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本編
第26話:なぜこんな事になってしまったんだ【前編】~リアム視点~
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「なぜこんな事になってしまったんだ…」
僕は自室でソファーに腰掛け、頭を抱え込んだ。
最愛の婚約者、シャーロットを失って半年が経とうとしている。優秀な魔術師を世界中に派遣しているが、未だシャーロットに関する有力な情報は得られていない。
「シャーロット…どうか生きていておくれ…」
僕がシャーロットに初めて会ったのは、8歳の時だ。当時の僕は、女なんて正直面倒くさい生き物だと思っていた。僕が王子ということもあり、女たちは猫なで声ですり寄ってくる。きっと僕の婚約者の座を狙っているのだろう。まだ子供なのに、化粧までしてくる者もいる。
正直気持ち悪いし、ウザイ!そんなある日、母上に呼び出された。
「リアム、明日ウィルソン公爵の娘のシャーロットちゃんがついに王宮に遊びに来るのよ!あなたも挨拶しなさいね」
ウィルソン公爵令嬢と言えば、恐ろしいほどの魔力の持ち主。有り余る魔力を使いこなせず、たびたび公爵邸を破壊したという話は有名だ。
ちなみに母上と今は亡き公爵夫人は親友だったらしい。だから、母上は俺と親友の忘れ形見でもあるウィルソン公爵令嬢を結婚させたいらしい。はっきり言って迷惑な話だ。そんな化け物と僕を結婚させたいなんて!母上は何を考えているのだろう。
「母上、悪いが僕はそんな化け物とは会わないよ!会いたいなら母上だけ会えばいいだろう。可愛い息子を巻き込まないでくれ」
僕はそう言うと、部屋を出た。母上は何か叫んでいたが、無視しておいた。そして翌日、メイドが俺を呼びに来たが無視して庭に出た。天気もいいし、今日は王宮の庭で昼寝でもするか!
そう思って芝生に横になって昼寝をした。ちょうどウトウトとし始めた時だった。
「あなた、リアム様?」
誰だ?僕の昼寝を邪魔するのは!僕は声のする方を向いた。すると、美しい銀色を腰まで伸ばし、宝石のような奇麗なブルーの瞳をした女の子が立っていた。僕はその女の子にくぎ付けになる。
この子は妖精か何かなのか?
「ねえ、あなたがリアム様なの?」
固まって動かない僕に、再び女の子が聞いて来る。
「そうだよ。君は?」
「私はシャーロット・ウィルソンよ。王太子妃様がね、あなたがここで昼寝をしているはずだから、行ってあげてって言ったのよ!まさか本当に昼寝をしているなんてね」
おかしそうにクスクス笑う女の子。そうか、この子がウィルソン公爵の娘のシャーロットか。それにしても、可愛い子だな。
「ねえ、せっかくだから一緒に遊びましょう!私ね、魔力が強すぎて最近まで家から出られなかったのよ。だから、外の世界が珍しくて仕方ないの。ねえ、何して遊ぶ?」
目を輝かせて僕を見つめるシャーロットに、心臓がバクバクする。何なんだこの気持ちは。その後はシャーロットと一緒に遊んだ。彼女は公爵令嬢なのに、全然令嬢らしくなく、庭を走り回ったり、魔力で動物を出して一緒に遊んだりしている。
そんなシャーロットに、どんどん惹かれていった。僕、この子と結婚したい!
シャーロットが帰った後、早速母上の元へと向かった。
「母上、僕はシャーロットと結婚する!」
「あらあら、急にやって来たと思ったら、いきなりどうしたの?化け物とは絶対結婚しないんじゃなかったの?」
クスクス笑いながら話す母上。
「気が変わりました!僕はシャーロットと結婚するから、早くシャーロットを僕の婚約者にしてください!シャーロット以外とは絶対に結婚しないから、そのつもりで」
僕は言いたい事だけ言うと、部屋から出て行った。そう、僕は王子だ。今までもどんな我が儘だって聞いてくれた母上。そもそも、母上がシャーロットと結婚しろって言ったんだからな!
