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第22話:王宮主催の夜会に参加します
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あっという間に2週間が過ぎ、今日は王宮主催の夜会だ。私達の婚約破棄が決まってから、エディソン様は今まで以上に私の元に来るようになったが、マリーゴールド様が
「アイリ様はまだグレイズ様の婚約者です。ですからあなたが彼女に近づくのは、お控えください」
と、上手く追い払ってくれているのだ。さすがのエディソン様も、公爵令嬢で王太子妃様の妹でもあるマリーゴールド様には強く言えない様で、本当に助かっている。
せめてグレイズと婚約している間は、エディソン様の事を考えたくはないのだ。そう思っている私に気を使って、エディソン様を追い返してくれているのだろう。本当にマリーゴールド様には感謝しかない。
「お嬢様、準備が整いましたよ」
「ありがとう」
鏡に映る自分を確認する。今日は最初で最後のグレイズの婚約者として出席する夜会だ。グレイズの瞳の色に合わせたグリーンのドレスを身にまとい、グレイズの髪の色に合わせてルビーのイヤリングとネックレスも付けてもらった。どれもグレイズが私の為に準備をしてくれたものだ。
よし、バッチリね。
急いで玄関に向かうと、既にグレイズが待ってくれていた。私の髪の色に合わせた、水色のスーツを着ている。髪もしっかり固めて、こうやって見ると、グレイズも結構カッコいいわね。
「お待たせ、グレイズ。今日のあなた、とてもカッコいいわよ」
「アンリこそ、とても綺麗だよ。さあ、行こうか」
2人で腕を組み、馬車へと乗り込む。
「私、実はお兄様以外にエスコートしてもらって夜会に参加するのって、初めてなのよね。なんだか緊張してきたわ」
「俺だって初めてだよ。でも、最初にエスコートする相手が、お前でよかった」
そう言うと、寂しそうに笑ったグレイズ。私もつい泣きそうになった。でも、今は泣いてはダメよ。
しばらく進むと、立派な王宮が見えてきた。そしてゆっくりと馬車が停まる。
「さあ、アンリ。行こうか」
「ええ」
グレイズとしっかり腕を組み、ホールへと向かう。こうやってグレイズと堂々と腕を組んで歩けるのも、今日で最後か…そう思うと、やっぱり悲しい。それでも私は、胸を張ってグレイズと歩く。
今日だけは、グレイズの婚約者として恥ずかしくない、立派なレディを目指すために。
私たちが入場すると
「グレイズ・ダニルーディン殿、アンリ・スリーフェイル嬢、ご入場です」
と、大きな声でアナウンスされた。なんだか恥ずかしいわね。私達は今話題のカップルだ。そう、婚約破棄が決まっているカップルとして、貴族界で注目されているのだ。そのせいで、一斉に皆がこちらを向いた。
「俺たち、すごい注目されているな」
「そうね、今話題になっていると、お父様も言っていたわ。でも、周りなんて気にせず、今日は目いっぱい楽しみましょう」
そう言って2人で微笑み合う。そんな私たちの元に、仲の良いクラスメートたちが集まってきてくれた。
「こんばんは、今日のアンリとグレイズ様の格好、よく似合っているわ」
「本当だな。まるで本物の婚約者同士みたいだ」
「おい、俺たちは本物の婚約者だぞ」
すかさず突っ込みを入れるグレイズ。言った本人は「そうだったな」と言って、ペロリと舌を出している。
その姿を見た皆が、一斉に笑い始めた。そんな和やかな空気の中、夜会スタートだ。まずは陛下の挨拶、さらに王太子殿下の挨拶へと続く。初めて王太子妃様をまじまじと見たが、マリーゴールド様によく似ていて、とても美しい女性だ。
王太子殿下は王太子妃様を寵愛しているだけあって、あいさつの後すぐに、王太子妃様の元に戻り、そっと寄り添っている。本当に素敵な夫婦だ。私もあんな夫婦に…て、無理か…
「アンリ、せっかくだから一緒にダンスを踊ろうぜ」
私に話し掛けてきたのは、グレイズだ。
「もちろんよ」
2人で手を取り合い、ホールの真ん中へとやって来た。そして、ゆっくりと踊る。
「こうやってグレイズと一緒にダンスを踊るのは、貴族学院主催のパーティ以来ね」
「そうだな…あの後すぐに、俺たちが婚約を結んだのだったな。まだ日も経っていないのに、随分昔の様に感じるよ」
確かにまだ貴族学院のパーティから、1ヶ月も経っていない。それなのに、もう大昔の出来事の様に感じるわ。
「グレイズ…私のせいでこんな事になってしまって、本当にごめんなさい。どうかあなただけでも、幸せになってね」
「アンリ…お前ってやつは。とにかく、今日という日を目いっぱい楽しもうぜ」
そう言ってほほ笑んでくれたグレイズ。その顔を見ていると、何とも言えない気持ちになった。
結局その後も、今という時間を惜しむかのように、2人でダンスを踊り続けたのだった。
「アイリ様はまだグレイズ様の婚約者です。ですからあなたが彼女に近づくのは、お控えください」
と、上手く追い払ってくれているのだ。さすがのエディソン様も、公爵令嬢で王太子妃様の妹でもあるマリーゴールド様には強く言えない様で、本当に助かっている。
せめてグレイズと婚約している間は、エディソン様の事を考えたくはないのだ。そう思っている私に気を使って、エディソン様を追い返してくれているのだろう。本当にマリーゴールド様には感謝しかない。
「お嬢様、準備が整いましたよ」
「ありがとう」
鏡に映る自分を確認する。今日は最初で最後のグレイズの婚約者として出席する夜会だ。グレイズの瞳の色に合わせたグリーンのドレスを身にまとい、グレイズの髪の色に合わせてルビーのイヤリングとネックレスも付けてもらった。どれもグレイズが私の為に準備をしてくれたものだ。
よし、バッチリね。
急いで玄関に向かうと、既にグレイズが待ってくれていた。私の髪の色に合わせた、水色のスーツを着ている。髪もしっかり固めて、こうやって見ると、グレイズも結構カッコいいわね。
「お待たせ、グレイズ。今日のあなた、とてもカッコいいわよ」
「アンリこそ、とても綺麗だよ。さあ、行こうか」
2人で腕を組み、馬車へと乗り込む。
「私、実はお兄様以外にエスコートしてもらって夜会に参加するのって、初めてなのよね。なんだか緊張してきたわ」
「俺だって初めてだよ。でも、最初にエスコートする相手が、お前でよかった」
そう言うと、寂しそうに笑ったグレイズ。私もつい泣きそうになった。でも、今は泣いてはダメよ。
しばらく進むと、立派な王宮が見えてきた。そしてゆっくりと馬車が停まる。
「さあ、アンリ。行こうか」
「ええ」
グレイズとしっかり腕を組み、ホールへと向かう。こうやってグレイズと堂々と腕を組んで歩けるのも、今日で最後か…そう思うと、やっぱり悲しい。それでも私は、胸を張ってグレイズと歩く。
今日だけは、グレイズの婚約者として恥ずかしくない、立派なレディを目指すために。
私たちが入場すると
「グレイズ・ダニルーディン殿、アンリ・スリーフェイル嬢、ご入場です」
と、大きな声でアナウンスされた。なんだか恥ずかしいわね。私達は今話題のカップルだ。そう、婚約破棄が決まっているカップルとして、貴族界で注目されているのだ。そのせいで、一斉に皆がこちらを向いた。
「俺たち、すごい注目されているな」
「そうね、今話題になっていると、お父様も言っていたわ。でも、周りなんて気にせず、今日は目いっぱい楽しみましょう」
そう言って2人で微笑み合う。そんな私たちの元に、仲の良いクラスメートたちが集まってきてくれた。
「こんばんは、今日のアンリとグレイズ様の格好、よく似合っているわ」
「本当だな。まるで本物の婚約者同士みたいだ」
「おい、俺たちは本物の婚約者だぞ」
すかさず突っ込みを入れるグレイズ。言った本人は「そうだったな」と言って、ペロリと舌を出している。
その姿を見た皆が、一斉に笑い始めた。そんな和やかな空気の中、夜会スタートだ。まずは陛下の挨拶、さらに王太子殿下の挨拶へと続く。初めて王太子妃様をまじまじと見たが、マリーゴールド様によく似ていて、とても美しい女性だ。
王太子殿下は王太子妃様を寵愛しているだけあって、あいさつの後すぐに、王太子妃様の元に戻り、そっと寄り添っている。本当に素敵な夫婦だ。私もあんな夫婦に…て、無理か…
「アンリ、せっかくだから一緒にダンスを踊ろうぜ」
私に話し掛けてきたのは、グレイズだ。
「もちろんよ」
2人で手を取り合い、ホールの真ん中へとやって来た。そして、ゆっくりと踊る。
「こうやってグレイズと一緒にダンスを踊るのは、貴族学院主催のパーティ以来ね」
「そうだな…あの後すぐに、俺たちが婚約を結んだのだったな。まだ日も経っていないのに、随分昔の様に感じるよ」
確かにまだ貴族学院のパーティから、1ヶ月も経っていない。それなのに、もう大昔の出来事の様に感じるわ。
「グレイズ…私のせいでこんな事になってしまって、本当にごめんなさい。どうかあなただけでも、幸せになってね」
「アンリ…お前ってやつは。とにかく、今日という日を目いっぱい楽しもうぜ」
そう言ってほほ笑んでくれたグレイズ。その顔を見ていると、何とも言えない気持ちになった。
結局その後も、今という時間を惜しむかのように、2人でダンスを踊り続けたのだった。
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