28 / 180
第二章 初めての薬草採集とモンスター討伐
28話
しおりを挟む「さてと、まだ昼まで時間があるし観光でもしますかね」
街へと戻ってきた秋雨は現在メイン通りを大広場に向けて直進していた。
ちなみに門兵に見せた時に持っていた薬草の袋は、懐にしまう風に見せかけアイテムボックスに収納している。
時刻は午前10時半を回るところで、まだまだ朝と言っても十分な時間帯だ。
あと1時間ほどどこかで時間を潰して宿に昼食を食べに行きたいところだが、この街の地理に詳しくない秋雨は今のところ人の流れに乗って歩いている。
街を行き交う人には様々な職種の人が行き交っており、中にはケモ耳を付けた獣人の姿も見受けられる。
まったくどうでもいい情報なのだが、その獣人は女性で尚且つ牛の獣人だったため超爆乳だった。
たゆんたゆんと揺れる乳房を尻目に、人の流れに乗って歩いていると、いつの間にか大広場へとたどり着く。
ちなみにここから三つの道に分岐しており、左に進めば秋雨が拠点にしている【白銀の風車亭】に行き着き、真っ直ぐ進めば冒険者ギルドが見えてくる。
「まだ行ってないのは右だけだな。よし、今回はそっちに行ってみるか」
三つの道の内、まだ未開拓の右方向に進路を取った秋雨は、迷うことなく突き進んでいく。
そのまま進んで行くと、露店のようなものが立ち並ぶ区画へとたどり着く。
しばらく歩いていると、恰幅のいい中年の女性が声を掛けてきた。
「あら坊や、見かけない顔だけどよかったらリンゴでも買ってくかい?」
「ふーん、青果売りか」
「今ならおまけしてあげるけどどうだい?」
「そうだな、じゃあ少しだけ貰おうか」
「へい、毎度あり」
どうやら中年女性のセールストークに引っ掛かってしまったようで、リンゴを5個ほど購入する。
対価は銅貨5枚だったが、サービスでおまけにリンゴを3個貰った。
本来銅貨8枚のところを5枚でいいのならばお得ではあるが、それで商売が成り立つのだろうかと秋雨は疑問に思う。
女性からリンゴが入った袋を受け取り、銅貨5枚を支払うとそのまま露店が立ち並ぶ区画の中を進んで行く。
見たところ、主に食材や軽食を販売している露店が多く建ち並んでいるようで、あちこちから威勢のいい客引きの声が聞こえてくる。
そのまましばらく露店を眺めながら歩いていると、とある露店で売っている物に既視感を覚えそこに足を向けた。
そこで売られていたのは、主に麦などの穀物を取り扱うお店のようで、大量の麻の袋が積まれていた。
「ちょっと聞きたいんだが?」
「はい、何でしょう?」
「小麦粉は置いてるのか?」
「はい、ございますが」
「いくらだ?」
店の人間に聞くと、5キロ分の麻の袋に入ったもので大銅貨4枚ほどだったので、麻の袋二つ分重さにして10キロを購入しておいた。
金がない時に買うものではないと理解していながらも、手に入れられるときに手に入れておかないと、二度と手に入らないかもしれない可能性もあるので、これは無駄遣いではないと秋雨は自分に言い聞かせる。
女神から料理のスキルを貰っている事だし、スキルのレベルを上げるためにも買っておいて損はないだろうと、加えて自分に言い聞かせる。
(まあ、アイテムボックスに入れておけば時間経過による劣化も無いだろうから大丈夫だろ? 必要経費ですよ必要経費)
穀物を取り扱っているので、米の情報についても聞いてみたが、残念ながらそんな食材は知らないとの回答だった。
だが、王都に行けばここよりも流通の規模が大きいため、珍しい食材があるかもしれないという情報を得られたので良しとした。
そのまま両脇に麻の袋を抱えながら、小麦粉をアイテムボックスに収納するため、どこか人目のつかない場所がないかと探していると、ちょうど裏路地へと続く脇道があったのでそこに足を向ける。
そこは人通りの少ない裏道のような場所になっており、日当たりが悪いのか少し薄暗い場所だった。
人の目がないことを確認した秋雨は、抱えていた小麦粉をアイテムボックスに収納する。
「ふぅー、ちょっと重たかったな。さて、ここの先はどこに繋がっているのかな?」
そう呟くと、秋雨はそのまま裏道を進んで行くことにしたようだ。
「ラノベだと、こういう路地を歩いている時に限って、どこからか女の子の悲鳴が聞こえてきたりするんだよな」
異世界物の小説に頻繁に描かれるテンプレートな展開を口走ってしまった秋雨。
だがすぐに自分がフラグを立ててしまったことに気付いた秋雨であったが、時すでに遅しであった。
「きゃぁぁあああああ」
「……ですよねー、そうなっちゃいますよねー」
完璧なまでのフラグ回収に、がっくりと肩を落としながらため息を吐く秋雨であった。
169
お気に入りに追加
5,814
あなたにおすすめの小説

家族に無能と追放された冒険者、実は街に出たら【万能チート】すぎた、理由は家族がチート集団だったから
ハーーナ殿下
ファンタジー
冒険者を夢見る少年ハリトは、幼い時から『無能』と言われながら厳しい家族に鍛えられてきた。無能な自分は、このままではダメになってしまう。一人前の冒険者なるために、思い切って家出。辺境の都市国家に向かう。
だが少年は自覚していなかった。家族は【天才魔道具士】の父、【聖女】の母、【剣聖】の姉、【大魔導士】の兄、【元勇者】の祖父、【元魔王】の祖母で、自分が彼らの万能の才能を受け継いでいたことを。
これは自分が無能だと勘違いしていた少年が、滅亡寸前の小国を冒険者として助け、今までの努力が実り、市民や冒険者仲間、騎士、大商人や貴族、王女たちに認められ、大活躍していく逆転劇である。

母親に家を追い出されたので、勝手に生きる!!(泣きついて来ても、助けてやらない)
いくみ
ファンタジー
実母に家を追い出された。
全く親父の奴!勝手に消えやがって!
親父が帰ってこなくなったから、実母が再婚したが……。その再婚相手は働きもせずに好き勝手する男だった。
俺は消えた親父から母と頼むと、言われて。
母を守ったつもりだったが……出て行けと言われた……。
なんだこれ!俺よりもその男とできた子供の味方なんだな?
なら、出ていくよ!
俺が居なくても食って行けるなら勝手にしろよ!
これは、のんびり気ままに冒険をする男の話です。
カクヨム様にて先行掲載中です。
不定期更新です。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

転生者は力を隠して荷役をしていたが、勇者パーティーに裏切られて生贄にされる。
克全
ファンタジー
第6回カクヨムWeb小説コンテスト中間選考通過作
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。
2020年11月4日「カクヨム」異世界ファンタジー部門日間ランキング51位
2020年11月4日「カクヨム」異世界ファンタジー部門週間ランキング52位

少し冷めた村人少年の冒険記
mizuno sei
ファンタジー
辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。
トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。
優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。


フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる
SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ
25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。
目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。
ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。
しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。
ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。
そんな主人公のゆったり成長期!!

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる