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女神の微笑み編
男の娘と収穫
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「ねぇ、ちょっと。身体が元に戻らないんだけど?」
胸が無ぇ!! いや、元から無いんだけど、そういう意味じゃなくて!! 完全に男の胸なんだけど!! しかも下半身にはかわいい象さんが!! って、何がかわいいじゃ!!? ん? つまり男の娘じゃん。
「もしかしてこのままなのかな?」
「リアーナ。なんでちょっと嬉しそうなの?」
「そ、そんな事ないよ」
「とりあえず様子を見るしかないわね。私達がどうにかできる事ではないもの」
「確かに少し隙間が増えて余裕ですぞ」
姿を現し、すぐ引っ込むコノハナサクヤヒメ。
「それにしても」
ロザリンドの視線が俺の体を上下する。
「何?」
「見た目は全く変わらないわね」
そして笑う。
「わ、私もそれは思ったよ……」
とりあえず俺は男の子、いや、男の娘になったのである。しばらく経って元に戻れなかったら、また考えよう。
さて。それはさて置き。
滅びた旧都市。
滅びた原因が風土病とされるなら『一夜で滅びた』という話はどこから出てきたのか。まぁ、長い年月を掛けて、尾びれ背びれフカヒレで話が大きくなる事なんていくらでもある。『一夜』というのはただの誇張表現とか。
そしてベルベッティアの聞いた『一人の男』が関係していたとの噂。
ただちょっとした気になる事はある。
ルチエの両親と妹が病で亡くなった話。それは亡くなるまでにかなりの吐血をしたという内容だった。文献に記載された風土病と同じ症状である。
……まぁ、結局ね、色々と考えたわけなんだけど、滅びた理由は分からんのよ。長い年月に渡って解き明かせない謎を、フラッと現れた俺達で解決するんなて無理な話なのよ。
謎は謎のまま、答えは後世の者達に任せよう。
そんなわけで観光して終わり。
ギルドで依頼を受けて、別の所に行こうぜ!!
★★★
しかし等級の低い俺達は大した依頼を受けられないわけだが。
本日はとある村でマンドラゴラ収穫のお手伝いである。
畑いっぱい、緑の葉。その下に人型の茎が埋まっている。マンドラゴラは精力剤や薬剤の材料となり高価であるが、収穫の際に注意点がある。
マンドラゴラは引き抜く際に悲鳴を上げ、その悲鳴を聞いた者は発狂して死んでしまう……というのは、高価なマンドラゴラを盗まれないようにする為の作り話で、実際にはそんな事もなく普通に収穫できる。
俺は草部分をムギッと握り、一気に引き抜く。
ギャァァァァァッッッ
叫ぶマンドラゴラ。人型の足部分がバタバタと動く。キモイなぁ……これでも植物なんだぜ……
ビタァァァンッ
それを地面に叩き付ける。動かなくなるマンドラゴラ。こうしないと走って逃げてしまうので、ここが注意点だ。
「しかしロザリンドはどうしてこの依頼を選んだの?」
ギャァァァァァッッッ
ビタァァァンッ
「マンドラゴラ自体は有名だけど、私は見た事が無かったの。それだけよ」
ギャァァァァァッッッ
ペタッ
「ロザリンドちゃん、もう少し強くしないと。まだ痙攣して動いてるから」
ギャァァァァァッッッ
ビタァァァンッ
「そうそう、こうやって思いっきり!!」
俺は引き抜いたマンドラゴラを振り上げるが、その勢いに握っていた葉部分が千切れてしまう。
「助けてぇぇぇぇぇっ」
マンドラゴラは悲鳴と共に逃げ出した。
「……植物なのよね?」
そんな感じで収穫を続けて一休み。
そこで依頼主の爺さんがお茶を持って現れるのだが……やっぱり裏があったか……そもそもただの収穫で冒険者ギルドに依頼をするわけがない。
冒険者である理由があったのだ。
そして今、その理由が目の前に。
「待って。これ、ありえないんだけど」
マンドラゴラ、その葉は一枚で俺達三人の姿を隠せる程に巨大だった。
品種改良に品種改良を重ねて、巨大なマンドラゴラを作り出したが、その巨大さにビビったらしい。本当の依頼はこっちの対処である。
「この大きさだと私達じゃ抜けないよ。シノブちゃんの能力を使うか、アバンセさんに頼るかしないと……」
「シノブの能力はこういう場面で使うようなものではないわね」
「じゃあ、やっぱりアバンセさんに頼る?」
「頼んない。だって呼んだら文句グチグチ言いそうだし。『黙って冒険者になるなど危険だろうが!!』とかさぁ。それに引き抜く必要は無いじゃん。魔法で周りの土を掘り返せば良いんだから。急ぎってわけじゃないから、少しずつ掘り返そうよ」
「でもどうやって気絶させるの?」
「気絶……本当に植物なのよね?」
「さっき話をして許可を貰った。少し掘り起こしたらその部分を切ってく。このまま丸ごとは無理だしね」
と、いう事で。
リアーナが魔法で土を掘り起こしていく。
茶色い茎部分が見えてくる。ここは頭部だと思うが相当な大きさだぜ。これアバンセとかよりデカい可能性あるぞ。
ロザリンドは刀を抜く。そして横薙ぎに一閃。
キンッ
植物を切る音とは思えない金属音。
「硬いわね」
しかも傷一つ付いていない。
「無理そう?」
「刀に魔力を通せば可能だと思うわ」
その時、地面が少しだけ揺れた。
「……地震? まだ揺れてる?」
「シノブちゃん……あれ……」
リアーナの視線の先、マンドラゴラの葉が揺れていた。風は無い。
「……離れた方が良さそうね……」
地面の揺れが少しずつ大きくなる。同時に巨大マンドラゴラの周囲の地面が盛り上がる。
ま、まさか……この野菜野郎……自ら!!?
