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プロローグ
イジメと鉄拳制裁
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翌日、朝、早く。
「ヴォル、これ!!」
「そんな鼻に押し付けないでも分かるから」
グシャグシャのノートをヴォルフラムの鼻にゴリゴリと押し付ける。
「これ!! このノートをグチャグチャにした犯人分かる!!?」
ゴリゴリゴリゴリ
「分かると思うけど。それより痛い」
「じゃあ、行くよ!!」
その日は髪のセットもせずに家を飛び出すのだ。
そして学校の入口、門の横でヴォルフラムと共に仁王立ち。登校する生徒全員に目を光らせる。
「みんな見てるけど」
「ヴォル集中!!」
「してる」
客観的に見れば、犯人はテトの可能性が高い。ただウンコ野郎のテトだが、そういう陰湿な事はしないと思っている。
そのテトだ。
俺を睨み付けながら横を通り過ぎる。
「シノブ」
「嘘? テトなの?」
まさか。本当に?
「違う。その後ろ」
「……ロガリーとトトイッセン……間違い無い?」
「間違い無い」
テトとの決闘の時、落とし穴にブチ込んでやった二人だ。あの野郎どもキンタマ二個とも捻り潰してやる!!
「ヴォルありがとうね!!」
「あまり酷い仕返しはダメだ」
「大丈夫!! 二個とも捻り潰してやるだけだから!!」
「何を!!?」
さすがの言葉にヴォルフラムも青ざめるのだった。
そして朝、少しだけ先生に時間を貰う。
教壇に立ち、グシャグシャのノートをみんなに見せる。
「これは昨日、魔法の授業で使った私とリアーナのノートです。調べた事がいっぱい書いてありました。それが昨日、帰る時にはグシャグシャにされていました」
俺は教室中を見回す。その中でよく観察して見れば、ニヤニヤと笑っている二人がいる。ロガリーとトトイッセンだ。
「その犯人がクラスメイトなのか、別のクラスの人なのか私には分かりません。私はこれをやった人がどこかで笑っているかも知れないと思うと悲しくなります。でもそれ以上に怒っています……なので次にこんな事をする人がいたら、必ず犯人を見付けてボコボコにします!!」
「シ、シノブちゃん?」
「出来ないと思うなら、またこのくだらない悪戯をしてみればいい。その代わり、私は絶対にお前達を見付け出す」
「シノブ、その辺りで止めなさい」
慌てて先生が止めに入るが……
「見付け出して二度とこんな事が出来ないように、俺が絶対に後悔させてやるからな!! 覚えとけよ!!」
バンバンッと机を叩く。
「ちょっとシノブ、こらっ、止めなさい!!
「絶対だからなぁぁぁっ!!」
それは授業と授業との休み時間。
俺の机の周りには何人かの友達が集まっていた。
「しかしシノブ怖ぇー」
「久しぶりにシノブの『俺』が飛び出したもんね」
「シノブが『俺』とか言い出すのは本気の時だしな」
「誰だか分かんねぇけど、もうやらないだろ」
「だよねーシノブ怒らせると本当に怖いもん」
「でも本当に誰がやったのかな?」
「知らないよ。知らないけど、これで終わりにしてくれれば私はその深い慈悲を持って許す」
最初は二個とも捻り潰してやろうとも思ったが、俺だって小さい頃に悪い事をした経験はある。そんな事を通して学ぶ事だってあるはず。だから少し考えを改めてくれたらそれで良い。
「シノブちゃんがそうするなら、私も許してあげる事にする」
そんな話をしている所に……
「……」
「テト」
「……俺じゃないからな」
「誰でもいいよ。もうこんな事をしなければ」
さて俺はこんな感じなんで、あまりイジメのような対象にはされない。基本的には倍返しで向かって行く厄介な奴なので。
じゃあ、今回のような場合、その対象になるのは?
リアーナだ。
授業で教室を移動した際、姿が見えない二人がいた。もちろんロガリーとトトイッセンの二人。
すぐさま教室に戻ってみれば。
「二人とも何やってんの?」
「な、何って忘れ物を取りに戻っただけなんだけど」
「二人とも?」
「俺は一緒に付いて来ただけ」
「そこリアーナの机でしょう?」
これから何かをしようとしていたのだろう。もちろんそれは悪い事を。
「うるせぇな。行こうぜ」
「おう」
「ちょっと待て」
言った傍から速攻かよ?
つまり全く罪の意識は無いと。もちろん反省もしていないと。そういう事でしょうか? これはもう鉄・拳・制・裁あるのみ!!
「行かせるかぁ!!」
ボガァッ
「お前、急に何すんだよ!!」
「自分の胸に聞けゴラァッ!!」
ボガァッ
そしてまたしても殴り合いの大喧嘩に発展する。
一発殴られれば二発返し、一回蹴られれば二回蹴り返す。相手が男二人だろうが、俺は絶対に引かん!!
投げ飛ばされて机も椅子も散乱する。すぐに立ち上がり、頭突きを繰り出す。
もちろんそんな騒ぎをしていれば隣のクラスの奴もすぐに気付く。先生を呼び連れて来るのだが、もう勝敗は決していた。
「何やっているの!!?」
「先生、勝ちました」
その俺の足元、ロガリーとトトイッセンは泣いていた。まるで子供のように。いや、まだ子供だったわ。
★★★
「本当にあなたって子は……」
「お母さん。大義は我に有り」
お母さんが学校に呼び出された。
「反省しなさい」
グリグリ
「ご、ごめんなさい、あんまりゲンコツでグリグリしないで」
「まぁ、今回の事は相手の方にも原因がありますから」
色々と事情を知る先生はフォローをしてくれる。
「ただちょっとシノブさんは乱暴と言いますか、少し手の早い所がありますので、気を付けて頂ければと」
「いつもご迷惑ばかりお掛けして本当に申し訳ありません」
「でも私だって理由も無くそんな事はしないんだよ?」
「まったく……あなたは女の子なんだから、少し考えなさい」
「あっ、お母さん、それは女性差別ってヤツなんじゃ、イタッ、グリグリ止めて」
グリグリグリグリ
「シノブ。シノブは頭の良い子なんだから、他の方法だってあるでしょう?」
「先生の言う事も分かるけど……リアーナが泣いてたんだもん。許せないよ。時には鉄拳制裁も必要なんだよ」
「本当にこの子は……」
グリグリグリグリグリグリ
その後、お母さんと先生から説教を食らい、家ではお姉ちゃんに呆れられ、お父さんには笑われるのだった。
数日後。
それは学校から、ヴォルフラムとの帰宅途中。
「シノブ。テトがいる」
テトが待ち構えていた。
「ちょっと話がある」
「私に?」
テトは頷く。
「俺も行こうか?」
「大丈夫。ヴォルはちょっと待ってて」
「分かった」
……面倒な事なら相手にしたくないんだけど。また喧嘩でもしようものなら、さすがのお母さんでも激怒しそうだし。
「リアーナのノートをやったの、ロガリーとトトイッセンなんだろ?」
ノートを誰がグシャグシャにしたのか? 二人の名前は私も先生も明かしていない。これが別の問題に発展する可能性もあるだろうから。
ただ俺が二人と大喧嘩をした事はみんな知っている。ノートの関係で大喧嘩になったのだと当然みんな思うだろう。
「知らないけど」
「何で隠すんだ?」
「知ってどうするの? みんな前で晒し上げるつもり?」
「……そうじゃなくて、俺のせいだし……俺が悪いんだ」
「何で?」
「お前達のノートを捨ててやるか、って俺がふざけて言ってたから」
だったらノートがグシャグシャにされたその後すぐに二人から話を聞けば良いのに……とは思うが、まぁ、どうしようどうしようと思っているうちに、俺が喧嘩を起こしてしまったのだろう。
ただそれをわざわざ告白しに来る辺り、少しは反省しているのだろう。だからあまり馬鹿にした事は言わないようにしてやるか。
「思ったり言ったりするのと、実際に行動するのは大きな違いなんだから。確かに原因の一つかも知れないけど、悪いのは本人達。あんまり気にしないで、次はテトも少し気を付けなよ」
「……お前はいつも大人みたいに何でも分かったような顔で……くそっ」
小さく呟くテト。聞こえないふりをして言ってやる。
「私は早く帰ってお母さんのお手伝いをするんだから。じゃあ、バイバイ」
今、思えばこの時からだろうか。
テトがあまり俺に絡んで来なくなったのは。
そしてそれから2年後……
「ヴォル、これ!!」
「そんな鼻に押し付けないでも分かるから」
グシャグシャのノートをヴォルフラムの鼻にゴリゴリと押し付ける。
「これ!! このノートをグチャグチャにした犯人分かる!!?」
ゴリゴリゴリゴリ
「分かると思うけど。それより痛い」
「じゃあ、行くよ!!」
その日は髪のセットもせずに家を飛び出すのだ。
そして学校の入口、門の横でヴォルフラムと共に仁王立ち。登校する生徒全員に目を光らせる。
「みんな見てるけど」
「ヴォル集中!!」
「してる」
客観的に見れば、犯人はテトの可能性が高い。ただウンコ野郎のテトだが、そういう陰湿な事はしないと思っている。
そのテトだ。
俺を睨み付けながら横を通り過ぎる。
「シノブ」
「嘘? テトなの?」
まさか。本当に?
