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鬼ごっこ編
情報収集と大陸の命運
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……
…………
………………
よし、やっぱり自分から動こ。
あの来店した鬼の目的が分からない。だから動きがあってから対応しようと思っていたが、そんなの俺らしくねぇ。やられる前にやれ、それが俺なんだぜ!!
鬼は俺の事を『救国の小女神』と呼んだ。つまり俺に関わる人間を知っているという事。ちょっかいを掛けたのは俺だけなんだろうか?
なんて考えていた矢先に、王立学校から来校を依頼された。タイミング的に考えればやはり鬼関連か。
ついでにみんなに情報収集もお願いする。
「ホーリー、ドレミドと一緒に帝国へ行ってくれる? ミランとハリエットに鬼の接触があったか聞いてきて。それと帝国にも鬼に関する資料があるかも知れないから調べて」
「かしこまりました。お任せください」
「ベルベッティアとアリエリはアルタイルの所をお願い」
「そうね、アルタイルなら何か知っている可能性があるものね」
★★★
王立学校。その校長室。
「お久しぶりですね。シノブさん。お元気でしたか?」
神々の手・悠久の大魔法使いララ・クグッチオ。現・王立学校長チオ・ラグラックである。一度は辞任したが、まぁ有能だし戻って当然か。
「元気ですよ。学校長こそ元気……とは言えないような疲れた顔をしていますね。やっぱり鬼の事ですか?」
「さすがですね。話が早いです」
苦笑いを浮かべる。
「サンドンからも話は聞いています」
「冥界の主・サンドン……そうですか……」
もうある程度の話は聞いている。王立学校への窃盗犯にリアーナ達が見事やられた事。相手の特徴を聞くなら間違いなく鬼。さらにビスマルクとヴイーヴルも何者からの攻撃を受けた事。
そして過去に鬼と対峙したララからの呼び出し。これ絶対に鬼関係の話だろ。
「これを見て下さい。ビスマルクさんとヴイーヴルさんに受け取りを頼んだ標本です。お二人が攻撃を受けたのはこれが原因でしょう」
二人の間、テーブルの上に置かれた金属製の箱。その蓋を開けると、そこに収められていたのは……
「……これ……人の足ですか?」
黒いそれは炭のようにも見えるが、その形は人の足。
「アビスコ鬼王の左足です」
「えっ!!?」
「そして先日、盗まれたのがアビスコ鬼王の右腕です」
「えっ、ええっ!!?」
「見ていてください」
俺はその左足を見詰める。これが……アビスコ鬼王の左足……本当か? でもララがそんな事で嘘を言う意味が分からないしな……ジッと見ていたその時。
ピクッ
干乾びたその足の小指が僅かに動いた。
「うへぇぇぇぇぇっ!!」
思わず後ずさる。
「生きているのです」
「ま、まま、待って下さい、ど、どういう事でしょうか!!?」
「アビスコ鬼王は不死身なのです。死ぬ事はありません」
アビスコは首を切り落としても死ぬ事はなく、その首だけで空を飛んだ。首の無い胴体はそれでも金棒を振り回し敵を粉砕した。そして首と胴体がくっ付けば、また元通りになる。
そこでバッカスはアビスコを文字通りの八つ裂きにした。そしてバラバラになった部位を個別に封印したのが悠久の大魔法使いララ・クグッチオだったのだ。
そして大陸の各地に分散して保管をされていた……はずだった。
「アビスコの体は厳重に管理をされていたはずでしたが、王国の建国後にも何度か戦乱の時代はありました。その時に行方が分からなくなってしまった部位がいくつかあります。それを探すのも私の目的の一つです」
「でも鬼達がアビスコの復活を望むなら、今までだって活動していたはずですよね? それがどうして今になって活発な感じなんですか?」
「それは分かりません。ただ何かきっかけがあるのは確かだと思います」
「相手の目的がアビスコの復活なら阻止したい。けど建国の経緯から王国に援助は頼めない。相手が鬼なら生半可な人には対処できない。ある程度の信用ある人に協力を頼みたい。つまり私に協力して欲しいって事ですよね」
