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女神の微笑み編

薬草採取と小冊子

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「お尻がぁ~、お尻がぁ~、痛いよぉ~」
 交易都市から少しだけ離れると小さな森林地帯がある。その入口付近、珍しくもない薬草を採取する。基本的にはその辺の道端にあるような薬草なんだぜ。
 周囲をベルベッティアとコノハナサクヤヒメが巡回しつつ、俺達三人は薬草採取。
「そういえばシノブちゃん、冒険者として出てくるのをアバンセさんに止められたりしなかった?」
「いや、そもそも言ってないし」
「言ってなかったの?」
「いや、だってアバンセにとっては大陸の何処だって庭みたいなもんでしょ。いつもみたいに笛があればすぐ駆け付けるんだし」
 俺はアバンセの、リアーナはヤミの、ロザリンドはパルの笛を所持している。サンドンの笛は王立学校のユリアンに預けてあった。
「それに何でアバンセ?」
「だってシノブちゃん、アバンセさんと付き合ってるんでしょ?」
「……まぁ、嫌いじゃないけどさ……付き合ってる、って言われるとねぇ」
「でもアバンセの所にお泊りもしているって聞いているわ。もう男女のそれじゃない」
「男女のそれ、って……ロザリンドこそパルとどうなのさ?」
「私が見ている感じだとロザリンドちゃんもパルさんと恋人同士みたいだよね」
「何、もうエッチとかしてんの?」
「バッ、バカね、そんな関係じゃないわ!!」
「でもパルだってロザリンドに好意があると思うんだけど。だって最近はあんまり私の事を誘ってこないし」
「ロザリンドちゃん自身はどうなの? パルさんの事」
「……悪い印象は無いわ。ただ男性として好きかと言われるとよく分からないのよ。今まで恋愛の事なんてあまり意識した事も無かったし。リアーナこそどうなの? 誰か好きな人」
「私……私は……あのね、女の子同士なんだけど……どうしても、シノブちゃんが気になっちゃうの」
「リアーナ……私がリアーナの最初の男になるよ」
「嬉しい……シノブちゃんは女の子だけど」
「冗談か本気かは分からないけど……シノブとリアーナがそういう関係になっても不思議とも思わないわ。リアーナは昔からシノブべったりだものね」
「思い返せば、おちんちんが生えた時にリアーナの処女を奪っておくんだった!!」
「シノブ!!」
「うん。あの時でもシノブちゃんが望んでたらそうなったと思う。もちろん今でもだけど」
「リアーナも!!」
「例えばシノブちゃんが男性で『最後までエッチをしたい』って迫ってきたらロザリンドちゃんどうする?」
「うっ……」
「ちなみに私はロザリンドと普通にエッチできるけど」
「シ」
「『シ』?」「『シ』?」
「シノブに恋愛感情は無いの……でも……」
「『でも』?」「『でも?』」
「……拒めなさそうだわ……」
「いえーい!!」
「『いえーい』じゃないのよ、まったく……」
「フレアさんとホーリーさんはもちろんだけど、多分キオちゃんとかシャーリーちゃんも同じだと思う。みんなシノブちゃんの事が大好きだから」
「……」
「ちょっとシノブ……何で黙るのよ?」
「シノブちゃん、まさかもう?」
「か、軽くだよ、軽く」
「軽くとか重くじゃないよ!! シノブちゃんはエッチ過ぎるよ!!」
「しょ、しょうがないじゃん!! エッチな事は大好きだし、みんな可愛いから!!」
「とんでもない事を言い出したわね……」
「でも誤解しないで、私だってまだ処女なんだから!! まだ男性としてないんだから!!」
「そういう問題ではないわね」
「でもシノブちゃんは男の人に興味が無いの?」
「えっと……無いわけじゃないんだけどね……」
「だよね。アバンセさんとエッチな事してるのは知ってるし」
「あうっ……」
「ち、ちなみにどの程度の事をしているのかしら?」
「ロザリンドもそういうの興味があるの?」
「……ええ」
「私もだよ」
「……まぁ、手とか口でしてあげるけど……」
「っ!!?」「っ!!?」
「いや、そんな驚かんでも……二人だって前に経験あるでしょ? 私にしてくれたじゃん」
「それは……そうなんだけど……」
「でもシノブにするのと、男性にするのは少し違うと思うわ」
「それにホント最後までしないんだよ?」
「アバンセさんは?」
「え、えっと……体中を触ったり、キスしてくれたり……多分だけど……私の体で、アバンセの指と唇が触れていない部分は無いと思う……」
「シノブ……それはその、し、下の方もかしら?」
「うん……お尻の方まで」
「アバンセさんもそれでよく我慢できるね……」
「いや、まぁ、そのね、アバンセの大きさだと明らかに入らないんだよね」
「シノブちゃんの中に?」
「だって自分でしてみたけど指一本入れるのも大変なんだよ。二人とも指とか入れた事ある?」
「私は……あるけど……ロザリンドちゃんは?」
「数えられる程度だけど……私も経験あるわ。自分の体の事だから気になるもの」
「将来的な事を考えて、自分でも触って広げようとはしてるんだけど……」
「そんな事してたんだ……」
「まぁね……他の人と比べても狭過ぎるよ」
「……比べた事があるのね……」
「だからリアーナとロザリンドのも確認したい」
「……耳を疑うような発言が飛び出したわね」
「いや、ホント切実で!! だって将来的には出産とかあるかも知れないんだよ!! どの程度が普通なのかとかもっと比べたいんだよ!!」
「そうだよね、そういう事が分かれば少しは安心できるもんね。私も協力するから、ロザリンドちゃんも協力してあげようよ」
「待ちなさい、リアーナ。シノブは口実を作ってエッチな事をしたいだけだと思うの」
「そうなの?」
「そうじゃない」
「よく確認して。笑っているでしょう?」
「いや、笑ってないんだが」
「シノブちゃん?」
「リアーナ、ロザリンド、お願い!! パンツの中身を拝ませて!!」
 なんて話をしている所にベルベッティア。
「はいはい。そういう話は夜にしなさい。途中から声が聞こえていたけど、こんな所でする話じゃないでしょう?」
「はい……」「はい……」「はい……」
「ベルベッティア殿。近いですぞ」
 コノハナサクヤヒメだ。
「なんかあった?」
「ええ、あの冒険者三人がこちらに向かって来ているの」
「魔物が出るような所じゃないし、今さら薬草採取するような奴等に見えないし。私達に用があるみたいね」
「シノブちゃんはヒメちゃんと隠れてて」
「そうね。ベルベッティアには周囲の確認をお願いするわ。ここは私とリアーナだけで大丈夫だから」
「ええ」
「大丈夫だと思うけど、気を付けてね。ヒメ」
「拙者、命の限りシノブ殿をお守りしますぞ」
 そうして俺はその場から離れ、遠目から状況を観察するのだった。

