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崩壊編
大地震と下山
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さぁ、どうする。
アバンセの姿が消えた。
とりあえず……仕方ねぇ、パルの方を呼んでみるか。アバンセの住処に呼び出したら嫌な顔をしそうだけどな。
俺はもう一つの体育教師ホイッスルを吹いてみた。
ピーピーピー
それから数時間。日は完全に落ちた。夜になってもパルは現れず。考えられるのはパルもアバンセと同じ状況になっている事。
ここはアバンセの住処であり、魔物が近付かない。俺にとっては安全地帯。しかし自力で下山するとなれば山腹で魔物と遭遇するかも……幸いにもみんな行き先を知っているし、俺が帰らなければヴォルとか迎えに来てくれるはず。
待機一択だぜ。
一晩経って迎えが無かったら、能力を発動して自力で下山すれば良い。
そして翌日。
来ねぇわ。よし、自力で下山しよっ。
……
…………
………………
えっ?
なして?
俺の能力が……発動しない……?
いつものように、いつもの感覚で能力を発動させようとするのだが全く反応が無い。
俺の能力は強力だが、決して万能というわけではない。魔力自体を封じられてしまったら……それが弱点の一つでもある。しかし魔法を封じる魔法、そんなモノは聞いた事が無いんだけどな……
とにかくだ。あの金色の光、そしてアバンセが消えた事と俺の能力が使えない事、これらは無関係では無いだろう。だとしたら悠長に構えている暇は無いかも知れないが……
どうしよ……能力無し、さらに一人で下山とか絶対に無理。
とりあえず待つしかねぇよ。
★★★
それから丸々二日。誰も来ねぇ……
アバンセの力を受けて、付近には食べられる木の実や果実が豊富にあるので食料の心配は無い。サンドンにサバイバル術もある程度は教わっているので、まだまだ一人で過ごす事は可能。だけど、どう考えても異常事態だ。
どうする……このままもう少しだけ様子を見るか、それとも一人で下山に挑戦するか……なんて考えていた三日目の夜の事……
ドンッ!!!!!
足元から突き上げるような衝撃。
「うおっ!!?」
その衝撃に突き起こされ、一気に目が覚める。
ドドドドドッと地鳴りと共に竜の山が激しく震う。立つ事も出来ない、俺はその場でうずくまる。
周りの木々は波打ち、梢も激しく揺れる。どこかで大地が崩れる轟音が聞こえていた。
今まで想像もした事の無い大地震。
縦に突き上げられ、横に揺さぶられる。
うおぉぉぉぉっ、本能に突き刺さるこの怖さ!! 地震大国・日本の産まれでも怖いモノは怖いぃぃぃっ!!
ひいぃぃぃぃっ!!
短いのか、長いのか、時間感覚の狂ったような揺れの後。
「すげぇ……ビビった……失禁寸前だぜぇ」
こんな大地震、滅多に無ぇよ。
しかし翌日。
うおぉぉぉぉっ!!
大地震再び。
その夕方。
ひいぃぃぃぃっ!!
三度の大地震。
夜中。
はわわわわわっ!!
まさかの四回目。
せ、世界は!! 世界はどうなってしまうんだぁぁぁっ!!
それから何度も繰り返す大地震。
そして誰の迎えも来ない。
こりゃ……自力で下山するしかねぇか……
★★★
せっかくのかわいい服だったんだけどな。
白いブラウスは薄汚れ、スカートは所々を引っ掛け裂けてしまった。皮のブーツも傷だらけ。
俺は草木を掻き分け進んで行く。
目指すのは近くに流れているであろう水源。
アバンセが温泉を作った時の言葉を思い出す。見付けた温泉は高温で、その温度調節をする為に山頂の方から川を引いたと言っていた。
つまりこの山頂付近には水源があり、そこから流れる川は温泉まで続いているはず。温泉まで辿り着ければエルフの町は近い。
「おっしゃ見付けたで!!」
後はこれを辿って下山すれば!!
魔物に遭遇しない事を願いつつ、川に沿って下りて行く。しかし山の中を歩くのは思ったよりも大変で……水源を見付けて歩いて、もう三日目である。
そして……何だよ、この音?