「……はい……大変に申し訳ないと思いますが……もちろん報酬はシノブさんの希望するものを、私ができる範囲なら何でも用意をします。だからどうか……よろしくお願いします」
「……」
もしこのまま放置、アビスコが復活して、大陸を支配しようと行動したら……また大陸は混乱する。それを見過ごす事はできねぇ。
それが分かってやがるからあの大男の鬼は俺の前に姿を現したんだろ。
「……シノブさん」
「分かりました。でもみんなと相談します。お話は受けるかはみんなと決めますので」
★★★
王立学校の一室。
「……って、事が今回の話なんだけど」
少しの間があって。
「……王国を建国したのが竜だったなんて……普通に生きてたら絶対に知る事のできない真実だ。これだからシノブと一緒なのは飽きないな!! もちろん僕は手伝うぞ」
嬉々とした声を上げるのはタックルベリー。
「言っとくけど他には秘密だからね。王国の根底が揺らぐよ」
「そうね……それ以前に誰も信じないと思うけども」
まぁ、ロザリンドの言う通り。
「私は今回も手伝うよ。大陸が混乱したら商売の邪魔になるし。何より私に対して宣戦布告みたいな事してきたのがね。死ぬほど後悔させてやらぁ」
「シノブちゃんってば……でも私もやられたままじゃ悔しいかな。私も参加する」
「私もよ。見逃せば大変な事になる気がするわ」
「わたくしも一緒ですわ!! 絶対に後悔させてやります!! ユリアンもそうですわね!!?」
「確かにやられっぱなしってもの気に入らないよな。俺もやる」
「わ、私は、シ、シノブさんの力になりたいです、はい」
「では私達は引率だな、ガハハハハッ」
「もちろんよ~みんなが心配だもの~」
「姐さん、分かってる思うっすけど、俺も手伝いますよ」
「もちろん拙者もですぞ。シノブ殿をお守りするのはこのコノハナサクヤヒメの使命」
「あーもちろん、あたしも手伝うから。給金上げて、よろしく」
「金の亡者のシノブにそんな事を言っても無駄かも知れない。もちろん俺も手伝う」
「ちょっとヴォルぅぅぅ!! うちはお給料良い方なんだけどぉぉぉ!!」
そんなみんなを見てフレアはニコニコと微笑んでいるのであった。
★★★
話を受けて、報酬はまた後から考えるという事で。
まずアビスコ復活阻止には、その頭部と心臓を確保する事。ただ残念ながらその行方は分からない。
つまり現状で判明しているのはこれ。
頭部……行方不明。
心臓……行方不明。
胸部……大陸の東、海底洞窟に隠される。
腰部……行方不明。
右手……王立学校から盗まれて鬼側へ。
左手……行方不明。
右足……帝国領、今の帝都付近に居を構える剣士の家系が所持。
左足……王立学校が所持。
右目……王都で王族が所持。
左目……帝国領で管理されていたが行方不明。
そしてすぐにヴォルフラムとフレアを走らせる。先発していたホーリー達を追うように、まずはアルタイルの所へ、次に帝国。帝国領にある右足と左目の探索もお願いする。
それと右目。これは王国側の強力が不可欠。とはいえ建国の経緯がある以上は素直に頼めない。となれば、やっぱり窓口はニーナだな。
そこで俺達の目下の目標は大陸の東、海岸線に隠れる海底洞窟。胸部が無ければ首も付けられないし、心臓も戻せない。
「もう。せっかく引率する気満々だったのに~」
「仕方無い。左足を持ち歩くわけにはいかないからな。守るのも立派な役割だ」
そう、王立学校にララはいるが、絶対の守りとは言えない。そこでビスマルクとヴイーヴルには残ってもらう。
俺、リアーナ、ロザリンド、タックルベリー、リコリス、ユリアン、キオ、シャーリー、ミツバ、コノハナサクヤヒメ、で海底洞窟へと向かう。
残念ながらアバンセ達には協力を頼めない。存在が目立ち過ぎ、あんだけ目立つとこっちの動向が相手に丸分かりになるからな。
とにもかくにも俺達はまたしても大陸の命運を左右する事件に挑んでいくのである。
…………
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よし、やっぱり自分から動こ。
あの来店した鬼の目的が分からない。だから動きがあってから対応しようと思っていたが、そんなの俺らしくねぇ。やられる前にやれ、それが俺なんだぜ!!
鬼は俺の事を『救国の小女神』と呼んだ。つまり俺に関わる人間を知っているという事。ちょっかいを掛けたのは俺だけなんだろうか?
なんて考えていた矢先に、王立学校から来校を依頼された。タイミング的に考えればやはり鬼関連か。
ついでにみんなに情報収集もお願いする。
「ホーリー、ドレミドと一緒に帝国へ行ってくれる? ミランとハリエットに鬼の接触があったか聞いてきて。それと帝国にも鬼に関する資料があるかも知れないから調べて」
「かしこまりました。お任せください」
「ベルベッティアとアリエリはアルタイルの所をお願い」
「そうね、アルタイルなら何か知っている可能性があるものね」
★★★
王立学校。その校長室。
「お久しぶりですね。シノブさん。お元気でしたか?」
神々の手・悠久の大魔法使いララ・クグッチオ。現・王立学校長チオ・ラグラックである。一度は辞任したが、まぁ有能だし戻って当然か。
「元気ですよ。学校長こそ元気……とは言えないような疲れた顔をしていますね。やっぱり鬼の事ですか?」
「さすがですね。話が早いです」
苦笑いを浮かべる。
「サンドンからも話は聞いています」
「冥界の主・サンドン……そうですか……」
もうある程度の話は聞いている。王立学校への窃盗犯にリアーナ達が見事やられた事。相手の特徴を聞くなら間違いなく鬼。さらにビスマルクとヴイーヴルも何者からの攻撃を受けた事。
そして過去に鬼と対峙したララからの呼び出し。これ絶対に鬼関係の話だろ。
「これを見て下さい。ビスマルクさんとヴイーヴルさんに受け取りを頼んだ標本です。お二人が攻撃を受けたのはこれが原因でしょう」
二人の間、テーブルの上に置かれた金属製の箱。その蓋を開けると、そこに収められていたのは……
「……これ……人の足ですか?」
黒いそれは炭のようにも見えるが、その形は人の足。
「アビスコ鬼王の左足です」
「えっ!!?」
「そして先日、盗まれたのがアビスコ鬼王の右腕です」
「えっ、ええっ!!?」
「見ていてください」
俺はその左足を見詰める。これが……アビスコ鬼王の左足……本当か? でもララがそんな事で嘘を言う意味が分からないしな……ジッと見ていたその時。
ピクッ
干乾びたその足の小指が僅かに動いた。
「うへぇぇぇぇぇっ!!」
思わず後ずさる。
「生きているのです」
「ま、まま、待って下さい、ど、どういう事でしょうか!!?」
「アビスコ鬼王は不死身なのです。死ぬ事はありません」
アビスコは首を切り落としても死ぬ事はなく、その首だけで空を飛んだ。首の無い胴体はそれでも金棒を振り回し敵を粉砕した。そして首と胴体がくっ付けば、また元通りになる。
そこでバッカスはアビスコを文字通りの八つ裂きにした。そしてバラバラになった部位を個別に封印したのが悠久の大魔法使いララ・クグッチオだったのだ。
そして大陸の各地に分散して保管をされていた……はずだった。
「アビスコの体は厳重に管理をされていたはずでしたが、王国の建国後にも何度か戦乱の時代はありました。その時に行方が分からなくなってしまった部位がいくつかあります。それを探すのも私の目的の一つです」
「でも鬼達がアビスコの復活を望むなら、今までだって活動していたはずですよね? それがどうして今になって活発な感じなんですか?」
「それは分かりません。ただ何かきっかけがあるのは確かだと思います」
「相手の目的がアビスコの復活なら阻止したい。けど建国の経緯から王国に援助は頼めない。相手が鬼なら生半可な人には対処できない。ある程度の信用ある人に協力を頼みたい。つまり私に協力して欲しいって事ですよね」
「……はい……大変に申し訳ないと思いますが……もちろん報酬はシノブさんの希望するものを、私ができる範囲なら何でも用意をします。だからどうか……よろしくお願いします」
