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プロローグ
学校の話題と最強の友達
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やっちまった……
翌日。
昨日の事を思い出して、ベッドの上でバタバタする。
そもそも最初に捨てられた原因の容姿は俺がアリア様に頼んだ事であって、ある意味で自業自得。
なのに昨日は場の雰囲気で気分が高揚しちまった……そこからの大号泣。
恥ずかし過ぎるぅぅぅぅぅっ!!
バタバタ、バタバタ
「シノブ、もう起きないと」
「やめて、ヴォル。そんな目で見ないで。そんな優しい感じで見ないで」
「昨日のシノブは可愛かった。子供っぽくて」
「殺せ!! いっその事、私を殺せ!!」
バタバタ、バタバタ、バタバタ
見たくねぇ……お父さんの顔も、お母さんの顔も、お姉ちゃんの顔も。
とはいえ、学校には行かないとダメなわけで。
制服に着替えて。
「おはよう……」
出迎えたのはキラキラと目を輝かせる三人だった。
「……見ないで」
俺は顔を背けるのだった。
今日、俺の髪を纏めてくれるのはお姉ちゃん。
後頭部の低い位置にポニーテールを作る。そして10センチ程度の幅に折った濃紺に白い水玉模様のスカーフ。それを頭の上から巻いて、ポニーテールの下を通して緩く結ぶ。
簡単だけど、うむ、我ながら可愛い。
「はい。出来たよ」
「ありがとう、お姉ちゃん」
「素直だとシノブは本当に可愛いね」
昨日の事を含めて言っているのだろう。このまま普通に頷くのも恥ずかしいし、ちょっと悔しい。
「いつも可愛いんだから、いつも素直って事なんじゃないの?」
「自分で言う?」
「でも実はね、私はこの可愛さを利用して、多くの男から金品を巻き上げる悪女なんだよ!! 馬鹿な男どもを地獄の底に叩き落してやる!!」
「あ、お父さん」
「シノブ、お前、どこでそんな知識を入れて来るんだ……」
「はい。嘘。冗談です。ごめんなさい」
「ほら、マイスもユノもシノブも。早くしなさい、遅れるよ」
「は~い」
そうしてまた今日が始まる。
★★★
ここ最近の学校の話題と言えば、もっぱらこれ。
数日前に竜の山で起こった異変。
稲妻のような物が光る空。このエルフの町まで届く轟音。揺れる大地。そして一夜明けると竜の山の形すら変わっていた。
一体、何が起こったのか?
不死身のアバンセに何かあったのか?
そんな話題で持ち切りだった。
まぁ、俺が原因なんだけどね。
「リアーナ、おはよー」
「うん、おはよう」
「まったく毎日毎日同じ話題でみんな飽きないね」
「それはそうだよー。だってあんな出来事は今まで無かったんだよ? 王国の調査隊も入るなんて話もあるし」
「ふーん。そうなんだ」
これはマズい。アバンセには俺の事を口止めしておかないと。俺のスローライフ計画が台無しになる可能性がある。
そしてそれは授業を受けている最中だった。
窓から入る日の光が遮られた。
ん?
何気に窓の外に視線を向けると……
赤黒い鱗に覆われた巨大な竜。
不死身のアバンセだ。
「な、何だよ、アレ!!?」
「竜? もしかして竜!!?」
「竜ってもしかして、不死身のアバンセ!!?」
「なんで……こんな所に……」
「こ、殺される!!」
キャーキャーワーワーギャーギャー
子供たちは不死身のアバンセを凶暴で残忍な竜だと思っている。その姿を見て、教室中は一気に大パニック。
「ううっ、怖いよぉ」
リアーナが俺の腕に抱き着いた。その体は震えている。
「あーうんーまぁ、大丈夫だと思うよ」
アバンセがわざわざ学校に……もう、これって完全に俺だよね? 俺、目的だよね?
その巨体が校庭に降り立つ。
そして……
「シノブ。シノブはここにいるか?」
たはー
デカい声が響き渡ってんじゃん。そして教室中の生徒が俺の事を見ちゃってんじゃん。
「シノブちゃん?……シノブちゃんを呼んでるの?」
「多分。ちょっと行ってくるよ」
「ダメだよ!! 食べられちゃうよ!!」
リアーナはガッシリと俺の手を掴み放さない。ホンマ、この子はエエ子やでぇ~
「大丈夫だよ。魔法とか剣の先生だっていっぱいいるんだから。危なくなったら助けてくれるよ」
「シ~ノ~ブ~出て来~い。食べちゃうぞ~」
「でも食べちゃうって言ってるよぉぉぉ!!」
リアーナ、本泣き。
「いやいや、きっと冗談だよ!!」
あのバカ野郎。言って良い冗談と悪い冗談があるだろうが!! 一発、頭を引っ叩いてやらねぇと!!
