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第27話:グレイズと幸せな未来に向かって

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王宮主催の夜会から、早3ヶ月半。あの後マッキーノ侯爵から、改めて謝罪と慰謝料を頂いた。慰謝料はお断りしようとしたのだが

“君には本当に迷惑を掛けたから、どうか受け取って欲しい”

と言われたので、有難く頂く事にしたが、なんだか申し訳ない。

そしてエディソン様だが、どうやら体調が思わしくない様で、領地で療養しているとの事。ただ、まだ私を諦めていないらしい。それでも侯爵様がしっかり監視しているとの事なので、今後私に絡んでくることはないだろうと、なぜかマリーゴールド様が教えてくれた。

侯爵様は今回の件をかなり重く受け止めてくれている様で、二度とエディソン様が私に近づかない様に動いてくれている様だ。さらにエディソン様のお母様でもある、マッキーノ侯爵夫人は、今回私に暴言を吐き、醜態を晒したとの事で、かなり落ち込んでいるらしい。

大好きだったお茶会もほとんど参加していない様で、お母様が“快適だ”と喜んでいた。本当にお母様は…

そもそも今回の事件は、元はと言えば私がエディソン様に恋をし、追い掛け回した事が原因でもあるのだろう。あれほどまでに好意を露わにしていたのだから、エディソン様が私が未だに彼を好きだと誤解しても、おかしくはなかっただろう。だからと言って、無理やり婚約を破棄させるのは、間違っていると思うが…

そんな思いから、しばらくは悩む事もあった。でも、マリーゴールド様始め、友人たちが

“いつまでも過ぎた事を悩んでいても仕方がないわ。だって過去は変えられないのだもの。だから、未来を見ましょう。せっかく大好きなグレイズ様との婚約が継続したのだから、これからは自分たちの幸せを考えないと勿体ないわ”

そう慰めてくれたのだ。彼女たちのお陰で、少し心が軽くなった。過去は変えられない、だからこそ、よりよい未来にするため、今を頑張ろう、そう決めたのだ。

「アンリ、窓の外を見上げてどうしたんだ?」

私に話しけて来たのは、グレイズだ。

「何でもないわ。ただ、毎日こうやって平和に過ごせる日々って、本当に有難いなって思って」

「そうだな…一時は本当にどうなる事かと思ったけれどな。まあ、俺はどっちにしろお前と離れるつもりはなかったけれど」

そう言って笑ったグレイズ。そういえば、夜会の時もそんな事を言っていた。

「ねえ、それってどういう意味?」

「実は俺、お前と国を出る準備をしていたんだ。夜会が終わって送っていく帰りに、2人で事故にあったふりをして、そのまま国を出るつもりだったんだ。だからお前のドレスには裏にも表にも、沢山の宝石がくっ付いていただろう?それを売って、少しでも金にしようと思っていたんだよ」

何ですと!確かにドレスにたくさんの宝石が散りばめられた、かなり豪華な物だったけれど。そんな意図があったなんて…

「何をそんなに驚いているんだよ!俺がお前の言う事なんて聞くと思ったのか?本当に変なところで頑固だからな。お前は」

そう言って笑ったグレイズ。

「グレイズ様の事だから、そんな事だろうと思ったけれど、やっぱり国を出ようとしていたのね」

この声は…

「マリーゴールド様も知っていらしたのですか?」

「ええ、何となくね。私だけじゃないわ。皆知っていたのよ」

何ですと!
私たちの周りに集まっていたクラスメートの方を見つめる。

「ごめんね、アンリ。だって私達、どうしても2人に幸せになって欲しかったのだもの」

「グレイズとアンリ嬢を見ていたら、俺たちも何とかしたいと思って。でも、結局マリーゴールド嬢のお陰で、実行しなくてもよかったけれどな」

「皆…ありがとう…私たちの為に、そこまで動いてくれていただなんて…」

嬉しくてつい涙が溢れる。

「本当にアンリは泣き虫だな。でも、本当に俺たちの為に、色々とありがとう。もし皆が困ったら、俺たちが必ず助けるから。もちろん、出来る範囲でだけれど。な、アンリ」

「もちろんよ…私たちに出来る事があったら、何でも言って!私、突っ走るのだけは得意だから」

「アンリ、頼むから後先考えずに突っ走るのだけは止めてくれ!」

すかさずグレイズが突っ込みを入れる。そんな私たちのやり取りを見たクラスメートたちが、お腹を抱えて笑っている。

これからもこうやって、クラスの皆に支えられて、私たちは過ごしていくのだろう。もちろん、誰かが困ったり苦しんでいたりしたら、迷わずに手を差し伸べたい。皆を見て、強くそう思った。



~1年後~
「アンリ、準備できたか?」

「ええ、もちろんよ」

真っ白なウエディングドレスに身を包み、ゆっくりとグレイズの元へと向かう。そう、今日は私たちの結婚式なのだ。

「いいか、アンリ。今日はたくさんの人間が参列する。万が一マッキーノ侯爵令息が紛れ込んでいるかもしれないから、十分気を付けるんだぞ。俺から絶対に離れるなよ」

「ええ、分かっているわ」

実は1ヶ月ほど前、エディソン様が私を誘拐しようとする騒ぎがあった。ただ、事前に情報を得ていたマッキーノ侯爵から連絡を受けていた為、家の屋敷に侵入しようとしたところで、警備を強化していた家の護衛騎士に捕まったらしい。

護衛たちの話では、ずっと私の名前を叫んでいたとの事。どうやらまだ私を諦めていなかったエディソン様は、すぐに領地に連れて行かれたらしい。そして、もう二度と王都には戻ってこないそうだ。

あの事件以降、さらに警戒を強めているグレイズ。片時も私から離れないどころか、私に居場所を特定する機械を付けさせたり、通信機を持たせたりとかなり過保護になってしまった。

でも、それだけ私の事を大切にしてくれているのだろうと思うと、私としては嬉しい限りなのだ。

グレイズと腕を組み、執事に案内されながら教会の入口へとやって来た。

「グレイズ、今日という日を迎えられた事、本当に嬉しく思うわ。私を好きになってくれてありがとう。色々あったけれど、私は今幸せよ」

グレイズに向かって、改めて感謝の言葉を伝えた。

「俺の方こそ、俺の事を好きになってくれてありがとう。アンリ、これからもずっとずっと一緒だ。愛しているよ、アンリ」

優しい眼差しで、私を見つめるグレイズ。一時はグレイズを諦めた事もあった。でも…マリーゴールド様始め、皆のお陰で今日という日を迎える事が出来た。それが嬉しくてたまらないのだ。

「坊ちゃま、アンリ様、そろそろお時間です」

執事の合図で、ゆっくりと扉が開く。

「アンリ、行くぞ」

「ええ」

沢山の参列者に見守られながら、ゆっくりとバージンロードを歩く2人。幸せそうに微笑む2人は、まだ見ぬ未来に胸弾ませている事だろう。


おしまい


~あとがき~
これにて完結です。
最後までお読みいただき、ありがとうございましたm(__)m
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