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2部【アース大陸横断編】 第1章 「目指せドグロブニク 漫遊編」
55話:「アジトへ突撃」
しおりを挟む突然目の前にいる4人組の冒険者が声を揃えて叫んだ
いきなりの出来事に身を竦めて目をギュッと瞑る女の子
自分がこの後どんな目に会うのか様々な想像をしたが
どの結果も良くないものばかりだ。
覚悟を決めて恐る恐る目を開けた瞬間
目の前に柔らかい感触が伝わってきた。
一時何が起こったのかわからなかったが
どうやら誰かが自分の頭を抱きしめたようだった。
その証拠に仄かに甘い香りと懐かしい香りが鼻を擽る。
しばらく固まったままだったがようやく考えることを思い出したかのように
女の子は自分を抱いている女性の顔を見上げた。
そこにはこの世のものとは思えないほどの美貌を持った
妙齢のエルフがいた。
あまりの美しさに言葉を失いそうになるが
何とか振り絞ったかのような声で問いかける
「なっ何を・・・・」
その問いかけの答える代わりに自分の顔を
大きな膨らみで覆い隠すようにギュッと抱きしめながら
「もお~なんて可哀そうなの! ヤマト様この子を助けましょう!!」
その声に同意を示しながら大和は
「当たり前だ! こんな幼気な子を傷つける奴は処刑だ処刑!!」
そうだそうだと他の二人も同意する。
「ちょっちょっと待ってください!!」
女の子は突然エルノアから距離を取り憤怒の色を浮かべた冒険者たちに問いかける。
「私を殺しに来たんじゃないんですか?」
当然の疑問だ。
冒険者の金を奪うということは殺されたとしても文句は言えないのだ。
にもかかわらず今の彼らは怒りの感情は浮かべているが
その感情の矛先は女の子には向けられてはいなかったのだ。
「そんなことするわけないじゃん」
と軽い口調で大和が答える。
そして続けて自己紹介をしてきた。
「俺の名前は小橋大和よろしくな」
「アングラーズ・マーリンですのん」
「リナ・シェーラです」
「エルフのエルノアですよろしくね」
それぞれが女の子に自己紹介をする。
それに釣られるように女の子も名を名乗った。
「りっリコルです・・・・・・」
名前を呼んだあと小さい身体でペコリとお辞儀をする。
お互いに自己紹介が済んだところで本題に入る。
「それでリコルちゃん、そのお頭っていうの奴はどこにいるんだい?」
「えっ? この先を真っすぐ行ったところにある建物にいますけど・・・・」
そう答えると大和は彼女の頭にポンと手を置き
くしゃくしゃと撫でまわした後
「そこに俺たちを案内してくれるかな?」
一方、リコルから大金をせしめたスリ集団のお頭ことガズールは
改めて金袋の中身を確認していた。
ざっと見積もって10000ゼリルは下らない金が入っていた。
金を確認したカズールはニヤリと下品な笑いを浮かべぽつりと呟く。
「リコルのヤロー今回は相当なカモだったらしいな
まさかこんな大金を持って帰ってくるとは思わなかったぜ」
そう言いながら金袋を左右に振りながら
硬貨がじゃらじゃらと音を立てるのを心地よく聞いていた。
だが突然の爆発音によってその一時は壊された。
「なっなんだ!?」
見ると火の魔法がアジトである建物の壁に直撃し
老朽化していた壁は脆く崩れ去った。
「おっお頭! 敵襲だ!!」
部下の一人がそう告げると短い逡巡のあとその場にいる部下に命令する。
「野郎ども! 敵を迎え撃て!!」
その声に反応し、今までくつろいでいた盗賊たちが
自分の得物を手にし襲ってきた敵に向かって行った。
「敵の数は? 何人だ?」
この町でカズールを頭とするスリ集団はその道の人間であれば
かなり大きな組織と認知されている。
だからこそ町の者はカズールの組織に喧嘩を売ることはないが
外から来たよそ者なら話は別だ。
「2、3、4・・・・4人です」
敵の数を数え終えた部下が報告してくる。
その時カズールは嘲笑を浮かべながら襲ってきた相手を哀れんだ。
この組織がこの町で1、2を争うほどの組織と知らずに
喧嘩を売ってきた無知で愚かな4人組に。
ところがその嘲笑はすぐさま焦りと驚愕の表情へと変貌する。
理由は至って簡単、乗り込んできた敵が凄まじい強さを持っていたからだ。
少なくとも40人以上の部下が迎撃に向かって行ったはずなのにも関わらず
その圧倒的な力で数の暴力を跳ね除け、こちらに迫る勢いだ。
カズールは遠目から侵入してきた者たちを観察する。
一人は男のカズールから見てもほれぼれするほどの美青年
少しおっとりとした目つきに黒髪短髪の剣士風の男。
次に全身を緑一色の服で包んだ魔導師
見た目は少女だが扱う魔法はかなりの高次元という印象を受ける。
三人目は見目麗しい顔立ちに黄金の輝きを放つ髪を持つエルフ
だがその動きは素早く、カズールの目でも辛うじて姿を捉えられるかといったところだ。
最後に白き衣を纏い補助魔法を唱える神官の女の子
見た目は魔導師とエルフのちょうど中間の年齢ほどだと予測できたが
年の割にけしからん二つの膨らみが印象的だった。
4人に共通するのは並の冒険者の強さではないということ
特に強さの底が見えない剣士の男である。
カズールはこれまで多くの修羅場を経験してきていた。
その経験が警鐘を鳴らしている。
今すぐ逃げろと、戦ってはならないと。
だがカズールの居場所はもはやこの町以外にはなく
仮にここから逃亡すれば部下たちは自分のもとを離れ
そんな自分を他の敵対勢力が放っておく道理もなく
ここで逃げ出せば組織は崩壊し自分は他の組織に消されてしまう。
そのことが分かっているからこそ
逃げたいという気持ちを抑えこみこの連中と一戦を交えなければならないのだ。
自分の居場所を守るためにも・・・・・・
そうこうしているうちに4人組は
部下たちを全滅させついに自分のもとへとやってきた。
「なかなかやるじゃないか・・・・」
これは単なる虚勢だ。
本心では逃げたい気持ちを必死に堪えているのだ。
カズールは腰に下げていたシミターを抜くと大和の前で身構える。
「ここは一つあんたと俺の一騎打ちって言うのはどうだい?」
見え透いた挑発だが、相手が一人なのにこちらが4人で攻めるというのも心苦しい
「ああいいぜ、俺が勝ったら盗んだ金を返してもらう」
大和はカズールにそう告げると、持っていた剣を構え直す。
「じゃあ俺が勝ったら身ぐるみ全部とそこの女どもを貰おう」
そう言ってリナたちを一瞥する。
三人とも苦虫を噛みつぶしたように顔を歪める。
「ああいいぜ、勝てたらな。 俺は小橋大和だ」
「カズールだ」
こうして二人の一騎打ちが始まろうとしていた・・・・
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