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崩壊編
作戦と報告
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キオの報告では帝国領第二都市を包囲するゴーレムの指揮をするのはドレミドだけ。
ドレミドだけなら……アイツ馬鹿そうだから簡単に勝てそうだけどな。
「それじゃ行こうか。ヴォル、ホーリー」
「二人ともしっかり掴まって。振り落とされないように」
「振り落とされたらゴーレムに囲まれて終わりだもんね」
「大丈夫です。シノブ様は私が死んでも守りますので」
「じゃあ、死にそうになったホーリーは僕が助けるよ」
帝国領第二都市が簡単に陥落しない理由が分かった。ここは山脈を背にする山岳都市なのだ。背後から攻める事は難しく、必然的に正面から攻める事になる。敵が攻めて来る方向が分かれば対処も難しくはない。
ガイサルによれば山脈側から攻められた事は一度も無いみたいだし。
ゴーレムはいくつかの隊に分かれ、第二都市正面、開けた場所に布陣している。その中、ドレミドだけを直接狙う。
駆け出すヴォルフラム。
その速さはまるで風。周囲の景色が恐ろしいスピードで後方に流されていく。しかしその乗り心地は悪くない。あまり振動が伝わらない滑らかな動きなのだ。
これは!! アトラクションとしてお金が取れるような気がする!!
なんて考えているとゴーレムの隊はもう目の前だった。
「行くぞ」
ヴォルフラムがそう言うと、そのしなやかな体が跳躍する。ゴーレムの頭上を飛び越え、布陣の真ん中へと一気に飛び込む。
それと同時にホーリーが防御魔法を展開。
防御魔法を楯としてヴォルフラムは駆ける。ゴーレムを弾き飛ばしながら向かうのはドレミドの元。
まさに電光石火。
アッと言う間にドレミドの目の前だ。
「あっ!! お前は!!」
「ポンギョポロドロギョヌスン三世だよ」
「ポ、ポンギョ、ギョ、ポロ? ポロヌスン、三世……長い!! じゃなくて違う!! お前はシノブだろう!!?」
「いや、違うよ。ポンポコギョロドンヌス三世だって」
「そ、そうなのか? でもお前の名前はシノブだって、ちゃんと調べたって……みんなが教えてくれたんだ」
「嘘だよ、それ」
「嘘!!?」
「ドレミドは嫌われているんだよ。だからみんなに嘘を教えられているんだと思う」
「え? え? で、でもみんな、私に良くしてくれるぞ? 嫌われているってそんな……何で……」
「だってドレミドはみんなに迷惑を掛けるでしょ? だからアリエリだって酷い事を言うんだろうし。完全にみんなから嫌われているね。嫌々付き合っているはず。でもみんなして騙すなんて、ドレミドの事を本当の仲間なんて思っていないんだろうね」
「な、何でそんな酷い事を言うんだ……ち、違うぞ、仲間だ……私の大事な仲間なんだぞ」
「そう思っているのはドレミドだけだって」
「う、ううっ、そうなのか……私は……みんなから嫌われているのか……どうすれば仲良くなれるのだろう……」
涙目になって、ドレミドはもう泣きそう。
敵とはいえ、罪悪感が半端ねぇ……
「シノブ……言い過ぎなんじゃ……」
ヴォルフラムが小さく呟く。
そ、そうだな、この辺にしといたるわ……
「そんな酷い仲間は捨てて、この僕、ポロポンドロンドス十四世の仲間にならない?」
「さっきと名前が違う気がする……」
気がする程度の違いじゃねぇーよ。
「そりゃそうだよ。本当はシノブだし」
「シノブ? やっぱりお前はシノブなのか? ポルチーニダケ十四世じゃないのか?」
「そう、僕がシノブ」
「じゃ、じゃあさっきのは?」
「冗談だけど」
「冗談!!? わ、私が嫌われているという話は!!?」
「冗談に決まってんじゃん。普通に考えてドレミドと仲間の関係を僕が知るわけないでしょ。それなのにドレミドったら泣いちゃって。ぷーくすくすっ」
