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第16話:予想外の展開になりました
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「ルークの元気そうな顔を見られたし、私たちは他の貴族たちに挨拶をして来るよ。それじゃあ、また」
そう言って他の貴族の元に向かった王族の方々。時間にすると、10分たらずだったにも関わらず、物凄く疲れた。
「セリーナ、大丈夫かい?少し疲れているみたいだね。ホールの隅にテーブルと椅子が準備してあるから、少し休もう」
それは有難いわ!さっそく椅子に座って休憩をする。
「はい、飲み物」
「ありがとうございます、ルーク様」
ルーク様から飲み物を受け取ると、一気に飲み干した。正直に言うと、喉がカラカラだったのだ。なんて美味しいのかしら!
「セリーナ、あっちに料理もあるよ。せっかくだから、2人でゆっくり食べよう」
正直緊張しっぱなしで食欲はあまりないが、せっかくルーク様が誘ってくれたので、食べ物を2人で取りに行く。
さすが公爵家の料理人が、今日の為に腕を振るっただけの事はある。物凄く豪華だ。あら、魚料理も豊富にあるわね。魚が大好物な私は、魚料理を中心に頂く事にした。早速2人で椅子に座って食べる。
あぁ、なんて美味しいのかしら!その時だった。
「あなた!しっかりして!」
急に切羽詰まった女性の叫び声が聞こえた。ふと振り返ると、胸を押さえて苦しそうにうずくまっている男性が見えた。
「誰か!発作を止める薬を探して!ホールに落ちているはずなの!」
どうやら発作を起こしてしまった様だ。急いで男性の元へと駆け付けた。
「大丈夫ですか?今すぐ治療を行いますね。ヒール」
男性に急いで治癒魔法を掛けた。
「あれ?薬を飲まなくても楽になったぞ」
「あなた!良かったわ!主人を助けていただき、ありがとうございました!実は主人、心臓の病気を患っておりまして、たまに発作が起きるのです。いつもは薬を持っているのですが、どうやら落としてしまった様で…それにしても、どの治癒師に見せても発作を止められなかったのに!あなた、凄いわ!」
私の手を握り、興奮気味に話す夫人。周りからも、拍手が沸き起こった。
「君はミルトン伯爵家の令嬢でしたね。命を助けてくれてありがとう。この恩は一生忘れないよ。後日、改めてお礼に伺わせて頂こう!それにしても、凄い治癒力だ!さすがルーク殿を治しただけの事はある」
「いいえ、私は当たり前の事をしたまでです。気にしないで下さい」
必死にそう伝えた。
「やっぱり僕のセリーナは凄いね。シャディソン公爵の発作も、簡単に治してしまうのだから!」
ルーク様にも褒められ、なんだか恥ずかしくなってきた。ん?待って!今シャディソン公爵って言ったわよね。ファーレソン公爵家と同じく3本の指に入る大貴族だわ!
ダメだ、目が回りそう。それよりも、私は少し貴族の顔と名前を覚えた方が良さそうね!って、今後パーティーには出るつもりはないのだから、覚える必要は無いか。
シャディソン公爵発作騒動もひと段落し、再び席に戻り食事の続きをしようと思ったのだが、なぜかルーク様に中庭へと連れ出された。
そう言えば、夜に中庭へ来るのは初めてね。美しくライトアップされた中庭は、本当に奇麗だ。
「ルーク様、夜の中庭もとっても奇麗ですね」
そう話しかけたのだが、なぜか何も話さないルーク様。一体どうしたのかしら?しばらく無言で歩いていると、虹色のバラが咲いているゾーンへとやって来た。ライトアップされた光に照らされたバラは、昼間とは違う美しさを放っていた。まさに、幻想的な風景と言っても過言ではない。
「なんて奇麗なのかしら…」
そう無意識に呟いてしまう程美しい。
「セリーナ、少し僕の事を話してもいいかな?」
急に真剣な顔でこちらを向いたルーク様。大丈夫だと答えると、ぽつぽつと話始めた。
「僕はね、自分で言うのも何だが、小さい頃から優秀で、皆からも一目置かれていたんだ。でも病気になって、皆から気持ち悪がられるようになった。かつての友人や婚約者はもちろん、僕の看護をしてくれる看護師やメイドたちまで、僕を気持ち悪い生き物を見るような目で見ていたんだ」
そう言えば、公爵家に来たばかりの頃、メイドたちの態度ははっきり言って良くなかった。それにしても、病気の人間をそんな目で見るなんて…ルーク様は7年もの間、ずっとその視線に耐えてきたのか!考えただけで、胸が張り裂けそうになった。
「僕はいつの間にか、自分が緑色の怪物だと思う様になった。体だけでなく、心までもどんどん怪物の様に蝕まれていったんだ。そんな時、セリーナ、君がやって来た。君は最初から僕の事を1人の人間として扱ってくれたね。君に世話をしてもらう様になってから、体はもちろん、忘れかけていた人間としての心までも、取り戻す事が出来た。セリーナ、僕に人間としての体と心を取り戻させてくれてありがとう」
そう言うと、深々と頭を下げるルーク様。
「私はただ、治癒師としてやれるだけの事をやったまでです。どうか頭をお上げください」
私の言葉を聞き、ゆっくりと頭を上げたルーク様。でも次の瞬間、なぜか跪いたのだ。
「セリーナに出会えたことで、僕は人間として、誰かを愛すると言う気持ちを持つ事が出来た。セリーナ、君を心から愛しています。どうか、僕と結婚して頂けませんか?」
跪いたまま、私に手を差し出したルーク様。今、結婚って言った?私の事を愛していると言ったの?頭の中がパニックになる。でも、なぜか心の奥が温かいものに包まれ、自然と頬に涙が伝う。
「ルーク様、私もあなた様をお慕いしております。治癒以外取り得の無い私ですが、どうぞよろしくお願いします」
精一杯自分の気持ちを伝えた。まさか、ルーク様も私を思っていてくれていたなんて!そう思ったら、嬉しくて涙が止まらない。
「本当に!本当に僕と結婚してくれるのかい?ありがとう、セリーナ!」
そう言ってギューッと抱きしめてくれるルーク様。私も思いっきり抱きしめ返す。
これから先、きっと大変な事もあるだろう。でも、ルーク様と2人で乗り越えていきたい。
ルークの温もりを感じながら、この時のセリーナは確かにそう強く思ったのであった。
そう言って他の貴族の元に向かった王族の方々。時間にすると、10分たらずだったにも関わらず、物凄く疲れた。
「セリーナ、大丈夫かい?少し疲れているみたいだね。ホールの隅にテーブルと椅子が準備してあるから、少し休もう」
それは有難いわ!さっそく椅子に座って休憩をする。
「はい、飲み物」
「ありがとうございます、ルーク様」
ルーク様から飲み物を受け取ると、一気に飲み干した。正直に言うと、喉がカラカラだったのだ。なんて美味しいのかしら!
「セリーナ、あっちに料理もあるよ。せっかくだから、2人でゆっくり食べよう」
正直緊張しっぱなしで食欲はあまりないが、せっかくルーク様が誘ってくれたので、食べ物を2人で取りに行く。
さすが公爵家の料理人が、今日の為に腕を振るっただけの事はある。物凄く豪華だ。あら、魚料理も豊富にあるわね。魚が大好物な私は、魚料理を中心に頂く事にした。早速2人で椅子に座って食べる。
あぁ、なんて美味しいのかしら!その時だった。
「あなた!しっかりして!」
急に切羽詰まった女性の叫び声が聞こえた。ふと振り返ると、胸を押さえて苦しそうにうずくまっている男性が見えた。
「誰か!発作を止める薬を探して!ホールに落ちているはずなの!」
どうやら発作を起こしてしまった様だ。急いで男性の元へと駆け付けた。
「大丈夫ですか?今すぐ治療を行いますね。ヒール」
男性に急いで治癒魔法を掛けた。
「あれ?薬を飲まなくても楽になったぞ」
「あなた!良かったわ!主人を助けていただき、ありがとうございました!実は主人、心臓の病気を患っておりまして、たまに発作が起きるのです。いつもは薬を持っているのですが、どうやら落としてしまった様で…それにしても、どの治癒師に見せても発作を止められなかったのに!あなた、凄いわ!」
私の手を握り、興奮気味に話す夫人。周りからも、拍手が沸き起こった。
「君はミルトン伯爵家の令嬢でしたね。命を助けてくれてありがとう。この恩は一生忘れないよ。後日、改めてお礼に伺わせて頂こう!それにしても、凄い治癒力だ!さすがルーク殿を治しただけの事はある」
「いいえ、私は当たり前の事をしたまでです。気にしないで下さい」
必死にそう伝えた。
「やっぱり僕のセリーナは凄いね。シャディソン公爵の発作も、簡単に治してしまうのだから!」
ルーク様にも褒められ、なんだか恥ずかしくなってきた。ん?待って!今シャディソン公爵って言ったわよね。ファーレソン公爵家と同じく3本の指に入る大貴族だわ!
ダメだ、目が回りそう。それよりも、私は少し貴族の顔と名前を覚えた方が良さそうね!って、今後パーティーには出るつもりはないのだから、覚える必要は無いか。
シャディソン公爵発作騒動もひと段落し、再び席に戻り食事の続きをしようと思ったのだが、なぜかルーク様に中庭へと連れ出された。
そう言えば、夜に中庭へ来るのは初めてね。美しくライトアップされた中庭は、本当に奇麗だ。
「ルーク様、夜の中庭もとっても奇麗ですね」
そう話しかけたのだが、なぜか何も話さないルーク様。一体どうしたのかしら?しばらく無言で歩いていると、虹色のバラが咲いているゾーンへとやって来た。ライトアップされた光に照らされたバラは、昼間とは違う美しさを放っていた。まさに、幻想的な風景と言っても過言ではない。
「なんて奇麗なのかしら…」
そう無意識に呟いてしまう程美しい。
「セリーナ、少し僕の事を話してもいいかな?」
急に真剣な顔でこちらを向いたルーク様。大丈夫だと答えると、ぽつぽつと話始めた。
「僕はね、自分で言うのも何だが、小さい頃から優秀で、皆からも一目置かれていたんだ。でも病気になって、皆から気持ち悪がられるようになった。かつての友人や婚約者はもちろん、僕の看護をしてくれる看護師やメイドたちまで、僕を気持ち悪い生き物を見るような目で見ていたんだ」
そう言えば、公爵家に来たばかりの頃、メイドたちの態度ははっきり言って良くなかった。それにしても、病気の人間をそんな目で見るなんて…ルーク様は7年もの間、ずっとその視線に耐えてきたのか!考えただけで、胸が張り裂けそうになった。
「僕はいつの間にか、自分が緑色の怪物だと思う様になった。体だけでなく、心までもどんどん怪物の様に蝕まれていったんだ。そんな時、セリーナ、君がやって来た。君は最初から僕の事を1人の人間として扱ってくれたね。君に世話をしてもらう様になってから、体はもちろん、忘れかけていた人間としての心までも、取り戻す事が出来た。セリーナ、僕に人間としての体と心を取り戻させてくれてありがとう」
そう言うと、深々と頭を下げるルーク様。
「私はただ、治癒師としてやれるだけの事をやったまでです。どうか頭をお上げください」
私の言葉を聞き、ゆっくりと頭を上げたルーク様。でも次の瞬間、なぜか跪いたのだ。
「セリーナに出会えたことで、僕は人間として、誰かを愛すると言う気持ちを持つ事が出来た。セリーナ、君を心から愛しています。どうか、僕と結婚して頂けませんか?」
跪いたまま、私に手を差し出したルーク様。今、結婚って言った?私の事を愛していると言ったの?頭の中がパニックになる。でも、なぜか心の奥が温かいものに包まれ、自然と頬に涙が伝う。
「ルーク様、私もあなた様をお慕いしております。治癒以外取り得の無い私ですが、どうぞよろしくお願いします」
精一杯自分の気持ちを伝えた。まさか、ルーク様も私を思っていてくれていたなんて!そう思ったら、嬉しくて涙が止まらない。
「本当に!本当に僕と結婚してくれるのかい?ありがとう、セリーナ!」
そう言ってギューッと抱きしめてくれるルーク様。私も思いっきり抱きしめ返す。
これから先、きっと大変な事もあるだろう。でも、ルーク様と2人で乗り越えていきたい。
ルークの温もりを感じながら、この時のセリーナは確かにそう強く思ったのであった。
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