246 / 270
恐怖の大王編
三日間とチャンス
しおりを挟む
あの後すぐに王立学校襲撃の報告は俺の元にも届いていた。
俺がすあまの立場ならすぐに退く。私怨の報復と自身の安全、どちらの優先度が高いか。考えればすぐに分かるだろう。
だけどおはぎの言葉の感じだと、すあまってのは頭のネジが飛んでそうだしなぁ。素直に退くかどうか。
とりあえず三日だ。三日間だけ静観して、何も状況が変わらないようなら行動を決めなけりゃならんな……なんて考え、アッと言う間に三日は過ぎてしまう。
そこで俺の全く予想していなかった展開が起こるのだった。
勢いよく部屋の戸が開けられた。
そこに立っていたのは……
「無事みたいじゃん。まぁ、あたしは信じてたけどね」
「えっ……な、何でシャーリーがここに? ど、どういう事?」
「シノブちゃん!!」「シノブ!!」
シャーリーだけじゃない。リアーナやロザリンドもいた。そして駆け寄りベロベロと顔を舐めてくる小犬のようなヴォルフラムも。
「ちょ、みんな……これ……どうなってんの?」
この三日間で一体何があったのだ……全く分からん。マジでどうなってんの?
★★★
これは後から知る事のできた三日間の話。
王立学校で繰り広げられる攻防を遠くから観察する二人がいた。
「凄いね、ミツバのこれ。望遠鏡っていうんだよ。凄く遠くまで見えるね」
筒状の望遠鏡を覗いているのはアリエリ。
「あれ? おかしいぞ? 何も見えない……壊れてるのか?」
同じく望遠鏡を覗いていたドレミドだったが、それを振ってみて再び覗き込む。
「……あのね、それね、逆。前と後ろがね、逆だよ」
「こうか……凄い見える!!」
「本当にね、ドレミドはバカ」
「酷いぞ!!」
二人は遠くから王立学校襲撃の指揮をする者を探していた。もちろんすぐに見付ける事ができた。鉄人形の中に一人だけ人間がいるのだからよく目立つ。傍らに黒猫らしき者もいるがベルベッティアとは違うように見える。
二人の目的は戦場に紛れて指揮者を倒す事。
「どうする? もう行く?」
「……」
アリエリの言葉にドレミドは無言。そのまま観察を続ける。
「……」
「……」
「……」
「……まだダメだ……あの黒猫……常に周囲を気に掛けて……多分……近付けない」
ドレミドは独り言のように続ける。
「……でも集中力は必ず落ちるぞ……一日か二日か……それまではどうにか王立学校が耐えられれば……」
黒猫の周囲にいくつも浮かぶ魔法陣。そこから鉄人形は絶えず補充されていた。王立学校は陥落するかも知れない。しかしこちらのチャンスは多くない。見極めて行動を起こす必要がある。
二人はそのチャンスを待って、ただひたすらに観察を続けていた。
昼夜を問わずに行われる戦闘。それを休憩しながら交互に見張るドレミドとアリエリ。
それは三日目の事。
「ね、ドレミド起きて。ドレミド、ちょっと変だよ」
「んん……もうちょっと……もうちょっとだけ寝かせてくれ……起きたらいつもより少しだけ頑張って仕事するからな……」
「……起きて」
パカンッ
「痛い!! 今、誰か頭を叩いたぞ!!?」
「見て。ほら、魔法陣はあるのにね、鉄人形が出てこないの。きっとね、シャーリー達だよ」
すぐにドレミドも確認する。
「……アリエリ……行くぞ」
これは待っていたチャンス。二人は行動を開始した。
王立学校からの攻撃を避け、倒れた鉄人形の影に隠れながら、ゆっくり、確実に近付く二人。気付かれないように気配を殺し、物音を立てないよう慎重に、慎重に。
そして指揮者と黒猫の声が聞こえる所まで辿り着いていた。