「お、お前は悪い奴だ!! だ、駄目だぞ、そういう冗談は!! それに泣いてない!!」
「うるさいバーカ」
「お前って奴は!!」
ドレミドは腰の剣を抜く。
「ヴォル」
「分かってる」
ヴォルフラムはその場から飛び退く。その跳躍力と速さで一瞬にしてゴーレムの布陣の中から飛び出した。そして一気にその場から逃げ出す。
その俺達を追って来るドレミド。
俺の逃げる先にはアルタイルから生み出されたスケルトンの大群が待ち構えていた。その大群にドレミドも気付いたのだろう。
「シノブ!! 逃がさないぞ!! みんな来い!!」
ドレミドの指示でゴーレム達が動き出した。ドレミドと一緒になり俺を追う。
スケルトンを足止めに使い、俺はさらに逃げ続ける。それを追い続けるドレミド。
つまりこれはドレミドを帝国領第二都市から引き離す為の作戦。
本来なら引っ掛かる者などいないような作戦だが、見事なくらいドレミドは策にハマる。
計画では、その隙にガイサルが第二都市の戦力と合流。
そして間延びしたゴーレムの列を俺の仲間達が途中で分断。そこでリアーナ隊、ロザリンド隊が壁となり前方のゴーレムを堰き止める。そしてビスマルク隊と、ガイサルが率いる第二都市との戦力で、後方のゴーレム軍団を挟み撃ち。素早く殲滅した次に、前方のドレミドを含めたゴーレム軍団を倒す。
そんな作戦だった。
第二都市からかなり離れた。
それでもドレミドは追って来る。
「ヴォル、そろそろ引き離せる?」
引き離せなければ、このまま戦って時間を稼ぐ。しかしヴォルフラムは……
「余裕」
そのスピードをさらに上げる。
一瞬にしてドレミドを引き離した。
「さすが」
「当然」
「シノブ様、合流地点からかなり離れてしまいましたが大丈夫でしょうか?」
「うん、基本的な作戦はみんなに教えてあるから大丈夫だと思うよ」
俺達はこの後、リコリス、ユリアンとの合流地点へと向かう。そこで二人から詳しい戦況の報告を受け、改めて行動を決める。
上手くいってると良いんだけどな。
★★★
『大丈夫だと思うよ』
……何が『大丈夫だと思う』だ……『思う』なんて曖昧な答え方、それは俺の考えが甘いからだろ……
時間を使い、充分にドレミドを引き離した。
計算通りだと思った。しかし……合流地点にユリアンとリコリスの姿は見えなかった。
代わりにベルベッティアが一人で俺を待っていた。
「シノブ、落ち着いて聞いて。都市の後ろ、山脈側から大量のゴーレムが現れたわ」
想像をしていなかった報告……想像をしていない……それはそこまで俺が考えていなかった証拠でもあった。
つまり計画が失敗した報告である。
「みんなは!!?」
「ゴーレムの群れに飲み込まれた。リコリスとユリアンは報告を聞いて……私には止め切れなかったわ……」
助けに行ったのか……クソッ!!
ドレミドだけなら……アイツ馬鹿そうだから簡単に勝てそうだけどな。
「それじゃ行こうか。ヴォル、ホーリー」
「二人ともしっかり掴まって。振り落とされないように」
「振り落とされたらゴーレムに囲まれて終わりだもんね」
「大丈夫です。シノブ様は私が死んでも守りますので」
「じゃあ、死にそうになったホーリーは僕が助けるよ」
帝国領第二都市が簡単に陥落しない理由が分かった。ここは山脈を背にする山岳都市なのだ。背後から攻める事は難しく、必然的に正面から攻める事になる。敵が攻めて来る方向が分かれば対処も難しくはない。
ガイサルによれば山脈側から攻められた事は一度も無いみたいだし。
ゴーレムはいくつかの隊に分かれ、第二都市正面、開けた場所に布陣している。その中、ドレミドだけを直接狙う。
駆け出すヴォルフラム。
その速さはまるで風。周囲の景色が恐ろしいスピードで後方に流されていく。しかしその乗り心地は悪くない。あまり振動が伝わらない滑らかな動きなのだ。
これは!! アトラクションとしてお金が取れるような気がする!!
