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第五章 攫われた看板娘を助けに行く理由(笑)

53話

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更新が遅くなって申し訳ないですが、しばらくこのペースでうpしていきます。
サーセン(/ω\)ノシ

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 秋雨が廃墟に現れてから敵を倒すまでの間、ケイトはずっと驚愕しっぱなしであった。
 普段の彼の言動からすれば、とても冒険者として立派な存在ではないということを、この短い期間で見抜いた彼女にとって、今自分の目の前で起こった出来事がまるで非現実的なものではないかという錯覚を覚えてしまった。


 自分のピンチに駆けつけてくれたことに対しては素直に嬉しいことであったが、相手は四人。数でも力でも秋雨が劣っていることは明らかであった。
 だが、彼はそんな数の不利にも怯まずに、立ち向かって行った。それを無謀と取るのか勇敢と取るのかは人それぞれだが、ケイトは無謀だと思ってしまった。


 しかし、あれよあれよという間に敵が一人、また一人と減っていき、気が付いた時にはその場にいるのはケイトと秋雨の二人だけであった。


「よし、これで片付いたな。まぁ一人逃げられちまったが、もうここに戻ってくることはないだろう。てことで、ケイト待たせたな、俺の実力で倒したぞ」

「嘘だっ! 戦いに関して素人の私でもわかります。今のは全部運が良かっただけで、絶対アキサメさんの実力じゃありませんよね!?」


 そうなのだ。今回の戦いに関して、秋雨の実力が発揮されている場面は何一つとしてなかった。
 最初のリーダー格の男は、偶々秋雨が石に躓いた衝撃で鉄の剣が手からすっぽ抜けた結果倒すに至っただけであり、彼自身の剣技で倒したわけではない。


 小柄な男に関しても、魔法で倒したのではなく偶々廃墟に破棄されていた【火炎鉱石】の入ったバケツをぶちまけたお陰で倒せたようなものだ。
 最後の寡黙な男に関しても、またしても体勢を崩したことが功を奏し、相手の隙を突く形でぶつかっただけであって、断じて彼自身の実力ではなかったのだ。


 尤も、それは秋雨自身が演出した演技であり、ケイトにそう思ってもらうために彼自身が仕掛けた罠であった。
 今回ケイトを助けたのが自分であると認識させるために、秋雨は敢えてこのような手段を取ることにしたのだ。
 では、なぜ秋雨が姿を見せたまま彼女を助けたのか、それには理由があった。


「そんな細かいことはどうでもいいんだよ。俺はお前を助けに来た、そしてその結果お前は俺に助けられた、それだけだ」

「それはそうなんですけど、なんだか助けられた気が全然しません……」


 先ほどまでの賊との戦いの一部始終を見ていた彼女にとって当然といえる反応だった。
 戦いの知識が何一つとしてないケイトですら、秋雨の戦い方がお粗末極まりないものであると一目で理解できたからだ。
 そんな彼に助けられたという事実を受け入れられないでいた彼女だったが、そんな考えを打ち消すかのように秋雨が口を開く。


「ところでケイト、確認したいことがあるんだがいいか?」

「なんですか?」


 秋雨はケイトの口から事実を引き出すかのように彼女に質問を投げかけた。


「今回お前を助けたのは俺だよな?」

「そうですけど」

「じゃあその助けたことに対して、お前は俺にお礼をしなくちゃいけないよな?」

「……そ、そうですけど」

「じゃあ一個だけ俺のお願いを聞いてくれないか?」

「お願いってなんですか?」


 秋雨はその言葉を待ってましたとばかりに彼女に近づいていき、そのまま彼女の背後に回り込む。そして、そのままケイトの後ろから抱きつくと、彼女の胸を後ろから鷲掴みにした。


「あんっ、ちょ、ちょっとアキサメさん!? な、なにするんですか!?」

「言っただろ? お前は俺にお礼をする必要があり、俺はお前にお願いがある。そのお願いを聞いてもらうだけだ」

「そ、それと私の胸を触るのと何の関係があるんですか!?」

「そんなの決まってる。“もう一度お前のおっぱいを触ってみたい”というのが俺のお願いだからだ」

「なっ!」


 そうなのだ、秋雨がなぜ敢えて自らの姿をケイトに認識させた状態で助けたのか、それは彼がもう一度ケイトの胸を触りたかったからだ。
 ただ、この“触りたい”という欲求は性的な意味ではなく、ただ単純な好奇心からくる興味の方が強かった。それが証拠に秋雨の下半身はなんの反応も見せていない。


 例えば、偶々コンビニで買ったプリンが美味しかったとする。そして、後日コンビニを訪れた際、そのプリンが再び売られていれば人はその時どのような行動に出るだろうか?
 答えは実に単純明快。“もう一度そのプリンを買ってしまう”だ。


 最初にケイトの胸の感触を覚えてしまった秋雨は、再びその感触を体験してみたいと思っていた。
 だが、面と向かって彼女に頼むにはあまりにもあまりなお願いだったため、その欲求を抑え込んでいたのだ。
 ところが、ケイトが攫われるという不測の事態が起こり、それを秋雨一人で救出できたことで、ケイトに対して借りを作ることができた。


 そして、その恩を使って、秋雨は押さえ込んでいた欲求を満たすことにしたのだ。
 念のためもう一度宣言するが、この欲求は性的なニュアンスは一切含んでおらず、ただ単純な好奇心によるものが大きいとだけ言っておく。


「また触ってみたいなと思ってたんだ」

「やんっ、アキサメさんやめてください!」

「いいじゃないか、俺がいなけりゃあのまま遠いところに連れて行かれて、一生奴隷としてみじめな生活を送ってたかもしれないんだぜ? それに比べたらおっぱいを触らせることくらい訳ないだろ?」

「そ、それはそうですけど。それはそうなんですけどぉー!!」


 その後、数分間にわたって秋雨は最初に味わった胸の感触を再確認するように彼女の胸を弄び続けた。
 ケイト自身最初は戸惑いと恥ずかしさがあったものの、不思議と不快感はなくむしろもっとしてほしいという謎の感情が自分の中で芽生え始めていることに困惑を覚えた。


「も、もうお嫁に行けません……」

「おっぱい触られたくらいでお嫁に行けないなら、世の中もっと独身の女で溢れかえっててもいいんじゃないか? それにケイトの場合、将来あの宿屋を継ぐつもりだろうから、お嫁に行くんじゃなくてお婿さんを見つける方なんじゃないか?」

「うぅ~」


 しばらくの間、羞恥と精神的な疲労でその場にへたり込んでいたケイトだったが、なんとか気力を回復させ徐に立ち上がると、彼女は秋雨に猛抗議した。
 だが、当の本人である秋雨はどこ吹く風とばかりに彼女の抗議を受け流すと、少し真面目な顔で話し掛ける。


「そんなことより、ケイト、この後なんだが、お前一人で宿に戻れるか?」

「一人って、アキサメさんも一緒に宿に戻るんじゃないんですか?」

「俺にはまだやることが残ってる。だから宿にはお前一人で戻ってくれ」

「で、でも……」


 ケイトの不安はもっともであった。
 さっきまで誘拐され他の土地に連れて行かれそうになった彼女にとって、一人で街を歩くということがどれほど恐怖であるかということを。


「お前の不安は分かるし、できれば送って行ってやりたいが、逃げた奴をこのまま逃がすわけにはいかないからな。すまんが一人で帰ってくれ」

「そ、そうですか……わかりました」

「ああ、それと、今回お前を助けたのが俺だってことは内緒にしておいてもらえるか? あとでいろいろと面倒なことになりそうだからな」

「え、で、でも」


 秋雨の言葉にケイトは眉を顰めた。運よく助かったとしか言い難い内容であったが、秋雨に助けられたのは紛れもない事実でありその部分に関してはケイト本人も認めている。
 だからこそ、誰に助けられたかというのは彼女自身はっきりと両親や周りの人間に伝えたかったのだが、秋雨本人がそれに待ったを掛けてしまった。


「アキサメさんはそれでいいんですか? このことが周りに知れ渡れば一躍英雄になれますよ」

「そうかもしれんが、それ以上に厄介事が舞い込んでくる可能性が高いんだよ。それに、俺が助けたということをお前が知っていれば何も問題はないだろ?」

「そうかもしれませんけど……」


 その後、ケイトを助けたという事実を隠すために彼女に嘘の人物像を他の人間に伝えるよう頼むと、そのまま彼女を家に帰した。
 ケイトがその場を離れたのを見届けた秋雨は、一つ息を吐き出すと女が逃げていった方向を見ながらぽつりと呟いた。


「さて、残党狩りといきますかね」


 こうして、ケイトを見事救出した秋雨は残りの賊を追いかけるべく、地面を蹴って高速で移動を開始するのだった。



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まさかの「胸に触りたかったから」という理由でリスクを犯すとは……さすがと言わざるを得ないですな。
次回いよいよ逃げた賊を追いかけます。
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