「弾幕薄いよ、なにやってんの!!?」
「……」
「おはぎ、補充!!」
「……その補充だけど……変だぞ……何かおかしい……すあま、ここはやっぱり逃げた方が良い」
「何で? おはぎが創った魔法陣は簡単に真似できないし、できたとしてももう少し時間が掛かるって言ってたでしょ」
「でも俺はこうも言ったぞ。『シノブの能力の全容は分からない』って。何か能力が発動されているのかも知れない。他に特別な能力を持った奴がいる可能性だってある。とにかくアイツ等が送られてこない」
王立学校攻略は鉄人形の補充があってこそ。それが途切れるとなれば不可能に近い。ここで戦う意味は無い。早々に立ち去るべき。
「……確かに逃げた方が良いと私の勘も言ってるけど……ここはそれをあえて無視してやる!!」
「無視してやる意味……」
会話のやり取りで、おはぎの警戒心がほんの少しだけ削がれていた。
その瞬間を見逃さず、飛び出すドレミド。剣の切っ先をすあまへと向ける。
「すあま!!」
おはぎはその姿に気付き、自らがドレミドの目の前に飛び込むと同時、周囲の鉄人形を集める。
しかしドンッという衝撃音と共におはぎと鉄人形は見えない力に弾き飛ばされた。アリエリだ。
ドレミドの剣が、反応の遅れたすあまの喉元に迫る。これを避ける事はできない。確実に倒せる、そうドレミド自身も感じていたが……
それは全くの偶然だった。
王立学校からの魔法攻撃。爆風がすあまの体を吹き飛ばす。ドレミドの剣はすあまの首筋を掠め、薄皮一枚を斬るだけ。
再度ドレミドは剣を構えるが、鉄人形が目の前に割り込んだ。
「アリエリ!!」
「ダメだよ!! 数が多いよ!!」
アリエリは鉄人形を叩き、殴り飛ばすが、とにかく数が多い。
すあまとおはぎに距離を取られてしまう。
「危っなー……うわー何……」
すあまは首筋に手を当てる。その指先には少量の血液。
「逃げる。異論は無いよな?」
「……無いけど少しだけ待って。ちょっとそこの二人!! もしかしてシノブの仲間?」
もうすあまとおはぎを倒すのは難しい状況だった。
「違うぞ。私は」
「ちょっと静かにしててね」
「うぐぐっ」
見えない力で口を塞がれるドレミド。
「言えるのは一つだけ……やったのは私達だよ。はい、これで終わり、もう何も喋らないし、あなた達の話も聞かない」
「すあま」
「うん」
それは交渉を含めた話し合いの拒否。
「ねぇ、シノブに伝えといてよ。『泣かす。後で絶対に泣かしてやる』ってね」
すあまとおはぎの足元に現れる魔法陣。そこから発せられる光に溶けるように二人の姿は消えるのだった。
★★★
これはシャーリー達が未開の土地に向かう前の話。大陸に鉄人形が侵攻し始めた直後。
ミランとハリエットは帝国に出向いている為にいないが、アルタイルにも協力してもらいこれからの対策を練る。
だがビスマルクやタックルベリー、ユリアンなどが中心になっても有効な策は何一つ見付からなかった。相手の状況が不明過ぎる、手詰まり……そんな中で予想外の発想を生み出したのはシャーリー。
「あのさ。なんか出てくる策が待ってばかりのヤツじゃん。こっちから攻め込んでやらない?」
「随分と簡単に言いますのね。そんな策が可能ならば、ユリアンがもう思い付いていますわ」
リコリスは言いながら隣のユリアンに視線を向ける。
「鉄人形が出てくる魔法陣を使って、逆にこっちから乗り込もうってつもりだろ? その魔法陣は相手が使っているもので、こっちから干渉はできない。そんな魔法陣を使うのは危険過ぎる」