それは水が流れ落ちる音。ただそれは小さい音ではない。大量の水が流れ落ち、岩を打ち付ける滝の音。
分かんねぇけど、途中に断崖絶壁の崖とかあるんじゃないだろうな? あったらアウトやで。しかし真実は残酷だ……めっちゃ崖じゃん……川の水が滝となり下の方まで流れ落ちてるじゃん……でもさ、それ以上にこれは予想出来ねぇよ。
森の木々が開けた。そして崖下に広がる光景に言葉を失う。
「はぁ~」
眼下に広がるのは荒涼とした砂の海だった。黄土色の砂漠が地平線の向こうまで広がる。
こんな場所は竜の山の付近には存在しない……そもそもこの辺りはアバンセが住処にしたおかげで緑が生い茂る大森林と呼ばれる土地だ。それが砂漠って……
地震の影響で済む話じゃないだろ、これは。
しかしどうする?
このままは進めない。別ルートを探るしかない。
さらに数日。
まだ深い山の中を抜けられない。そして一番、遭遇したくない事態に……狼……それも俺の知っている前世の狼を二回り程に巨大化した魔物。
すでに囲まれている。
いやいや、どう考えてもバッドエンドでしょ、これ。
でもな……俺もただではやられんぞ!! 足元の石コロを拾い上げる。ドタマかち割ってやらぁ!!
無駄だと思いつつも、俺は自分の能力を……っ!!?
俺の中の魔力が燃え上がり、体を淡い光が包む。
使える!!? 能力が使えるぞ!! 使えなかったのは場所が関係あったのかも知れん!!
俺は肉弾戦で狼を叩き飛ばす。
そしてすぐに魔力を飛ばして周囲の探索。能力がまた使えなくなる可能性だってある。
離れた位置に多くの気配を感じる。竜の山に一番近い町がエルフの町だ。きっとここだろ。
俺は空へと駆け上げる。そして飛行魔法で町との距離を一気に縮める。
そして……よっしゃぁ!! セーフ!! 間に合ったぜ!!
俺は町の中、大通り目掛けて飛び降りた。そして俺の能力はそこで途切れるのだった。
……
…………
………………えっ?
俺は辺りを見回す。
見慣れない町の景色……しかも地震の影響だろうか、崩れた建物も多い。どこだよ、ここ……
大通りを目指したから当然だが、空から舞い降りた俺の姿を何人もの住人が見ていた。その住人の姿……種族的には俺と同じ人間だけ。エルフの町ならば人間よりもエルフや獣人の方が多いのに。
ここはエルフの町じゃない。
しかも俺に向けられる視線、それは猜疑の視線。
「おいっ!! 誰か衛兵を呼んで来い!!」
誰かが大声を上げる。
「衛兵って……ちょ、ちょっと待って下さい!!」
「ち、近寄るな!!」
「話を聞いて下さい!! 私はエルフの町の住人です、決して怪しい者じゃありません!!」
「エルフだと!!? なんでここにそんな穢れた種族の野郎がいるんだ!!?」
別の誰かも大声で言う。
「穢れた種族だぁ!! この野郎、ケツの穴から手ぇ突っ込んで、奥歯ガタガタ言わせたろかい!!」
「やれるもんならやってみろ!!」
「おい、やめとけ!! アイツは空を飛んで来たんだ、どんな力を持っているか分からないぞ!!」
「あの髪と目、今回の事もあの人がやったんじゃない?」
「衛兵はまだか!!?」
ああっ、もうっ、どうなってんだよ!!?
ヤベェ雰囲気を感じ、俺はその場から駆け出した。
「逃げたぞ!! あいつを逃がすな!!」
何人かの男が追ってくる。細い路地に逃げ込むが、基本的に身体能力の低い俺。難無く捕まるのだった。
髪の毛を引っ張られ、地面に引き摺り倒される。
「痛ぁっ……何をするんですか!!?」
「お前こそ、何をしたんだ!!?」
「何って、意味が分からないんですけど。私が何かしたって言うんです?」
「町がこんなに酷い被害を受けて、そこに裏切りの女神の姿をしたお前が現れた。これが偶然だって言うのか?」
「偶然じゃないんですか?」
「この野郎!!」
ドカッ
「ぎゃふっ」
蹴り飛ばされた。
殺す……コイツ等、後で絶対に殺す……でも今は逃げなければ……
俺は飛び起き、再び逃走。しかし。
「ぎゃんっ」
「ぎゅんっ」
「ぎょんっ」
捕まり、殴られ蹴られ、地面の上に転がる……何で俺がここまでされにゃならんのだ……ううっ……とりあえずお前等は後で絶対に殺すぅ……絶対にだぁ……
そこで俺の意識は途切れるのだった。
アバンセの姿が消えた。
とりあえず……仕方ねぇ、パルの方を呼んでみるか。アバンセの住処に呼び出したら嫌な顔をしそうだけどな。
俺はもう一つの体育教師ホイッスルを吹いてみた。
ピーピーピー
それから数時間。日は完全に落ちた。夜になってもパルは現れず。考えられるのはパルもアバンセと同じ状況になっている事。
ここはアバンセの住処であり、魔物が近付かない。俺にとっては安全地帯。しかし自力で下山するとなれば山腹で魔物と遭遇するかも……幸いにもみんな行き先を知っているし、俺が帰らなければヴォルとか迎えに来てくれるはず。
待機一択だぜ。
一晩経って迎えが無かったら、能力を発動して自力で下山すれば良い。
そして翌日。
来ねぇわ。よし、自力で下山しよっ。
……
…………
………………
えっ?
なして?
俺の能力が……発動しない……?
いつものように、いつもの感覚で能力を発動させようとするのだが全く反応が無い。
俺の能力は強力だが、決して万能というわけではない。魔力自体を封じられてしまったら……それが弱点の一つでもある。しかし魔法を封じる魔法、そんなモノは聞いた事が無いんだけどな……
とにかくだ。あの金色の光、そしてアバンセが消えた事と俺の能力が使えない事、これらは無関係では無いだろう。だとしたら悠長に構えている暇は無いかも知れないが……
どうしよ……能力無し、さらに一人で下山とか絶対に無理。
とりあえず待つしかねぇよ。
★★★
それから丸々二日。誰も来ねぇ……
アバンセの力を受けて、付近には食べられる木の実や果実が豊富にあるので食料の心配は無い。サンドンにサバイバル術もある程度は教わっているので、まだまだ一人で過ごす事は可能。だけど、どう考えても異常事態だ。
どうする……このままもう少しだけ様子を見るか、それとも一人で下山に挑戦するか……なんて考えていた三日目の夜の事……
ドンッ!!!!!
足元から突き上げるような衝撃。
「うおっ!!?」
その衝撃に突き起こされ、一気に目が覚める。
ドドドドドッと地鳴りと共に竜の山が激しく震う。立つ事も出来ない、俺はその場でうずくまる。
周りの木々は波打ち、梢も激しく揺れる。どこかで大地が崩れる轟音が聞こえていた。
今まで想像もした事の無い大地震。
縦に突き上げられ、横に揺さぶられる。
うおぉぉぉぉっ、本能に突き刺さるこの怖さ!! 地震大国・日本の産まれでも怖いモノは怖いぃぃぃっ!!
ひいぃぃぃぃっ!!
短いのか、長いのか、時間感覚の狂ったような揺れの後。
「すげぇ……ビビった……失禁寸前だぜぇ」
こんな大地震、滅多に無ぇよ。
しかし翌日。
うおぉぉぉぉっ!!
大地震再び。
その夕方。
ひいぃぃぃぃっ!!
三度の大地震。
夜中。
はわわわわわっ!!
まさかの四回目。
せ、世界は!! 世界はどうなってしまうんだぁぁぁっ!!
それから何度も繰り返す大地震。
そして誰の迎えも来ない。
こりゃ……自力で下山するしかねぇか……
★★★
せっかくのかわいい服だったんだけどな。
白いブラウスは薄汚れ、スカートは所々を引っ掛け裂けてしまった。皮のブーツも傷だらけ。
俺は草木を掻き分け進んで行く。
目指すのは近くに流れているであろう水源。
アバンセが温泉を作った時の言葉を思い出す。見付けた温泉は高温で、その温度調節をする為に山頂の方から川を引いたと言っていた。
つまりこの山頂付近には水源があり、そこから流れる川は温泉まで続いているはず。温泉まで辿り着ければエルフの町は近い。
「おっしゃ見付けたで!!」
後はこれを辿って下山すれば!!
魔物に遭遇しない事を願いつつ、川に沿って下りて行く。しかし山の中を歩くのは思ったよりも大変で……水源を見付けて歩いて、もう三日目である。
そして……何だよ、この音?
それは水が流れ落ちる音。ただそれは小さい音ではない。大量の水が流れ落ち、岩を打ち付ける滝の音。
分かんねぇけど、途中に断崖絶壁の崖とかあるんじゃないだろうな? あったらアウトやで。しかし真実は残酷だ……めっちゃ崖じゃん……川の水が滝となり下の方まで流れ落ちてるじゃん……でもさ、それ以上にこれは予想出来ねぇよ。
森の木々が開けた。そして崖下に広がる光景に言葉を失う。
「はぁ~」
眼下に広がるのは荒涼とした砂の海だった。黄土色の砂漠が地平線の向こうまで広がる。
こんな場所は竜の山の付近には存在しない……そもそもこの辺りはアバンセが住処にしたおかげで緑が生い茂る大森林と呼ばれる土地だ。それが砂漠って……
地震の影響で済む話じゃないだろ、これは。
しかしどうする?
このままは進めない。別ルートを探るしかない。
さらに数日。
まだ深い山の中を抜けられない。そして一番、遭遇したくない事態に……狼……それも俺の知っている前世の狼を二回り程に巨大化した魔物。
すでに囲まれている。
いやいや、どう考えてもバッドエンドでしょ、これ。
でもな……俺もただではやられんぞ!! 足元の石コロを拾い上げる。ドタマかち割ってやらぁ!!
無駄だと思いつつも、俺は自分の能力を……っ!!?
俺の中の魔力が燃え上がり、体を淡い光が包む。
使える!!? 能力が使えるぞ!! 使えなかったのは場所が関係あったのかも知れん!!
俺は肉弾戦で狼を叩き飛ばす。
そしてすぐに魔力を飛ばして周囲の探索。能力がまた使えなくなる可能性だってある。
離れた位置に多くの気配を感じる。竜の山に一番近い町がエルフの町だ。きっとここだろ。
俺は空へと駆け上げる。そして飛行魔法で町との距離を一気に縮める。
そして……よっしゃぁ!! セーフ!! 間に合ったぜ!!
俺は町の中、大通り目掛けて飛び降りた。そして俺の能力はそこで途切れるのだった。
……
…………
………………えっ?
俺は辺りを見回す。
見慣れない町の景色……しかも地震の影響だろうか、崩れた建物も多い。どこだよ、ここ……
大通りを目指したから当然だが、空から舞い降りた俺の姿を何人もの住人が見ていた。その住人の姿……種族的には俺と同じ人間だけ。エルフの町ならば人間よりもエルフや獣人の方が多いのに。
ここはエルフの町じゃない。
しかも俺に向けられる視線、それは猜疑の視線。
「おいっ!! 誰か衛兵を呼んで来い!!」
誰かが大声を上げる。
「衛兵って……ちょ、ちょっと待って下さい!!」
「ち、近寄るな!!」
「話を聞いて下さい!! 私はエルフの町の住人です、決して怪しい者じゃありません!!」
「エルフだと!!? なんでここにそんな穢れた種族の野郎がいるんだ!!?」
別の誰かも大声で言う。
「穢れた種族だぁ!! この野郎、ケツの穴から手ぇ突っ込んで、奥歯ガタガタ言わせたろかい!!」
「やれるもんならやってみろ!!」
「おい、やめとけ!! アイツは空を飛んで来たんだ、どんな力を持っているか分からないぞ!!」
「あの髪と目、今回の事もあの人がやったんじゃない?」
「衛兵はまだか!!?」
ああっ、もうっ、どうなってんだよ!!?
ヤベェ雰囲気を感じ、俺はその場から駆け出した。
「逃げたぞ!! あいつを逃がすな!!」
何人かの男が追ってくる。細い路地に逃げ込むが、基本的に身体能力の低い俺。難無く捕まるのだった。
髪の毛を引っ張られ、地面に引き摺り倒される。
「痛ぁっ……何をするんですか!!?」
「お前こそ、何をしたんだ!!?」
「何って、意味が分からないんですけど。私が何かしたって言うんです?」
「町がこんなに酷い被害を受けて、そこに裏切りの女神の姿をしたお前が現れた。これが偶然だって言うのか?」
「偶然じゃないんですか?」
「この野郎!!」
ドカッ
「ぎゃふっ」
蹴り飛ばされた。
殺す……コイツ等、後で絶対に殺す……でも今は逃げなければ……
俺は飛び起き、再び逃走。しかし。
「ぎゃんっ」
「ぎゅんっ」
「ぎょんっ」
捕まり、殴られ蹴られ、地面の上に転がる……何で俺がここまでされにゃならんのだ……ううっ……とりあえずお前等は後で絶対に殺すぅ……絶対にだぁ……
そこで俺の意識は途切れるのだった。
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