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女神の微笑み編
幻覚と現実
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何度か、交代での攻撃を繰り返す。
ロザリンドの攻撃の番。
狙うのは首の一か所。斬撃をそこへと集中させ、あと少しで首を斬り落とす事ができる。
だから交代の際に言うのだった。
「首を狙って。そろそろ落ちるわ」
「首?」
「ええ、少しずつだったけどやっとよ」
「う、うん」
リアーナは違和感を覚えつつも、相手を休ませるわけにはいかない、すぐマンドラゴラへと向かう。
全身が焼け焦げているマンドラゴラだったが……
『首に傷なんて無い……ロザリンドちゃんは『少しずつ』って言ってた。つまり傷はずっと存在していたはず。なのに私には見えない……ずっと見えてない』
「ヒメちゃん!!」
「はいですぞ!!」
服の下からコノハナサクヤヒメが少しだけ顔を出す。
「ヒメちゃんにはマンドラゴラがどう見えてるの?」
「『どう』とは、どのような意味で……」
「私には全身が焼け焦げているように見えるの」
「ええ、その通りですぞ。それとロザリンド殿の攻撃で全身は傷だらけ。首もあと少しで落ちると思いますが」
ど、どういう事? 何で……とにかくこの事を伝えないと!!
すぐさま交代。
「ロザリンドちゃん!!」
「何か問題が?」
「私とヒメちゃんで見えてる相手の負傷の程度が違うの」
「どういう事?」
「私にはロザリンドちゃんの言う斬り傷が見えてないの。ロザリンドちゃんには私が与えた火傷の痕は見えてる?」
「確認するわ」
コノハナサクヤヒメがリアーナからロザリンドへと移る。
ロザリンドの目の前には傷だらけのマンドラゴラ。
しかしリアーナの言う火傷は何処にも見当たらない。
「今、ヒメにはリアーナの与えた火傷が見えているのね?」
「ぜ、全身ほぼ丸焦げですぞ……ロザリンド殿には見えておられませんか?」
「ええ、そうね」
『つまり私が与えた傷は私だけに見えている。リアーナが与えた傷はリアーナだけに見えている。そして両方に居合わせたヒメだけが両方の傷を認識している。認識の違い……これはまるで……』
少し離れた位置から様子を見守るリアーナ。
『ロザリンドちゃんと私の認識の違い、それはきっと相手がマンドラゴラである事に起因するはず。マンドラゴラとは……』
体力が切れるまで走って逃げる。他には……走って逃げるマンドラゴラに、女性の尿や経血を掛けると止まるとも言われる。
処刑場の断頭台の下に花を咲かせるなんて伝説もある。
精力剤はもちろん、様々な薬に使われ、熱冷ましや鎮痛剤としても優れている。ただ幻覚作用もあるので用量には注意する必要がある……幻覚作用……
そこでリアーナとロザリンドは同じ結論に辿り着いた。
『幻覚』
後退したロザリンドがリアーナと並ぶ。
「幻覚なのね、これは」
「うん。そうだと思う。けど幻覚じゃない、別の何かの可能性もある。心の底に少しでもそんな疑念があるから幻覚だとしても解けない」
「それに、これだけ強力な幻覚なら、現実にも影響を受けるわね」
幻覚だとしても『攻撃が当たって死んだ』と自分自身が心で認識してしまった場合、現実の肉体は心に影響されて死んでしまう。
「つまり現状では幻覚を解く方法が無い。そもそも本当に幻覚であるのかも確認できない。そういう事でしょうか?」
コノハナサクヤヒメの言葉に二人は押し黙ってしまう。
いつから幻覚が始まっているのか、視覚だけなのか、それとも夢を見ているような状態なのか、それすら分からない。分かったとしても『幻覚を破る』幻覚なんて事だってありえる。
「ふぅ。終わりのようだな。分かったであろう? 我に傷を与える事はできても倒す事は不可能。お前達程度の矮小な力では不可能なのだ!!」
そう言ってマンドラゴラは笑う。
そんな中でロザリンドは提案した。
「私がマンドラゴラの攻撃をそのまま受ける。幻覚なら死ぬ事はないわ」
「ロザリンドちゃん……さっき自分でも言ってたよね?『強力な幻覚なら、現実にも影響を受ける』って」
「それは私の中に『幻覚じゃない』という疑念があるからよ。だからリアーナは確実に幻覚である証拠を見付けて」
一度自分の中で生まれてしまった疑念、それは自分自身では完全に打ち消す事ができない。
ロザリンドは言葉を続ける。
「私はリアーナを信用しているの。その言葉なら信じられるから」
「だったら私が……」
「ダメよ。幻覚はどちらかというと魔法の分野。詳しいのはリアーナだもの。頼んだわね。ヒメ」
「承知」
そう言ってロザリンドとコノハナサクヤヒメはマンドラゴラの足止めに向かうのである。
★★★
リアーナは考える。
幻覚には大別して二種類のものがある。
一つは術者が見せている直接的な幻覚。
もう一つは対象者が自分に都合良いものを勝手に見てしまう間接的な幻覚。
『ロザリンドちゃん、ヒメちゃん、私で見た目の負傷度が違うのは、この幻覚が後者だからだ。前者なら負傷度を同じに見せた方が効果的なはず』
次にこれが視覚等に作用しているのか、それとも夢の中のように無意識へと作用しているものなのか……
リアーナは足元の土を雑草と共に口の中へと放り込んだ。ジャリジャリと細かな石が歯に当たる。繊維の硬い噛み切れない雑草。唾液と混じり、泥のようになるそれらを吐きそうになりながらも飲み込んだ。食道から胃へと重いものがゆっくり流れ込む。不快な土の味が口内に残る。
リアーナが知る初めての土の味……夢の中だったら知らない事は再現できない……ここは現実。
現実世界に幻覚が重なっているのなら、他にも不自然な部分が絶対にあるはず。
「でもこの大きいマンドラゴラ自体が不自然なんだけどね……」
リアーナは呟いて、自分の呟きに眉を顰めた。
もしこの巨大なマンドラゴラ自体が幻覚だったら……幻覚を見せる能力も存在しなくなる。つまりそれ以前に幻覚が作用していた可能性。
それはいつから?
記憶を手繰る。
……
…………
………………
「……お茶だ……」
『巨大マンドラゴラを抜く直前、私達はお茶を飲んだ……そこに幻覚作用のあるマンドラゴラが混入していたら……個々に飲んだお茶だから、みんなの見える幻覚が少しずつ違ったんだ』
共通して巨大マンドラゴラの幻覚を見ていたのは、事前に依頼主から『巨大マンドラゴラ』の話を全員が聞いたから。そうなるとお茶に混入されたマンドラゴラは故意という事になる。
『でもヒメちゃんは? ヒメちゃんはお茶を飲んでない……でも、だったら……これで幻覚を破れる!!』
★★★
手に伝わる刀の感触。肌に感じる炎の熱さ。これが本当に幻覚なのか……それとも別の何かなのか……ロザリンドには分からない。
ただリアーナを信じて刀を振るう。
「ロザリンドちゃん!!」
「リアーナ。待っていたわ」
「ヒメちゃん、ほんの少しだけマンドラゴラの相手をお願い」
「お任せを!!」
「何か作戦があるのね?」
「ヒメちゃんに土魔法を使ってもらう」
「扱えるのは水だけではないの?」
「魔法には相性があるの。火と水、風と土は相反する属性だけど、火と風、水と土は相性が良いのは知ってるよね?」
「ええ、それはもちろん」
王立学校でも習う内容。
火は水で消えるが、火は風で煽られ大きく燃え上がる。
水は火で蒸発するが、水は土の上で川を形成する。