ユリアンの言葉にタックルベリーが続ける。
「もし進入後に魔法陣を閉じられたら孤立して、戻れない可能性だってあるからな。待ち伏せされている場合もあるだろうし、僕は反対。そもそも最初に魔法陣を使った時と状況は同じ、結果どうなったか」
「却下だ」
と、ビスマルク。
だがシャーリーは……
「いや、あたしだってそこは分かってるって。でもその退路が確保できるなら?」
……
全員が一瞬だけ押し黙る。
「……そんな方法があるのか?」
ビスマルクが話を促す。
「思い出したんだけどさ……アルタイル」
シャーリーの言葉に、みんなの視線がアルタイルへと向けられた。言葉を続ける。
「前の、アルテュールの時にさ、あたしとアルタイルでテュポーンの足止めした事があったんだけど、その時にアルタイルが瞬間移動みたいの使ってたよね? 確か……『印を付けた二点を繋ぐもの』だっけ?」
「……そうだ」
アルタイルは静かにそう答え、さらに付け加える。
欠点は一度に一組しか設置できない事。一度使うと効力を失ってしまう事。一点目から二点目の設置が短時間のうちである事。
「だから印の一つをこっちに付けとく。そうすれば魔法陣の向こうに行っても、その古代魔法で戻れるんじゃない?」
「……戻れる可能性は高いだろう。だが戻れない可能性もある」
「戻れる可能性の高い根拠は何です?」
と、タックルベリー。
「……」
根拠はある。
古代魔法は精霊、妖精、悪魔、次元のずれた存在から力を借りるもの。つまり世界間を超える魔法とも言え、その 効力は通常の魔法よりも遥かに強い。もしこちらの世界とあちらの世界が繋がっているのなら効力を発揮する可能性は高い。
そしてアルタイルは知っていた。ベルベッティアという存在を。消えたベルベッティアがシノブの元にいるのなら、その能力で二つの世界は繋がっているのだろう。
しかし古代魔法の本質は隠しているアルタイルはその根拠を口にしない。
「アルタイル……あなたならばどうする? 個人的な意見を聞きたい」
何かを察したビスマルクの問いにアルタイルは答える。
「……試してみる価値はあるだろう。だが最後の手段にするべきだ」
そんな様子を黙って見守っていたのは人型のアバンセとパルだった。
「……素晴らしいな……力も、体も、人は竜より弱い。しかし俺達にはどうする事もできない事態にこうやって向かっていく」
「ああ、俺も思ったぜ。人は竜よりも強い。まぁ、シノブは一人でも竜より強いけどな」
「確かに。その通りだ」
アバンセとパルはそう言って笑うのだった。
俺がすあまの立場ならすぐに退く。私怨の報復と自身の安全、どちらの優先度が高いか。考えればすぐに分かるだろう。
だけどおはぎの言葉の感じだと、すあまってのは頭のネジが飛んでそうだしなぁ。素直に退くかどうか。
とりあえず三日だ。三日間だけ静観して、何も状況が変わらないようなら行動を決めなけりゃならんな……なんて考え、アッと言う間に三日は過ぎてしまう。
そこで俺の全く予想していなかった展開が起こるのだった。
勢いよく部屋の戸が開けられた。
そこに立っていたのは……
「無事みたいじゃん。まぁ、あたしは信じてたけどね」
「えっ……な、何でシャーリーがここに? ど、どういう事?」
「シノブちゃん!!」「シノブ!!」
シャーリーだけじゃない。リアーナやロザリンドもいた。そして駆け寄りベロベロと顔を舐めてくる小犬のようなヴォルフラムも。
「ちょ、みんな……これ……どうなってんの?」
この三日間で一体何があったのだ……全く分からん。マジでどうなってんの?
