転生してもノージョブでした!!

山本桐生

文字の大きさ
上 下
68 / 275
陰謀編

呼び出しと温泉

しおりを挟む
 それから数日後だった。
 とんでもないニュースがエルフの町まで届く。
 それはスヴァル海商の代表である、オウラー・スヴァルが王国に拘束されたという物だった。しかもその理由は俺も無関係では無い……と言うか俺も当事者、俺の暗殺未遂の容疑でだ。
 四大商会の一つ、その代表が拘束されたのだ。これはもう王国的大事件。後日、俺も王国の担当機関に呼び出しを受けている。

「お父さん!! お母さん!! 王国から呼び出し喰らったよ!!」
「シノブ……お父さんの知らない所で……」
「悪い事してないもん!!」
「ハッキリ言って、お母さん、もう付いていけない」
「見捨てないで!!」
 お父さんもお母さんも呆れる。暗殺の事までは説明していなかったしな!!
 しかし王国側も思い切ったな。スヴァル海商だって、王国には相当の寄付をしていたはずだ。その代表を捕まえるなんて……きな臭さがプンプンするぜ!!
 とりあえずレオには情報収集を続けてもらおう。

★★★

 さてその話はさて置き……
「アバンセ、温泉だよ!!」
「温泉?」
「そうやってまたシノブはまた無理を言う」
「ヴォルだって温泉に入りたいでしょうが!!」
「いや、別にそこまで」
 あのアルタイルの居た寂れた町。そこで温泉という単語を聞いたら、オラもう温泉に入りたくて入りたくて仕方ねぇっぞ!!
 ここはアバンセの住まう地だ。相談すれば何とかなるかも知れない!!
「温泉か……興味も無く考えた事も無かったな。シノブはそんなに入りたいのか?」
「もちろんだよ。どうにかなんない?」
「地下水脈はあるが、地熱が足りない。相当に深くまで掘れば温泉が湧く可能性もあると思うが」
「ねぇ、アバンセ。私はね、温泉を混浴にしようと思うの」
「混浴?」
「そう、男女が一緒に裸になって入れる混浴温泉。アバンセだって私と一緒にお風呂へ入れるんだよ?」
「裸の!!? シノブと!!? 一緒に!!? お風呂へ!!? ちょっと考えさせろ」
「ちなみにここがダメだったらパルに頼む。パルは火山に住んでいるから温泉も探しやすいと思うし。そうしたらパルと一緒にお風呂へ入る事になるかも」
「悪女だ……悪女がいる……」
 ヴォルフラムが小さく呟く。
 悪女で何が悪い!!? 俺は、俺のストロングポイントをフルに使って良い思いがしたいんじゃい!!
「待て待て待て。俺に任せろ。温泉などこのアバンセがすぐに見付けてやろうじゃないか」
「あと温泉を見付けたら、他の人が簡単に入れないように結界も作ってね。ほら、アバンセと二人で入っている時に邪魔されたくないから」
「全て俺に任せろ」

 ……と、アバンセに頼んで数日後である。
 ちょっと想像以上の温泉が出来ちゃったんですけど!!
「かなり深い所まで掘ったんだぞ。しかし見付けたのは高温の熱水でな。そこで山頂の方から川を引いて、温度を調節したわけだ。つまりこの川全体が温泉なんだぞ」
「凄ぇ!!」
 見た目はただの川なんだが、手を入れてみるとお風呂としてベストな温度!! これは転生前にテレビで見た記憶がある。群馬県、北西部、山間部を流れる川全体が温泉だという秘湯……尻焼温泉だ!!
 よし、さっそく入るぞ!!
 すでに人型のアバンセも温泉に入る気満々だぜ!!
「じゃあ、アバンセ。とりあえず向こういってて」
「んん?」
「私、温泉に入るから向こうにいってて」
「……聞き間違いか? 温泉は混浴ではないのか? シノブが言ったのだぞ?」
「それはそれ。これはこれ。あれはあれ。どれはどれ? 年頃の男女が簡単に一緒にお風呂へ入れると思うんじゃないよ!!」
「で、でも、そこにヴォルフラムもいるではないか。ヴォルフラムも男だろう?」
「ヴォルは良いんだよ。子供の頃から一緒に入ってるし、種族も違うし」
「俺だって種族が違うだろう!!? 竜だぞ!! 竜なんだぞ?」
「俺は人型の女性に興味が無いから。でもアバンセはシノブを性的な目で見ているし」
「うおぉぉぉぉぉいっ!!」
「だよね~ヴォル~アバンセはいやらしいよね~エッチな事ばっかり考えているんだよ~」
「決してそればかりではないぞ!!」
「だったら!! 少し向こうにいってようか?」
 俺はニコッと笑う。
「酷い!! シノブ、お前は酷過ぎるぞ!! お前の為にちゃんと結界まで張ったのだぞ!! 騙された!! 結界など解いてやる!!」
「私の裸を誰かに見られて良いわけ?」
「では解かん!!」
「……ちょっとアバンセ、冷静になってよ~私の言葉を思い出して。『簡単に一緒にお風呂へ入れると思うんじゃない』って言ったの。逆を言えば、アバンセ次第で一緒に温泉へ入れるんだよ? 簡単じゃないけど。これはアバンセの男としての価値が問われているの」
「俺の男として価値……」
「それを私が認めた時……私の全てはアバンセのもの……」
「くっ……そうまで言われたら……今日の所は……我慢してやる!!」
 アバンセは竜となり飛び立つ。悔し涙が見えたような気がした。
「これで良し……でも、ヴォル、そんな目で見ないで」
 ヴォルフラムの呆れたような視線が突き刺さるのであった。

★★★

 この解放感、堪らん!!
 後日。
 俺とキオとフレアとホーリー、四人で温泉。
 森の中、開けた景色、見渡せば自然。温泉を目の前にして俺は全裸で仁王立ち。結界のおかげで覗かれる事も無ぇ!!
「ここが……アバンセ様が造られた温泉なのですね」
「そうそう、ちゃんと結界も張ってあるし、覗かれる心配も無いからね」
「それでもシノブ様は少し慎みを持たれた方がよろしいかと」
「私よりオッパイの大きな者の言葉は聞かん!!」
 同じく全裸のホーリー。ホーリーも胸が特別に大きいわけではない。しかしその体は全体的に均整が取れ、俺から見ても充分に魅力的だった。
 もちろんそれはフレアもだ。
 ニコニコと微笑んでいるフレア。その体もホーリーと同じで太過ぎず、細過ぎず、大き過ぎず、小さ過ぎず、女性として理想的と思える。
「で、でも、やっぱり、ちょっと恥ずかしいです……」
 覗かれる心配は無いと知りつつも、キオは全裸の体を手で隠そうとする。そのキオの胸を見て。
「キオ」
「な、何でしょうか?」
「仲間」
 まぁ、身長ではすでに抜かれているけどな。
「うっ……い、言いたい事は分かりますけど……」
 これねぇ、俺が男だったらもうね、アレですよ、何がとはあえて言わないけど天を突き刺す勢いですよ。辛抱堪りませんよ。今では自分の体で、ある程度の耐性が付いているから耐えられるけども。
「あっ、それと体とか洗うのはこっちの下流の方ね。一応、川だから石鹸とかは使わないようにして」

 さて、ではここからは音声だけでお楽しみ下さい。

「ではシノブ様、こちらへ。お体を流しますので」
「うっ……いけない事のような気もするけど、誘惑に勝てない……あっ、フレアはキオにしてあげてね」
「あ、あの、何をでしょうか?」
「私もたまにお風呂でフレアやホーリーに体を流してもらうんだけど、それが気持ち良いんだよ。それをキオにも体験してもらおうと思って」
「か、体を流してもらうって……あっ、ちょっ、あの、フレアさん!!?」
「いつもそうやって二人が体を洗ってくれるんだよ」
「あ、あの!! あの!! 手、手で直接ですか!!?」
「はい。シノブ様は肌が弱いとの事でしたので、直接、手で体を流しております。キオ様も姉に体を任せてください」
「は、はい……んっ」
「ちょっと変な声が出ちゃうよね」
「こ、こんなの初めてで……あ、あの、な、なんとなく恥ずかしいです……」
「分かる。しかしそれがそのうち快感になるのだよ」
「シノブ様、後ろから失礼します。少し腕を上げてください」
「はいよ」
「キオ様も」
「こ、こうですか?……え? ええっ!!? あっ!!? む、むむ、胸もですか!!? あっ、ううっ、フ、フレアさん……自分で……自分で出来ますからぁ……そ、そこは……あうっ」
「ね、ねぇ、い、いつも思うんだけど、はふぅ、ホーリーもフレアもわざとエッチな感じで触ってない?」
「いえ。それはシノブ様の気のせいです」
「それとホーリーの胸が背中に当たっているんだけど」
「お嫌いでしょうか?」
「いや、フニフニしてて好きだけど」
「では問題ありませんね。シノブ様、次は足を広げてください」
「うん……」
「え? え? も、もしかして下も……あっ、ま、待って!! フレアさん、ダ、ダメです、そ、そそ、そこは、じ、自分で、あっ、んんっ」
「ふぅ、んぐ、ちょ、ちょっと、ホーリー、いつもは、お、お尻の方まで、そ、そんなに洗わないじゃん?」
「石鹸がございませんので、少し念入りにしております」
「そ、そうなの……じゃあ、仕方無いか……」
「はぁ、はぁ、フ、フレアさん、はぁ、んっ、も、もう、あの、んっ……」
「シノブ様もキオ様も、男性の方といつそういう関係になるか分かりませんから。ちゃんと清潔にしておかなければなりませんよ」
「そ、そうだけど、あっ、あんっ」

 俺とキオの顔が赤いのは決して温泉だけのせいではない。
「どうだった? キオ」
「……恥ずかしくて死にそうです……」
「でも他人の手って気持ち良くない?」
「そ、それはその……あの……はい……」
 全身の隅から隅まで、フレアやホーリーの指先が撫でていく。自分の手とはまた違った感触で気持ち良い。これが正直、クセになりそうなくらい気持ち良くてですね、ええ。

 そして温泉に浸かっていると色々と考えが捗る。
 オウラー・スヴァルが拘束されたのなら、仕掛けたのは副代表のジャンスという事になる。つまり俺の暗殺を仕掛けたのもジャンス。目的がオウラーの失脚なら、もう俺を暗殺する必要も無い……が、わざわざその手段を選んだのは俺を暗殺する事自体にもメリットがあったからだ。
 そもそもジャンスがスヴァル海商を乗っ取る事だけを目的としているのなら、俺ではなくオウラーを暗殺すれば良いわけだ。そう考えるとうちの新技術でもある武具魔法陣二個付与を狙っていると予想が出来る。
 考えられるのはジャンスが俺の保護を名目に、俺の商会を傘下に加える事であるが、同じ四大商会であるサタ商会とオリエンタル商会が後ろにいる以上は迂闊に行動が出来ないはず。
 しかし単純に商品をスヴァル海商に卸さない俺をオウラーが恨んでの暗殺計画。ジャンスが正義感から告発なんて可能性もあるわけで……だったら、これで解決なんだが……う~ん、まだハッキリせんな。
 とりあえず王国の呼び出しに従ってからだな。
 俺は温泉に深く体を沈めるのだった。
しおりを挟む
感想 7

あなたにおすすめの小説

【一話完結】断罪が予定されている卒業パーティーに欠席したら、みんな死んでしまいました

ツカノ
ファンタジー
とある国の王太子が、卒業パーティーの日に最愛のスワロー・アーチェリー男爵令嬢を虐げた婚約者のロビン・クック公爵令嬢を断罪し婚約破棄をしようとしたが、何故か公爵令嬢は現れない。これでは断罪どころか婚約破棄ができないと王太子が焦り始めた時、招かれざる客が現れる。そして、招かれざる客の登場により、彼らの運命は転がる石のように急転直下し、恐怖が始まったのだった。さて彼らの運命は、如何。

忌むべき番

藍田ひびき
恋愛
「メルヴィ・ハハリ。お前との婚姻は無効とし、国外追放に処す。その忌まわしい姿を、二度と俺に見せるな」 メルヴィはザブァヒワ皇国の皇太子ヴァルラムの番だと告げられ、強引に彼の後宮へ入れられた。しかしヴァルラムは他の妃のもとへ通うばかり。さらに、真の番が見つかったからとメルヴィへ追放を言い渡す。 彼は知らなかった。それこそがメルヴィの望みだということを――。 ※ 8/4 誤字修正しました。 ※ なろうにも投稿しています。

転生幼女のチートな悠々自適生活〜伝統魔法を使い続けていたら気づけば賢者になっていた〜

犬社護
ファンタジー
ユミル(4歳)は気がついたら、崖下にある森の中にいた。 馬車が崖下に落下した影響で、前世の記憶を思い出す。周囲には散乱した荷物だけでなく、さっきまで会話していた家族が横たわっており、自分だけ助かっていることにショックを受ける。 大雨の中を泣き叫んでいる時、1体の小さな精霊カーバンクルが現れる。前世もふもふ好きだったユミルは、もふもふ精霊と会話することで悲しみも和らぎ、互いに打ち解けることに成功する。 精霊カーバンクルと仲良くなったことで、彼女は日本古来の伝統に関わる魔法を習得するのだが、チート魔法のせいで色々やらかしていく。まわりの精霊や街に住む平民や貴族達もそれに振り回されるものの、愛くるしく天真爛漫な彼女を見ることで、皆がほっこり心を癒されていく。 人々や精霊に愛されていくユミルは、伝統魔法で仲間たちと悠々自適な生活を目指します。

前世の記憶さん。こんにちは。

満月
ファンタジー
断罪中に前世の記憶を思い出し主人公が、ハチャメチャな魔法とスキルを活かして、人生を全力で楽しむ話。 周りはそんな主人公をあたたかく見守り、時には被害を被り···それでも皆主人公が大好きです。 主に前半は冒険をしたり、料理を作ったりと楽しく過ごしています。時折シリアスになりますが、基本的に笑える内容になっています。 恋愛は当分先に入れる予定です。 主人公は今までの時間を取り戻すかのように人生を楽しみます!もちろんこの話はハッピーエンドです! 小説になろう様にも掲載しています。

侯爵家の愛されない娘でしたが、前世の記憶を思い出したらお父様がバリ好みのイケメン過ぎて毎日が楽しくなりました

下菊みこと
ファンタジー
前世の記憶を思い出したらなにもかも上手くいったお話。 ご都合主義のSS。 お父様、キャラチェンジが激しくないですか。 小説家になろう様でも投稿しています。 突然ですが長編化します!ごめんなさい!ぜひ見てください!

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

我が家に子犬がやって来た!

もも野はち助(旧ハチ助)
ファンタジー
【あらすじ】ラテール伯爵家の令嬢フィリアナは、仕事で帰宅できない父の状況に不満を抱きながら、自身の6歳の誕生日を迎えていた。すると、遅くに帰宅した父が白黒でフワフワな毛をした足の太い子犬を連れ帰る。子犬の飼い主はある高貴な人物らしいが、訳あってラテール家で面倒を見る事になったそうだ。その子犬を自身の誕生日プレゼントだと勘違いしたフィリアナは、兄ロアルドと取り合いながら、可愛がり始める。子犬はすでに名前が決まっており『アルス』といった。 アルスは当初かなり周囲の人間を警戒していたのだが、フィリアナとロアルドが甲斐甲斐しく世話をする事で、すぐに二人と打ち解ける。 だがそんな子犬のアルスには、ある重大な秘密があって……。 この話は、子犬と戯れながら巻き込まれ成長をしていく兄妹の物語。 ※全102話で完結済。 ★『小説家になろう』でも読めます★

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?

みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。 ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる 色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

処理中です...