一際大きな揺れ。地面から手が突き出し、その手を使い地面の下から這い出る巨大マンドラゴラ。もちろん人型、しかも筋肉質。その見上げた大きさは竜より大きい。顔部分だけで俺の身長以上があるのだ。
その目が俺達を見下ろす。
「我は王。マンドラゴラの王。全てのマンドラゴラの仇、人を滅ぼすもの。それが我」
マンドラゴラは片足を後ろへと大きく振り上げた。そして振り抜く。
砂糖菓子のように大地は削られた。
リアーナは反射的に防御魔法を展開、蹴り飛ばされた土砂を防ぐ。
「さて最初はお前達か。マンドラゴラの栄養になってもらうぞ」
首をゴキンゴキンと回し、指をポキポキと鳴らす。
「リアーナ、ロザリンド、下がって。ちょっと普通の相手じゃない」
あの蹴りの威力。普通の人間が受け止められるレベルじゃねぇ。
俺は能力を解放した。
そしてジャンプ。
「王だか何だか知らないけど、黙って滅ぼされるほど素直じゃないんで!!」
顔面を殴り飛ばされたマンドラゴラ、後退りはするが倒れはしない。
「ふぅ。人とマンドラゴラ、勝った方はこの世界の王となる」
「精力剤にしてやんよ」
このマンドラゴラは人に明確な敵意を表す。このままってわけにはいかないだろ。
握り締めた拳を連続で叩き込んだ。小さい体が大きい体を押し込むのだが。
「なかなかやるな。だが我も相当だぞ」
マンドラゴラの膝蹴りが俺の体を蹴り上げる。跳ね上がった体を平手で殴られ、地面へと叩き付けられる。
あぐっ、揺さぶりと衝撃で頭がクラクラするで……とはいえ、まだまだ!!
立ち上がった俺の周囲に無数の魔法陣が浮かび上がり炎が生まれる。その炎を集約して巨大な火球を作り出す。魔力を注ぎ込み、より大きく、より高温に。
植物だ、火には弱いはず。
「これでもくらいやがれ!!」
放たれる巨大火球。それを真正面から胸で受け止めるマンドラゴラ。
「まだまだヌルいぞ」
しかも両腕で抱き締めてそのまま火球を圧し潰す。
「マジかよ……」
「次はこちらの番だな」
マンドラゴラの突進、そして勢いのままに拳を突き出す。
ドゴンッ
空気を震わす鈍い音。俺は拳を受け止めるのだが……
ドガガガガガッ
突進を止められない。地面を削りながら押し込まれる。
クソッ、こいつ竜と同等かよ!!?
後方には依頼主の家。そのまま激突、家も壊れ飛んだ。瓦礫と共に吹き飛ばされる。
「ほほう。これで死なぬとは、なかなかの強者。お前にはこの世界で最後の人となってもらおう」
マンドラゴラはその場から駆け出した。
「逃がすわけないでしょ」
こっちには制限があるんだ、この場からは逃がさねぇぞ。
しかし瓦礫の中からの呻き声。巻き込んだか!!?
それは依頼人だった。助け出し、回復魔法を掛ける。これで死ぬ事は無いはず。そしてマンドラゴラを追おうとするのだが、そこで能力の制限時間が過ぎる。
俺の体の中から魔力が消失する。
やべぇ……逃げられた……
胸が無ぇ!! いや、元から無いんだけど、そういう意味じゃなくて!! 完全に男の胸なんだけど!! しかも下半身にはかわいい象さんが!! って、何がかわいいじゃ!!? ん? つまり男の娘じゃん。
「もしかしてこのままなのかな?」
「リアーナ。なんでちょっと嬉しそうなの?」
「そ、そんな事ないよ」
「とりあえず様子を見るしかないわね。私達がどうにかできる事ではないもの」
「確かに少し隙間が増えて余裕ですぞ」
姿を現し、すぐ引っ込むコノハナサクヤヒメ。
「それにしても」
ロザリンドの視線が俺の体を上下する。
「何?」
「見た目は全く変わらないわね」
そして笑う。
「わ、私もそれは思ったよ……」
とりあえず俺は男の子、いや、男の娘になったのである。しばらく経って元に戻れなかったら、また考えよう。
さて。それはさて置き。
滅びた旧都市。
滅びた原因が風土病とされるなら『一夜で滅びた』という話はどこから出てきたのか。まぁ、長い年月を掛けて、尾びれ背びれフカヒレで話が大きくなる事なんていくらでもある。『一夜』というのはただの誇張表現とか。
そしてベルベッティアの聞いた『一人の男』が関係していたとの噂。
ただちょっとした気になる事はある。
ルチエの両親と妹が病で亡くなった話。それは亡くなるまでにかなりの吐血をしたという内容だった。文献に記載された風土病と同じ症状である。
……まぁ、結局ね、色々と考えたわけなんだけど、滅びた理由は分からんのよ。長い年月に渡って解き明かせない謎を、フラッと現れた俺達で解決するんなて無理な話なのよ。
謎は謎のまま、答えは後世の者達に任せよう。
そんなわけで観光して終わり。
ギルドで依頼を受けて、別の所に行こうぜ!!
★★★
しかし等級の低い俺達は大した依頼を受けられないわけだが。
本日はとある村でマンドラゴラ収穫のお手伝いである。
畑いっぱい、緑の葉。その下に人型の茎が埋まっている。マンドラゴラは精力剤や薬剤の材料となり高価であるが、収穫の際に注意点がある。
マンドラゴラは引き抜く際に悲鳴を上げ、その悲鳴を聞いた者は発狂して死んでしまう……というのは、高価なマンドラゴラを盗まれないようにする為の作り話で、実際にはそんな事もなく普通に収穫できる。
俺は草部分をムギッと握り、一気に引き抜く。
ギャァァァァァッッッ
叫ぶマンドラゴラ。人型の足部分がバタバタと動く。キモイなぁ……これでも植物なんだぜ……
ビタァァァンッ
それを地面に叩き付ける。動かなくなるマンドラゴラ。こうしないと走って逃げてしまうので、ここが注意点だ。
「しかしロザリンドはどうしてこの依頼を選んだの?」
ギャァァァァァッッッ
ビタァァァンッ
「マンドラゴラ自体は有名だけど、私は見た事が無かったの。それだけよ」
ギャァァァァァッッッ
ペタッ
「ロザリンドちゃん、もう少し強くしないと。まだ痙攣して動いてるから」
ギャァァァァァッッッ
ビタァァァンッ
「そうそう、こうやって思いっきり!!」
俺は引き抜いたマンドラゴラを振り上げるが、その勢いに握っていた葉部分が千切れてしまう。
「助けてぇぇぇぇぇっ」
マンドラゴラは悲鳴と共に逃げ出した。
「……植物なのよね?」
そんな感じで収穫を続けて一休み。
そこで依頼主の爺さんがお茶を持って現れるのだが……やっぱり裏があったか……そもそもただの収穫で冒険者ギルドに依頼をするわけがない。
冒険者である理由があったのだ。
そして今、その理由が目の前に。
「待って。これ、ありえないんだけど」
マンドラゴラ、その葉は一枚で俺達三人の姿を隠せる程に巨大だった。
品種改良に品種改良を重ねて、巨大なマンドラゴラを作り出したが、その巨大さにビビったらしい。本当の依頼はこっちの対処である。
「この大きさだと私達じゃ抜けないよ。シノブちゃんの能力を使うか、アバンセさんに頼るかしないと……」
「シノブの能力はこういう場面で使うようなものではないわね」
「じゃあ、やっぱりアバンセさんに頼る?」
「頼んない。だって呼んだら文句グチグチ言いそうだし。『黙って冒険者になるなど危険だろうが!!』とかさぁ。それに引き抜く必要は無いじゃん。魔法で周りの土を掘り返せば良いんだから。急ぎってわけじゃないから、少しずつ掘り返そうよ」
「でもどうやって気絶させるの?」
「気絶……本当に植物なのよね?」
「さっき話をして許可を貰った。少し掘り起こしたらその部分を切ってく。このまま丸ごとは無理だしね」
と、いう事で。
リアーナが魔法で土を掘り起こしていく。
茶色い茎部分が見えてくる。ここは頭部だと思うが相当な大きさだぜ。これアバンセとかよりデカい可能性あるぞ。
ロザリンドは刀を抜く。そして横薙ぎに一閃。
キンッ
植物を切る音とは思えない金属音。
「硬いわね」
しかも傷一つ付いていない。
「無理そう?」
「刀に魔力を通せば可能だと思うわ」
その時、地面が少しだけ揺れた。
「……地震? まだ揺れてる?」
「シノブちゃん……あれ……」
リアーナの視線の先、マンドラゴラの葉が揺れていた。風は無い。
「……離れた方が良さそうね……」
地面の揺れが少しずつ大きくなる。同時に巨大マンドラゴラの周囲の地面が盛り上がる。
ま、まさか……この野菜野郎……自ら!!?
一際大きな揺れ。地面から手が突き出し、その手を使い地面の下から這い出る巨大マンドラゴラ。もちろん人型、しかも筋肉質。その見上げた大きさは竜より大きい。顔部分だけで俺の身長以上があるのだ。
その目が俺達を見下ろす。
「我は王。マンドラゴラの王。全てのマンドラゴラの仇、人を滅ぼすもの。それが我」
マンドラゴラは片足を後ろへと大きく振り上げた。そして振り抜く。
砂糖菓子のように大地は削られた。
リアーナは反射的に防御魔法を展開、蹴り飛ばされた土砂を防ぐ。
「さて最初はお前達か。マンドラゴラの栄養になってもらうぞ」
首をゴキンゴキンと回し、指をポキポキと鳴らす。
「リアーナ、ロザリンド、下がって。ちょっと普通の相手じゃない」
あの蹴りの威力。普通の人間が受け止められるレベルじゃねぇ。
俺は能力を解放した。
そしてジャンプ。
「王だか何だか知らないけど、黙って滅ぼされるほど素直じゃないんで!!」
顔面を殴り飛ばされたマンドラゴラ、後退りはするが倒れはしない。
「ふぅ。人とマンドラゴラ、勝った方はこの世界の王となる」
「精力剤にしてやんよ」
このマンドラゴラは人に明確な敵意を表す。このままってわけにはいかないだろ。
握り締めた拳を連続で叩き込んだ。小さい体が大きい体を押し込むのだが。
「なかなかやるな。だが我も相当だぞ」
マンドラゴラの膝蹴りが俺の体を蹴り上げる。跳ね上がった体を平手で殴られ、地面へと叩き付けられる。
あぐっ、揺さぶりと衝撃で頭がクラクラするで……とはいえ、まだまだ!!
立ち上がった俺の周囲に無数の魔法陣が浮かび上がり炎が生まれる。その炎を集約して巨大な火球を作り出す。魔力を注ぎ込み、より大きく、より高温に。
植物だ、火には弱いはず。
「これでもくらいやがれ!!」
放たれる巨大火球。それを真正面から胸で受け止めるマンドラゴラ。
「まだまだヌルいぞ」
しかも両腕で抱き締めてそのまま火球を圧し潰す。
「マジかよ……」
「次はこちらの番だな」
マンドラゴラの突進、そして勢いのままに拳を突き出す。
ドゴンッ
空気を震わす鈍い音。俺は拳を受け止めるのだが……
ドガガガガガッ
突進を止められない。地面を削りながら押し込まれる。
クソッ、こいつ竜と同等かよ!!?
後方には依頼主の家。そのまま激突、家も壊れ飛んだ。瓦礫と共に吹き飛ばされる。
「ほほう。これで死なぬとは、なかなかの強者。お前にはこの世界で最後の人となってもらおう」
マンドラゴラはその場から駆け出した。
「逃がすわけないでしょ」
こっちには制限があるんだ、この場からは逃がさねぇぞ。
しかし瓦礫の中からの呻き声。巻き込んだか!!?
それは依頼人だった。助け出し、回復魔法を掛ける。これで死ぬ事は無いはず。そしてマンドラゴラを追おうとするのだが、そこで能力の制限時間が過ぎる。
俺の体の中から魔力が消失する。
やべぇ……逃げられた……
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