★★★
これは後から知る事のできた三日間の話。
王立学校で繰り広げられる攻防を遠くから観察する二人がいた。
「凄いね、ミツバのこれ。望遠鏡っていうんだよ。凄く遠くまで見えるね」
筒状の望遠鏡を覗いているのはアリエリ。
「あれ? おかしいぞ? 何も見えない……壊れてるのか?」
同じく望遠鏡を覗いていたドレミドだったが、それを振ってみて再び覗き込む。
「……あのね、それね、逆。前と後ろがね、逆だよ」
「こうか……凄い見える!!」
「本当にね、ドレミドはバカ」
「酷いぞ!!」
二人は遠くから王立学校襲撃の指揮をする者を探していた。もちろんすぐに見付ける事ができた。鉄人形の中に一人だけ人間がいるのだからよく目立つ。傍らに黒猫らしき者もいるがベルベッティアとは違うように見える。
二人の目的は戦場に紛れて指揮者を倒す事。
「どうする? もう行く?」
「……」
アリエリの言葉にドレミドは無言。そのまま観察を続ける。
「……」
「……」
「……」
「……まだダメだ……あの黒猫……常に周囲を気に掛けて……多分……近付けない」
ドレミドは独り言のように続ける。
「……でも集中力は必ず落ちるぞ……一日か二日か……それまではどうにか王立学校が耐えられれば……」
黒猫の周囲にいくつも浮かぶ魔法陣。そこから鉄人形は絶えず補充されていた。王立学校は陥落するかも知れない。しかしこちらのチャンスは多くない。見極めて行動を起こす必要がある。
二人はそのチャンスを待って、ただひたすらに観察を続けていた。
昼夜を問わずに行われる戦闘。それを休憩しながら交互に見張るドレミドとアリエリ。
それは三日目の事。
「ね、ドレミド起きて。ドレミド、ちょっと変だよ」
「んん……もうちょっと……もうちょっとだけ寝かせてくれ……起きたらいつもより少しだけ頑張って仕事するからな……」
「……起きて」
パカンッ
「痛い!! 今、誰か頭を叩いたぞ!!?」
「見て。ほら、魔法陣はあるのにね、鉄人形が出てこないの。きっとね、シャーリー達だよ」
すぐにドレミドも確認する。
「……アリエリ……行くぞ」
これは待っていたチャンス。二人は行動を開始した。
王立学校からの攻撃を避け、倒れた鉄人形の影に隠れながら、ゆっくり、確実に近付く二人。気付かれないように気配を殺し、物音を立てないよう慎重に、慎重に。
そして指揮者と黒猫の声が聞こえる所まで辿り着いていた。
「弾幕薄いよ、なにやってんの!!?」
「……」
「おはぎ、補充!!」
「……その補充だけど……変だぞ……何かおかしい……すあま、ここはやっぱり逃げた方が良い」
「何で? おはぎが創った魔法陣は簡単に真似できないし、できたとしてももう少し時間が掛かるって言ってたでしょ」
「でも俺はこうも言ったぞ。『シノブの能力の全容は分からない』って。何か能力が発動されているのかも知れない。他に特別な能力を持った奴がいる可能性だってある。とにかくアイツ等が送られてこない」
王立学校攻略は鉄人形の補充があってこそ。それが途切れるとなれば不可能に近い。ここで戦う意味は無い。早々に立ち去るべき。
「……確かに逃げた方が良いと私の勘も言ってるけど……ここはそれをあえて無視してやる!!」
「無視してやる意味……」
会話のやり取りで、おはぎの警戒心がほんの少しだけ削がれていた。
その瞬間を見逃さず、飛び出すドレミド。剣の切っ先をすあまへと向ける。
「すあま!!」
おはぎはその姿に気付き、自らがドレミドの目の前に飛び込むと同時、周囲の鉄人形を集める。
しかしドンッという衝撃音と共におはぎと鉄人形は見えない力に弾き飛ばされた。アリエリだ。
ドレミドの剣が、反応の遅れたすあまの喉元に迫る。これを避ける事はできない。確実に倒せる、そうドレミド自身も感じていたが……
それは全くの偶然だった。
王立学校からの魔法攻撃。爆風がすあまの体を吹き飛ばす。ドレミドの剣はすあまの首筋を掠め、薄皮一枚を斬るだけ。
再度ドレミドは剣を構えるが、鉄人形が目の前に割り込んだ。
