彼を追いかける事に疲れたので、諦める事にしました

Karamimi

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第1話:大好きな人には別に好きな人がいるそうです

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今日もいつもの様に、大好きなエディソン様の元にやって来た。

「エディソン様、ハンカチに刺繍を入れてきましたの。受け取っていただけますか?」

エディソン様に近づき、ハンカチを渡した。周りには令嬢たちがエディソン様を囲っている。

「悪いがこれは受け取れないよ。すまない…」

少し困った顔をしたエディソン様がそう言って、ハンカチを返してきたのだ。せっかく10日かけて入れたのに…

ショックでついシュンとしてしまう。

「ちょっとあなた、いい加減にしなさいよ。いつもいつも図々しくエディソン様の元にやって来て。そもそもここは、3年棟よ」

「そうよ、毎回毎回押しかけてきて、エディソン様が迷惑している事、いい加減気が付きなさい」

さらに令嬢たちからも責められ、私は増々シュンとする。

「まあまあ、彼女も悪気があって来ている訳ではないのだから。さあ、もう2年棟に戻りなさい」

エディソン様に促され、2年棟に戻る。

「お前、またマッキーノ侯爵令息のところに行っていたのかよ」

は~っとため息をつきながら私に話しかけてきたのは、幼馴染で伯爵令息のグレイズだ。燃えるような赤い髪に、グリーンの瞳をしている。

「うるさいわね、グレイズには関係ないでしょう」

初めてエディソン様に出会ったのは、1年半前。貴族学院の入学式で迷子になった私を助けてくれたのが、エディソン様だった。その優しい微笑に、私は一目で恋に落ちた。

それ以降、毎日一学年上のエディソン様に会いに行っている。ただ、エディソン様は見た目が美しいだけでなく、頭もよく武術にも優れている、さらに優しいとあって、令嬢たちの憧れの的なのだ。

その為、エディソン様より爵位が低く、さらに1学年下の私が毎日エディソン様に会いに行く事を、快く思っていない令嬢たち。何度も嫌味を言われたり、特には突き飛ばされたりしたこともあった。

それでもエディソン様の笑顔を見ると、どんなに辛い事があっても、耐えられたのだが…

「お前、最近マッキーノ侯爵令息から避けられているのだろう。この前の夜会も、お前とだけダンスを踊っていなかっただろう。いい加減諦めろ、あまりしつこいと、マッキーノ侯爵家から抗議が来るぞ」

う…確かに私はこの前の夜会の時、エディソン様を誘って、おもいっきり断られた。でもエディソン様は、私以外の令嬢とは楽しそうにダンスを踊っていたのよね…

分かっているわよ…私だってエディソン様に嫌われている事くらい。でも、好きなものは好きなのだ。

「とにかく、これ以上マッキーノ侯爵令息に近づくのは止めろよ。お前がそんなんだから、貴族学院2年になった今でも、友達ができないのだろう?」

「それは私が4年間、領地に行っていたからよ。それに、友達ならグレイズがいるわ」

私は子供の頃体が弱く、8歳から12歳まで、自然豊かな領地で暮らしていたのだ。さらに入学してからずっとエディソン様を追い掛け回していたことから、令嬢たちがドン引きしてしまい、気が付いたら幼馴染のグレイズだけが、こうやって私に話しかけてきてくれる。

そもそも令嬢特有の群れみたいなのが苦手な私は、1人でも平気なのだ。

「は~、お前がそう言うのならいいけれど、もう14歳なのだから、いい加減現実を見ろよ」

そう言って去って行った。何よ、もう!グレイズったら!…とは思ったもののグレイズの言う通り、もう諦めた方がいいのかしら?

いいえ、やっぱり諦められないわ。せめてエディソン様が正式に誰かと婚約するまで、諦めないのだから!

授業が終わると、再び3年棟を目指して、猛ダッシュする。3年棟に着くと、いた!エディソン様だわ。声を掛けようとした時だった。

美しいストロベリーブロンドの髪をした女性が、エディソン様と楽しそうに話しをしている。確か彼女は、侯爵令嬢のネリア様だわ。エディソン様に寄り添い、2人で微笑み合っている。

エディソン様のあんなにも楽しそうな顔、初めて見たわ…

「あら、あなた凝りもせずまた来たの。残念だったわね、エディソン様とネリアは、お互い愛し合っているのよ。見て、あんなにもお似合いな2人を。あなたがどう転んでも、エディソン様とは釣り合わないのだから、諦めなさい」

私に話しかけてきたのは、ネリア様の友人の様だ。

「あの…エディソン様とネリア様は、愛し合っているのですか?」

「だからそう言っているでしょう?近々婚約を結ぶ予定よ。エディソン様は無駄に優しいから、ネリアも随分と不安な思いをしていたのよ。あなたみたいなハイエナ令嬢たちが、エディソン様を追い掛け回すから…」

ハイエナ令嬢だなんて…
でも、追い掛け回していたのは確かだ。

「あなた達の様なハイエナ令嬢って、本当に図々しくて自分の事しか考えていないでしょう?だから万が一ネリアとエディソン様が付き合っている事を知ったら、ネリアに危害が及ぶのではないかと、エディソン様も警戒していた様よ」

は~っと、ため息をつきながら、私をジト目で睨んでいる。

「あなたもいい加減諦めなさい。逆立ちしたって、ネリアには勝てないのだから。これはあなたの為に言っているのよ。いつまでもエディソン様に付きまとっていると、いよいよ抗議文を送られるわよ。とにかく、自分の立ち位置をよく考える事ね」

そう言って令嬢は去って行ったのだった。



~あとがき~
新連載始めました。
よろしくお願いいたしますm(__)m
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