公爵令息様を治療したらいつの間にか溺愛されていました

Karamimi

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第6話:体を動かす事も大切です

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「では早速新しい食事をご準備して頂けますか?それと、私の食事もここに一緒に運んでください。もちろん、私の食事もルーク様と同じものでお願いしますわ」

公爵様と夫人と食べるなら、ここでルーク様と一緒に食べた方が気楽でいい、そう思ったのだ。

「まあ、セリーナ先生はそこまでルークの事を考えて下さっているのね。ありがとうございます。そうだわ、それなら私たちもここで食べましょう。ねえ、あなた!」

「それはいいアイデアだ。早速準備してくれ」

なぜそうなる…
唖然としている私をよそに、あっという間に準備されてしまった。それにしても、それにしても、これでもかと言うくらい魚料理が並んでいる。まあ、私が指示したんだけれどね。

それぞれ席に着く。もちろん私はルーク様のベッドの隣に座る。

「さあ、早速頂こう。こうやってルークと食べるのは何年ぶりだろう。最初からこの部屋で皆で食べればよかったね。これからは、出来るだけ皆でここで食べよう!」

ご機嫌の公爵様と夫人。もう好きにしてくれ!

ふとルーク様の方を見ると、なぜか食べずに固まっている。仕方ない。

「ルーク様、お口をお開け下さい」

フォークに魚をさし、ルーク様の口に運ぶ。ゆっくり口を開けるルーク様。何度か食べさせた後は、フォークを置いた。

「おい、まだ残っているぞ。口に運べ」

私に催促するのを無視し、ルーク様の手を掴み、フォークを握らせた。

「ルーク様、手を動かす事も大切ですよ。ほら、自分で食べてみてください」

そもそも、皿を投げる元気はあるのだ。自分で食事くらい出来るだろう。

でも、なぜか動かないルーク様。再びルーク様の手を握り、そのまま魚をフォークで刺し、ルーク様の手を動かして口に運ぶ。

「今度は1人でやってみてください。それとも、やり方を忘れてしまって出来ないのですか?」

私の言葉にムッとするルーク様。

「僕をバカにするな。1人で食べられるに決まっているだろう」

そう言って、黙々と食べ始めた。

「要らないならこれも貰うぞ」

そう言って、なぜか私のお皿の魚まで食べ始めた。

「ルーク様、それは私の魚です。私は魚が大好物なのです。勝手に食べないで下さい!」

急いで自分の魚を口に放り込む。でも、一気に口に放り込んだせいで、変なところに入りせき込んでしまった。

「バカだな、そんなに急いで食べるからだよ」

そう言ってルーク様が、私の背中を撫でてくれた。

「ルーク様が私の魚を取ったからでしょう。でも、ありがとうございます。生き返りました」

私の言葉を聞き、恥ずかしそうに微笑んだルーク様。

「今の笑顔、とても素敵ですよ。ルーク様は怒鳴っているよりも、そうやって笑顔の方がずっと良いですわ」

「な…何を言っているんだ!お前は!」

なぜか動揺している。ん?私、変な事言ったかしら?

「なんだか私たちはお邪魔虫みたいだね。明日からは、ルークとセリーナ先生、2人で食べるといい」

そう言って笑った公爵様。夫人も笑っている。一体何が可笑しいのかよくわからないが、明日からは気楽に食事が出来そうだ。と言っても、さっきもすっかり2人の存在を忘れていたのだが…


そして翌日から、ルーク様の治療とお世話が始まった。どうやら食事療法と治癒魔法が上手く作用している様で、治療3日目には立ち上がれる様になり、5日目には歩けるようにもなった。