「アリエリ!!」
「ダメだよ!! 数が多いよ!!」
アリエリは鉄人形を叩き、殴り飛ばすが、とにかく数が多い。
すあまとおはぎに距離を取られてしまう。
「危っなー……うわー何……」
すあまは首筋に手を当てる。その指先には少量の血液。
「逃げる。異論は無いよな?」
「……無いけど少しだけ待って。ちょっとそこの二人!! もしかしてシノブの仲間?」
もうすあまとおはぎを倒すのは難しい状況だった。
「違うぞ。私は」
「ちょっと静かにしててね」
「うぐぐっ」
見えない力で口を塞がれるドレミド。
「言えるのは一つだけ……やったのは私達だよ。はい、これで終わり、もう何も喋らないし、あなた達の話も聞かない」
「すあま」
「うん」
それは交渉を含めた話し合いの拒否。
「ねぇ、シノブに伝えといてよ。『泣かす。後で絶対に泣かしてやる』ってね」
すあまとおはぎの足元に現れる魔法陣。そこから発せられる光に溶けるように二人の姿は消えるのだった。
★★★
これはシャーリー達が未開の土地に向かう前の話。大陸に鉄人形が侵攻し始めた直後。
ミランとハリエットは帝国に出向いている為にいないが、アルタイルにも協力してもらいこれからの対策を練る。
だがビスマルクやタックルベリー、ユリアンなどが中心になっても有効な策は何一つ見付からなかった。相手の状況が不明過ぎる、手詰まり……そんな中で予想外の発想を生み出したのはシャーリー。
「あのさ。なんか出てくる策が待ってばかりのヤツじゃん。こっちから攻め込んでやらない?」
「随分と簡単に言いますのね。そんな策が可能ならば、ユリアンがもう思い付いていますわ」
リコリスは言いながら隣のユリアンに視線を向ける。
「鉄人形が出てくる魔法陣を使って、逆にこっちから乗り込もうってつもりだろ? その魔法陣は相手が使っているもので、こっちから干渉はできない。そんな魔法陣を使うのは危険過ぎる」
ユリアンの言葉にタックルベリーが続ける。
「もし進入後に魔法陣を閉じられたら孤立して、戻れない可能性だってあるからな。待ち伏せされている場合もあるだろうし、僕は反対。そもそも最初に魔法陣を使った時と状況は同じ、結果どうなったか」
「却下だ」
と、ビスマルク。
だがシャーリーは……
「いや、あたしだってそこは分かってるって。でもその退路が確保できるなら?」
……
全員が一瞬だけ押し黙る。
「……そんな方法があるのか?」
ビスマルクが話を促す。
「思い出したんだけどさ……アルタイル」
シャーリーの言葉に、みんなの視線がアルタイルへと向けられた。言葉を続ける。
「前の、アルテュールの時にさ、あたしとアルタイルでテュポーンの足止めした事があったんだけど、その時にアルタイルが瞬間移動みたいの使ってたよね? 確か……『印を付けた二点を繋ぐもの』だっけ?」
「……そうだ」
アルタイルは静かにそう答え、さらに付け加える。
欠点は一度に一組しか設置できない事。一度使うと効力を失ってしまう事。一点目から二点目の設置が短時間のうちである事。
「だから印の一つをこっちに付けとく。そうすれば魔法陣の向こうに行っても、その古代魔法で戻れるんじゃない?」
「……戻れる可能性は高いだろう。だが戻れない可能性もある」
「戻れる可能性の高い根拠は何です?」
と、タックルベリー。
「……」
根拠はある。
古代魔法は精霊、妖精、悪魔、次元のずれた存在から力を借りるもの。つまり世界間を超える魔法とも言え、その 効力は通常の魔法よりも遥かに強い。もしこちらの世界とあちらの世界が繋がっているのなら効力を発揮する可能性は高い。
そしてアルタイルは知っていた。ベルベッティアという存在を。消えたベルベッティアがシノブの元にいるのなら、その能力で二つの世界は繋がっているのだろう。
しかし古代魔法の本質は隠しているアルタイルはその根拠を口にしない。
「アルタイル……あなたならばどうする? 個人的な意見を聞きたい」
何かを察したビスマルクの問いにアルタイルは答える。
