悠々自適な転生冒険者ライフ ~実力がバレると面倒だから周りのみんなにはナイショです~

こばやん2号

文字の大きさ
上 下
39 / 180
第四章 邂逅!? 秋雨 VS ギルドマスター

39話

しおりを挟む

「さて、真夜中までまだ時間があるからな、ここは手つかずだった装備を見てみるとするか」


 ヒュージフォレストファングを倒した秋雨は、その足でグリムファームへと帰還していた。
 結局ヒュージフォレストファングは、彼の放った魔法【水泡の玉】で窒息死という哀れな最期であったが、それを実行した秋雨に忌避感は全くといって皆無であった。


 元々この世界がRPGに似た世界であるということも要因の一つだったが、最初にこの世界にやって来た際に事故とはいえ盗賊を殺してしまっていたからだ。


 そんなわけで、ヒュージフォレストファングをあっさりと倒した秋雨は、約束通り群れを追撃することなくそのまま転移魔法で戻ってきたのだ。
 ちなみに当然のことだが、転移魔法が使えることは秘密のため、街の近くの誰も見られない場所に一度転移してそこから徒歩で街まで帰還していた。


 さて、そんなわけで、秋雨の今回の目的は新しい装備を新調することであった。
 といっても、この世界に来て実質的に四日ほどしか経っていないのだが、何故か内容の濃い生活を送っているせいか、ここまでくるのにかなりの時間が経過している錯覚に秋雨は陥っていた。


 グリムファームの正面玄関である正門から真っ直ぐ直進すると、大きな広場へとたどり着きそこから道が3つに大きく分かれている。
 向かって左に進むと、現在秋雨が泊っている宿【白銀の風車亭】に行き着き、右に進めば様々な商品を取り扱う市場が見えてくる。
 最後に残った真っ直ぐ進めば、秋雨が所属する冒険者ギルドにたどり着くのだが、そこからさらに進んで行くと、今度は様々な装備品を取り扱う店が建ち並ぶ区画が見えてくるのだ。


 装備屋に向かう途中に冒険者ギルドをちらりと覗いてみたのだが、どうやら新人の冒険者と“お節介な先輩冒険者”が決闘をしている真っ最中らしく、ギルド前の通りでは異様な盛り上がりを見せていた。


(やっぱり、明るいうちからギルドに行くもんじゃねえな)


 しばらく様子を見ていた秋雨だったが、明日は我が身と気を引き締め、盛り上がりの輪から遠ざかって行った。
 ちなみに決闘の勝敗は、言うまでもなくお節介な先輩冒険者の圧勝で幕を閉じた。


 喧騒から遠ざかり、街の雑踏を進んでいると、店が建ち並ぶ一角へとたどり着く。
 そこには、冒険に必要な武器やら防具やら道具を売っている区画で、店によって販売されている品のグレードが異なっている。


 店ごとに狙っている冒険者のランク帯が異なるらしく、AランクやBランク冒険者向けの装備を販売する店もあれば、新人向け装備を取り扱う店もあってその種類も豊富だ。


 どこの店に入ればいいのか分からず、秋雨はしばらくその一帯をうろついていたが、とある店に目が止まるとそこに引き寄せられるように入って行った。


(なかなか、落ち着いて雰囲気の店だな)


 店の内装は余計な調度品など一切なく、棚に並べられた装備のみという至ってシンプルな展示方法であることから、扱う商品の質で勝負している事が窺える。
 入り口付近でキョロキョロしていた秋雨だったが、不意に掛けられた声によって我に返った。


「らっしゃい、坊主そんな入り口で突っ立ってないで、もっと中に入ってきたらどうでぃ?」

「うん?」


 そこにいたのは、会計をするためのカウンターの奥にある椅子に腰かけた髭もじゃの物体Xだった。
 ずんぐりむっくりな体型であるものの、体つきは筋骨隆々で服の上からでも筋肉が隆起しているのがわかるほどだ。


「あんたがここの店主か?」

「そうだ、俺はウルグスっていうもんなんだが、見ての通りドワーフだ。ここで武器と防具を作って売ってるんだが、今日は何しにここへ?」


 その問いに秋雨は、自身の装備を新調したい旨を伝えると、店に展示された中からいろいろと見繕ってくれた。


「これはどうでぃ?」

全身甲冑フルプレートはちょっと動きづらいかな、できれば動きが阻害されないタイプの軽鎧がいいんだが」

「わりぃな、坊主の体格に合う軽鎧系の装備は今ちょうど在庫が無くてな、女の子が使う装備と坊主よりも体格の大きい男の物ならあるんだがな」


 そう言って、ウルグスは顎髭を撫でつけながら、申し訳なさそうな表情を浮かべる。
 だが、無い袖は振れないという言葉もあるため、ここでごねても仕方がないと秋雨はウルグスに提案する。


