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大陸のアイドル編
ギルドの依頼とそれは夜襲
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それは冒険者ギルドの依頼だった。
とある村で一晩にして住人が全員消えてしまった。その奇妙過ぎる出来事を調べて欲しいとの依頼。
もちろん断る事もできるんだけど、一応は俺も冒険者登録しちまったしなぁ。手伝ってやるか……と、言ってもお店を休むワケにはいかんし。今回はヴォルフラムまでも含めての完全クジ引きでメンバーを決めた。
俺、フレア、ドレミド、ミツバ、コノハナサクヤヒメの五人でその村へと向かう。ちなみにスライムを一人とするべきか迷うトコだぜ。
そして到着した村。
さほど大きくはないが、二階建ての宿屋がある事からそれなりの人流はあったのだろう。ただその宿屋にも人はいない。掃除は行き届いており、放置されて時間が経った様子は無い。
確かに一晩にして人が消えたと言われれば確かにその通りだ。
日も落ち、調査は明日から本格的に始めよう。とりあえず今晩はこの宿屋を利用させてもらってと。もちろん油断なんてするつもりは無かったが……
★★★
深夜。廊下を俺とドレミドが駆け抜ける。それは夜襲。
「頭を下げろ!!」
「どわぁぁぁぁぁっ」
ドレミドは俺の頭を抱えるようにして走っていた。
ドンッ、ドンッ、ドンッ
建物の外から魔法を打ち込まれる。光の矢が外装内装を突き破り、駆け抜けたすぐ背後を破壊していく。怖い、怖い、当たったら死ぬし!!
廊下の先は行き止まり、ただ窓はある。
「飛ぶぞ!!」
「でもここ二階なんだけど!!」
「問題無い!!」
ガシャンッ
ドレミドは俺を抱えて窓を突き破り飛んだ。一瞬の浮遊感、次に衝撃。ドレミドがいなければ大怪我だぜ、なんて思った次の瞬間。
「うごっ」
そのドレミドに突き飛ばされる。今度は何だよ!!? 視線を向けた先。
フードを目深に被った人物。ドレミドはフードを掴み押さえ、拳をその腹部へと叩き込んだ。続けてゴチッと重く響く頭突き。そして膝蹴りで相手は崩れ落ちる。
ただフードの人物は一人だけではない。
武器を構えて向かって来る二人をドレミドは殴り倒し、蹴り飛ばす。
どうなってんだ一体!!?
「シノブ!!」
「えっ、あっ」
ドレミドは俺に飛び付き、地面を転がる。くわぁぁぁ、熱風がぁぁぁ!! 今まで俺が立っていた位置に炎が巻き上がる。魔法が向けられたのは戦っているドレミドへじゃない。つまり狙いは俺。
ヒュンッ
今度は風を切る音。ドレミドは剣を抜き、向けられた矢を斬り落とした。
その一瞬。
「動くな」
俺の背後から男の声。
「ごめん。ドレミドも動かないで」
「抵抗するな。お前を殺しはしない。だが抵抗すれば仲間には全員死んでもらう」
嘘だな。
さっきの魔法攻撃は俺を殺す気だったろ。つまり最初から殺すつもり。すぐに殺さないのは、その俺を人質にして仲間全員も最初から殺すつもりだからだ。
「抵抗はしない。けど理由くらいは教えて欲しい」
「教える事は何も無い」
「そっか」
その俺の胸元からスルッと抜け出る透明な体。コノハナサクヤヒメ。
無数の水滴の弾丸が男の体を貫いた。
「ぎゃぁぁぁぁぁっ!!」
「致命傷は外してありますぞ」
「偉いぞ、ヒメ」
ドレミドは言いながら、のたうち回る男の頭を蹴り飛ばす。脳震盪で失神。
「ヒメ、助かったよ。ありがとう」
「歓喜の極み!!」
「シノブ。相手は組織的に訓練をされている。私とヒメだけじゃ守りきれない。逃げるぞ」
「でもフレアとミツバさんが」
「簡単にやられる二人じゃない」
「……分かった」
闇に紛れて建物の陰から陰へと移動。そして周囲の様子を窺う。
耳をつんざく突然の爆音。気を失いそうな程の衝撃と共に俺達は吹き飛ばされた。地面に叩き付けられるようにゴロゴロと転がる。
え、な、何だ……
断続的に続く爆発音。黒煙の隙間から並んだ建物が次々と火を噴き爆発するのが見えた。何処に隠れていようと関係無い、周囲の建物全てに何かしら事前に細工をされている。
つまり……誘い込まれた!!
