5 / 36
第5話:ルーク様のお世話も私がする事になりました
しおりを挟む
自室に戻った後、もう一度詳しく医学書を読み直そうと思ったのだが、途中でどうやら眠ってしまった様で、ミレアに起こされた。
「セリーナ様、こんなところでお休みになっていては、風邪を引いてしまいますよ。それから、旦那様がお呼びです。どうぞこちらへ」
公爵様が?ふと窓の外を見ると、日が沈みかけていた。あら、もうこんな時間なのね。ミレアに連れられ、公爵様が待つ部屋へと案内された。部屋には公爵様と夫人も待っていた。
「遅くなり申し訳ございません」
一応謝罪を済ませ、席に着く。
「セリーナ先生、ルークの病名が分かったと妻から伺いました。暖かい地域に住む寄生虫に侵されていたというのは、本当ですか?」
「はい、アメージェーンという寄生虫です。医学書を見て頂いた方が分かりやすいかと思いますので、今から持ってきますね」
急いで自室に戻り、医学書を持って再び戻った。
「こちらに記述されております」
医学書を公爵様と夫人に見せる。
「本当だ!まさにルークの症状そのものではないか。でも、まさかこんな短時間で病名を見つけるだなんて、やっぱりセリーナ先生は天才だ!」
なぜか絶賛する公爵様。隣で夫人も頷いている。
「公爵様、私は天才ではございません。この医学書は、通常大病院にも置いてあるはずです。少し調べれば、分かったのではないですか?要するに、ろくに調べもせず、治癒力だけで何とかしようとしていたのでしょう」
「何だと!そんな事だったのか!あいつら、金ばかりぼったくりやがって!さっそく陛下に現状を話し、大病院を調査する必要がありそうだな!」
んん?陛下ですって!忘れていたわ、この人はこの国の3本の指に入る大貴族。それも陛下とは義理の兄弟だったわよね。そう言えば、夫人は元王女様で陛下の実の妹。なんという身分の高い一族なの…めまいがして来た…
「セリーナ先生、大丈夫か?」
「はい、大丈夫です。ちょっと考え事をしていたら、クラっとなっただけですから」
そう、あなた達の身分の高さにクラっとなっただけ。そうだわ、これからの治療法について、公爵様と話しをしないとね。
「それで、これからの治療法ですが、アメージェーンが寄生した場合、治療薬はありませんが、食事療法があります。治癒と食事療法の2つの方法で治療を行っていきましょう。ここに食事療法の方法が書いてありますので、シェフに渡してください。そして治癒の方ですが、1日2回、朝と夜に行いましょう」
「セリーナ先生、色々とありがとう。本当にあなたに依頼してよかった!とにかく、この方法で治療を行って行こう。そうだ、そろそろ夕食の時間だね。せっかくだから、私たちと一緒に食べよう」
何ですって、大貴族と一緒に食事ですって!そんなもの、もちろん遠慮したい。でも、断ると言う選択肢はきっとないのだろう。一気に気が重くなった時だった。
「旦那様、奥様、またお坊ちゃまが暴れておりまして」
「何だって、すぐに向かうよ」
おいおい、また暴れているですって!どれだけ元気なのよ…そう思いつつ、私も2人に付いて行く。
「だから僕はこんなものは食べたくはない!今すぐ果物を持ってこい!」
そう言って、次々にお皿を投げ捨てるルーク様。なんてもったいない事をしているのかしら?このバカ令息は!