「なら新しく作ってくれよ、その方が手っ取り早そうだ」

「そうしてやりてぇんだが、それもだめなんだわ」

「なぜだ? 仕事が立て込んでるとかか?」

「そういうわけじゃねぇんだ。坊主の装備を一から作ることに関しては問題ないんだが……」


 ウルグスがそこまで言いかけたところで、秋雨はとある考えに行き着いた。


「素材か?」

「ああ、実はそうなんだ。坊主が欲しがってる軽鎧は、基本的にモンスターの皮を使って作るんだが、肝心のその皮が今品薄でな、作りたくても作れんのだわ」


 ほとほと困ったと目を瞑りながら、お手上げ状態とばかりに 両手を上げるウルグス。
 だが、そんなことで諦めるほど、秋雨という男は聞き訳のいい人間ではない。


「素材がないなら、取ってくればいいじゃないか」

「それができりゃあ苦労はないわ!」


 秋雨の言葉に、即座にツッコミを入れるウルグスだったが、そんなことは気にせずさらに秋雨は提案する。


「だったら、俺が取ってきてやるよ。そしたら作ってくれるか?」

「あん? そりゃあ、素材があれば作れるが……ホントに坊主が狩ってこれんのか?」


 今の秋雨の恰好は、駆け出し冒険者らしく、服の上から装備している少しへたった革の胸当てと、革のブーツのみという必要最低限の装備しかなかった。
 そのため、ウルグスが秋雨が“本当にモンスターを狩ってこれるのか?”という怪訝な表情を浮かべていたのも無理はない事だった。


「任せとけ! それで、何の皮がいるんだ?」

「とりあえず、坊主の装備ならフォレストファングで事足りるだろうから、フォレストファングの皮で十分間に合うと思うぞ」

「わかった、それじゃあ取ってくるから待っててくれ。夕方には戻ってこれると思うから、その時にはよろしく頼む」

「わかった。だが坊主、無理はすんじゃねぇぞ? お前さん見たところ駆け出しだろ? 無理な狩りは命取りになることを忘れるな」


 ウルグスの忠告に対し素直に礼を言うと、秋雨は装備の素材となるフォレストファングの狩りへと出かけるのであった。


――――――――――――――――

いよいよギルドマスターとの直接対決編に入るのか!?
その前に装備を新調しよう、流石に平民の服に革の胸当てだけではキツイ(-_-;)
しおりを挟む
感想 172

あなたにおすすめの小説

家族に無能と追放された冒険者、実は街に出たら【万能チート】すぎた、理由は家族がチート集団だったから

ハーーナ殿下
ファンタジー
 冒険者を夢見る少年ハリトは、幼い時から『無能』と言われながら厳しい家族に鍛えられてきた。無能な自分は、このままではダメになってしまう。一人前の冒険者なるために、思い切って家出。辺境の都市国家に向かう。  だが少年は自覚していなかった。家族は【天才魔道具士】の父、【聖女】の母、【剣聖】の姉、【大魔導士】の兄、【元勇者】の祖父、【元魔王】の祖母で、自分が彼らの万能の才能を受け継いでいたことを。  これは自分が無能だと勘違いしていた少年が、滅亡寸前の小国を冒険者として助け、今までの努力が実り、市民や冒険者仲間、騎士、大商人や貴族、王女たちに認められ、大活躍していく逆転劇である。

異世界の貴族に転生できたのに、2歳で父親が殺されました。

克全
ファンタジー
アルファポリスオンリー:ファンタジー世界の仮想戦記です、試し読みとお気に入り登録お願いします。

母親に家を追い出されたので、勝手に生きる!!(泣きついて来ても、助けてやらない)

いくみ
ファンタジー
実母に家を追い出された。 全く親父の奴!勝手に消えやがって! 親父が帰ってこなくなったから、実母が再婚したが……。その再婚相手は働きもせずに好き勝手する男だった。 俺は消えた親父から母と頼むと、言われて。 母を守ったつもりだったが……出て行けと言われた……。 なんだこれ!俺よりもその男とできた子供の味方なんだな? なら、出ていくよ! 俺が居なくても食って行けるなら勝手にしろよ! これは、のんびり気ままに冒険をする男の話です。 カクヨム様にて先行掲載中です。 不定期更新です。

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる 

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ 25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。  目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。 ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。 しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。 ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。 そんな主人公のゆったり成長期!!

今さら言われても・・・私は趣味に生きてますので

sherry
ファンタジー
ある日森に置き去りにされた少女はひょんな事から自分が前世の記憶を持ち、この世界に生まれ変わったことを思い出す。 早々に今世の家族に見切りをつけた少女は色んな出会いもあり、周りに呆れられながらも成長していく。 なのに・・・今更そんなこと言われても・・・出来ればそのまま放置しといてくれません?私は私で気楽にやってますので。 ※魔法と剣の世界です。 ※所々ご都合設定かもしれません。初ジャンルなので、暖かく見守っていただけたら幸いです。

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

【本編完結】転生したら第6皇子冷遇されながらも力をつける

そう
ファンタジー
転生したら帝国の第6皇子だったけど周りの人たちに冷遇されながらも生きて行く話です

処理中です...