そして僕の要望通り、シャーロットが婚約者に内定した。シャーロットは可愛いだけでなく、心も本当に美しい。魔力が有り余っているからと、貧しく病院に行けない民たちに、無料で治癒魔法をかけてあげている。
本人曰く
「無駄に多い魔力がこうやって人の役に立つなんて、素晴らしいじゃない!」
何て言っている。さらに、厳しい王妃教育も泣き言一つ言わず、黙々とこなしている。そんなシャーロットを見ていると、僕も頑張らなければと言う気持ちになる。
だから、僕は剣も勉強も魔法も頑張った。母上も
「シャーロットちゃんと婚約してから、リアムも随分としっかりしてきたわね。先生たちも褒めていたわよ」
何て言っている。正直僕は周りの評判何てどうでもいい。シャーロットさえいてくれたら、それだけで幸せなんだ。この気持ちは日に日に大きくなっていく。正直一秒だってシャーロットと離れたくない。それくらい、僕の中でシャーロットの存在が大きくなっていた。
そして、婚約して4年の月日が流れた。
「リアム様、今日はお空の旅に行きませんか?」
シャーロットが急にそんな事を言い出した。
「空の旅?」
「そうです、出でよ、絨毯!」
シャーロットが唱えると、大きな絨毯が出てきた。これで何をするつもりなのだろう?
「リアム様、これにお乗りください」
僕の手を掴むと、絨毯の上に乗り、2人で座る。
「さあ、出発です」
シャーロットがそう言うと、絨毯は宙を浮かび、ゆっくりと進み始めた。どんどん高度を上げていく絨毯。
「空から見るゾマー帝国は、とっても素敵でしょう?リアム様」
嬉しそうに話すシャーロット。確かに素敵だ。でも…シャーロットはどんどん魔力を磨いていく。いつか、この絨毯で僕の側を離れて行ってしまうのではないか。そんな不安が僕を襲った。
シャーロットが帰った後、すぐに母上の元へと向かった。
「母上、今すぐ僕とシャーロットを結婚させてください!」
僕の発言に、目を丸くする母上。
「リアム、あなた一体何を言っているの?」
「今日、シャーロットと一緒に絨毯に乗って空の旅をしたんだ!」
「それがあなた達の結婚と何か関係があるの?」
さっぱりわからないと言った母上に、若干いら立ちを覚える。
「シャーロットはどんどん色々な魔法を身に着けています。このままでは、僕を置いてどこかに行ってしまうかもしれません。そうなる前に、シャーロットを繋ぎ止めておきたいのです。結婚すれば、きっとシャーロットはもう逃げられない!」
そうだ、この国では余程の理由がない限り、離婚は出来ない。だから、結婚さえしてしまえば、シャーロットもきっと僕から逃げられないはずだ。
「リアム、少し落ち着きなさい。そもそもシャーロットちゃんは公爵令嬢よ。たとえ魔力が優れていたとしても、身の回りの事は何一つ出来ない。そんな彼女が、家族を捨ててどこかへ行くなんて考えられないわ」
呆れる母上。
「それでも、魔力があれば何とか生きて行く事は可能です。母上」
「そうかもしれないわ。でも、そんな事をすれば公爵家はどうなるの?王太子のあなたと婚約が決まっているのに、娘がどこかに行ってしまったなんてことになったら、公爵家の評判はがた落ち。公爵も令息も肩身の狭い生活を強いられることになる。
あの家族思いのシャーロットちゃんがそんなことすると思う?もし、本当にシャーロットちゃんがあの家を出ることになるとすれば、公爵がシャーロットちゃんを勘当した時くらいね」
公爵がシャーロットを勘当?僕の目から見ても、公爵はシャーロットを溺愛している。勘当なんて、天地がひっくり返っても起こらないだろう。
「リアム、分かった?シャーロットちゃんがあなたの元を去るなんて、それぐらい非現実的な話なのよ!そんなくだらない話をしている暇があるなら、あなたも少しは魔力を磨きなさい」
母上の言う事はもっともだ。そうか、シャーロットは僕から離れることはないのか!良かった。シャーロットとの結婚は、貴族学院を卒業してからだから早くて5年後か。それでも、僕達は婚約者だ。今まで以上にシャーロットを愛そう。僕の大切なシャーロットを、絶対に幸せにしよう。
その時の僕はそう思っていた。でも、この気持ちはあの忌まわしい女によって、脆くも打ち砕かれてしまう。
僕は自室でソファーに腰掛け、頭を抱え込んだ。
最愛の婚約者、シャーロットを失って半年が経とうとしている。優秀な魔術師を世界中に派遣しているが、未だシャーロットに関する有力な情報は得られていない。
「シャーロット…どうか生きていておくれ…」
僕がシャーロットに初めて会ったのは、8歳の時だ。当時の僕は、女なんて正直面倒くさい生き物だと思っていた。僕が王子ということもあり、女たちは猫なで声ですり寄ってくる。きっと僕の婚約者の座を狙っているのだろう。まだ子供なのに、化粧までしてくる者もいる。
正直気持ち悪いし、ウザイ!そんなある日、母上に呼び出された。
「リアム、明日ウィルソン公爵の娘のシャーロットちゃんがついに王宮に遊びに来るのよ!あなたも挨拶しなさいね」
ウィルソン公爵令嬢と言えば、恐ろしいほどの魔力の持ち主。有り余る魔力を使いこなせず、たびたび公爵邸を破壊したという話は有名だ。
ちなみに母上と今は亡き公爵夫人は親友だったらしい。だから、母上は俺と親友の忘れ形見でもあるウィルソン公爵令嬢を結婚させたいらしい。はっきり言って迷惑な話だ。そんな化け物と僕を結婚させたいなんて!母上は何を考えているのだろう。
「母上、悪いが僕はそんな化け物とは会わないよ!会いたいなら母上だけ会えばいいだろう。可愛い息子を巻き込まないでくれ」
僕はそう言うと、部屋を出た。母上は何か叫んでいたが、無視しておいた。そして翌日、メイドが俺を呼びに来たが無視して庭に出た。天気もいいし、今日は王宮の庭で昼寝でもするか!
そう思って芝生に横になって昼寝をした。ちょうどウトウトとし始めた時だった。
「あなた、リアム様?」
誰だ?僕の昼寝を邪魔するのは!僕は声のする方を向いた。すると、美しい銀色を腰まで伸ばし、宝石のような奇麗なブルーの瞳をした女の子が立っていた。僕はその女の子にくぎ付けになる。
この子は妖精か何かなのか?
「ねえ、あなたがリアム様なの?」
固まって動かない僕に、再び女の子が聞いて来る。
「そうだよ。君は?」
「私はシャーロット・ウィルソンよ。王太子妃様がね、あなたがここで昼寝をしているはずだから、行ってあげてって言ったのよ!まさか本当に昼寝をしているなんてね」
おかしそうにクスクス笑う女の子。そうか、この子がウィルソン公爵の娘のシャーロットか。それにしても、可愛い子だな。
「ねえ、せっかくだから一緒に遊びましょう!私ね、魔力が強すぎて最近まで家から出られなかったのよ。だから、外の世界が珍しくて仕方ないの。ねえ、何して遊ぶ?」
目を輝かせて僕を見つめるシャーロットに、心臓がバクバクする。何なんだこの気持ちは。その後はシャーロットと一緒に遊んだ。彼女は公爵令嬢なのに、全然令嬢らしくなく、庭を走り回ったり、魔力で動物を出して一緒に遊んだりしている。
そんなシャーロットに、どんどん惹かれていった。僕、この子と結婚したい!
シャーロットが帰った後、早速母上の元へと向かった。
「母上、僕はシャーロットと結婚する!」
「あらあら、急にやって来たと思ったら、いきなりどうしたの?化け物とは絶対結婚しないんじゃなかったの?」
クスクス笑いながら話す母上。
「気が変わりました!僕はシャーロットと結婚するから、早くシャーロットを僕の婚約者にしてください!シャーロット以外とは絶対に結婚しないから、そのつもりで」
僕は言いたい事だけ言うと、部屋から出て行った。そう、僕は王子だ。今までもどんな我が儘だって聞いてくれた母上。そもそも、母上がシャーロットと結婚しろって言ったんだからな!
そして僕の要望通り、シャーロットが婚約者に内定した。シャーロットは可愛いだけでなく、心も本当に美しい。魔力が有り余っているからと、貧しく病院に行けない民たちに、無料で治癒魔法をかけてあげている。
本人曰く
「無駄に多い魔力がこうやって人の役に立つなんて、素晴らしいじゃない!」
何て言っている。さらに、厳しい王妃教育も泣き言一つ言わず、黙々とこなしている。そんなシャーロットを見ていると、僕も頑張らなければと言う気持ちになる。
だから、僕は剣も勉強も魔法も頑張った。母上も
「シャーロットちゃんと婚約してから、リアムも随分としっかりしてきたわね。先生たちも褒めていたわよ」
何て言っている。正直僕は周りの評判何てどうでもいい。シャーロットさえいてくれたら、それだけで幸せなんだ。この気持ちは日に日に大きくなっていく。正直一秒だってシャーロットと離れたくない。それくらい、僕の中でシャーロットの存在が大きくなっていた。
そして、婚約して4年の月日が流れた。
「リアム様、今日はお空の旅に行きませんか?」
シャーロットが急にそんな事を言い出した。
「空の旅?」
「そうです、出でよ、絨毯!」
シャーロットが唱えると、大きな絨毯が出てきた。これで何をするつもりなのだろう?
「リアム様、これにお乗りください」
僕の手を掴むと、絨毯の上に乗り、2人で座る。
「さあ、出発です」
シャーロットがそう言うと、絨毯は宙を浮かび、ゆっくりと進み始めた。どんどん高度を上げていく絨毯。
「空から見るゾマー帝国は、とっても素敵でしょう?リアム様」
嬉しそうに話すシャーロット。確かに素敵だ。でも…シャーロットはどんどん魔力を磨いていく。いつか、この絨毯で僕の側を離れて行ってしまうのではないか。そんな不安が僕を襲った。
シャーロットが帰った後、すぐに母上の元へと向かった。
「母上、今すぐ僕とシャーロットを結婚させてください!」
僕の発言に、目を丸くする母上。
「リアム、あなた一体何を言っているの?」
「今日、シャーロットと一緒に絨毯に乗って空の旅をしたんだ!」
「それがあなた達の結婚と何か関係があるの?」
さっぱりわからないと言った母上に、若干いら立ちを覚える。
「シャーロットはどんどん色々な魔法を身に着けています。このままでは、僕を置いてどこかに行ってしまうかもしれません。そうなる前に、シャーロットを繋ぎ止めておきたいのです。結婚すれば、きっとシャーロットはもう逃げられない!」
そうだ、この国では余程の理由がない限り、離婚は出来ない。だから、結婚さえしてしまえば、シャーロットもきっと僕から逃げられないはずだ。
「リアム、少し落ち着きなさい。そもそもシャーロットちゃんは公爵令嬢よ。たとえ魔力が優れていたとしても、身の回りの事は何一つ出来ない。そんな彼女が、家族を捨ててどこかへ行くなんて考えられないわ」
呆れる母上。
「それでも、魔力があれば何とか生きて行く事は可能です。母上」
「そうかもしれないわ。でも、そんな事をすれば公爵家はどうなるの?王太子のあなたと婚約が決まっているのに、娘がどこかに行ってしまったなんてことになったら、公爵家の評判はがた落ち。公爵も令息も肩身の狭い生活を強いられることになる。
あの家族思いのシャーロットちゃんがそんなことすると思う?もし、本当にシャーロットちゃんがあの家を出ることになるとすれば、公爵がシャーロットちゃんを勘当した時くらいね」
公爵がシャーロットを勘当?僕の目から見ても、公爵はシャーロットを溺愛している。勘当なんて、天地がひっくり返っても起こらないだろう。
「リアム、分かった?シャーロットちゃんがあなたの元を去るなんて、それぐらい非現実的な話なのよ!そんなくだらない話をしている暇があるなら、あなたも少しは魔力を磨きなさい」
母上の言う事はもっともだ。そうか、シャーロットは僕から離れることはないのか!良かった。シャーロットとの結婚は、貴族学院を卒業してからだから早くて5年後か。それでも、僕達は婚約者だ。今まで以上にシャーロットを愛そう。僕の大切なシャーロットを、絶対に幸せにしよう。
その時の僕はそう思っていた。でも、この気持ちはあの忌まわしい女によって、脆くも打ち砕かれてしまう。
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