「……試してみる価値はあるだろう。だが最後の手段にするべきだ」
そんな様子を黙って見守っていたのは人型のアバンセとパルだった。
「……素晴らしいな……力も、体も、人は竜より弱い。しかし俺達にはどうする事もできない事態にこうやって向かっていく」
「ああ、俺も思ったぜ。人は竜よりも強い。まぁ、シノブは一人でも竜より強いけどな」
「確かに。その通りだ」
アバンセとパルはそう言って笑うのだった。
0
お気に入りに追加
198
あなたにおすすめの小説
食うために軍人になりました。
KBT
ファンタジー
ヴァランタイン帝国の片田舎ダウスター領に最下階位の平民の次男として生まれたリクト。
しかし、両親は悩んだ。次男であるリクトには成人しても継ぐ土地がない。
このままではこの子の未来は暗いものになってしまうだろう。
そう思った両親は幼少の頃よりリクトにを鍛え上げる事にした。
父は家の蔵にあったボロボロの指南書を元に剣術を、母は露店に売っていた怪しげな魔導書を元に魔法を教えた。
それから10年の時が経ち、リクトは成人となる15歳を迎えた。
両親の危惧した通り、継ぐ土地のないリクトは食い扶持を稼ぐために、地元の領軍に入隊試験を受けると、両親譲りの剣術と魔法のおかげで最下階級の二等兵として無事に入隊する事ができた。
軍と言っても、のどかな田舎の軍。
リクトは退役するまで地元でのんびり過ごそうと考えていたが、入隊2日目の朝に隣領との戦争が勃発してしまう。
おまけに上官から剣の腕を妬まれて、単独任務を任されてしまった。
その任務の最中、リクトは平民に対する貴族の専横を目の当たりにする。
生まれながらの体制に甘える貴族社会に嫌気が差したリクトは軍人として出世して貴族の専横に対抗する力を得ようと立身出世の道を歩むのだった。
剣と魔法のファンタジー世界で軍人という異色作品をお楽しみください。
王宮で汚職を告発したら逆に指名手配されて殺されかけたけど、たまたま出会ったメイドロボに転生者の技術力を借りて反撃します
有賀冬馬
ファンタジー
王国貴族ヘンリー・レンは大臣と宰相の汚職を告発したが、逆に濡れ衣を着せられてしまい、追われる身になってしまう。
妻は宰相側に寝返り、ヘンリーは女性不信になってしまう。
さらに差し向けられた追手によって左腕切断、毒、呪い状態という満身創痍で、命からがら雪山に逃げ込む。
そこで力尽き、倒れたヘンリーを助けたのは、奇妙なメイド型アンドロイドだった。
そのアンドロイドは、かつて大賢者と呼ばれた転生者の技術で作られたメイドロボだったのだ。
現代知識チートと魔法の融合技術で作られた義手を与えられたヘンリーが、独立勢力となって王国の悪を蹴散らしていく!
追放もの悪役勇者に転生したんだけど、パーティの荷物持ちが雑魚すぎるから追放したい。ざまぁフラグは勘違いした主人公補正で無自覚回避します
月ノ@最強付与術師の成長革命/発売中
ファンタジー
ざまぁフラグなんて知りません!勘違いした勇者の無双冒険譚
ごく一般的なサラリーマンである主人公は、ある日、異世界に転生してしまう。
しかし、転生したのは「パーティー追放もの」の小説の世界。
なんと、追放して【ざまぁされる予定】の、【悪役勇者】に転生してしまったのだった!
このままだと、ざまぁされてしまうが――とはならず。
なんと主人公は、最近のWeb小説をあまり読んでおらず……。
自分のことを、「勇者なんだから、当然主人公だろ?」と、勝手に主人公だと勘違いしてしまったのだった!
本来の主人公である【荷物持ち】を追放してしまう勇者。
しかし、自分のことを主人公だと信じて疑わない彼は、無自覚に、主人公ムーブで【ざまぁフラグを回避】していくのであった。
本来の主人公が出会うはずだったヒロインと、先に出会ってしまい……。
本来は主人公が覚醒するはずだった【真の勇者の力】にも目覚めてしまい……。
思い込みの力で、主人公補正を自分のものにしていく勇者!
ざまぁフラグなんて知りません!