「違う。その後ろ」
「……ロガリーとトトイッセン……間違い無い?」
「間違い無い」
テトとの決闘の時、落とし穴にブチ込んでやった二人だ。あの野郎どもキンタマ二個とも捻り潰してやる!!
「ヴォルありがとうね!!」
「あまり酷い仕返しはダメだ」
「大丈夫!! 二個とも捻り潰してやるだけだから!!」
「何を!!?」
さすがの言葉にヴォルフラムも青ざめるのだった。
そして朝、少しだけ先生に時間を貰う。
教壇に立ち、グシャグシャのノートをみんなに見せる。
「これは昨日、魔法の授業で使った私とリアーナのノートです。調べた事がいっぱい書いてありました。それが昨日、帰る時にはグシャグシャにされていました」
俺は教室中を見回す。その中でよく観察して見れば、ニヤニヤと笑っている二人がいる。ロガリーとトトイッセンだ。
「その犯人がクラスメイトなのか、別のクラスの人なのか私には分かりません。私はこれをやった人がどこかで笑っているかも知れないと思うと悲しくなります。でもそれ以上に怒っています……なので次にこんな事をする人がいたら、必ず犯人を見付けてボコボコにします!!」
「シ、シノブちゃん?」
「出来ないと思うなら、またこのくだらない悪戯をしてみればいい。その代わり、私は絶対にお前達を見付け出す」
「シノブ、その辺りで止めなさい」
慌てて先生が止めに入るが……
「見付け出して二度とこんな事が出来ないように、俺が絶対に後悔させてやるからな!! 覚えとけよ!!」
バンバンッと机を叩く。
「ちょっとシノブ、こらっ、止めなさい!!
「絶対だからなぁぁぁっ!!」
それは授業と授業との休み時間。
俺の机の周りには何人かの友達が集まっていた。
「しかしシノブ怖ぇー」
「久しぶりにシノブの『俺』が飛び出したもんね」
「シノブが『俺』とか言い出すのは本気の時だしな」
「誰だか分かんねぇけど、もうやらないだろ」
「だよねーシノブ怒らせると本当に怖いもん」
「でも本当に誰がやったのかな?」
「知らないよ。知らないけど、これで終わりにしてくれれば私はその深い慈悲を持って許す」
最初は二個とも捻り潰してやろうとも思ったが、俺だって小さい頃に悪い事をした経験はある。そんな事を通して学ぶ事だってあるはず。だから少し考えを改めてくれたらそれで良い。
「シノブちゃんがそうするなら、私も許してあげる事にする」
そんな話をしている所に……
「……」
「テト」
「……俺じゃないからな」
「誰でもいいよ。もうこんな事をしなければ」
さて俺はこんな感じなんで、あまりイジメのような対象にはされない。基本的には倍返しで向かって行く厄介な奴なので。
じゃあ、今回のような場合、その対象になるのは?
リアーナだ。
授業で教室を移動した際、姿が見えない二人がいた。もちろんロガリーとトトイッセンの二人。
すぐさま教室に戻ってみれば。
「二人とも何やってんの?」
「な、何って忘れ物を取りに戻っただけなんだけど」
「二人とも?」
「俺は一緒に付いて来ただけ」
「そこリアーナの机でしょう?」
これから何かをしようとしていたのだろう。もちろんそれは悪い事を。
「うるせぇな。行こうぜ」
「おう」
「ちょっと待て」
言った傍から速攻かよ?
つまり全く罪の意識は無いと。もちろん反省もしていないと。そういう事でしょうか? これはもう鉄・拳・制・裁あるのみ!!
「行かせるかぁ!!」
ボガァッ
「お前、急に何すんだよ!!」
「自分の胸に聞けゴラァッ!!」
ボガァッ
そしてまたしても殴り合いの大喧嘩に発展する。
一発殴られれば二発返し、一回蹴られれば二回蹴り返す。相手が男二人だろうが、俺は絶対に引かん!!
投げ飛ばされて机も椅子も散乱する。すぐに立ち上がり、頭突きを繰り出す。
もちろんそんな騒ぎをしていれば隣のクラスの奴もすぐに気付く。先生を呼び連れて来るのだが、もう勝敗は決していた。
「何やっているの!!?」
「先生、勝ちました」
その俺の足元、ロガリーとトトイッセンは泣いていた。まるで子供のように。いや、まだ子供だったわ。
★★★
「本当にあなたって子は……」
「お母さん。大義は我に有り」
お母さんが学校に呼び出された。
「反省しなさい」
グリグリ
「ご、ごめんなさい、あんまりゲンコツでグリグリしないで」
「まぁ、今回の事は相手の方にも原因がありますから」
色々と事情を知る先生はフォローをしてくれる。
「ただちょっとシノブさんは乱暴と言いますか、少し手の早い所がありますので、気を付けて頂ければと」
「いつもご迷惑ばかりお掛けして本当に申し訳ありません」
「でも私だって理由も無くそんな事はしないんだよ?」
「まったく……あなたは女の子なんだから、少し考えなさい」
「あっ、お母さん、それは女性差別ってヤツなんじゃ、イタッ、グリグリ止めて」
グリグリグリグリ
「シノブ。シノブは頭の良い子なんだから、他の方法だってあるでしょう?」
「先生の言う事も分かるけど……リアーナが泣いてたんだもん。許せないよ。時には鉄拳制裁も必要なんだよ」
「本当にこの子は……」
グリグリグリグリグリグリ
その後、お母さんと先生から説教を食らい、家ではお姉ちゃんに呆れられ、お父さんには笑われるのだった。
数日後。
それは学校から、ヴォルフラムとの帰宅途中。
「シノブ。テトがいる」
テトが待ち構えていた。
「ちょっと話がある」
「私に?」
テトは頷く。
「俺も行こうか?」
「大丈夫。ヴォルはちょっと待ってて」
「分かった」
……面倒な事なら相手にしたくないんだけど。また喧嘩でもしようものなら、さすがのお母さんでも激怒しそうだし。
「リアーナのノートをやったの、ロガリーとトトイッセンなんだろ?」
ノートを誰がグシャグシャにしたのか? 二人の名前は私も先生も明かしていない。これが別の問題に発展する可能性もあるだろうから。
ただ俺が二人と大喧嘩をした事はみんな知っている。ノートの関係で大喧嘩になったのだと当然みんな思うだろう。
「知らないけど」
「何で隠すんだ?」
「知ってどうするの? みんな前で晒し上げるつもり?」
「……そうじゃなくて、俺のせいだし……俺が悪いんだ」
「何で?」
「お前達のノートを捨ててやるか、って俺がふざけて言ってたから」
だったらノートがグシャグシャにされたその後すぐに二人から話を聞けば良いのに……とは思うが、まぁ、どうしようどうしようと思っているうちに、俺が喧嘩を起こしてしまったのだろう。
ただそれをわざわざ告白しに来る辺り、少しは反省しているのだろう。だからあまり馬鹿にした事は言わないようにしてやるか。
「思ったり言ったりするのと、実際に行動するのは大きな違いなんだから。確かに原因の一つかも知れないけど、悪いのは本人達。あんまり気にしないで、次はテトも少し気を付けなよ」
「……お前はいつも大人みたいに何でも分かったような顔で……くそっ」
小さく呟くテト。聞こえないふりをして言ってやる。
「私は早く帰ってお母さんのお手伝いをするんだから。じゃあ、バイバイ」
今、思えばこの時からだろうか。
テトがあまり俺に絡んで来なくなったのは。
そしてそれから2年後……
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