その瞬間に冒険者ギルドへの依頼自体が罠だったという事を理解する。
「シノブ殿、ご無事でしょうか?」
「私は大丈夫だけど」
体の下ではコノハナサクヤヒメがクッション代わりになっていた。その時に覆い被さるドレミドに気付く。俺を庇ったのだ。もし俺一人だったら、さっきの爆発で死んでいたはず。
「ドレミド!! ドレミド!! 大丈夫!!?」
返事は無い。呼吸はしているが気を失っている。
助かったぜ……ありがとう。
俺はドレミドの下から這い出した。
「ヒメ、ドレミドを運べる?」
「もちろん。任せてくだされ」
丸いコノハナサクヤヒメが平べったく薄く伸びる。そしてそのままドレミドの下に潜り込んだ。スケートボードの板のようになりそのまま移動する。
あらやだ、この子も凄い優秀。
「シノブ殿もどうぞ」
さらに伸びる。
「大丈夫?」
「もちろんですぞ」
しかも空いたスペースに俺も座り乗り、そのまま黒煙の中を駆け抜けた。俺が走るより遥かに速いじゃねぇか。このまま逃げ切れれば……なんてのは甘いか。
村一つを潰すような大掛かりな準備。しかもこちらが死ねば何でも良い。そんな罠。
逃げ道を塞ぐ、激しく燃え上がる炎の壁。しかしそこへ突撃するコノハナサクヤヒメ。
「ちょっとヒメ!!」
「信用してくだされ!! このコノハナサクヤヒメが絶対にお守りしますぅぅぅ!!」
無色透明な体から染み出す水。それは膜となり俺達の周囲を包む。
炎の中に飛び込む。そのあまりの高温に水分は一瞬にして蒸発してしまうが、コノハナサクヤヒメは絶えず水を生み出し、炎を遮断するのだ。
蒸気で視界の見えない中、そのまま一気に村を抜ける。
しかし駆け抜けた先にはフードとコートで全身を覆った数人が待ち構えていた。しかも少し離れた位置にも人影が見える。
決して逃がさないように……小さな村とはいえ、その村を外から囲むように均等に人を置いていた。どんだけ人数を掛けてんだよ!!
それは魔法攻撃。正面から放たれる火球。さらに頭上からも火球の雨が降り注ぐ。
「シノブ殿、御免!!」
「どわっ!!」
急ブレーキ。俺とドレミドは勢いで転がり落ちる。
そのコノハナサクヤヒメの丸い体が少しだけ膨らんだ。そして次の瞬間。
「ちょいあっ!!」
水の矢を四方八方へと放ち、火球を撃ち抜く。水は一瞬にして高温の蒸気となる。まるで地獄のようなサウナ状態。
熱いぃぃぃぃぃっ!! 蒸気で何も見えないぃぃぃぃぃっ!!
蒸し焼きになりそうだが、コノハナサクヤヒメは攻撃と同時に俺達の周りに水の盾をも形成していた。このスライム、優秀過ぎるぅぅぅぅぅっ!!