風は土で防がれるが、風は炎で上昇気流へと変化する。
土は風で削られるが、土は水を吸い良い農地となる。
「シノブちゃんに聞いた事があるんだけど、水を扱うヒメちゃんは少しだけ土を扱えるの。ただほんの少しだから役に立たないって言ってたけど」
「具体的にはどうするつもり?」
「足跡。ヒメちゃんに水と土とで足元を泥状にしてもらう。現実ならマンドラゴラの足跡が残る、幻覚なら足跡は残らない」
「でも無い足跡を幻覚で見せる事も、逆に、有る足跡を幻覚で見せない事も可能だわ」
「もちろん。これは証明の為の一つに過ぎない。だからお願い」
「分かったわ。任せて」
その様子を離れて観察するリアーナ。
マンドラゴラの目を逸らすように連撃を打ち込むロザリンド。そのマンドラゴラの足元、コノハナサクヤヒメが攻撃と見せ掛けて水をバラ撒いているのが確認できた。
やがて……
「リアーナ!! 泥の上よ、足跡が残っているわ!!」
「ね。ヒメちゃんはできる子でしょ?」
「ええ、そうね。ヒメ、よくやったわ」
「拙者にお任せくださればこれくらい!!」
ロザリンドの胸元から姿を現すコノハナサクヤヒメ。
その姿がリアーナの目の前で霞のように消えた。それはリアーナがロザリンドの言葉により幻覚である事を確信したから。
「ロザリンドちゃん。この場所に最初からヒメちゃんはいないの」
「いない? でも今も私の胸元に……」
ロザリンドは自分の胸元を見下ろす。そこにはコノハナサクヤヒメの姿がハッキリと見えていた。
「ヒメちゃんに土を操る能力なんて無い。私の作り話なの。だから私には最初から泥になった地面なんて見えない。でもロザリンドちゃんには見えていたんだよね?」
「……私がリアーナの話を信じたからね」
リアーナは頷く。
足跡を付けさせる作戦は、ロザリンドに『コノハナサクヤヒメは土を操れる』と思い込ませる為のもの。それ自体に意味は無かった。
「全ては幻覚なの」
「……」
会話を交わす二人。
その二人にマンドラゴラの拳が迫る。
「さっきから何を話している!!? 無駄だというのに!!」
ロザリンドにも分かっている。幻覚、幻覚の幻覚、幻覚の幻覚の幻覚、もしかしたら産まれてから生きてきた全てが幻覚……なんて考えればキリが無い。
現実か幻覚か、何処かで賭けに出るしかないのだ。できる事はその勝率を少しでも上げる為に考察する事。
「……リアーナを信じるわ」
「うん。ありがとう」
巨大な拳が……
「……」
「……」
……そのまま二人の体をスッと通り抜けた。同時に巨大マンドラゴラの体が薄くなり、やがて消えてしまう。
二人は幻覚から抜け出したのだ。
ロザリンドの攻撃の番。
狙うのは首の一か所。斬撃をそこへと集中させ、あと少しで首を斬り落とす事ができる。
だから交代の際に言うのだった。
「首を狙って。そろそろ落ちるわ」
「首?」
「ええ、少しずつだったけどやっとよ」
「う、うん」
リアーナは違和感を覚えつつも、相手を休ませるわけにはいかない、すぐマンドラゴラへと向かう。
全身が焼け焦げているマンドラゴラだったが……
『首に傷なんて無い……ロザリンドちゃんは『少しずつ』って言ってた。つまり傷はずっと存在していたはず。なのに私には見えない……ずっと見えてない』
「ヒメちゃん!!」
「はいですぞ!!」
服の下からコノハナサクヤヒメが少しだけ顔を出す。
「ヒメちゃんにはマンドラゴラがどう見えてるの?」
「『どう』とは、どのような意味で……」
「私には全身が焼け焦げているように見えるの」
「ええ、その通りですぞ。それとロザリンド殿の攻撃で全身は傷だらけ。首もあと少しで落ちると思いますが」
ど、どういう事? 何で……とにかくこの事を伝えないと!!
すぐさま交代。
「ロザリンドちゃん!!」
「何か問題が?」
「私とヒメちゃんで見えてる相手の負傷の程度が違うの」
「どういう事?」
「私にはロザリンドちゃんの言う斬り傷が見えてないの。ロザリンドちゃんには私が与えた火傷の痕は見えてる?」
「確認するわ」
コノハナサクヤヒメがリアーナからロザリンドへと移る。
ロザリンドの目の前には傷だらけのマンドラゴラ。
しかしリアーナの言う火傷は何処にも見当たらない。
「今、ヒメにはリアーナの与えた火傷が見えているのね?」
「ぜ、全身ほぼ丸焦げですぞ……ロザリンド殿には見えておられませんか?」
「ええ、そうね」
『つまり私が与えた傷は私だけに見えている。リアーナが与えた傷はリアーナだけに見えている。そして両方に居合わせたヒメだけが両方の傷を認識している。認識の違い……これはまるで……』
少し離れた位置から様子を見守るリアーナ。
『ロザリンドちゃんと私の認識の違い、それはきっと相手がマンドラゴラである事に起因するはず。マンドラゴラとは……』
体力が切れるまで走って逃げる。他には……走って逃げるマンドラゴラに、女性の尿や経血を掛けると止まるとも言われる。
処刑場の断頭台の下に花を咲かせるなんて伝説もある。
精力剤はもちろん、様々な薬に使われ、熱冷ましや鎮痛剤としても優れている。ただ幻覚作用もあるので用量には注意する必要がある……幻覚作用……
そこでリアーナとロザリンドは同じ結論に辿り着いた。
『幻覚』
後退したロザリンドがリアーナと並ぶ。
「幻覚なのね、これは」
「うん。そうだと思う。けど幻覚じゃない、別の何かの可能性もある。心の底に少しでもそんな疑念があるから幻覚だとしても解けない」
「それに、これだけ強力な幻覚なら、現実にも影響を受けるわね」
幻覚だとしても『攻撃が当たって死んだ』と自分自身が心で認識してしまった場合、現実の肉体は心に影響されて死んでしまう。
「つまり現状では幻覚を解く方法が無い。そもそも本当に幻覚であるのかも確認できない。そういう事でしょうか?」
コノハナサクヤヒメの言葉に二人は押し黙ってしまう。
いつから幻覚が始まっているのか、視覚だけなのか、それとも夢を見ているような状態なのか、それすら分からない。分かったとしても『幻覚を破る』幻覚なんて事だってありえる。
「ふぅ。終わりのようだな。分かったであろう? 我に傷を与える事はできても倒す事は不可能。お前達程度の矮小な力では不可能なのだ!!」
そう言ってマンドラゴラは笑う。
そんな中でロザリンドは提案した。
「私がマンドラゴラの攻撃をそのまま受ける。幻覚なら死ぬ事はないわ」
「ロザリンドちゃん……さっき自分でも言ってたよね?『強力な幻覚なら、現実にも影響を受ける』って」
「それは私の中に『幻覚じゃない』という疑念があるからよ。だからリアーナは確実に幻覚である証拠を見付けて」
一度自分の中で生まれてしまった疑念、それは自分自身では完全に打ち消す事ができない。
ロザリンドは言葉を続ける。
「私はリアーナを信用しているの。その言葉なら信じられるから」
「だったら私が……」
「ダメよ。幻覚はどちらかというと魔法の分野。詳しいのはリアーナだもの。頼んだわね。ヒメ」
「承知」
そう言ってロザリンドとコノハナサクヤヒメはマンドラゴラの足止めに向かうのである。
★★★
リアーナは考える。
幻覚には大別して二種類のものがある。
一つは術者が見せている直接的な幻覚。
もう一つは対象者が自分に都合良いものを勝手に見てしまう間接的な幻覚。
『ロザリンドちゃん、ヒメちゃん、私で見た目の負傷度が違うのは、この幻覚が後者だからだ。前者なら負傷度を同じに見せた方が効果的なはず』
次にこれが視覚等に作用しているのか、それとも夢の中のように無意識へと作用しているものなのか……
リアーナは足元の土を雑草と共に口の中へと放り込んだ。ジャリジャリと細かな石が歯に当たる。繊維の硬い噛み切れない雑草。唾液と混じり、泥のようになるそれらを吐きそうになりながらも飲み込んだ。食道から胃へと重いものがゆっくり流れ込む。不快な土の味が口内に残る。
リアーナが知る初めての土の味……夢の中だったら知らない事は再現できない……ここは現実。
現実世界に幻覚が重なっているのなら、他にも不自然な部分が絶対にあるはず。
「でもこの大きいマンドラゴラ自体が不自然なんだけどね……」
リアーナは呟いて、自分の呟きに眉を顰めた。
もしこの巨大なマンドラゴラ自体が幻覚だったら……幻覚を見せる能力も存在しなくなる。つまりそれ以前に幻覚が作用していた可能性。
それはいつから?
