15 / 36
第15話:王族とご対面です
しおりを挟む
ある程度挨拶が終わった頃、家の両親がやって来た。
「公爵様、夫人、ルーク様、お久しぶりでございます。ルーク様、この度は無事完治されたとお伺いしました。誠におめでとうございます」
「ミルトン伯爵に夫人、今日はよく来て下さいました!本当にセリーナ嬢には感謝しております。寝たきりで動けず、緑の湿疹に全身を覆われていたルークが、ものの2ヶ月でこんなにも元気になったのですから。これからも、末永くどうぞよろしくお願いします」
そう言って公爵様が頭を下げた。
「公爵様、頭をお上げください!こちらこそ、金銭面で色々と良くしていただき、ありがとうございました。おかげで貴族らしい生活を、子供たちにも送らせてやることが出来ます。本当にありがとうございます」
お父様とお母様が慌てて頭を下げているので、私も下げておいた。その後軽く世間話をして、両親は去って行った。ふと両親の方を見ると、次々に貴族たちに話しかけられている。
それにしても、お父様もお母様も普通に話しているわ。あれでも一応伯爵と夫人なのね、見直したわ。両親を見て感心していると、音楽が流れ始めた。ふとホールを見ると、何組かの男女がダンスを踊っている。
「セリーナ、僕達も踊ろう」
ルーク様に手を引かれ、ホールの真ん中まで来ると、音楽に合わせて踊り始めた。大丈夫よ、あれだけ練習したのだもの!練習通りにやればいいのよ!自分に言い聞かせ、必死に踊る。
「セリーナ、少し動きが硬いね。大丈夫だよ。練習通りに踊ればいいんだよ」
やっぱり堅い?そりゃこんな大ホールで踊るのだから緊張するわ。そう思いつつも、だんだん慣れてきて、最後の方は普通に踊れる様になってきた。そして、2曲目スタートだ。
この頃には、随分と慣れて来た。その時、何を思ったのかルーク様が私を回転させたのだ。
「ちょっと、ルーク様!何をなさるの?」
「だって、練習の時もクルクル回っていただろう?」
「あれはお遊びでやっていたのです!本番では…キャ」
再び私を回転させるルーク様。その後も何度も回転させられながらも、何とか踊りきった。もう、ルーク様ったら!そう思っていたのだが、なぜか周りから大きな拍手が沸き起こる。
どうやら注目されていた様だ!完全に動揺する私をよそに、腰をがっちりつかんだルーク様に再びエスコートされながら、公爵様達の元へと戻った。社交界で注目なんてされたことが無い私は、ちょっとしたパニック状態だ。
その時、美しい金髪の女性がこっちにやって来るのが見えた。この女性は、まさか…
「ルーク、久しぶりね!すっかり元の姿に戻ったのね。嬉しいわ!」
私を押しのけ、ルーク様の胸に飛び込む女性。
「ファミア王女、僕に気安く触るのは止めてください」
そう言って突き放すルーク様。そう、この女性はこの国の第一王女でもある、ファミア王女だ。
「ルーク、まだ私が婚約を解消した事を怒っているの?あの時は仕方がなかったのよ。それよりも、この女があなたを治療してくれた治癒師なの?」
私の事を頭の先から足の先までジロジロ見る王女様。さすがにその視線は王女としてあるまじき行動だが、もちろん注意するなんて恐れ多い事は出来ない。
「別に婚約を解消したと事は怒っていないよ。緑の怪物なんかとは、さすがに婚約を継続できない事は分かっていたからね。そうそう、彼女が僕を救ってくれた命の恩人であり、僕の大切な人でもあるセリーナ・ミルトン嬢だ」
そう言うと、私の腰をしっかり抱いて自分の方に引き寄せたルーク様。今、大切な人と言ったわよね?ダメよ。誤解したら!きっと命の恩人として大切という意味よ!何とか自分に言い聞かせた。
「やあ、ルーク、随分と元気になったね。彼女が治癒師のセリーナ・ミルトン嬢か。それにしても、本当にすごい治癒師だね。将来が楽しみだ」
私達に話しかけてきたのは、まさかの陛下だ!さすがにどうしていいのかわからず、固まるしかない。
「お兄様、セリーナちゃんの治癒力は確かにこの国一番と言っていいほど素晴らしいけれど、あまり期待しないで頂きたいわ」
「ハハハ、お前も随分元気になってよかったよ。本当に、あの頃は泣いてばかりだったものな!でも、本当にルークが元気になってよかった。ルークを助けてやってくれて、ありがとう、セリーナ嬢」
陛下にお礼を言われてしまったわ。それにしても、やっぱりお義母様は陛下の実の妹なのね。陛下と普通に話しているのですもの。おっといけない、私も挨拶をしないと。
「御挨拶が遅れて申し訳ございません、陛下。治癒師をしております、セリーナ・ミルトンと申します。お褒めの言葉、大変うれしく思います。これからも精進して参りますので、どうぞよろしくお願いいたします」
こんなものでよかったかしら?よく分からないが、陛下も笑顔で頷いているから、良しとしよう。
「それにしても、セリーナ嬢は凄いね。そうだ、良かったら今度、王宮に遊びにおいでよ」
次に話しかけてきたのは、王太子殿下だ。もう嫌…目が回りそうだわ…
「おいディオ、あまりセリーナに話しかけるな!」
「嫉妬深い男は嫌だね。お前もたまには王宮に顔を出せよ。また昔みたいに、打ち合いをしよう」
ルーク様も王太子殿下と普通に話しているし、やっぱり私とルーク様では住む世界が違うのね。こんな光景を見せられたら、さすがの私も諦める決心がつきそうだわ。このパーティーが終わったら、早々に実家に帰ろう。そして、また診療所で治癒師として働こう。
でも…
やっぱり胸が苦しい。大丈夫よ、いつもの生活に戻れば、きっと時間と共にこの痛みも落ち着くはずだから…
「公爵様、夫人、ルーク様、お久しぶりでございます。ルーク様、この度は無事完治されたとお伺いしました。誠におめでとうございます」
「ミルトン伯爵に夫人、今日はよく来て下さいました!本当にセリーナ嬢には感謝しております。寝たきりで動けず、緑の湿疹に全身を覆われていたルークが、ものの2ヶ月でこんなにも元気になったのですから。これからも、末永くどうぞよろしくお願いします」
そう言って公爵様が頭を下げた。
「公爵様、頭をお上げください!こちらこそ、金銭面で色々と良くしていただき、ありがとうございました。おかげで貴族らしい生活を、子供たちにも送らせてやることが出来ます。本当にありがとうございます」
お父様とお母様が慌てて頭を下げているので、私も下げておいた。その後軽く世間話をして、両親は去って行った。ふと両親の方を見ると、次々に貴族たちに話しかけられている。
それにしても、お父様もお母様も普通に話しているわ。あれでも一応伯爵と夫人なのね、見直したわ。両親を見て感心していると、音楽が流れ始めた。ふとホールを見ると、何組かの男女がダンスを踊っている。
「セリーナ、僕達も踊ろう」
ルーク様に手を引かれ、ホールの真ん中まで来ると、音楽に合わせて踊り始めた。大丈夫よ、あれだけ練習したのだもの!練習通りにやればいいのよ!自分に言い聞かせ、必死に踊る。
「セリーナ、少し動きが硬いね。大丈夫だよ。練習通りに踊ればいいんだよ」
やっぱり堅い?そりゃこんな大ホールで踊るのだから緊張するわ。そう思いつつも、だんだん慣れてきて、最後の方は普通に踊れる様になってきた。そして、2曲目スタートだ。
この頃には、随分と慣れて来た。その時、何を思ったのかルーク様が私を回転させたのだ。
「ちょっと、ルーク様!何をなさるの?」
「だって、練習の時もクルクル回っていただろう?」
「あれはお遊びでやっていたのです!本番では…キャ」
再び私を回転させるルーク様。その後も何度も回転させられながらも、何とか踊りきった。もう、ルーク様ったら!そう思っていたのだが、なぜか周りから大きな拍手が沸き起こる。
どうやら注目されていた様だ!完全に動揺する私をよそに、腰をがっちりつかんだルーク様に再びエスコートされながら、公爵様達の元へと戻った。社交界で注目なんてされたことが無い私は、ちょっとしたパニック状態だ。
その時、美しい金髪の女性がこっちにやって来るのが見えた。この女性は、まさか…
「ルーク、久しぶりね!すっかり元の姿に戻ったのね。嬉しいわ!」
私を押しのけ、ルーク様の胸に飛び込む女性。
「ファミア王女、僕に気安く触るのは止めてください」
そう言って突き放すルーク様。そう、この女性はこの国の第一王女でもある、ファミア王女だ。
「ルーク、まだ私が婚約を解消した事を怒っているの?あの時は仕方がなかったのよ。それよりも、この女があなたを治療してくれた治癒師なの?」
私の事を頭の先から足の先までジロジロ見る王女様。さすがにその視線は王女としてあるまじき行動だが、もちろん注意するなんて恐れ多い事は出来ない。
「別に婚約を解消したと事は怒っていないよ。緑の怪物なんかとは、さすがに婚約を継続できない事は分かっていたからね。そうそう、彼女が僕を救ってくれた命の恩人であり、僕の大切な人でもあるセリーナ・ミルトン嬢だ」
そう言うと、私の腰をしっかり抱いて自分の方に引き寄せたルーク様。今、大切な人と言ったわよね?ダメよ。誤解したら!きっと命の恩人として大切という意味よ!何とか自分に言い聞かせた。
「やあ、ルーク、随分と元気になったね。彼女が治癒師のセリーナ・ミルトン嬢か。それにしても、本当にすごい治癒師だね。将来が楽しみだ」
私達に話しかけてきたのは、まさかの陛下だ!さすがにどうしていいのかわからず、固まるしかない。
「お兄様、セリーナちゃんの治癒力は確かにこの国一番と言っていいほど素晴らしいけれど、あまり期待しないで頂きたいわ」
「ハハハ、お前も随分元気になってよかったよ。本当に、あの頃は泣いてばかりだったものな!でも、本当にルークが元気になってよかった。ルークを助けてやってくれて、ありがとう、セリーナ嬢」
陛下にお礼を言われてしまったわ。それにしても、やっぱりお義母様は陛下の実の妹なのね。陛下と普通に話しているのですもの。おっといけない、私も挨拶をしないと。
「御挨拶が遅れて申し訳ございません、陛下。治癒師をしております、セリーナ・ミルトンと申します。お褒めの言葉、大変うれしく思います。これからも精進して参りますので、どうぞよろしくお願いいたします」
こんなものでよかったかしら?よく分からないが、陛下も笑顔で頷いているから、良しとしよう。
「それにしても、セリーナ嬢は凄いね。そうだ、良かったら今度、王宮に遊びにおいでよ」
次に話しかけてきたのは、王太子殿下だ。もう嫌…目が回りそうだわ…
「おいディオ、あまりセリーナに話しかけるな!」
「嫉妬深い男は嫌だね。お前もたまには王宮に顔を出せよ。また昔みたいに、打ち合いをしよう」
ルーク様も王太子殿下と普通に話しているし、やっぱり私とルーク様では住む世界が違うのね。こんな光景を見せられたら、さすがの私も諦める決心がつきそうだわ。このパーティーが終わったら、早々に実家に帰ろう。そして、また診療所で治癒師として働こう。
でも…
やっぱり胸が苦しい。大丈夫よ、いつもの生活に戻れば、きっと時間と共にこの痛みも落ち着くはずだから…
220
お気に入りに追加
8,891
あなたにおすすめの小説

【電子書籍化進行中】声を失った令嬢は、次期公爵の義理のお兄さまに恋をしました
八重
恋愛
※発売日少し前を目安に作品を引き下げます
修道院で生まれ育ったローゼマリーは、14歳の時火事に巻き込まれる。
その火事の唯一の生き残りとなった彼女は、領主であるヴィルフェルト公爵に拾われ、彼の養子になる。
彼には息子が一人おり、名をラルス・ヴィルフェルトといった。
ラルスは容姿端麗で文武両道の次期公爵として申し分なく、社交界でも評価されていた。
一方、怠惰なシスターが文字を教えなかったため、ローゼマリーは読み書きができなかった。
必死になんとか義理の父や兄に身振り手振りで伝えようとも、なかなか伝わらない。
なぜなら、彼女は火事で声を失ってしまっていたからだ──
そして次第に優しく文字を教えてくれたり、面倒を見てくれるラルスに恋をしてしまって……。
これは、義理の家族の役に立ちたくて頑張りながら、言えない「好き」を内に秘める、そんな物語。
※小説家になろうが先行公開です

《完》義弟と継母をいじめ倒したら溺愛ルートに入りました。何故に?