なんて考えているとゴーレムの隊はもう目の前だった。
「行くぞ」
ヴォルフラムがそう言うと、そのしなやかな体が跳躍する。ゴーレムの頭上を飛び越え、布陣の真ん中へと一気に飛び込む。
それと同時にホーリーが防御魔法を展開。
防御魔法を楯としてヴォルフラムは駆ける。ゴーレムを弾き飛ばしながら向かうのはドレミドの元。
まさに電光石火。
アッと言う間にドレミドの目の前だ。
「あっ!! お前は!!」
「ポンギョポロドロギョヌスン三世だよ」
「ポ、ポンギョ、ギョ、ポロ? ポロヌスン、三世……長い!! じゃなくて違う!! お前はシノブだろう!!?」
「いや、違うよ。ポンポコギョロドンヌス三世だって」
「そ、そうなのか? でもお前の名前はシノブだって、ちゃんと調べたって……みんなが教えてくれたんだ」
「嘘だよ、それ」
「嘘!!?」
「ドレミドは嫌われているんだよ。だからみんなに嘘を教えられているんだと思う」
「え? え? で、でもみんな、私に良くしてくれるぞ? 嫌われているってそんな……何で……」
「だってドレミドはみんなに迷惑を掛けるでしょ? だからアリエリだって酷い事を言うんだろうし。完全にみんなから嫌われているね。嫌々付き合っているはず。でもみんなして騙すなんて、ドレミドの事を本当の仲間なんて思っていないんだろうね」
「な、何でそんな酷い事を言うんだ……ち、違うぞ、仲間だ……私の大事な仲間なんだぞ」
「そう思っているのはドレミドだけだって」
「う、ううっ、そうなのか……私は……みんなから嫌われているのか……どうすれば仲良くなれるのだろう……」
涙目になって、ドレミドはもう泣きそう。
敵とはいえ、罪悪感が半端ねぇ……
「シノブ……言い過ぎなんじゃ……」
ヴォルフラムが小さく呟く。
そ、そうだな、この辺にしといたるわ……
「そんな酷い仲間は捨てて、この僕、ポロポンドロンドス十四世の仲間にならない?」
「さっきと名前が違う気がする……」
気がする程度の違いじゃねぇーよ。
「そりゃそうだよ。本当はシノブだし」
「シノブ? やっぱりお前はシノブなのか? ポルチーニダケ十四世じゃないのか?」
「そう、僕がシノブ」
「じゃ、じゃあさっきのは?」
「冗談だけど」
「冗談!!? わ、私が嫌われているという話は!!?」
「冗談に決まってんじゃん。普通に考えてドレミドと仲間の関係を僕が知るわけないでしょ。それなのにドレミドったら泣いちゃって。ぷーくすくすっ」
「お、お前は悪い奴だ!! だ、駄目だぞ、そういう冗談は!! それに泣いてない!!」
「うるさいバーカ」
「お前って奴は!!」
ドレミドは腰の剣を抜く。
「ヴォル」
「分かってる」
ヴォルフラムはその場から飛び退く。その跳躍力と速さで一瞬にしてゴーレムの布陣の中から飛び出した。そして一気にその場から逃げ出す。
その俺達を追って来るドレミド。
俺の逃げる先にはアルタイルから生み出されたスケルトンの大群が待ち構えていた。その大群にドレミドも気付いたのだろう。
「シノブ!! 逃がさないぞ!! みんな来い!!」
ドレミドの指示でゴーレム達が動き出した。ドレミドと一緒になり俺を追う。
スケルトンを足止めに使い、俺はさらに逃げ続ける。それを追い続けるドレミド。
つまりこれはドレミドを帝国領第二都市から引き離す為の作戦。
本来なら引っ掛かる者などいないような作戦だが、見事なくらいドレミドは策にハマる。
計画では、その隙にガイサルが第二都市の戦力と合流。
そして間延びしたゴーレムの列を俺の仲間達が途中で分断。そこでリアーナ隊、ロザリンド隊が壁となり前方のゴーレムを堰き止める。そしてビスマルク隊と、ガイサルが率いる第二都市との戦力で、後方のゴーレム軍団を挟み撃ち。素早く殲滅した次に、前方のドレミドを含めたゴーレム軍団を倒す。
そんな作戦だった。
第二都市からかなり離れた。
それでもドレミドは追って来る。
「ヴォル、そろそろ引き離せる?」
引き離せなければ、このまま戦って時間を稼ぐ。しかしヴォルフラムは……
「余裕」
そのスピードをさらに上げる。
一瞬にしてドレミドを引き離した。
「さすが」
「当然」
「シノブ様、合流地点からかなり離れてしまいましたが大丈夫でしょうか?」
「うん、基本的な作戦はみんなに教えてあるから大丈夫だと思うよ」
俺達はこの後、リコリス、ユリアンとの合流地点へと向かう。そこで二人から詳しい戦況の報告を受け、改めて行動を決める。
上手くいってると良いんだけどな。
★★★
『大丈夫だと思うよ』
……何が『大丈夫だと思う』だ……『思う』なんて曖昧な答え方、それは俺の考えが甘いからだろ……
時間を使い、充分にドレミドを引き離した。
計算通りだと思った。しかし……合流地点にユリアンとリコリスの姿は見えなかった。
代わりにベルベッティアが一人で俺を待っていた。
「シノブ、落ち着いて聞いて。都市の後ろ、山脈側から大量のゴーレムが現れたわ」
想像をしていなかった報告……想像をしていない……それはそこまで俺が考えていなかった証拠でもあった。
つまり計画が失敗した報告である。
「みんなは!!?」
「ゴーレムの群れに飲み込まれた。リコリスとユリアンは報告を聞いて……私には止め切れなかったわ……」
助けに行ったのか……クソッ!!
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