「ルーク、止めなさい!これはお前の為の食事なんだよ」
「うるさい!あっちへ行け!」
公爵に怒鳴りつけるルーク様。案の定、ルーク様も魚にまみれて服が汚れている。
「ルーク様、いい加減になさいませ!食べ物を粗末にしてはいけません。それにまたパジャマが汚れていますよ。着替えついでに、治癒を行いますので少し失礼いたします」
私の顔を見ると、なぜか大人しくなったルーク様。早速上の服を脱がす。そして、治癒魔法を掛けていく。
光がルーク様の体を包み込んでいく。するとまた緑の湿疹が少しずつ薄くなっていった。
「ハーハー、とりあえず夜の治療は終わりました」
「今度は足が動くようになったぞ」
そう言ったルーク様。
「ついでに着替えも済ませてしまいましょう。体を拭くタオルを頂けますか?」
メイドから濡れタオルを受け取り、丁寧に体を拭いて行く。
「良いですか?体を清潔にしておくことも大切です。あまりゴシゴシと擦らず、優しく拭いてくださいね。体が動くようになったら、湯あみをしてもらうと良いかと思います」
メイドたちに丁寧に説明していくのだが、あまり聞いていない様子。この人たち、本当にお世話をする気があるのかしら?そんな疑問すら抱く。
「はい、キレイになりましたよ。いいですか、ルーク様。あなたは必ず治ります。その為にも、食事は好き嫌い言わずに食べてください!そして暴れるのはお止めください!いいですね?分かりましたか?」
なぜか俯いて何も言わないルーク様。代わりに公爵様が話始めた。
「素晴らしい!いつも暴れていたルークが、セリーナ先生だと暴れない様だ!そうだ、先生にルークの世話をお願いしよう。知識の豊富な先生がルークの面倒を見てもらう方がいいだろう。早速今日からお願いするよ。もちろん、給料は弾むよ」
「それはよろしいですわ!セリーナ先生、ルークをよろしくお願いいたします」
やはり今回も決定事項の様だ。でも毎回暴れられる事を考えれば、確かにその方が良いのかもしれない。
「わかりました、ではルーク様のお世話は私がさせていただきます。でも1人では無理な事もありますので、その時はお手伝いお願いしますね」
こうして私は、ルーク様のお世話もする事になった。
「セリーナ様、こんなところでお休みになっていては、風邪を引いてしまいますよ。それから、旦那様がお呼びです。どうぞこちらへ」
公爵様が?ふと窓の外を見ると、日が沈みかけていた。あら、もうこんな時間なのね。ミレアに連れられ、公爵様が待つ部屋へと案内された。部屋には公爵様と夫人も待っていた。
「遅くなり申し訳ございません」
一応謝罪を済ませ、席に着く。
「セリーナ先生、ルークの病名が分かったと妻から伺いました。暖かい地域に住む寄生虫に侵されていたというのは、本当ですか?」
「はい、アメージェーンという寄生虫です。医学書を見て頂いた方が分かりやすいかと思いますので、今から持ってきますね」
急いで自室に戻り、医学書を持って再び戻った。
「こちらに記述されております」
医学書を公爵様と夫人に見せる。
「本当だ!まさにルークの症状そのものではないか。でも、まさかこんな短時間で病名を見つけるだなんて、やっぱりセリーナ先生は天才だ!」
なぜか絶賛する公爵様。隣で夫人も頷いている。
「公爵様、私は天才ではございません。この医学書は、通常大病院にも置いてあるはずです。少し調べれば、分かったのではないですか?要するに、ろくに調べもせず、治癒力だけで何とかしようとしていたのでしょう」
「何だと!そんな事だったのか!あいつら、金ばかりぼったくりやがって!さっそく陛下に現状を話し、大病院を調査する必要がありそうだな!」
んん?陛下ですって!忘れていたわ、この人はこの国の3本の指に入る大貴族。それも陛下とは義理の兄弟だったわよね。そう言えば、夫人は元王女様で陛下の実の妹。なんという身分の高い一族なの…めまいがして来た…
「セリーナ先生、大丈夫か?」
「はい、大丈夫です。ちょっと考え事をしていたら、クラっとなっただけですから」
そう、あなた達の身分の高さにクラっとなっただけ。そうだわ、これからの治療法について、公爵様と話しをしないとね。
「それで、これからの治療法ですが、アメージェーンが寄生した場合、治療薬はありませんが、食事療法があります。治癒と食事療法の2つの方法で治療を行っていきましょう。ここに食事療法の方法が書いてありますので、シェフに渡してください。そして治癒の方ですが、1日2回、朝と夜に行いましょう」
「セリーナ先生、色々とありがとう。本当にあなたに依頼してよかった!とにかく、この方法で治療を行って行こう。そうだ、そろそろ夕食の時間だね。せっかくだから、私たちと一緒に食べよう」
何ですって、大貴族と一緒に食事ですって!そんなもの、もちろん遠慮したい。でも、断ると言う選択肢はきっとないのだろう。一気に気が重くなった時だった。
「旦那様、奥様、またお坊ちゃまが暴れておりまして」
「何だって、すぐに向かうよ」
おいおい、また暴れているですって!どれだけ元気なのよ…そう思いつつ、私も2人に付いて行く。
「だから僕はこんなものは食べたくはない!今すぐ果物を持ってこい!」
そう言って、次々にお皿を投げ捨てるルーク様。なんてもったいない事をしているのかしら?このバカ令息は!