しかしだ。高温の蒸気と燃え上がる炎。逃げ道が無い。アバンセを呼んでも間に合わないだろう。
つまり俺の能力を使うならここ。
「ヒメ!! ドレミドを守って!! ここは私がやる!!」
体内の中の魔力に火をつける。魔力は膨れ上がり体外へと溢れ、淡い光を放つ。神々の手としての能力を発動。
発動と同時に周囲へと魔力を飛ばす。探索魔法だ。
10、20、30、何人いやがんだ、40、これはフレアとミツバ、一緒だな、囲まれてるのか? 50人超……規模がデカ過ぎるだろ。
そして周囲全ての敵を把握して、地面へと両手を着いた。
「凍れ、ボケ共」
それは氷を生み出す魔法。俺を中心にして全てが凍り付いていく。蒸気はキラキラと輝く氷の結晶となり、炎は掻き消え周囲の温度は一気に下がる。
離れた位置から聞こえる悲鳴。
生み出された冷気は敵の周囲に氷の檻を作り出し閉じ込めた。
そしてすぐにドレミドとコノハナサクヤヒメを抱えて駆け出す。
「さすがシノブ殿!! その力、天井知らず!!」
「はいはい、ありがと。時間無いから飛ばすよ!!」
そしてフレアとミツバを回収してその場を離れるのだった。
とある村で一晩にして住人が全員消えてしまった。その奇妙過ぎる出来事を調べて欲しいとの依頼。
もちろん断る事もできるんだけど、一応は俺も冒険者登録しちまったしなぁ。手伝ってやるか……と、言ってもお店を休むワケにはいかんし。今回はヴォルフラムまでも含めての完全クジ引きでメンバーを決めた。
俺、フレア、ドレミド、ミツバ、コノハナサクヤヒメの五人でその村へと向かう。ちなみにスライムを一人とするべきか迷うトコだぜ。
そして到着した村。
さほど大きくはないが、二階建ての宿屋がある事からそれなりの人流はあったのだろう。ただその宿屋にも人はいない。掃除は行き届いており、放置されて時間が経った様子は無い。
確かに一晩にして人が消えたと言われれば確かにその通りだ。
日も落ち、調査は明日から本格的に始めよう。とりあえず今晩はこの宿屋を利用させてもらってと。もちろん油断なんてするつもりは無かったが……
★★★
深夜。廊下を俺とドレミドが駆け抜ける。それは夜襲。
「頭を下げろ!!」
「どわぁぁぁぁぁっ」
ドレミドは俺の頭を抱えるようにして走っていた。
ドンッ、ドンッ、ドンッ
建物の外から魔法を打ち込まれる。光の矢が外装内装を突き破り、駆け抜けたすぐ背後を破壊していく。怖い、怖い、当たったら死ぬし!!
廊下の先は行き止まり、ただ窓はある。
「飛ぶぞ!!」
「でもここ二階なんだけど!!」
「問題無い!!」
ガシャンッ
ドレミドは俺を抱えて窓を突き破り飛んだ。一瞬の浮遊感、次に衝撃。ドレミドがいなければ大怪我だぜ、なんて思った次の瞬間。
「うごっ」
そのドレミドに突き飛ばされる。今度は何だよ!!? 視線を向けた先。
フードを目深に被った人物。ドレミドはフードを掴み押さえ、拳をその腹部へと叩き込んだ。続けてゴチッと重く響く頭突き。そして膝蹴りで相手は崩れ落ちる。
ただフードの人物は一人だけではない。
武器を構えて向かって来る二人をドレミドは殴り倒し、蹴り飛ばす。
どうなってんだ一体!!?
「シノブ!!」
「えっ、あっ」
ドレミドは俺に飛び付き、地面を転がる。くわぁぁぁ、熱風がぁぁぁ!! 今まで俺が立っていた位置に炎が巻き上がる。魔法が向けられたのは戦っているドレミドへじゃない。つまり狙いは俺。
ヒュンッ
今度は風を切る音。ドレミドは剣を抜き、向けられた矢を斬り落とした。
その一瞬。
「動くな」
俺の背後から男の声。
「ごめん。ドレミドも動かないで」
「抵抗するな。お前を殺しはしない。だが抵抗すれば仲間には全員死んでもらう」
嘘だな。
さっきの魔法攻撃は俺を殺す気だったろ。つまり最初から殺すつもり。すぐに殺さないのは、その俺を人質にして仲間全員も最初から殺すつもりだからだ。
「抵抗はしない。けど理由くらいは教えて欲しい」
「教える事は何も無い」
「そっか」
その俺の胸元からスルッと抜け出る透明な体。コノハナサクヤヒメ。
無数の水滴の弾丸が男の体を貫いた。
「ぎゃぁぁぁぁぁっ!!」
「致命傷は外してありますぞ」
「偉いぞ、ヒメ」
ドレミドは言いながら、のたうち回る男の頭を蹴り飛ばす。脳震盪で失神。
「ヒメ、助かったよ。ありがとう」
「歓喜の極み!!」
「シノブ。相手は組織的に訓練をされている。私とヒメだけじゃ守りきれない。逃げるぞ」
「でもフレアとミツバさんが」
「簡単にやられる二人じゃない」
「……分かった」
闇に紛れて建物の陰から陰へと移動。そして周囲の様子を窺う。
耳をつんざく突然の爆音。気を失いそうな程の衝撃と共に俺達は吹き飛ばされた。地面に叩き付けられるようにゴロゴロと転がる。
え、な、何だ……
断続的に続く爆発音。黒煙の隙間から並んだ建物が次々と火を噴き爆発するのが見えた。何処に隠れていようと関係無い、周囲の建物全てに何かしら事前に細工をされている。
つまり……誘い込まれた!!
