたどり着き、クロエに一つの約束を残して、ある選択をするのだった。 ※一話あたり短めです。 ※ベリーズカフェにも投稿しております。

嫌われ者の側妃はのんびり暮らしたい

風見ゆうみ
恋愛
「オレのタイプじゃないんだよ。地味過ぎて顔も見たくない。だから、お前は側妃だ」 顔だけは良い皇帝陛下は、自らが正妃にしたいと希望した私を側妃にして別宮に送り、正妃は私の妹にすると言う。 裏表のあるの妹のお世話はもううんざり! 側妃は私以外にもいるし、面倒なことは任せて、私はのんびり自由に暮らすわ! そう思っていたのに、別宮には皇帝陛下の腹違いの弟や、他の側妃とのトラブルはあるし、それだけでなく皇帝陛下は私を妹の毒見役に指定してきて―― それって側妃がやることじゃないでしょう!? ※のんびり暮らしたかった側妃がなんだかんだあって、のんびりできなかったけれど幸せにはなるお話です。

【完結】妖精姫と忘れられた恋~好きな人が結婚するみたいなので解放してあげようと思います~

塩羽間つづり
恋愛
お気に入り登録やエールいつもありがとうございます! 2.23完結しました! ファルメリア王国の姫、メルティア・P・ファルメリアは、幼いころから恋をしていた。 相手は幼馴染ジーク・フォン・ランスト。 ローズの称号を賜る名門一族の次男だった。 幼いころの約束を信じ、いつかジークと結ばれると思っていたメルティアだが、ジークが結婚すると知り、メルティアの生活は一変する。 好きになってもらえるように慣れないお化粧をしたり、着飾ったりしてみたけれど反応はいまいち。 そしてだんだんと、メルティアは恋の邪魔をしているのは自分なのではないかと思いあたる。 それに気づいてから、メルティアはジークの幸せのためにジーク離れをはじめるのだが、思っていたようにはいかなくて……? 妖精が見えるお姫様と近衛騎士のすれ違う恋のお話 切なめ恋愛ファンタジー

この度、皆さんの予想通り婚約者候補から外れることになりました。ですが、すぐに結婚することになりました。

鶯埜 餡
恋愛
 ある事件のせいでいろいろ言われながらも国王夫妻の働きかけで王太子の婚約者候補となったシャルロッテ。  しかし当の王太子ルドウィックはアリアナという男爵令嬢にべったり。噂好きな貴族たちはシャルロッテに婚約者候補から外れるのではないかと言っていたが

恋愛戦線からあぶれた公爵令嬢ですので、私は官僚になります~就業内容は無茶振り皇子の我儘に付き合うことでしょうか?~

めもぐあい
恋愛
 公爵令嬢として皆に慕われ、平穏な学生生活を送っていたモニカ。ところが最終学年になってすぐ、親友と思っていた伯爵令嬢に裏切られ、いつの間にか悪役公爵令嬢にされ苛めに遭うようになる。  そのせいで、貴族社会で慣例となっている『女性が学園を卒業するのに合わせて男性が婚約の申し入れをする』からもあぶれてしまった。  家にも迷惑を掛けずに一人で生きていくためトップであり続けた成績を活かし官僚となって働き始めたが、仕事内容は第二皇子の無茶振りに付き合う事。社会人になりたてのモニカは日々奮闘するが――

処理中です...