「ルーク、止めなさい!これはお前の為の食事なんだよ」
「うるさい!あっちへ行け!」
公爵に怒鳴りつけるルーク様。案の定、ルーク様も魚にまみれて服が汚れている。
「ルーク様、いい加減になさいませ!食べ物を粗末にしてはいけません。それにまたパジャマが汚れていますよ。着替えついでに、治癒を行いますので少し失礼いたします」
私の顔を見ると、なぜか大人しくなったルーク様。早速上の服を脱がす。そして、治癒魔法を掛けていく。
光がルーク様の体を包み込んでいく。するとまた緑の湿疹が少しずつ薄くなっていった。
「ハーハー、とりあえず夜の治療は終わりました」
「今度は足が動くようになったぞ」
そう言ったルーク様。
「ついでに着替えも済ませてしまいましょう。体を拭くタオルを頂けますか?」
メイドから濡れタオルを受け取り、丁寧に体を拭いて行く。
「良いですか?体を清潔にしておくことも大切です。あまりゴシゴシと擦らず、優しく拭いてくださいね。体が動くようになったら、湯あみをしてもらうと良いかと思います」
メイドたちに丁寧に説明していくのだが、あまり聞いていない様子。この人たち、本当にお世話をする気があるのかしら?そんな疑問すら抱く。
「はい、キレイになりましたよ。いいですか、ルーク様。あなたは必ず治ります。その為にも、食事は好き嫌い言わずに食べてください!そして暴れるのはお止めください!いいですね?分かりましたか?」
なぜか俯いて何も言わないルーク様。代わりに公爵様が話始めた。
「素晴らしい!いつも暴れていたルークが、セリーナ先生だと暴れない様だ!そうだ、先生にルークの世話をお願いしよう。知識の豊富な先生がルークの面倒を見てもらう方がいいだろう。早速今日からお願いするよ。もちろん、給料は弾むよ」
「それはよろしいですわ!セリーナ先生、ルークをよろしくお願いいたします」
やはり今回も決定事項の様だ。でも毎回暴れられる事を考えれば、確かにその方が良いのかもしれない。
「わかりました、ではルーク様のお世話は私がさせていただきます。でも1人では無理な事もありますので、その時はお手伝いお願いしますね」
こうして私は、ルーク様のお世話もする事になった。
158
お気に入りに追加
8,842
あなたにおすすめの小説
旦那様の様子がおかしいのでそろそろ離婚を切り出されるみたいです。
バナナマヨネーズ
恋愛
とある王国の北部を治める公爵夫婦は、すべての領民に愛されていた。
しかし、公爵夫人である、ギネヴィアは、旦那様であるアルトラーディの様子がおかしいことに気が付く。
最近、旦那様の様子がおかしい気がする……。
わたしの顔を見て、何か言いたそうにするけれど、結局何も言わない旦那様。
旦那様と結婚して十年の月日が経過したわ。
当時、十歳になったばかりの幼い旦那様と、見た目十歳くらいのわたし。
とある事情で荒れ果てた北部を治めることとなった旦那様を支える為、結婚と同時に北部へ住処を移した。
それから十年。
なるほど、とうとうその時が来たのね。
大丈夫よ。旦那様。ちゃんと離婚してあげますから、安心してください。
一人の女性を心から愛する旦那様(超絶妻ラブ)と幼い旦那様を立派な紳士へと育て上げた一人の女性(合法ロリ)の二人が紡ぐ、勘違いから始まり、運命的な恋に気が付き、真実の愛に至るまでの物語。
全36話
【電子書籍化進行中】声を失った令嬢は、次期公爵の義理のお兄さまに恋をしました
八重
恋愛
※発売日少し前を目安に作品を引き下げます
修道院で生まれ育ったローゼマリーは、14歳の時火事に巻き込まれる。
その火事の唯一の生き残りとなった彼女は、領主であるヴィルフェルト公爵に拾われ、彼の養子になる。
彼には息子が一人おり、名をラルス・ヴィルフェルトといった。
ラルスは容姿端麗で文武両道の次期公爵として申し分なく、社交界でも評価されていた。
一方、怠惰なシスターが文字を教えなかったため、ローゼマリーは読み書きができなかった。
必死になんとか義理の父や兄に身振り手振りで伝えようとも、なかなか伝わらない。
なぜなら、彼女は火事で声を失ってしまっていたからだ──
そして次第に優しく文字を教えてくれたり、面倒を見てくれるラルスに恋をしてしまって……。
これは、義理の家族の役に立ちたくて頑張りながら、言えない「好き」を内に秘める、そんな物語。
※小説家になろうが先行公開です
婚約破棄直前に倒れた悪役令嬢は、愛を抱いたまま退場したい
矢口愛留
恋愛
【全11話】
学園の卒業パーティーで、公爵令嬢クロエは、第一王子スティーブに婚約破棄をされそうになっていた。