その瞬間に冒険者ギルドへの依頼自体が罠だったという事を理解する。
「シノブ殿、ご無事でしょうか?」
「私は大丈夫だけど」
体の下ではコノハナサクヤヒメがクッション代わりになっていた。その時に覆い被さるドレミドに気付く。俺を庇ったのだ。もし俺一人だったら、さっきの爆発で死んでいたはず。
「ドレミド!! ドレミド!! 大丈夫!!?」
返事は無い。呼吸はしているが気を失っている。
助かったぜ……ありがとう。
俺はドレミドの下から這い出した。
「ヒメ、ドレミドを運べる?」
「もちろん。任せてくだされ」
丸いコノハナサクヤヒメが平べったく薄く伸びる。そしてそのままドレミドの下に潜り込んだ。スケートボードの板のようになりそのまま移動する。
あらやだ、この子も凄い優秀。
「シノブ殿もどうぞ」
さらに伸びる。
「大丈夫?」
「もちろんですぞ」
しかも空いたスペースに俺も座り乗り、そのまま黒煙の中を駆け抜けた。俺が走るより遥かに速いじゃねぇか。このまま逃げ切れれば……なんてのは甘いか。
村一つを潰すような大掛かりな準備。しかもこちらが死ねば何でも良い。そんな罠。
逃げ道を塞ぐ、激しく燃え上がる炎の壁。しかしそこへ突撃するコノハナサクヤヒメ。
「ちょっとヒメ!!」
「信用してくだされ!! このコノハナサクヤヒメが絶対にお守りしますぅぅぅ!!」
無色透明な体から染み出す水。それは膜となり俺達の周囲を包む。
炎の中に飛び込む。そのあまりの高温に水分は一瞬にして蒸発してしまうが、コノハナサクヤヒメは絶えず水を生み出し、炎を遮断するのだ。
蒸気で視界の見えない中、そのまま一気に村を抜ける。
しかし駆け抜けた先にはフードとコートで全身を覆った数人が待ち構えていた。しかも少し離れた位置にも人影が見える。
決して逃がさないように……小さな村とはいえ、その村を外から囲むように均等に人を置いていた。どんだけ人数を掛けてんだよ!!
それは魔法攻撃。正面から放たれる火球。さらに頭上からも火球の雨が降り注ぐ。
「シノブ殿、御免!!」
「どわっ!!」
急ブレーキ。俺とドレミドは勢いで転がり落ちる。
そのコノハナサクヤヒメの丸い体が少しだけ膨らんだ。そして次の瞬間。
「ちょいあっ!!」
水の矢を四方八方へと放ち、火球を撃ち抜く。水は一瞬にして高温の蒸気となる。まるで地獄のようなサウナ状態。
熱いぃぃぃぃぃっ!! 蒸気で何も見えないぃぃぃぃぃっ!!
蒸し焼きになりそうだが、コノハナサクヤヒメは攻撃と同時に俺達の周りに水の盾をも形成していた。このスライム、優秀過ぎるぅぅぅぅぅっ!!
しかしだ。高温の蒸気と燃え上がる炎。逃げ道が無い。アバンセを呼んでも間に合わないだろう。
つまり俺の能力を使うならここ。
「ヒメ!! ドレミドを守って!! ここは私がやる!!」
体内の中の魔力に火をつける。魔力は膨れ上がり体外へと溢れ、淡い光を放つ。神々の手としての能力を発動。
発動と同時に周囲へと魔力を飛ばす。探索魔法だ。
10、20、30、何人いやがんだ、40、これはフレアとミツバ、一緒だな、囲まれてるのか? 50人超……規模がデカ過ぎるだろ。
そして周囲全ての敵を把握して、地面へと両手を着いた。
「凍れ、ボケ共」
それは氷を生み出す魔法。俺を中心にして全てが凍り付いていく。蒸気はキラキラと輝く氷の結晶となり、炎は掻き消え周囲の温度は一気に下がる。
離れた位置から聞こえる悲鳴。
生み出された冷気は敵の周囲に氷の檻を作り出し閉じ込めた。
そしてすぐにドレミドとコノハナサクヤヒメを抱えて駆け出す。
「さすがシノブ殿!! その力、天井知らず!!」
「はいはい、ありがと。時間無いから飛ばすよ!!」
そしてフレアとミツバを回収してその場を離れるのだった。
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