「……」
もしこのまま放置、アビスコが復活して、大陸を支配しようと行動したら……また大陸は混乱する。それを見過ごす事はできねぇ。
それが分かってやがるからあの大男の鬼は俺の前に姿を現したんだろ。
「……シノブさん」
「分かりました。でもみんなと相談します。お話は受けるかはみんなと決めますので」
★★★
王立学校の一室。
「……って、事が今回の話なんだけど」
少しの間があって。
「……王国を建国したのが竜だったなんて……普通に生きてたら絶対に知る事のできない真実だ。これだからシノブと一緒なのは飽きないな!! もちろん僕は手伝うぞ」
嬉々とした声を上げるのはタックルベリー。
「言っとくけど他には秘密だからね。王国の根底が揺らぐよ」
「そうね……それ以前に誰も信じないと思うけども」
まぁ、ロザリンドの言う通り。
「私は今回も手伝うよ。大陸が混乱したら商売の邪魔になるし。何より私に対して宣戦布告みたいな事してきたのがね。死ぬほど後悔させてやらぁ」
「シノブちゃんってば……でも私もやられたままじゃ悔しいかな。私も参加する」
「私もよ。見逃せば大変な事になる気がするわ」
「わたくしも一緒ですわ!! 絶対に後悔させてやります!! ユリアンもそうですわね!!?」
「確かにやられっぱなしってもの気に入らないよな。俺もやる」
「わ、私は、シ、シノブさんの力になりたいです、はい」
「では私達は引率だな、ガハハハハッ」
「もちろんよ~みんなが心配だもの~」
「姐さん、分かってる思うっすけど、俺も手伝いますよ」
「もちろん拙者もですぞ。シノブ殿をお守りするのはこのコノハナサクヤヒメの使命」
「あーもちろん、あたしも手伝うから。給金上げて、よろしく」
「金の亡者のシノブにそんな事を言っても無駄かも知れない。もちろん俺も手伝う」
「ちょっとヴォルぅぅぅ!! うちはお給料良い方なんだけどぉぉぉ!!」
そんなみんなを見てフレアはニコニコと微笑んでいるのであった。
★★★
話を受けて、報酬はまた後から考えるという事で。
まずアビスコ復活阻止には、その頭部と心臓を確保する事。ただ残念ながらその行方は分からない。
つまり現状で判明しているのはこれ。
頭部……行方不明。
心臓……行方不明。
胸部……大陸の東、海底洞窟に隠される。
腰部……行方不明。
右手……王立学校から盗まれて鬼側へ。
左手……行方不明。
右足……帝国領、今の帝都付近に居を構える剣士の家系が所持。
左足……王立学校が所持。
右目……王都で王族が所持。
左目……帝国領で管理されていたが行方不明。
そしてすぐにヴォルフラムとフレアを走らせる。先発していたホーリー達を追うように、まずはアルタイルの所へ、次に帝国。帝国領にある右足と左目の探索もお願いする。
それと右目。これは王国側の強力が不可欠。とはいえ建国の経緯がある以上は素直に頼めない。となれば、やっぱり窓口はニーナだな。
そこで俺達の目下の目標は大陸の東、海岸線に隠れる海底洞窟。胸部が無ければ首も付けられないし、心臓も戻せない。
「もう。せっかく引率する気満々だったのに~」
「仕方無い。左足を持ち歩くわけにはいかないからな。守るのも立派な役割だ」
そう、王立学校にララはいるが、絶対の守りとは言えない。そこでビスマルクとヴイーヴルには残ってもらう。
俺、リアーナ、ロザリンド、タックルベリー、リコリス、ユリアン、キオ、シャーリー、ミツバ、コノハナサクヤヒメ、で海底洞窟へと向かう。
残念ながらアバンセ達には協力を頼めない。存在が目立ち過ぎ、あんだけ目立つとこっちの動向が相手に丸分かりになるからな。
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