しかし、婚約破棄を宣言される前に、クロエは倒れてしまう。
クロエの余命があと一年ということがわかり、スティーブは、自身の感じていた違和感の元を探り始める。
スティーブは真実にたどり着き、クロエに一つの約束を残して、ある選択をするのだった。
※一話あたり短めです。
※ベリーズカフェにも投稿しております。
挙式後すぐに離婚届を手渡された私は、この結婚は予め捨てられることが確定していた事実を知らされました
結城芙由奈
恋愛
【結婚した日に、「君にこれを預けておく」と離婚届を手渡されました】
今日、私は子供の頃からずっと大好きだった人と結婚した。しかし、式の後に絶望的な事を彼に言われた。
「ごめん、本当は君とは結婚したくなかったんだ。これを預けておくから、その気になったら提出してくれ」
そう言って手渡されたのは何と離婚届けだった。
そしてどこまでも冷たい態度の夫の行動に傷つけられていく私。
けれどその裏には私の知らない、ある深い事情が隠されていた。
その真意を知った時、私は―。
※暫く鬱展開が続きます
※他サイトでも投稿中
嫌われ者の側妃はのんびり暮らしたい
風見ゆうみ
恋愛
「オレのタイプじゃないんだよ。地味過ぎて顔も見たくない。だから、お前は側妃だ」
顔だけは良い皇帝陛下は、自らが正妃にしたいと希望した私を側妃にして別宮に送り、正妃は私の妹にすると言う。
裏表のあるの妹のお世話はもううんざり!
側妃は私以外にもいるし、面倒なことは任せて、私はのんびり自由に暮らすわ!
そう思っていたのに、別宮には皇帝陛下の腹違いの弟や、他の側妃とのトラブルはあるし、それだけでなく皇帝陛下は私を妹の毒見役に指定してきて――
それって側妃がやることじゃないでしょう!?
※のんびり暮らしたかった側妃がなんだかんだあって、のんびりできなかったけれど幸せにはなるお話です。
愛すべきマリア
志波 連
恋愛
幼い頃に婚約し、定期的な交流は続けていたものの、互いにこの結婚の意味をよく理解していたため、つかず離れずの穏やかな関係を築いていた。
学園を卒業し、第一王子妃教育も終えたマリアが留学から戻った兄と一緒に参加した夜会で、令嬢たちに囲まれた。
家柄も美貌も優秀さも全て揃っているマリアに嫉妬したレイラに指示された女たちは、彼女に嫌味の礫を投げつける。
早めに帰ろうという兄が呼んでいると知らせを受けたマリアが発見されたのは、王族の居住区に近い階段の下だった。
頭から血を流し、意識を失っている状態のマリアはすぐさま医務室に運ばれるが、意識が戻ることは無かった。
その日から十日、やっと目を覚ましたマリアは精神年齢が大幅に退行し、言葉遣いも仕草も全て三歳児と同レベルになっていたのだ。
体は16歳で心は3歳となってしまったマリアのためにと、兄が婚約の辞退を申し出た。
しかし、初めから結婚に重きを置いていなかった皇太子が「面倒だからこのまま結婚する」と言いだし、予定通りマリアは婚姻式に臨むことになった。
他サイトでも掲載しています。
表紙は写真ACより転載しました。
この度、皆さんの予想通り婚約者候補から外れることになりました。ですが、すぐに結婚することになりました。
鶯埜 餡
恋愛
ある事件のせいでいろいろ言われながらも国王夫妻の働きかけで王太子の婚約者候補となったシャルロッテ。
しかし当の王太子ルドウィックはアリアナという男爵令嬢にべったり。噂好きな貴族たちはシャルロッテに婚約者候補から外れるのではないかと言っていたが
【完結】妖精姫と忘れられた恋~好きな人が結婚するみたいなので解放してあげようと思います~
塩羽間つづり
恋愛
お気に入り登録やエールいつもありがとうございます!
2.23完結しました!
ファルメリア王国の姫、メルティア・P・ファルメリアは、幼いころから恋をしていた。
相手は幼馴染ジーク・フォン・ランスト。
ローズの称号を賜る名門一族の次男だった。
幼いころの約束を信じ、いつかジークと結ばれると思っていたメルティアだが、ジークが結婚すると知り、メルティアの生活は一変する。
好きになってもらえるように慣れないお化粧をしたり、着飾ったりしてみたけれど反応はいまいち。
そしてだんだんと、メルティアは恋の邪魔をしているのは自分なのではないかと思いあたる。
それに気づいてから、メルティアはジークの幸せのためにジーク離れをはじめるのだが、思っていたようにはいかなくて……?
妖精が見えるお姫様と近衛騎士のすれ違う恋のお話
切なめ恋愛ファンタジー
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる