転生してもノージョブでした!!

山本桐生

文字の大きさ
上 下
12 / 276
プロローグ

真相と解決

しおりを挟む
「ほら、シノブ。ここで待ってるから」
「お父さん。私の力は教えたよね。アバンセにだって勝てる力」
「まぁ、お父さんが直接見たわけじゃないけどな」
「それでね、覚えといて欲しいんだけど、私にこの力がある限り、絶対に負けたり、捕まったりしないの。それに今日はヴォルが隠れて付いて来ているから特に絶対の絶対、私は大丈夫なの。分かった?」
「分かったような、分からないような……どうかしたのか?」
「いいからこの言葉を覚えといて」
「あ、ああ」
 それは少し時間を遡った時の会話。
「じゃあ、戻ろう」
「ん? オシッコは大丈夫なのか?」

 あの、オシッコをしたいとデルスから離れたその時。
 俺はお父さんにそう話していた。
 だからこそ、お父さんはデルスに脅された時、その脅しに屈しなかったのだ。俺の言葉を信じたから。

 今日は縛り上げたデルスとその仲間達を警察へと突き出した。
 取調べは後日にまた行われるだろう。

★★★

 ふぅ~
 お風呂は最高だぜ~
 今日は疲れたしな~
 お風呂に入っていると。
「シノブ、お父さんも入るぞ」
 と、お父さんも入ってくる。
「それじゃ私が背中を流してあげるね~」
 二人でお風呂に入りながら。
「シノブはいつからデルスが怪しいと思っていたんだ?」
「怪しいってよりは、良い人過ぎて逆に信じられなかったっていう感じかな」
「うちの娘はどうしてこう捻くれてしまったのか……」
「でもそのおかげで犯罪を未然に防げたし!!」
「それはそうなんだけどな」
「それで例えばデルスが悪い人間だったら、って考えたの。そうなると2年前のお父さんの事故もデルスが関係しているんじゃないかって。関係しているなら、お父さんの事を殺そうとしていた事にもなるし、本当に殺そうとしているなら、今回の大森林の見回りは絶好のチャンスでしょ? だから警戒だけはしてたんだ」
「シノブはまだ12歳だよな?」
「うん。言いたい事は分かる。考える事が子供っぽくない、大人っぽいって学校でも言われるし」
「……今日はシノブに助けられたな。ありがとう」
 頭をクシャクシャと撫でられる。
「うん」
 ヤベェよ。ちょっと嬉しいわ、これ。

★★★

 さて後日。
 真相は?
 俺の予想は半分当たって、半分外れていた。
 まずは2年前。お父さんの事故は本当にただの事故だった。
 瀕死の状態であったお父さん、その親族にその事を伝えるか伝えないか、病院でのそんな話の中でお母さんの親族の話も出たそうだ。
 そこでデルスはお母さんがモア商会の親族である事を知ったのだ。そこが始まり。
 そこからはデルスが自分で話していた通り。2年間、計画を練っていたらしい。結果としてこのバカは相当長い期間ブタ箱にブチ込まれる事になるんだけどな。

 さてこの話を聞いて、怒ったのがお姉ちゃんである。
「シ~ノ~ブ~、また隠してたのね!!?」
 デルスの事について好き嫌いなんて話をしていた時の事を言っているんだろう。
「隠してたんじゃないって!! だって私の勘違いだって事もあるし!!」
「ヴォルも!!」
「シノブが絶対に秘密とか言うから」
「裏切り者!!」
「危ない事ばかりして心配させないの!!」
「私が危険な事をしているのではない……危険が私を呼んでいるのだ……痛いっ!!」
 ゲンコツ。
 そんな感じで事件は解決。名探偵シノブ・完。

★★★

「ねぇ、ヴォル。私の夢、教えてあげようか?」
「知ってる。よく言ってるし」
「再度、聞かせてあげるよ。そう、私の夢は就職」
 前の世界では無職だった。だからこそ生まれ変わった今の夢、それは就職!!
 しっかり働き、しっかり稼ぎ、しっかり親孝行をしてやるんだよ!!
「それでね、名探偵シノブになろうと思うの」
「名探偵……」
「ヴォルの鼻があれば仕事として成り立つんじゃないかって」
「それ名探偵ヴォルフラム」
「でもさ、ヴォルと一緒に仕事が出来れば、ずっと一緒に居られるじゃん」
「俺は森の主になるつもりなんだけど」
「やだー、ずっと私と一緒にいようぜぇ」
 ヴォルフラムにギュッと抱き付く。
「俺の方こそ嫌だ。シノブにずっとコキ使われたくない」
 と言いつつも、ヴォルフラムの尻尾はパタパタと嬉しそうに上下するのだった。
しおりを挟む
感想 7

あなたにおすすめの小説

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます

まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。 貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。 そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。 ☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。 ☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

【完結】ポーションが不味すぎるので、美味しいポーションを作ったら

七鳳
ファンタジー
※毎日8時と18時に更新中! ※いいねやお気に入り登録して頂けると励みになります! 気付いたら異世界に転生していた主人公。 赤ん坊から15歳まで成長する中で、異世界の常識を学んでいくが、その中で気付いたことがひとつ。 「ポーションが不味すぎる」 必需品だが、みんなが嫌な顔をして買っていく姿を見て、「美味しいポーションを作ったらバカ売れするのでは?」 と考え、試行錯誤をしていく…

転生したら貴族の息子の友人A(庶民)になりました。

ファンタジー
〈あらすじ〉 信号無視で突っ込んできたトラックに轢かれそうになった子どもを助けて代わりに轢かれた俺。 目が覚めると、そこは異世界!? あぁ、よくあるやつか。 食堂兼居酒屋を営む両親の元に転生した俺は、庶民なのに、領主の息子、つまりは貴族の坊ちゃんと関わることに…… 面倒ごとは御免なんだが。 魔力量“だけ”チートな主人公が、店を手伝いながら、学校で学びながら、冒険もしながら、領主の息子をからかいつつ(オイ)、のんびり(できたらいいな)ライフを満喫するお話。 誤字脱字の訂正、感想、などなど、お待ちしております。 やんわり決まってるけど、大体行き当たりばったりです。

【本編完結】転生したら第6皇子冷遇されながらも力をつける

そう
ファンタジー
転生したら帝国の第6皇子だったけど周りの人たちに冷遇されながらも生きて行く話です

豊穣の巫女から追放されたただの村娘。しかし彼女の正体が予想外のものだったため、村は彼女が知らないうちに崩壊する。

下菊みこと
ファンタジー
豊穣の巫女に追い出された少女のお話。 豊穣の巫女に追い出された村娘、アンナ。彼女は村人達の善意で生かされていた孤児だったため、むしろお礼を言って笑顔で村を離れた。その感謝は本物だった。なにも持たない彼女は、果たしてどこに向かうのか…。 小説家になろう様でも投稿しています。

魔力∞を魔力0と勘違いされて追放されました

紗南
ファンタジー
異世界に神の加護をもらって転生した。5歳で前世の記憶を取り戻して洗礼をしたら魔力が∞と記載されてた。異世界にはない記号のためか魔力0と判断され公爵家を追放される。 国2つ跨いだところで冒険者登録して成り上がっていくお話です 更新は1週間に1度くらいのペースになります。 何度か確認はしてますが誤字脱字があるかと思います。 自己満足作品ですので技量は全くありません。その辺り覚悟してお読みくださいm(*_ _)m

異世界に召喚されたけど、聖女じゃないから用はない? それじゃあ、好き勝手させてもらいます!

明衣令央
ファンタジー
 糸井織絵は、ある日、オブルリヒト王国が行った聖女召喚の儀に巻き込まれ、異世界ルリアルークへと飛ばされてしまう。  一緒に召喚された、若く美しい女が聖女――織絵は召喚の儀に巻き込まれた年増の豚女として不遇な扱いを受けたが、元スマホケースのハリネズミのぬいぐるみであるサーチートと共に、オブルリヒト王女ユリアナに保護され、聖女の力を開花させる。  だが、オブルリヒト王国の王子ジュニアスは、追い出した織絵にも聖女の可能性があるとして、織絵を連れ戻しに来た。  そして、異世界転移状態から正式に異世界転生した織絵は、若く美しい姿へと生まれ変わる。  この物語は、聖女召喚の儀に巻き込まれ、異世界転移後、新たに転生した一人の元おばさんの聖女が、相棒の元スマホケースのハリネズミと楽しく無双していく、恋と冒険の物語。 2022.9.7 話が少し進みましたので、内容紹介を変更しました。その都度変更していきます。

一家処刑?!まっぴらごめんですわ!!~悪役令嬢(予定)の娘といじわる(予定)な継母と馬鹿(現在進行形)な夫

むぎてん
ファンタジー
夫が隠し子のチェルシーを引き取った日。「お花畑のチェルシー」という前世で読んだ小説の中に転生していると気付いた妻マーサ。 この物語、主人公のチェルシーは悪役令嬢だ。 最後は華麗な「ざまあ」の末に一家全員の処刑で幕を閉じるバッドエンド‥‥‥なんて、まっぴら御免ですわ!絶対に阻止して幸せになって見せましょう!! 悪役令嬢(予定)の娘と、意地悪(予定)な継母と、馬鹿(現在進行形)な夫。3人の登場人物がそれぞれの愛の形、家族の形を確認し幸せになるお話です。

処理中です...