記憶を手繰る。
……
…………
………………
「……お茶だ……」
『巨大マンドラゴラを抜く直前、私達はお茶を飲んだ……そこに幻覚作用のあるマンドラゴラが混入していたら……個々に飲んだお茶だから、みんなの見える幻覚が少しずつ違ったんだ』
共通して巨大マンドラゴラの幻覚を見ていたのは、事前に依頼主から『巨大マンドラゴラ』の話を全員が聞いたから。そうなるとお茶に混入されたマンドラゴラは故意という事になる。
『でもヒメちゃんは? ヒメちゃんはお茶を飲んでない……でも、だったら……これで幻覚を破れる!!』
★★★
手に伝わる刀の感触。肌に感じる炎の熱さ。これが本当に幻覚なのか……それとも別の何かなのか……ロザリンドには分からない。
ただリアーナを信じて刀を振るう。
「ロザリンドちゃん!!」
「リアーナ。待っていたわ」
「ヒメちゃん、ほんの少しだけマンドラゴラの相手をお願い」
「お任せを!!」
「何か作戦があるのね?」
「ヒメちゃんに土魔法を使ってもらう」
「扱えるのは水だけではないの?」
「魔法には相性があるの。火と水、風と土は相反する属性だけど、火と風、水と土は相性が良いのは知ってるよね?」
「ええ、それはもちろん」
王立学校でも習う内容。
火は水で消えるが、火は風で煽られ大きく燃え上がる。
水は火で蒸発するが、水は土の上で川を形成する。
風は土で防がれるが、風は炎で上昇気流へと変化する。
土は風で削られるが、土は水を吸い良い農地となる。
「シノブちゃんに聞いた事があるんだけど、水を扱うヒメちゃんは少しだけ土を扱えるの。ただほんの少しだから役に立たないって言ってたけど」
「具体的にはどうするつもり?」
「足跡。ヒメちゃんに水と土とで足元を泥状にしてもらう。現実ならマンドラゴラの足跡が残る、幻覚なら足跡は残らない」
「でも無い足跡を幻覚で見せる事も、逆に、有る足跡を幻覚で見せない事も可能だわ」
「もちろん。これは証明の為の一つに過ぎない。だからお願い」
「分かったわ。任せて」
その様子を離れて観察するリアーナ。
マンドラゴラの目を逸らすように連撃を打ち込むロザリンド。そのマンドラゴラの足元、コノハナサクヤヒメが攻撃と見せ掛けて水をバラ撒いているのが確認できた。
やがて……
「リアーナ!! 泥の上よ、足跡が残っているわ!!」
「ね。ヒメちゃんはできる子でしょ?」
「ええ、そうね。ヒメ、よくやったわ」
「拙者にお任せくださればこれくらい!!」
ロザリンドの胸元から姿を現すコノハナサクヤヒメ。
その姿がリアーナの目の前で霞のように消えた。それはリアーナがロザリンドの言葉により幻覚である事を確信したから。
「ロザリンドちゃん。この場所に最初からヒメちゃんはいないの」
「いない? でも今も私の胸元に……」
ロザリンドは自分の胸元を見下ろす。そこにはコノハナサクヤヒメの姿がハッキリと見えていた。
「ヒメちゃんに土を操る能力なんて無い。私の作り話なの。だから私には最初から泥になった地面なんて見えない。でもロザリンドちゃんには見えていたんだよね?」
「……私がリアーナの話を信じたからね」
リアーナは頷く。
足跡を付けさせる作戦は、ロザリンドに『コノハナサクヤヒメは土を操れる』と思い込ませる為のもの。それ自体に意味は無かった。
「全ては幻覚なの」
「……」
会話を交わす二人。
その二人にマンドラゴラの拳が迫る。
「さっきから何を話している!!? 無駄だというのに!!」
ロザリンドにも分かっている。幻覚、幻覚の幻覚、幻覚の幻覚の幻覚、もしかしたら産まれてから生きてきた全てが幻覚……なんて考えればキリが無い。
現実か幻覚か、何処かで賭けに出るしかないのだ。できる事はその勝率を少しでも上げる為に考察する事。
「……リアーナを信じるわ」
「うん。ありがとう」
巨大な拳が……
「……」
「……」
……そのまま二人の体をスッと通り抜けた。同時に巨大マンドラゴラの体が薄くなり、やがて消えてしまう。
二人は幻覚から抜け出したのだ。
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