これは、自分のことを主人公だと信じて疑わない、勘違いした勇者の無双冒険譚。
・本来の主人公は荷物持ち
・主人公は追放する側の勇者に転生
・ざまぁフラグを無自覚回避して無双するお話です
・パーティー追放ものの逆側の話
※カクヨム、ハーメルンにて掲載
スキル【縫う】で無双します! 〜ハズレスキルと言われたけれど、努力で当たりにしてみます〜
藤花スイ
ファンタジー
お転婆娘のセネカは英雄に憧れているが、授かったのは【縫う】という非戦闘系のスキルだった。
幼馴染のルキウスは破格のスキル【神聖魔法】を得て、王都の教会に引き取られていった。
失意に沈むセネカに心ない言葉をかけてくる者もいた。
「ハズレスキルだったのに、まだ冒険者になるつもりなのか?」
だけどセネカは挫けない。自分のスキルを信じてひたすらに努力を重ねる。
布や皮は当たり前、空気や意識に至るまでなんだって縫ってゆく。
頑張っているうちにいつしか仲間が増えて、スキルの使い方も分かってきた。
セネカは創意工夫を重ねてどんどん強くなっていく。
幼馴染と冒険の旅に出る日を夢見ながらひたすらに己を鍛え上げていく。
魔物から村を守るために命を賭した両親のような英雄になることを目指してセネカは走り続ける。
「私のスキルは【縫う】。
ハズレだと言われたけれど、努力で当たりにしてきた」
これは一途にスキルを磨き、英雄となった少女の物語
底辺おっさん異世界通販生活始めます!〜ついでに傾国を建て直す〜
ぽっちゃりおっさん
ファンタジー
学歴も、才能もない底辺人生を送ってきたアラフォーおっさん。
運悪く暴走車との事故に遭い、命を落とす。
憐れに思った神様から不思議な能力【通販】を授かり、異世界転生を果たす。
異世界で【通販】を用いて衰退した村を建て直す事に成功した僕は、国家の建て直しにも協力していく事になる。
序盤でざまぁされる人望ゼロの無能リーダーに転生したので隠れチート主人公を追放せず可愛がったら、なぜか俺の方が英雄扱いされるようになっていた
砂礫レキ
ファンタジー
35歳独身社会人の灰村タクミ。
彼は実家の母から学生時代夢中で書いていた小説をゴミとして燃やしたと電話で告げられる。
そして落ち込んでいる所を通り魔に襲われ死亡した。
死の間際思い出したタクミの夢、それは「自分の書いた物語の主人公になる」ことだった。
その願いが叶ったのか目覚めたタクミは見覚えのあるファンタジー世界の中にいた。
しかし望んでいた主人公「クロノ・ナイトレイ」の姿ではなく、
主人公を追放し序盤で惨めに死ぬ冒険者パーティーの無能リーダー「アルヴァ・グレイブラッド」として。
自尊心が地の底まで落ちているタクミがチート主人公であるクロノに嫉妬する筈もなく、
寧ろ無能と見下されているクロノの実力を周囲に伝え先輩冒険者として支え始める。
結果、アルヴァを粗野で無能なリーダーだと見下していたパーティーメンバーや、
自警団、街の住民たちの視線が変わり始めて……?
更新は昼頃になります。
転生したら貴族の息子の友人A(庶民)になりました。
襲
ファンタジー
〈あらすじ〉
信号無視で突っ込んできたトラックに轢かれそうになった子どもを助けて代わりに轢かれた俺。
目が覚めると、そこは異世界!?
あぁ、よくあるやつか。
食堂兼居酒屋を営む両親の元に転生した俺は、庶民なのに、領主の息子、つまりは貴族の坊ちゃんと関わることに……
面倒ごとは御免なんだが。
魔力量“だけ”チートな主人公が、店を手伝いながら、学校で学びながら、冒険もしながら、領主の息子をからかいつつ(オイ)、のんびり(できたらいいな)ライフを満喫するお話。
誤字脱字の訂正、感想、などなど、お待ちしております。
やんわり決まってるけど、大体行き当たりばったりです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる