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神々の手編
竜対策と水都防衛
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話は数日遡りまして。
「ちょっと頭の良い人達集まってぇ~」
「はいは~い」
「いや……シャーリーは呼んでないんだけど……」
「うん。冷やかしだし」
何人かに集まってもらう。
大陸の地図を広げて。横長に広がる戦線。
「どう考えても敵の陽動作戦なんだけど、問題は本命が何処かって事だよね。ビスマルクさんは何処だと思う?」
わざわざ戦線を広げて、戦力を分散する意味が無い。しかし王国だって馬鹿じゃないから、そんなのには気付いて対策はしているだろうけど。
相手の最終的な目的地は王都と帝都。その中で帝都は戦いが始まった海岸線とは反対側、そして大陸の中心に近くかなりの内陸でもある。いきなり狙うには無理だろうな。
地理関係的にはやっぱり王都の方が先か。
そしてビスマルクの巨大な爪先が記したのは……
「王立学校?」
戦線と王都の間にある王立学校。
「そうだ。王立学校長チオ・ラグラック。攻撃力は竜に及ばないが、人としては最高水準の魔法使いだからな。早めに排除をしておきたいだろう」
しかしロザリンドは言う。
「そうかしら? 王立学校には多くの王族や貴族が通っているわ。だからチオも王立学校からは簡単に動けない。周りを占領する方が先じゃないかしら?」
さらにリアーナ。
「交易都市の可能性もあるんじゃないかな? 交易の場所になっているから、ここを占領できれば他国との連携の邪魔ができるし」
「でも交易都市も内陸じゃないか。ここを攻めるには途中にいくつもの場所を占領する必要があるだろう?」
タカニャは言う。
「そうとも言えないと思うがな。普通の軍隊ならば不可能だろうが、今回の相手の戦力を考えれば少数での占領も可能だろう。少数ならば気付かれず急襲する事もできる」
と、フォリオ。
話し合えば、いくつもの候補が出てくる。だがどれも確実にここだという決定打が無い。
その中でシャーリーは指差した。
「ねぇ、ここは?」
その指先を見て、ユリアンは言う。
「いや、王都を飛び越えて反対側だろ。しかもヤミがいるんだぞ。ありえない」
シャーリーが指差したのは水都。麗しの水竜ヤミがいる場所だ。
戦線からは王都を挟んでの反対側。しかし王都からは比較的に近く、ここを占領されたら何かと脅威になるが……なんせヤミがいる。
性格は温厚であるが、それでも竜だ。比類無き力を持っている。ここを攻める選択肢は始めから無い。
「……どうしてシャーリーはそこだと思うの?」
「こっから一番近いし。竜一匹シバき上げれば、大陸中の国が降伏しそうじゃん。シノブならやりそう」
……
…………
………………そうだ……俺ならそうする。普通では考える事の無い、俺の能力があってこその作戦。だから最初から選択外、考えが及んでいなかった。
でもアルテュールだって神々の手。俺と同じ事ができる可能性はある。できるのならば、水都は恰好の的になる。
「その水都も陽動で、王都を狙う可能性はどう?」
ベルベッティアの言葉に俺は首を横に振る。
「無い。できるなら島国の前に王都を狙ってるよ。まだそこまでの戦力は整ってない。それとアルテュールからしてみたら少ない被害で大陸を統一したいでしょ。ここで竜を倒せば、アルテュール側につく国も現れるよ」
竜の力は一国を凌駕する。
「しかしシノブ様、それは竜を倒してからの話。竜を倒す事など可能なのでしょうか? それに竜を倒す力があるならば大陸の統一など簡単なのではないですか?」
確かにホーリーの言う事はもっともだが。
「大陸変動の時に、アバンセやパルの力を借りた事はアルテュールも知ってるはずだよ。今回だってそうなる可能性は高い。それでも戦いを始めたんだから対策してないはずがない。きっと竜に対抗する手段があるんだよ。それがあれば水都を狙うのが結果的には一番楽。だから王都よりも水都」
「でもさぁ、自分で言っといてなんだけど何でヤミなの? アバンセとかいるのに」
「ヤミだけは人と一緒に暮らしているから」
アバンセもパルも基本的には一匹狼。サンドンも居場所がよく分からない。その中でヤミだけは水都の中で人と共存をしている。つまり人に近いからこそ、アルテュールにとっては倒せれば良いアピールになる。
「……飛竜出すよ!! リアーナはアバンセ、ロザリンドはパルの様子を見てきて。私は水都に行くから、二人の様子を見たらすぐ私に合流して」
とりあえずアバンセ達の状況が分からない今、体育教師ホイッスルで呼び出すのは危ないだろ。
「こっちはどうするつもり? 私達だけで勝手に動けば混乱を招く事にもなるわ。命令違反で罰を受ける事だってあるのよ」
ロザリンドの言う事は当然。しかし。
「水都が目的の可能性はかなり高いと思う。もし占領でもされたら大変な事になるよ」
間違いならそれで良い。
「シノブはここにいる、そういう事にする。それとフォリオとタカニャを含めての遊撃隊200人を連れて行けば良い。少なくなった人数はアルタイルのスケルトンで誤魔化せば良いだろ」
ミランの言葉にビスマルクも頷いた。
そしてニーナから借りた飛竜二匹、リアーナとロザリンドはすぐに飛び立つのだった。
★★★
そして今。
俺はネメアの反応に心の中で笑った。
だってさっきのネメアとの話は、俺が適当に合わせただけ。合理性は少なく、ネメアにしてみれば思慮浅い小娘、それが俺。だから笑われたのだ。
俺としてはそう印象付けられた方が都合良いんでね、ぐふふ。
それと一つ分かった事がある。それは最初に島国を占領した意味。近いから、戦略的な起点という意味もあっただろう。ただ最大の理由はアルテュールの演説に意味がある。占領しても強制的な支配をしない事を周囲に知らしめる為だ。
そこでヤミを倒せば……という作戦だったんだろうな。
「とりあえず拘束させてもらうから。逃げられると思わないで」
ヴォルフラムもいるし、ここから逃げ出すのは困難だと思うけど……
「今回は確かに負けたが、最後だけはお前達の望み通りになるつもりはない」
そのネメアの言葉と同時だった。
空を走る一筋の光。
……ヤバァァァァァイッ!!
それが何だかはすぐに気付く。
光は頭上でいくつもの光に分かれた。そして無数の光の矢となり降り注ぐ。
「シノブ、しっかり掴まれ!!」
その敏捷性でヴォルフラムは光の矢を避け続ける。
リアーナは? ロザリンドは? キオは? 確認する余裕なんて全くねぇ、うぎぃぃぃぃぃっ!! 俺は必死にヴォルフラムの体を掴むのみ。
水都が破壊される轟音。まさに無差別攻撃。
それが止むと、あの観光名所だった美しい水都が……ボロボロに……
「リアーナ、ロザリンド、キオ!!」
「シノブちゃん、シノブちゃんは大丈夫?」
「私は大丈夫だよ、リアーナは?」
「私も」
「でもあの獣人には逃げられてしまったわ」
「ロザリンドも無事だったんだね。キオは?」
「わ、私も大丈夫です、は、はい」
「だ、大丈夫って頭から血が出てんじゃん!! リアーナ、回復魔法!!」
「ほら、キオちゃん」
「あ、ありがとうございます……」
クソッ、あのケンタウロス野郎か。
周囲はキオが索敵していた。つまり索敵範囲外、超遠距離からの攻撃。場合によってはボコられるヤツじゃん。対策を考えておかないと。
★★★
美しい水竜だ。
水を羽衣のように纏う竜。巨体でありながら、与えるのは威圧感ではない。清らかな水面に佇むその姿は、心に落ち着きを与えるようだった。
「ヤミ」
「シノブが助けれくれたのね」
「私だけの力じゃないよ」
「ありがとう。でもこんな事になるなんて……」
「アバンセもパルも同じだったけど、やっぱり動けない?」
「そう。竜脈の影響でね」
アバンセもサンドンもパルも同じだった。
竜から流れ出る強大な力の流れ、それが竜脈。竜脈は大陸中を走り、その安定に寄与している。
しかし今、その竜脈から力が吸い出されていた。もし竜がその場を離れてしまえば、竜脈の力は減少し、大陸に多大な悪影響を与える可能性がある。その為にアバンセ達は動けず、常に力を流し続ける必要があるのだ。
つまりアルテュールの竜対策とは竜脈から力を吸い上げ、竜の動きを封じる事。
くそっ、竜の花嫁という立場を逆に利用された……本来の竜、特にパル辺りは人の事など何とも思っていなかった。竜脈など関係無く行動するだろう。
しかし俺と関わる事で、竜は人を無視できない……そうアルテュールは考えたのだろう。
「多分、すぐに王国から応援が来ると思うから」
王国の上層部は竜脈の事も知っている。ヤミが動けないと知ればすぐに警備を強化するだろう。大陸安定の要でもあるのだから。重要性を考えればアルテュールでも簡単に落とせないぐらい増強するだろうな。
「シノブ。今回の相手は貴方と同じね?」
「うん。神々の手。でも安心して、負けないから」
俺は笑うのだった。
★★★
「あ、あの、こ、これです」
キオが一枚の紙を差し出した。漫画的なイラストの描かれたそれ。
「何処にあったの?」
「は、はい。向こうに落ちていました」
それはネメアが立っていた辺り。
そこにタカニャとフォリオだ。
「こっちでも同じのを見付けたよ。倒した奴が一人だけ砂にならず、この紙切れになったのさ」
「俺の方もだ」
そして二人も一枚ずつ。やはり各々に女性のイラストが描かれている。
「……これかも」
「何がだい?」
「ほら、戦ってる途中で空の映像が途切れたでしょ? あれ、コイツ等が映してて、倒したから映像が消えたんじゃない?」
キオの持つ一枚はネメアの立っていた辺り。見えないよう隠れていたのに、ロザリンドの攻撃に巻き込まれたんじゃないのか?
「その可能性が高くはある。しかし確定はしない方が良いだろう。真実の分からない物事を、個人の主観で決め付ければ視野は狭くなる」
「……フォリオさん、本当に先生みたいですね。ロザリンドから聞いてますよ」
「黙れ」
「はーい」
まぁ、とりあえずは水都防衛成功である。
「ちょっと頭の良い人達集まってぇ~」
「はいは~い」
「いや……シャーリーは呼んでないんだけど……」
「うん。冷やかしだし」
何人かに集まってもらう。
大陸の地図を広げて。横長に広がる戦線。
「どう考えても敵の陽動作戦なんだけど、問題は本命が何処かって事だよね。ビスマルクさんは何処だと思う?」
わざわざ戦線を広げて、戦力を分散する意味が無い。しかし王国だって馬鹿じゃないから、そんなのには気付いて対策はしているだろうけど。
相手の最終的な目的地は王都と帝都。その中で帝都は戦いが始まった海岸線とは反対側、そして大陸の中心に近くかなりの内陸でもある。いきなり狙うには無理だろうな。
地理関係的にはやっぱり王都の方が先か。
そしてビスマルクの巨大な爪先が記したのは……
「王立学校?」
戦線と王都の間にある王立学校。
「そうだ。王立学校長チオ・ラグラック。攻撃力は竜に及ばないが、人としては最高水準の魔法使いだからな。早めに排除をしておきたいだろう」
しかしロザリンドは言う。
「そうかしら? 王立学校には多くの王族や貴族が通っているわ。だからチオも王立学校からは簡単に動けない。周りを占領する方が先じゃないかしら?」
さらにリアーナ。
「交易都市の可能性もあるんじゃないかな? 交易の場所になっているから、ここを占領できれば他国との連携の邪魔ができるし」
「でも交易都市も内陸じゃないか。ここを攻めるには途中にいくつもの場所を占領する必要があるだろう?」
タカニャは言う。
「そうとも言えないと思うがな。普通の軍隊ならば不可能だろうが、今回の相手の戦力を考えれば少数での占領も可能だろう。少数ならば気付かれず急襲する事もできる」
と、フォリオ。
話し合えば、いくつもの候補が出てくる。だがどれも確実にここだという決定打が無い。
その中でシャーリーは指差した。
「ねぇ、ここは?」
その指先を見て、ユリアンは言う。
「いや、王都を飛び越えて反対側だろ。しかもヤミがいるんだぞ。ありえない」
シャーリーが指差したのは水都。麗しの水竜ヤミがいる場所だ。
戦線からは王都を挟んでの反対側。しかし王都からは比較的に近く、ここを占領されたら何かと脅威になるが……なんせヤミがいる。
性格は温厚であるが、それでも竜だ。比類無き力を持っている。ここを攻める選択肢は始めから無い。
「……どうしてシャーリーはそこだと思うの?」
「こっから一番近いし。竜一匹シバき上げれば、大陸中の国が降伏しそうじゃん。シノブならやりそう」
……
…………
………………そうだ……俺ならそうする。普通では考える事の無い、俺の能力があってこその作戦。だから最初から選択外、考えが及んでいなかった。
でもアルテュールだって神々の手。俺と同じ事ができる可能性はある。できるのならば、水都は恰好の的になる。
「その水都も陽動で、王都を狙う可能性はどう?」
ベルベッティアの言葉に俺は首を横に振る。
「無い。できるなら島国の前に王都を狙ってるよ。まだそこまでの戦力は整ってない。それとアルテュールからしてみたら少ない被害で大陸を統一したいでしょ。ここで竜を倒せば、アルテュール側につく国も現れるよ」
竜の力は一国を凌駕する。
「しかしシノブ様、それは竜を倒してからの話。竜を倒す事など可能なのでしょうか? それに竜を倒す力があるならば大陸の統一など簡単なのではないですか?」
確かにホーリーの言う事はもっともだが。
「大陸変動の時に、アバンセやパルの力を借りた事はアルテュールも知ってるはずだよ。今回だってそうなる可能性は高い。それでも戦いを始めたんだから対策してないはずがない。きっと竜に対抗する手段があるんだよ。それがあれば水都を狙うのが結果的には一番楽。だから王都よりも水都」
「でもさぁ、自分で言っといてなんだけど何でヤミなの? アバンセとかいるのに」
「ヤミだけは人と一緒に暮らしているから」
アバンセもパルも基本的には一匹狼。サンドンも居場所がよく分からない。その中でヤミだけは水都の中で人と共存をしている。つまり人に近いからこそ、アルテュールにとっては倒せれば良いアピールになる。
「……飛竜出すよ!! リアーナはアバンセ、ロザリンドはパルの様子を見てきて。私は水都に行くから、二人の様子を見たらすぐ私に合流して」
とりあえずアバンセ達の状況が分からない今、体育教師ホイッスルで呼び出すのは危ないだろ。
「こっちはどうするつもり? 私達だけで勝手に動けば混乱を招く事にもなるわ。命令違反で罰を受ける事だってあるのよ」
ロザリンドの言う事は当然。しかし。
「水都が目的の可能性はかなり高いと思う。もし占領でもされたら大変な事になるよ」
間違いならそれで良い。
「シノブはここにいる、そういう事にする。それとフォリオとタカニャを含めての遊撃隊200人を連れて行けば良い。少なくなった人数はアルタイルのスケルトンで誤魔化せば良いだろ」
ミランの言葉にビスマルクも頷いた。
そしてニーナから借りた飛竜二匹、リアーナとロザリンドはすぐに飛び立つのだった。
★★★
そして今。
俺はネメアの反応に心の中で笑った。
だってさっきのネメアとの話は、俺が適当に合わせただけ。合理性は少なく、ネメアにしてみれば思慮浅い小娘、それが俺。だから笑われたのだ。
俺としてはそう印象付けられた方が都合良いんでね、ぐふふ。
それと一つ分かった事がある。それは最初に島国を占領した意味。近いから、戦略的な起点という意味もあっただろう。ただ最大の理由はアルテュールの演説に意味がある。占領しても強制的な支配をしない事を周囲に知らしめる為だ。
そこでヤミを倒せば……という作戦だったんだろうな。
「とりあえず拘束させてもらうから。逃げられると思わないで」
ヴォルフラムもいるし、ここから逃げ出すのは困難だと思うけど……
「今回は確かに負けたが、最後だけはお前達の望み通りになるつもりはない」
そのネメアの言葉と同時だった。
空を走る一筋の光。
……ヤバァァァァァイッ!!
それが何だかはすぐに気付く。
光は頭上でいくつもの光に分かれた。そして無数の光の矢となり降り注ぐ。
「シノブ、しっかり掴まれ!!」
その敏捷性でヴォルフラムは光の矢を避け続ける。
リアーナは? ロザリンドは? キオは? 確認する余裕なんて全くねぇ、うぎぃぃぃぃぃっ!! 俺は必死にヴォルフラムの体を掴むのみ。
水都が破壊される轟音。まさに無差別攻撃。
それが止むと、あの観光名所だった美しい水都が……ボロボロに……
「リアーナ、ロザリンド、キオ!!」
「シノブちゃん、シノブちゃんは大丈夫?」
「私は大丈夫だよ、リアーナは?」
「私も」
「でもあの獣人には逃げられてしまったわ」
「ロザリンドも無事だったんだね。キオは?」
「わ、私も大丈夫です、は、はい」
「だ、大丈夫って頭から血が出てんじゃん!! リアーナ、回復魔法!!」
「ほら、キオちゃん」
「あ、ありがとうございます……」
クソッ、あのケンタウロス野郎か。
周囲はキオが索敵していた。つまり索敵範囲外、超遠距離からの攻撃。場合によってはボコられるヤツじゃん。対策を考えておかないと。
★★★
美しい水竜だ。
水を羽衣のように纏う竜。巨体でありながら、与えるのは威圧感ではない。清らかな水面に佇むその姿は、心に落ち着きを与えるようだった。
「ヤミ」
「シノブが助けれくれたのね」
「私だけの力じゃないよ」
「ありがとう。でもこんな事になるなんて……」
「アバンセもパルも同じだったけど、やっぱり動けない?」
「そう。竜脈の影響でね」
アバンセもサンドンもパルも同じだった。
竜から流れ出る強大な力の流れ、それが竜脈。竜脈は大陸中を走り、その安定に寄与している。
しかし今、その竜脈から力が吸い出されていた。もし竜がその場を離れてしまえば、竜脈の力は減少し、大陸に多大な悪影響を与える可能性がある。その為にアバンセ達は動けず、常に力を流し続ける必要があるのだ。
つまりアルテュールの竜対策とは竜脈から力を吸い上げ、竜の動きを封じる事。
くそっ、竜の花嫁という立場を逆に利用された……本来の竜、特にパル辺りは人の事など何とも思っていなかった。竜脈など関係無く行動するだろう。
しかし俺と関わる事で、竜は人を無視できない……そうアルテュールは考えたのだろう。
「多分、すぐに王国から応援が来ると思うから」
王国の上層部は竜脈の事も知っている。ヤミが動けないと知ればすぐに警備を強化するだろう。大陸安定の要でもあるのだから。重要性を考えればアルテュールでも簡単に落とせないぐらい増強するだろうな。
「シノブ。今回の相手は貴方と同じね?」
「うん。神々の手。でも安心して、負けないから」
俺は笑うのだった。
★★★
「あ、あの、こ、これです」
キオが一枚の紙を差し出した。漫画的なイラストの描かれたそれ。
「何処にあったの?」
「は、はい。向こうに落ちていました」
それはネメアが立っていた辺り。
そこにタカニャとフォリオだ。
「こっちでも同じのを見付けたよ。倒した奴が一人だけ砂にならず、この紙切れになったのさ」
「俺の方もだ」
そして二人も一枚ずつ。やはり各々に女性のイラストが描かれている。
「……これかも」
「何がだい?」
「ほら、戦ってる途中で空の映像が途切れたでしょ? あれ、コイツ等が映してて、倒したから映像が消えたんじゃない?」
キオの持つ一枚はネメアの立っていた辺り。見えないよう隠れていたのに、ロザリンドの攻撃に巻き込まれたんじゃないのか?
「その可能性が高くはある。しかし確定はしない方が良いだろう。真実の分からない物事を、個人の主観で決め付ければ視野は狭くなる」
「……フォリオさん、本当に先生みたいですね。ロザリンドから聞いてますよ」
「黙れ」
「はーい」
まぁ、とりあえずは水都防衛成功である。
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