「シノブちょっと来なさい!!」
「ほら、先生が呼んでるから!! ちょっと待ってて!!」
そう言ってリアーナを引き剥がす。
「どういう事なの? シノブはアバンセの事を知っているの?」
「まぁ、話せば長くなるんですが……ちょっと行ってきます!!」
「あっ、シノブ!! こら待ちなさい!!」
先生の制止も振り切り、俺は校庭へと飛び出した。
「アバンセ!!」
「おお、シノブ。出て来たか」
「この馬鹿!!」
そしてポカッと一発その巨体をブン殴ってやるんだが。
「どうした?」
もちろん全く効いてない。
「それはこっちのセリフだよ!! どうしてアバンセがここにいるの!!?」
「それはもちろんお前に会いにだ。ほら、背中に乗れ」
「乗れって……強引な……」
このままここにいたのでは話が収まらない。
仕方なく、俺はアバンセの体へとよじ登った。
「よし、ゆっくり飛ぶつもりだが、しっかりと掴まっていろ」
そう言うとアバンセは空へと飛び立った。学校がみるみると小さくなっていく。エルフの町も大森林に飲み込まれるように見えなくなる。まだまだ高く。雲よりもさらにさらに高く。
凄い……
空を飛んだ事はあるが、ここまで高く飛んだ事は無い。
「どうだ?」
「上手く説明出来ないけど……凄くドキドキしてる」
「そうか」
アバンセは笑った。
「でもどうして急に?」
「お前にやられた傷も完全に癒えたからな」
「ごめんなさい」
「別に謝る事ではない。あれはからかった俺が悪い」
「うん。よく考えたら私は悪くなかった。むしろアバンセが謝ってよ」
「ははっ、この不死身のアバンセに謝れと言うのか!!? 本当にお前は面白い奴だな!! とりあえず、ごめんなさい」
「あはっ、本当に謝るんだ?」
「俺が人に謝るんだ。貴重な体験だぞ?」
「この景色と一緒。一生忘れないと思うよ」
「……お前には何か与えてやらないと思ってな。それでお前に会いに来たんだ」
「与えるって?」
「不死身のアバンセに勝ったお前への褒美だ。俺を配下にする事だって可能だぞ?」
「引き分けだったよ。だって私にはあの後何も出来なかったから。だから別にいいよ」
「どういう事だ?」
アバンセなら良いだろう。
この竜は賢く、信頼出来る相手だ。
俺は自分の能力をアバンセに説明する。
「……そういうわけだから、なんか王国の調査団とか会いに来ても私の事は黙っててよ」
「分かった。『神々の手』はいつも世の中心にいるからな。平穏には暮らせなくなるだろう」
「神々の手? 何それ?」
聞いた事が無いぞ? まだ学校で教わっていない知識か?
「特別に強力な能力を持って産まれた者だ。神々に与えられたような能力を持つから神々の手と呼ばれる。その能力は個々に異なり、過去には様々な能力を持つ神々の手がいたんだぞ。その中でもシノブの能力はかなり破格だがな」
「私の他に神々の手って何人かいるの?」
「俺の知る限り、シノブの他、世界に二人だけだ。その能力の強力さから、神々の手はいつも世界の変動の中心にいる」
ちょっと止めて、なんか変なフラグが立ちそうだから!!
「しかしシノブ。本当に褒美はいらないのか? 一応は勝ったんだぞ?」
「褒美……」
褒美ねぇ……あんまり高価だったり、希少だったりすると、後々大変な事になりそうだし……それに竜を配下にするたって……しかも不死身のアバンセを配下にしたら、もうスローライフとオサラバ確定だし。
配下、配下……配下か……
「じゃあさ、引き分けだったし、私と友達になろうよ」
「友達? この俺とか?」
「うん。そうだけどダメ?」
「ははっ、あはははははっ」
空にアバンセの笑い声が響き渡る。
「ダメなのものか!! 友達、この俺にとって初めての友達がお前だぞ、シノブ!! はははははっ」
最強の友達、ここに爆誕。
「それと急に学校とか来ないで。みんなビックリするから」
「……はい……」
その後、学校まで送り届けられたはいいが、そこからがまた大変だった。先生や友達からの質問攻め。この辺りはお父さんの怪我の事や竜の血を含めての説明で適当にかわした。
しかし帰宅後、お母さんにメチャクチャ怒られた。
俺、悪くなくね? 悪いのはアバンセじゃね?
そんな一日でした。
翌日。
昨日の事を思い出して、ベッドの上でバタバタする。
そもそも最初に捨てられた原因の容姿は俺がアリア様に頼んだ事であって、ある意味で自業自得。
なのに昨日は場の雰囲気で気分が高揚しちまった……そこからの大号泣。
恥ずかし過ぎるぅぅぅぅぅっ!!
バタバタ、バタバタ
「シノブ、もう起きないと」
「やめて、ヴォル。そんな目で見ないで。そんな優しい感じで見ないで」
「昨日のシノブは可愛かった。子供っぽくて」
「殺せ!! いっその事、私を殺せ!!」
バタバタ、バタバタ、バタバタ
見たくねぇ……お父さんの顔も、お母さんの顔も、お姉ちゃんの顔も。
とはいえ、学校には行かないとダメなわけで。
制服に着替えて。
「おはよう……」
出迎えたのはキラキラと目を輝かせる三人だった。
「……見ないで」
俺は顔を背けるのだった。
今日、俺の髪を纏めてくれるのはお姉ちゃん。
後頭部の低い位置にポニーテールを作る。そして10センチ程度の幅に折った濃紺に白い水玉模様のスカーフ。それを頭の上から巻いて、ポニーテールの下を通して緩く結ぶ。
簡単だけど、うむ、我ながら可愛い。
「はい。出来たよ」
「ありがとう、お姉ちゃん」
「素直だとシノブは本当に可愛いね」
昨日の事を含めて言っているのだろう。このまま普通に頷くのも恥ずかしいし、ちょっと悔しい。
「いつも可愛いんだから、いつも素直って事なんじゃないの?」
「自分で言う?」
「でも実はね、私はこの可愛さを利用して、多くの男から金品を巻き上げる悪女なんだよ!! 馬鹿な男どもを地獄の底に叩き落してやる!!」
「あ、お父さん」
「シノブ、お前、どこでそんな知識を入れて来るんだ……」
「はい。嘘。冗談です。ごめんなさい」
「ほら、マイスもユノもシノブも。早くしなさい、遅れるよ」
「は~い」
そうしてまた今日が始まる。
★★★
ここ最近の学校の話題と言えば、もっぱらこれ。
数日前に竜の山で起こった異変。
稲妻のような物が光る空。このエルフの町まで届く轟音。揺れる大地。そして一夜明けると竜の山の形すら変わっていた。
一体、何が起こったのか?
不死身のアバンセに何かあったのか?
そんな話題で持ち切りだった。
まぁ、俺が原因なんだけどね。
「リアーナ、おはよー」
「うん、おはよう」
「まったく毎日毎日同じ話題でみんな飽きないね」
「それはそうだよー。だってあんな出来事は今まで無かったんだよ? 王国の調査隊も入るなんて話もあるし」
「ふーん。そうなんだ」
これはマズい。アバンセには俺の事を口止めしておかないと。俺のスローライフ計画が台無しになる可能性がある。
そしてそれは授業を受けている最中だった。
窓から入る日の光が遮られた。
ん?
何気に窓の外に視線を向けると……
赤黒い鱗に覆われた巨大な竜。
不死身のアバンセだ。
「な、何だよ、アレ!!?」
「竜? もしかして竜!!?」
「竜ってもしかして、不死身のアバンセ!!?」
「なんで……こんな所に……」
「こ、殺される!!」
キャーキャーワーワーギャーギャー
子供たちは不死身のアバンセを凶暴で残忍な竜だと思っている。その姿を見て、教室中は一気に大パニック。
「ううっ、怖いよぉ」
リアーナが俺の腕に抱き着いた。その体は震えている。
「あーうんーまぁ、大丈夫だと思うよ」
アバンセがわざわざ学校に……もう、これって完全に俺だよね? 俺、目的だよね?
その巨体が校庭に降り立つ。
そして……
「シノブ。シノブはここにいるか?」
たはー
デカい声が響き渡ってんじゃん。そして教室中の生徒が俺の事を見ちゃってんじゃん。
「シノブちゃん?……シノブちゃんを呼んでるの?」
「多分。ちょっと行ってくるよ」
「ダメだよ!! 食べられちゃうよ!!」
リアーナはガッシリと俺の手を掴み放さない。ホンマ、この子はエエ子やでぇ~
「大丈夫だよ。魔法とか剣の先生だっていっぱいいるんだから。危なくなったら助けてくれるよ」
「シ~ノ~ブ~出て来~い。食べちゃうぞ~」
「でも食べちゃうって言ってるよぉぉぉ!!」
リアーナ、本泣き。
「いやいや、きっと冗談だよ!!」
あのバカ野郎。言って良い冗談と悪い冗談があるだろうが!! 一発、頭を引っ叩いてやらねぇと!!
「シノブちょっと来なさい!!」
「ほら、先生が呼んでるから!! ちょっと待ってて!!」
そう言ってリアーナを引き剥がす。
「どういう事なの? シノブはアバンセの事を知っているの?」
「まぁ、話せば長くなるんですが……ちょっと行ってきます!!」
「あっ、シノブ!! こら待ちなさい!!」
先生の制止も振り切り、俺は校庭へと飛び出した。
「アバンセ!!」
「おお、シノブ。出て来たか」
「この馬鹿!!」
そしてポカッと一発その巨体をブン殴ってやるんだが。
「どうした?」
もちろん全く効いてない。
「それはこっちのセリフだよ!! どうしてアバンセがここにいるの!!?」
「それはもちろんお前に会いにだ。ほら、背中に乗れ」
「乗れって……強引な……」
このままここにいたのでは話が収まらない。
仕方なく、俺はアバンセの体へとよじ登った。
「よし、ゆっくり飛ぶつもりだが、しっかりと掴まっていろ」
そう言うとアバンセは空へと飛び立った。学校がみるみると小さくなっていく。エルフの町も大森林に飲み込まれるように見えなくなる。まだまだ高く。雲よりもさらにさらに高く。
凄い……
空を飛んだ事はあるが、ここまで高く飛んだ事は無い。
「どうだ?」
「上手く説明出来ないけど……凄くドキドキしてる」
「そうか」
アバンセは笑った。
「でもどうして急に?」
「お前にやられた傷も完全に癒えたからな」
「ごめんなさい」
「別に謝る事ではない。あれはからかった俺が悪い」
「うん。よく考えたら私は悪くなかった。むしろアバンセが謝ってよ」
「ははっ、この不死身のアバンセに謝れと言うのか!!? 本当にお前は面白い奴だな!! とりあえず、ごめんなさい」
「あはっ、本当に謝るんだ?」
「俺が人に謝るんだ。貴重な体験だぞ?」
「この景色と一緒。一生忘れないと思うよ」
「……お前には何か与えてやらないと思ってな。それでお前に会いに来たんだ」
「与えるって?」
「不死身のアバンセに勝ったお前への褒美だ。俺を配下にする事だって可能だぞ?」
「引き分けだったよ。だって私にはあの後何も出来なかったから。だから別にいいよ」
「どういう事だ?」
アバンセなら良いだろう。
この竜は賢く、信頼出来る相手だ。
俺は自分の能力をアバンセに説明する。
「……そういうわけだから、なんか王国の調査団とか会いに来ても私の事は黙っててよ」
「分かった。『神々の手』はいつも世の中心にいるからな。平穏には暮らせなくなるだろう」
「神々の手? 何それ?」
聞いた事が無いぞ? まだ学校で教わっていない知識か?
「特別に強力な能力を持って産まれた者だ。神々に与えられたような能力を持つから神々の手と呼ばれる。その能力は個々に異なり、過去には様々な能力を持つ神々の手がいたんだぞ。その中でもシノブの能力はかなり破格だがな」
「私の他に神々の手って何人かいるの?」
「俺の知る限り、シノブの他、世界に二人だけだ。その能力の強力さから、神々の手はいつも世界の変動の中心にいる」
ちょっと止めて、なんか変なフラグが立ちそうだから!!
「しかしシノブ。本当に褒美はいらないのか? 一応は勝ったんだぞ?」
「褒美……」
褒美ねぇ……あんまり高価だったり、希少だったりすると、後々大変な事になりそうだし……それに竜を配下にするたって……しかも不死身のアバンセを配下にしたら、もうスローライフとオサラバ確定だし。
配下、配下……配下か……
「じゃあさ、引き分けだったし、私と友達になろうよ」
「友達? この俺とか?」
「うん。そうだけどダメ?」
「ははっ、あはははははっ」
空にアバンセの笑い声が響き渡る。
「ダメなのものか!! 友達、この俺にとって初めての友達がお前だぞ、シノブ!! はははははっ」
最強の友達、ここに爆誕。
「それと急に学校とか来ないで。みんなビックリするから」
「……はい……」
その後、学校まで送り届けられたはいいが、そこからがまた大変だった。先生や友達からの質問攻め。この辺りはお父さんの怪我の事や竜の血を含めての説明で適当にかわした。
しかし帰宅後、お母さんにメチャクチャ怒られた。
俺、悪くなくね? 悪いのはアバンセじゃね?
そんな一日でした。
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