ただ、まだ緑の湿疹は全然消えていない。治癒魔法を使うと一旦は薄くなるのだが、すぐに戻ってしまうのだ。でも、体が動かせるようになった事は良い事だ。

「ルーク様、今日は天気が良いので、外に散歩に行きましょう」

歩けるようになったものの、寝たきり期間が長かったせいで、筋力が衰え少し歩くとすぐに疲れてしまうのだ。そのため、今は筋力アップのトレーニングも行っている。

「外は嫌だ。僕の顔を見ると、皆驚いて逃げて行くんだ」

「外と言っても、公爵家のお庭です!ほら、グチグチ言っていないで、行きますよ」

ルーク様の手を握ると、中庭へと引っ張っていく。

「ほら、外は気持ちがいいでしょう。空気も美味しいし。それにしても、さすが公爵家の庭ですね。花が物凄く奇麗ですわ。ルーク様、見てください。青いバラが咲いていますわ。こっちには黄色。なんて奇麗なのかしら!次はあっちに行ってみましょう!」

ルーク様の手を引いて、中庭を散歩する。

「セリーナは花が好きなのかい?」

「ええ、好きですわ!ルーク様は、お花は好きではないのですか?」

「別に!奇麗だとは思うけれど。僕はどうせ醜いから、花も僕に好かれたら迷惑だろう!」

「もう、またそんな事を言って!治療を続ければ湿疹もいつかは消えます。それに今のルーク様も、私は醜いとは思いませんよ」

そう言いつつ、ルーク様の頭に青いバラを飾った。

「ほら、よく似合っていますよわ。それにしても、美しい銀髪ですわね。羨ましいですわ」

「セリーナのストロベリーブロンドの髪も奇麗だよ」

そう言うと、私にも青いバラを付けてくれたルーク様。

「ありがとうございます、ルーク様。お揃いですね」

そう言って微笑むと、微笑み返してくれた。どうやら少しずつではあるが、心を開いてくれ始めている様だ。

「セリーナは14歳だと聞いた。そんなに若くして仕事をしているなんて、辛くないのかい?」

急に私に話しかけて来たルーク様。

「そうですね、大変な事もありますが、診療所の治癒師の仲間も良い人ですし、なにより患者様に感謝されると、心が温かくなるのです。だから、辛いとは思いませんわ」

「セリーナは凄いね。僕なんて、いつも皆に迷惑を掛けてばかりだ…両親にも悲しい思いをさせているし…」

「そうでしょうか?最近公爵様も夫人も、とても嬉しそうに笑っていますよ。きっと、あなたが少しずつ元気になっているのが嬉しいのでしょう。それに、迷惑を掛けていると思うなら、早く元気になって、皆に恩返しをすればいいだけです。大丈夫、きっとルーク様なら出来ますわ」

「ありがとう、セリーナ」

そう言うと、私の手をギューッと握ったルーク様。私も握り返す。少しザラザラしたルーク様の手。でも、温かくてなんだかホッとする。

再び2人で中庭を散歩していると

「あら、ルークにセリーナ先生。中庭を散歩しているの?それにしても、お揃いの青バラ、よく似合っているわね!」

話しかけてきたのは、夫人だ。

「そうだわ、奥に珍しいバラが咲いているの。よかったら、一緒に見に行かない?」

「まあ、珍しいバラですか?ルーク様、せっかくなので見せてもらいましょう」

ルーク様の手を引き、早速珍しいバラを見に3人で向かう。

「ここよ、光の加減で色々な色に見える、虹色のバラよ。凄いでしょう」

得意そうに話す夫人。

「まあ、本当に奇麗ですわ。そうだわ、これ1輪頂いてもよろしいですか?」

「ええ、構わないわよ」

さっそく1輪ハサミで切り、ルーク様の髪に飾った。

「やっぱり、思った通り。ルーク様の美しい銀色には、虹色がよく似合いますわ」

「本当ね、銀色の髪によく似合っている。私の金髪にも似合うかしら?」

「きっと似合いますよ。もう1輪頂きますね」

もう1輪ハサミで切り、今度は夫人の頭に飾った。

「やっぱり、よく似合いますわ」

「それじゃあ、セリーナも」

そう言ってルーク様が私の頭にも虹色のバラを付けてくれた。

「セリーナ先生もよく似合っているわ。せっかくだから、このまま3人でお茶にしましょう」

夫人の提案で、その後中庭でお茶を楽しんだのであった。
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