★★★

 ロザリンドは刀を抜いた。
「あなた達の提案は断ったはずだけど。聞いていなかったのかしら?」
 鋭い視線を向ける先には、声を掛けてきた三人の冒険者。
 アバンセやパルと同じ男とは思えないような気持ち悪い笑みを浮かべていた。
「あまり睨まないでくれ。俺たちが先輩として教えてやろうって話だ。女だけの初心者パーティーにどんな危険があるのか、身を以て知れ」
 三人は武器を手に取る。
「この人達も冒険者……シノブちゃんが嫌うのも分かるかも」
 リアーナも武器を構えるのだった。

 結果。
「は、話と違うじゃないか……」
 男は崩れ落ちた。
 その様子を見て、俺も戻る。
「ちょっと弱過ぎない?」
 文字通りの瞬殺である。
 冒険者三人が武器を振るう動きすらさせない。リアーナとロザリンドは一瞬のうちに飛び込み、打ち倒していた。
「これで七等級なのね」
「武器は必要なかったかも」
 まぁ、二人とも特別だもんな。それよりも気になるのは……
「『話と違う』って、どういう事なんだろ……ん?」
 その時に冒険者達の足元に一冊の本が落ちている事に気付いた。いや、ページ数の少なさから小冊子と言った方が良いだろ。
 その小冊子の表紙には『月刊・裏冒険者』と書かれている。ああ~確かそんなゴシップ誌が冒険者向けに発行されていたような。
 ページを開いてみる。

『ここが狙い目!! 美人!! かわいい!! ヤリたい、ヤレる女冒険者!!』
 なんてページが。
「なんか凄い内容だね」
「こういう話も人気あるとは聞いた事があるけど」
 リアーナとロザリンドも小冊子を覗き込む。

『ヤリたい、ヤレる冒険者 第五位 ロザリンド・リンドバーグ』
「ロザリンド載ってるじゃん」
「……」

『ヤリたい、ヤレる冒険者 第一位 リアーナ』
「凄っ、リアーナ一位だって」
「……」

『ヤリたい、ヤレる冒険者 選外 シノブ』
「……」
 ふっ、この記事を書いた奴は殺すしかねぇな。
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