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28話「到着したのだけど、この旅で女としてのプライドが傷ついたみたい」
しおりを挟む「なんでこんな脂肪の塊がいいのかしらねぇー」
「……あ、主。もうそろそろ街に着くので胸を揉むのをやめてもらえないだろうか?」
リムの街から旅立って十三日後、予定通り次の街に到着した。あれから街道を道なりに走り続けた結果、姫たちは盗賊たちの熱烈な歓迎を受けまくっていた。
やはり女だけの三人旅というものは、盗賊たちの目から見て格好のカモに映ってしまうらしく、酷い時には一時間に一回の割合で襲われた時もあったほどだ。
ただ襲われるだけならば返り討ちにすればいいだけの話なので問題はなかったのだが、盗賊が襲ってくるたびにほとんどの者がこう口にするのだ。
“でけぇおっぱいだな”だの“あれは揉み応えがありそうだなぁ”だの、やってくる盗賊たちの第一声がそればかりだったため、最終的に盗賊たちが何か口を開く前に姫は問答無用で魔法をぶっ放してしまっていた。
そのあまりの威力にミルダやミャームは尊敬の眼差しと絶賛の言葉を口にしていたが、二人ともそれがミルダのおっぱいばかりに目がいく盗賊にムカついたからという半ば八つ当たり的な理由であることは知る由もない。
姫とて薄汚い盗賊にモテたいという願望があるわけではないが、それでも求められないよりも求められる方がいいに決まっている。盗賊たちの要求を受け入れるわけではないが、それでもミルダの胸ばかりに目を奪われている男たちを見ていると、それだけで女性として負けた気がしてしまうものなのだ。
そして、そんな男たちの視線を一身に集めるそれの魅力を確かめるべく、しばらくミルダの胸を弄りまわしていたのであった。
姫の胸とて小さい部類に入るが決してまな板というわけではない。Dカップ寄りのCカップという日本人女性の平均よりも少し大きなものを持っており、持たざる女性からすれば十分羨望に値するのだ。
しかし、量よりも質という考え方ではなく質よりも量を優先してしまうこの世界では、形のいい胸よりも大きな胸の方が男性の受けがいいというのが実情だったりする。
「おっぱいなんて大きくてもいいことないニャ。ぶるんぶるん揺れて動く時邪魔ニャし、男からはいやらしい目で見られるだけニャ」
胸などあってもなんの意味もないとミャームが忌憚のない意見を口にする。実際彼女自身の胸はCカップ寄りのBカップという大きさで、動く時に邪魔にならない大きさだ。
だが、その事を何ら気にした様子もなく、寧ろ邪魔にならなくて楽だからという理由から今の自分の胸で満足しているほどだ。
そんな彼女といえば、この十数日間の旅でミルダから御者の技術を学び、今では一人で馬を操れるほどまでになっている。獣人であるが故なのか、はたまたミャーム自身の気性が動物と相性がいいのか、すぐに馬と打ち解け瞬く間に上達していったのであった。
それだけでなく、当然強くなるための修行は各個人で行っており、それぞれのパラメータを姫が調べた時の能力は以下のようになっている。
名前:重御寺姫(♀)
年齢:25歳
種族:人間
体力:5800 / 5800
魔力:13480 / 13480
スキル:【火魔法Lv3】、【水魔法Lv3】、【風魔法Lv3】、【土魔法Lv3】、
【光魔法Lv2】、【闇魔法Lv2】、【生活魔法Lv3】、【回復魔法Lv3】、
【魔力操作Lv7 NEW】、【魔力制御Lv6 NEW】、【身体強化Lv6 NEW】、【鑑定Lv4 NEW】、【異世界言語学LvMAX】
修得魔法:
【火魔法】:ファイア、ファイアーボール、ファイアーアロー、ファイアランス、バーストフレア
【水魔法】:ウォータ、アクアバレット、プリズンウォータ、アクアストーム
【風魔法】:ウインド、ウインドカッター、ウインドシールド、ロンドブレイク
【土魔法】:アース、アースウォール、アースクエイク、ガンズロック
【光魔法】:ライト、ライトアロー、シャイニングレーザー
【闇魔法】:ダーク、ダークジャベリン、ダークボム
【生活魔法】:クリーン、ヒート、アイシング、ギャザリング
【回復魔法】:ヒール、キュア、ディスペル、ハイヒール、ラウンドヒール
称号:異世界人、英雄の素質、九死に一生、八属性詠唱者、奴隷の主人(ミルダ、ミャーム)
状態:異常なし
―――――――――――――――――――
名前:ミルダ(♀)
年齢:18歳
種族:亜人(オーガ)
体力:4890 / 4890
魔力:250 / 250
スキル:【棍棒術Lv7】、【魔力操作Lv1 NEW】、【魔力制御Lv2 NEW】、【身体強化Lv5 NEW】、
【闇魔法Lv2】、【土魔法Lv1 NEW】
修得魔法:
【闇魔法】:ダーク、ダークジャベリン、ダークミスト(NEW)
【土魔法】:アース(NEW)
称号:追放者、濡れ衣を着せられた者、奴隷(契約者:重御寺姫)、一途、剛力
状態:隷属化、右腕欠損
―――――――――――――――――――
名前:ミャーム(♀)
年齢:17歳
種族:亜人(猫人族)
体力:2540 / 2540
魔力:550 / 550
スキル:【瞬足Lv6 NEW】、【魔力操作Lv2 NEW】、【魔力制御Lv1 NEW】【身体強化Lv4 NEW】、
【窃盗術Lv3】、【風魔法Lv2 NEW】
修得魔法:
【風魔法】:ウインド(NEW)、ウインドカッター(NEW)
称号:盗人、気分屋、奴隷(契約者:重御寺姫)
状態:隷属化
まず姫に関しては新しい魔法を覚えるということはせず、魔力の操作と制御、そして身体強化のスキルの向上を行っていた。さらに目についた物を片っ端から鑑定していたため、鑑定スキルもレベルが上がっている。
ミルダとミャームの二人は、道中で食べられそうな魔物や動物の狩りをしたり、姫と一緒に魔力操作や制御、身体強化などの修練を行ったお陰で体力と魔力が上昇している。
特に二人とも肉体的な戦闘を行うことを得意としていることもあり、体力が大幅に上昇している。その反面魔力の上昇幅はそれほど大きくなく、今後も精進が必要になってくると姫は考えていた。
閑話休題。ミャームが先ほど口にした言葉に対し姫がすぐさま反応を示す。
「それはわかってるんだけど、おっぱいが大きいだけでこうも男の視線を持っていかれると、女として釈然としないというかなんというか」
「ご主人はあの村でのことをまだ気にしてるのかニャ? 自分が被害に遭わなかったんだからよかったじゃニャいか?」
「そうですよ主。アタイは不埒者の毒牙が主に向かなくてホッとしています」
それは旅の途中で立ち寄った村で起こった出来事だった。この旅で姫たちが立ち寄った村は二つだったのだが、その二つの村の内の一つで事件は起こった。
村に到着すると、旅人が珍しいということもあって村人から注目されていた。それは仕方のない事ではあるのだが、心なしか男の村人の視線がミルダの大きな膨らみに集中していたようなのである。
それだけであれば、姫自身が不快な思いをするだけで済んだのであるが、問題は村にある唯一の宿で眠っていた時だった。
泊まっている部屋のドアからゴソゴソという音がしたのを察知したミャームが姫たちを起こしたのだが、そのドアの向こうで男が言い争っているのを聞いてしまったのだ。
「あの乳のデカイ亜人は俺がもらう」
「ふざけんな、あの亜人の女は俺が目を付けてたんだ。お前はあの猫人の亜人とよろしくやってろ!」
などという会話がドアの向こうから聞こえてきたため、自らドアを開け二人の男を捕縛した。詳しく話を聞いたところ、村にやって来た姫たちを見て欲情してしまい犯行に及んでしまったということらしい。
そして、当事者である姫はといえば怒りに打ち震えていた。か弱い(?)女性である自分たちを襲おうとしていたばかりか、あろうことかミルダを取り合って仲間内で他の女性を押し付け合っていたのだ。
その押し付けようとした相手が姫であったのなら、彼女がここまで怒りの感情を抱くことはなかったのかもしれない。だが、自分よりも胸が小さいはずのミャームを男たちが押し付け合おうとしていたことで、実質的に自分よりも女性的魅力が低いはずのミャームにまで負けてしまったことになってしまっていたのである。
捕縛した男たちは当然明るくなってから衛兵に突き出した。宿の主は村の人間が仕出かしてしまったことで謝罪をし宿代をタダにしてくれたが、それでも姫の溜飲が下がることはなかった。
「なんでなのよっ!? あたしの方がミャームよりもおっぱいが大きいのよ! なのになんで選ばれなかったのよ!!?」
「あ、主落ち着いてください!」
「そういうところがダメだったんじゃニャいかニャ?(ボソッ)」
今回の旅のことを思い出し、抑えていた怒りが今になって再燃した姫をミルダがなんとか宥めようとする。しかし、その怒りの原因に大なり小なり関わっているミルダの言葉では何の効果もなく、しばらく姫の嘆きが響き渡ることになる。
一方のミャームといえば、冷静に姫の欠点を彼女に聞こえないように呟いたが、人間とはこういう時に限って普段聞こえない言葉が聞こえるようになっているらしく、ミャームの呟きを耳聡く聞きつけた姫が彼女にアイアンクローをお見舞いする悲惨な結果となってしまった。
姫自身別に恋人が欲しいなどという感情はあまり持ち合わせていないのだが、それでも男にちやほやされたい感情は人並みに持っている。
今回の一件で女性としてのプライドをいたく傷つけられてしまったが、元よりそんなプライドはちっぽけなものでしかないため、すぐに気を持ち直し次の目的に意識を向ける。
「よーし、こうなったら一気にダンジョン攻略して目的のミルダの腕を治すためのポーションと新しい高性能アイテム袋を手に入れるわよ!!」
「はい!」
「い、痛いニャ……でもダンジョン攻略は楽しみだニャ!」
姫の言葉に機嫌よく答えたミルダとは裏腹に、彼女にアイアンクローされた顔がまだ痛むのか顔をさすりながらも姫の言葉に同意する。
そして、無事に街に入る手続きも完了し姫たちは新たな街の拠点となる宿を探すことにしたのであった。
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