桐生桜月姫
恋愛
公爵令嬢たるクラウディア・ローズバードは自分の前に現れた天敵たる天才な義弟と継母を追い出すために、たくさんのクラウディアの思う最高のいじめを仕掛ける。
だが、義弟は地味にずれているクラウディアの意地悪を糧にしてどんどん賢くなり、継母は陰ながら?クラウディアをものすっごく微笑ましく眺めて溺愛してしまう。
「もう!どうしてなのよ!!」
クラウディアが気がつく頃には外堀が全て埋め尽くされ、大変なことに!?
天然混じりの大人びている?少女と、冷たい天才義弟、そして変わり者な継母の家族の行方はいかに!?

公爵令嬢になった私は、魔法学園の学園長である義兄に溺愛されているようです。
木山楽斗
恋愛
弱小貴族で、平民同然の暮らしをしていたルリアは、両親の死によって、遠縁の公爵家であるフォリシス家に引き取られることになった。位の高い貴族に引き取られることになり、怯えるルリアだったが、フォリシス家の人々はとても良くしてくれ、そんな家族をルリアは深く愛し、尊敬するようになっていた。その中でも、義兄であるリクルド・フォリシスには、特別である。気高く強い彼に、ルリアは強い憧れを抱いていくようになっていたのだ。
時は流れ、ルリアは十六歳になっていた。彼女の暮らす国では、その年で魔法学校に通うようになっている。そこで、ルリアは、兄の学園に通いたいと願っていた。しかし、リクルドはそれを認めてくれないのだ。なんとか理由を聞き、納得したルリアだったが、そこで義妹のレティが口を挟んできた。
「お兄様は、お姉様を共学の学園に通わせたくないだけです!」
「ほう?」
これは、ルリアと義理の家族の物語。
※基本的に主人公の視点で進みますが、時々視点が変わります。視点が変わる話には、()で誰視点かを記しています。
※同じ話を別視点でしている場合があります。

【完結】番である私の旦那様
桜もふ
恋愛
異世界であるミーストの世界最強なのが黒竜族!
黒竜族の第一皇子、オパール・ブラック・オニキス(愛称:オール)の番をミースト神が異世界転移させた、それが『私』だ。
バールナ公爵の元へ養女として出向く事になるのだが、1人娘であった義妹が最後まで『自分』が黒竜族の番だと思い込み、魅了の力を使って男性を味方に付け、なにかと嫌味や嫌がらせをして来る。
オールは政務が忙しい身ではあるが、溺愛している私の送り迎えだけは必須事項みたい。
気が抜けるほど甘々なのに、義妹に邪魔されっぱなし。
でも神様からは特別なチートを貰い、世界最強の黒竜族の番に相応しい子になろうと頑張るのだが、なぜかディロ-ルの侯爵子息に学園主催の舞踏会で「お前との婚約を破棄する!」なんて訳の分からない事を言われるし、義妹は最後の最後まで頭お花畑状態で、オールを手に入れようと男の元を転々としながら、絡んで来ます!(鬱陶しいくらい来ます!)
大好きな乙女ゲームや異世界の漫画に出てくる「私がヒロインよ!」な頭の変な……じゃなかった、変わった義妹もいるし、何と言っても、この世界の料理はマズイ、不味すぎるのです!
神様から貰った、特別なスキルを使って異世界の皆と地球へ行き来したり、地球での家族と異世界へ行き来しながら、日本で得た知識や得意な家事(食事)などを、この世界でオールと一緒に自由にのんびりと生きて行こうと思います。
前半は転移する前の私生活から始まります。

やさしい・悪役令嬢
きぬがやあきら
恋愛
「そのようなところに立っていると、ずぶ濡れになりますわよ」
と、親切に忠告してあげただけだった。
それなのに、ずぶ濡れになったマリアナに”嫌がらせを指示した張本人はオデットだ”と、誤解を受ける。
友人もなく、気の毒な転入生を気にかけただけなのに。
あろうことか、オデットの婚約者ルシアンにまで言いつけられる始末だ。
美貌に、教養、権力、果ては将来の王太子妃の座まで持ち、何不自由なく育った箱入り娘のオデットと、庶民上がりのたくましい子爵令嬢マリアナの、静かな戦いの火蓋が切って落とされた。
芋女の私になぜか完璧貴公子の伯爵令息が声をかけてきます。
ありま氷炎
恋愛
貧乏男爵令嬢のマギーは、学園を好成績で卒業し文官になることを夢見ている。
そんな彼女は学園では浮いた存在。野暮ったい容姿からも芋女と陰で呼ばれていた。
しかしある日、女子に人気の伯爵令息が声をかけてきて。そこから始まる彼女の物語。
【完】嫁き遅れの伯爵令嬢は逃げられ公爵に熱愛される
えとう蜜夏☆コミカライズ中
恋愛
リリエラは母を亡くし弟の養育や領地の執務の手伝いをしていて貴族令嬢としての適齢期をやや逃してしまっていた。ところが弟の成人と婚約を機に家を追い出されることになり、住み込みの働き口を探していたところ教会のシスターから公爵との契約婚を勧められた。
お相手は公爵家当主となったばかりで、さらに彼は婚約者に立て続けに逃げられるといういわくつきの物件だったのだ。
少し辛辣なところがあるもののお人好しでお節介なリリエラに公爵も心惹かれていて……。
22.4.7女性向けホットランキングに入っておりました。ありがとうございます 22.4.9.9位,4.10.5位,4.11.3位,4.12.2位
Unauthorized duplication is a violation of applicable laws.
ⓒえとう蜜夏(無断転載等はご遠慮ください)

「白い結婚最高!」と喜んでいたのに、花の香りを纏った美形旦那様がなぜか私を溺愛してくる【完結】
清澄 セイ
恋愛
フィリア・マグシフォンは子爵令嬢らしからぬのんびりやの自由人。自然の中でぐうたらすることと、美味しいものを食べることが大好きな恋を知らないお子様。
そんな彼女も18歳となり、強烈な母親に婚約相手を選べと毎日のようにせっつかれるが、選び方など分からない。
「どちらにしようかな、天の神様の言う通り。はい、決めた!」
こんな具合に決めた相手が、なんと偶然にもフィリアより先に結婚の申し込みをしてきたのだ。相手は王都から遠く離れた場所に膨大な領地を有する辺境伯の一人息子で、顔を合わせる前からフィリアに「これは白い結婚だ」と失礼な手紙を送りつけてくる癖者。
けれど、彼女にとってはこの上ない条件の相手だった。
「白い結婚?王都から離れた田舎?全部全部、最高だわ!」
夫となるオズベルトにはある秘密があり、それゆえ女性不信で態度も酷い。しかも彼は「結婚相手はサイコロで適当に決めただけ」と、面と向かってフィリアに言い放つが。
「まぁ、偶然!私も、そんな感じで選びました!」
彼女には、まったく通用しなかった。
「なぁ、フィリア。僕は君をもっと知りたいと……」
「好きなお肉の種類ですか?やっぱり牛でしょうか!」
「い、いや。そうではなく……」
呆気なくフィリアに初恋(?)をしてしまった拗らせ男は、鈍感な妻に不器用ながらも愛を伝えるが、彼女はそんなことは夢にも思わず。
──旦那様が真実の愛を見つけたらさくっと離婚すればいい。それまでは田舎ライフをエンジョイするのよ!
と、呑気に蟻の巣をつついて暮らしているのだった。
※他サイトにも掲載中。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる