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番外編
地方に出張治療に行く事になりました【2】
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出発当日の朝
「セリーナ、シャディソン公爵領はここから約半日だ。頑張って行けば、夕方には着くはずだ。とにかく、早速向かおう」
「そうですわね。少しでも早く着いて、1人でも多くの人を治癒いたしましょう」
急いで馬車に乗り込む。
「セリーナちゃん、ルーク、気を付けて行くのよ」
「ルーク、グレイス殿によろしく伝えてくれ」
お義父様とお義母様に見送られて、早速シャディソン公爵の領地に出発した。
「ルーク様、グレイス様とはどちら様ですか?」
「グレイスか。あいつはシャディソン公爵の嫡男で、僕と同い年なんだ。元々シャディソン公爵と父上は、とても仲が良くてね。僕が元気だったころは、よく遊びに来ていたんだよ。今は王都より領地がいいって言って、1年くらい前からずっと領地で生活しているんだ」
「なるほど、ルーク様と同じ年という事は、ビアンカ様の弟という事ですね」
「ああ、そうだよ。それよりも、どうしてそんなにグレイスの事を聞くんだい?まさか、グレイスに興味があるんじゃないよね!」
物凄い勢いで詰め寄って来るルーク様。なぜそうなるの!
「別に興味がある訳ではありませんわ!私が好きなのはルーク様だけですから!」
「それは本当かい?グレイスも結構いい男だからね。僕と一緒にいる時以外は、グレイスに近づいてはいけないよ!この約束だけは守ってもらうからね」
「ええ、分かりましたわ」
本当にグレイス様という方に、これっぽっちも興味が無いから別に構わない。
「セリーナ、そう言えばこうやって2人きりでどこかに行くのって初めてだね。シャディソン公爵領に着くまでは、2人でゆっくり過ごそう」
そう言ってゆっくり顔が近づいてきて、唇に柔らかく温かい感触が。どんどん深くなっていく。でも、すぐに離れてしまった。
「これ以上やると、我慢が出来なくなりそうだからね」
そう言って笑ったルーク様。
「それにしても、結婚するまでお預けって言うのも、結構辛いものだな…」
「お預け?」
「セリーナは知らなくていいんだよ」
そう言うと、窓を眺めたルーク様。そんなルーク様に寄り添った。
その後何回か休憩を挟みながら進み、日が落ちそうになった頃、公爵領に着いた。
「セリーナ、あれがシャディソン公爵の屋敷だ。とりあえず、今からあそこに行くんだよ」
ルーク様が指さした方向には、確かに立派なお屋敷が建っていた。王都のシャディソン公爵邸も立派だけれど、領地も負けず劣らず立派だ。
屋敷の前に馬車が停まった。でも、なぜか誰も出てこない。一体どうしたのかしら?
「誰もいないのかな?おかしいな。とにかく屋敷に入ってみよう」
ルーク様と一緒に屋敷に入ると、既に派遣されていた大病院の後輩の治癒師(と言っても私より年上だが)が飛んで来た。
「セリーナ先生、来て下さったのですね。実は昨日から、グレイス公爵令息まで病に伏てしまわれて。私たちも治癒魔法を掛けているのですが、あまり効き目がない様でして!急いで来てください!」
「グレイスがか!すぐに行こう、セリーナ」
「はい!」
急いでグレイス様が居る部屋へと案内してくれる。
「グレイス、大丈夫か!」
「ル…ク、お前…随分元気になったん…だな…」
ベッドに横たわっていた男性が、苦しそうにそうった。見た感じかなり熱もある様で、赤い湿疹が顔中に広がっていた。
相当苦しそうだ。
「大丈夫ですか?今すぐ治癒魔法を掛けますね。ヒール」
治癒魔法を掛けると、グレイス様の体が光に包まれる。しばらく魔力を送ると、少しずつ湿疹も消えていく。
「あれ、体が楽になった」
どうやら上手くいったようだ。湿疹も消えた様だし。
「君がセリーナ嬢だね。父上から話は聞いているよ。父上だけでなく、俺まで助けてくれてありがとう。それにしても、君の治癒魔法は温かくてとても心地がいい!」
そう言ってなぜか私の手を握るグレイス様。そんなグレイス様の手を振り払ったのは、もちろんルーク様だ。
「グレイス、彼女は僕の婚約者だ!気安く触らないでくれ!」
「なるほど、お前が惚れるのも分かるよ。彼女はまるで聖母の様だ!俺の名前はグレイス・シャディソンだ。よろしく頼む」
「お初にお目にかかります。セリーナ・ミルトンと申します。ルーク様の婚約者で、治癒師をしております。それで、この街の患者を早速治療したいのですが!」
とにかく1人でも多くの人を治療したい。ただ、どれほどの患者がいるか分からないが、治癒魔法だけではきっと追いつかないだろう。そうなると、病名を解明する必要がある。幸い、医学書は持ってきている。
グレイス様の時はよく確認もせずに治癒魔法を掛けてしまったから、結局病名を特定する事が出来なかった。
「分かったよ。それじゃあ、患者たちが集まっている場所へと行こうか。実は患者が多すぎて、全ての人を病院に収容できないんだよ。それで、臨時の収容施設を作って、そこで治療しているんだ。それにしても、セリーナ嬢は本当に熱心だね。俺の治癒だけでも、相当大変だったんじゃないのかい?」
「確かに少し時間が掛かりましたが、まだ大丈夫です」
「本当に君は聖母の様な女性だ!」
なぜかうっとりと私を見つめるグレイス様。
「グレイス、セリーナをそんな目で見るな!言っておくが、セリーナは僕の婚約者だ。お披露目もしたんだから、今更横取りしようなんて馬鹿な考えを持つなよ」
「昔はクールだったのに、いつからそんな情けない事を言う様になったんだよ!ルークは!そもそも婚約を破棄し、別の相手と結婚する人も大勢いるんだ。婚約したからって、大きな顔をするな」
「何だと!とにかく、セリーナには絶対に近づかせないからな!」
なぜか火花を散らす男性陣たち。そんな事は正直どうでもいい!とにかく、早く患者の元に連れて行って欲しい。
早速馬車に乗り込み、患者たちがいる場所へと向かう。
「セリーナ。あぁ、やっぱりセリーナは可愛いな!あまり無理をしてはいけないよ。君に病気が移ったら大変だからね」
なぜか私に頬ずりしながらそう言ったルーク様。今日は随分スキンシップが激しい。
「私は治癒師なので大丈夫ですわ。それよりも、ルーク様に移ると大変なので、グレイス様と出来たら馬車で待っていてくれると有難いのですが」
ルーク様もずっと病気で苦しんできたのだ。私がいるとはいえ、正直移って欲しくはない。
「そうだな、ルークはやっと変な病気から完治したんだ。馬車にいろ。俺は一度掛かっているから大丈夫だ!セリーナ嬢には俺が付いて行くよ」
「なんで僕が留守番なんだよ!ふざけるな。セリーナが行く場所には僕も必ず行くからな!」
また無駄な言い争いが始まった。面倒くさいわね…
とにかく、一刻も早く患者の元に行かないと!
「セリーナ、シャディソン公爵領はここから約半日だ。頑張って行けば、夕方には着くはずだ。とにかく、早速向かおう」
「そうですわね。少しでも早く着いて、1人でも多くの人を治癒いたしましょう」
急いで馬車に乗り込む。
「セリーナちゃん、ルーク、気を付けて行くのよ」
「ルーク、グレイス殿によろしく伝えてくれ」
お義父様とお義母様に見送られて、早速シャディソン公爵の領地に出発した。
「ルーク様、グレイス様とはどちら様ですか?」
「グレイスか。あいつはシャディソン公爵の嫡男で、僕と同い年なんだ。元々シャディソン公爵と父上は、とても仲が良くてね。僕が元気だったころは、よく遊びに来ていたんだよ。今は王都より領地がいいって言って、1年くらい前からずっと領地で生活しているんだ」
「なるほど、ルーク様と同じ年という事は、ビアンカ様の弟という事ですね」
「ああ、そうだよ。それよりも、どうしてそんなにグレイスの事を聞くんだい?まさか、グレイスに興味があるんじゃないよね!」
物凄い勢いで詰め寄って来るルーク様。なぜそうなるの!
「別に興味がある訳ではありませんわ!私が好きなのはルーク様だけですから!」
「それは本当かい?グレイスも結構いい男だからね。僕と一緒にいる時以外は、グレイスに近づいてはいけないよ!この約束だけは守ってもらうからね」
「ええ、分かりましたわ」
本当にグレイス様という方に、これっぽっちも興味が無いから別に構わない。
「セリーナ、そう言えばこうやって2人きりでどこかに行くのって初めてだね。シャディソン公爵領に着くまでは、2人でゆっくり過ごそう」
そう言ってゆっくり顔が近づいてきて、唇に柔らかく温かい感触が。どんどん深くなっていく。でも、すぐに離れてしまった。
「これ以上やると、我慢が出来なくなりそうだからね」
そう言って笑ったルーク様。
「それにしても、結婚するまでお預けって言うのも、結構辛いものだな…」
「お預け?」
「セリーナは知らなくていいんだよ」
そう言うと、窓を眺めたルーク様。そんなルーク様に寄り添った。
その後何回か休憩を挟みながら進み、日が落ちそうになった頃、公爵領に着いた。
「セリーナ、あれがシャディソン公爵の屋敷だ。とりあえず、今からあそこに行くんだよ」
ルーク様が指さした方向には、確かに立派なお屋敷が建っていた。王都のシャディソン公爵邸も立派だけれど、領地も負けず劣らず立派だ。
屋敷の前に馬車が停まった。でも、なぜか誰も出てこない。一体どうしたのかしら?
「誰もいないのかな?おかしいな。とにかく屋敷に入ってみよう」
ルーク様と一緒に屋敷に入ると、既に派遣されていた大病院の後輩の治癒師(と言っても私より年上だが)が飛んで来た。
「セリーナ先生、来て下さったのですね。実は昨日から、グレイス公爵令息まで病に伏てしまわれて。私たちも治癒魔法を掛けているのですが、あまり効き目がない様でして!急いで来てください!」
「グレイスがか!すぐに行こう、セリーナ」
「はい!」
急いでグレイス様が居る部屋へと案内してくれる。
「グレイス、大丈夫か!」
「ル…ク、お前…随分元気になったん…だな…」
ベッドに横たわっていた男性が、苦しそうにそうった。見た感じかなり熱もある様で、赤い湿疹が顔中に広がっていた。
相当苦しそうだ。
「大丈夫ですか?今すぐ治癒魔法を掛けますね。ヒール」
治癒魔法を掛けると、グレイス様の体が光に包まれる。しばらく魔力を送ると、少しずつ湿疹も消えていく。
「あれ、体が楽になった」
どうやら上手くいったようだ。湿疹も消えた様だし。
「君がセリーナ嬢だね。父上から話は聞いているよ。父上だけでなく、俺まで助けてくれてありがとう。それにしても、君の治癒魔法は温かくてとても心地がいい!」
そう言ってなぜか私の手を握るグレイス様。そんなグレイス様の手を振り払ったのは、もちろんルーク様だ。
「グレイス、彼女は僕の婚約者だ!気安く触らないでくれ!」
「なるほど、お前が惚れるのも分かるよ。彼女はまるで聖母の様だ!俺の名前はグレイス・シャディソンだ。よろしく頼む」
「お初にお目にかかります。セリーナ・ミルトンと申します。ルーク様の婚約者で、治癒師をしております。それで、この街の患者を早速治療したいのですが!」
とにかく1人でも多くの人を治療したい。ただ、どれほどの患者がいるか分からないが、治癒魔法だけではきっと追いつかないだろう。そうなると、病名を解明する必要がある。幸い、医学書は持ってきている。
グレイス様の時はよく確認もせずに治癒魔法を掛けてしまったから、結局病名を特定する事が出来なかった。
「分かったよ。それじゃあ、患者たちが集まっている場所へと行こうか。実は患者が多すぎて、全ての人を病院に収容できないんだよ。それで、臨時の収容施設を作って、そこで治療しているんだ。それにしても、セリーナ嬢は本当に熱心だね。俺の治癒だけでも、相当大変だったんじゃないのかい?」
「確かに少し時間が掛かりましたが、まだ大丈夫です」
「本当に君は聖母の様な女性だ!」
なぜかうっとりと私を見つめるグレイス様。
「グレイス、セリーナをそんな目で見るな!言っておくが、セリーナは僕の婚約者だ。お披露目もしたんだから、今更横取りしようなんて馬鹿な考えを持つなよ」
「昔はクールだったのに、いつからそんな情けない事を言う様になったんだよ!ルークは!そもそも婚約を破棄し、別の相手と結婚する人も大勢いるんだ。婚約したからって、大きな顔をするな」
「何だと!とにかく、セリーナには絶対に近づかせないからな!」
なぜか火花を散らす男性陣たち。そんな事は正直どうでもいい!とにかく、早く患者の元に連れて行って欲しい。
早速馬車に乗り込み、患者たちがいる場所へと向かう。
「セリーナ。あぁ、やっぱりセリーナは可愛いな!あまり無理をしてはいけないよ。君に病気が移ったら大変だからね」
なぜか私に頬ずりしながらそう言ったルーク様。今日は随分スキンシップが激しい。
「私は治癒師なので大丈夫ですわ。それよりも、ルーク様に移ると大変なので、グレイス様と出来たら馬車で待っていてくれると有難いのですが」
ルーク様もずっと病気で苦しんできたのだ。私がいるとはいえ、正直移って欲しくはない。
「そうだな、ルークはやっと変な病気から完治したんだ。馬車にいろ。俺は一度掛かっているから大丈夫だ!セリーナ嬢には俺が付いて行くよ」
「なんで僕が留守番なんだよ!ふざけるな。セリーナが行く場所には僕も必ず行くからな!」
また無駄な言い争いが始まった。面倒くさいわね…
とにかく、一刻も早く患者の元に行かないと!
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