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国落とし編

まさかの再会

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 冒険者ギルドでの一件から二日後。

 早朝から冒険者ギルドに来ていたカマエルたちは、初日に訪れた時に担当した受付嬢に呼ばれて集まっていた。

「おはようございます」

「おはようございます、レハムーさん。それと皆さんも」

「ん」

「おはよう」

「ふわぁ~、ギルド職員は朝も早いのね」

「おはようございます」

 それぞれ挨拶を交わしたところで、受付嬢はカマエルたちが全員来ていることを改めて確認すると、彼らをこの場に集めた理由について説明を始める。

「みなさんと一緒に今回の依頼を受ける方々についてですが、もう直ぐ到着されることと思います。その前に確認となりますが、みなさんは他のパーティーの方と共闘した経験はございますか?」

「僕はこのパーティーを組む前に何度か複数人で依頼を受けたことはあります。実は彼女たちとパーティーを組んだのは最近なんです」

「あ、そうなんですね。ラフィさんたちはどうですか?」

「私は共闘?というより、見てたことはある」

「私は無いわね」

「あたしも無いわ。今のパーティーに入る前までは一人で行動していたし、他の人と一緒に戦ったことも無いわね」

「私は回復魔法が専門なので、共闘という経験はありません。基本的には戦闘中のバフと戦闘後の回復がメインでした」

「なるほど。では、ほとんどの方が他のパーティーと共に依頼を受けた経験はないということですね」

 カマエルたちの話を聞いた受付嬢は、最初に彼らを集めて良かったと安堵したように息を吐くと、共同依頼に参加する際に気をつけるべきことについて話し出す。

「では、一つの依頼を共同で受ける場合の注意点についていくつかお話ししますね。まず一つ目ですが、連携についてです。こちらは実際に戦闘を行っていただくみなさんで話し合ってもらう必要がありますが、事前確認は必要なのでしっかりと話し合いを行うことをお勧めします。というのも、話し合いも確認も行わなかったパーティーが以前、誤爆したことで揉めたことがありましたから」

「だって、ラフィ。君は単独で動く癖があるから、ちゃんと話し合うんだよ?」

「ん。気をつけるべきなのは寧ろアンの方。魔法の威力高すぎ」

「あぁ、確かに」

「次に二つ目ですが、これが一番揉めるところでもある報酬についてです。お支払いできる報酬については限りがあるため、基本的には各パーティーに対し均等に分けてお支払いすることになっております。

 しかし、依頼に参加するパーティー間で話し合い合意した場合に限り、貢献度や活躍によってパーティーごとに報酬を分ける場合があります。

 この辺りは他のパーティーと話し合わないといけない事なので、ギルド側から何かを言うことはできませんが、よくあるトラブルとしてどこが一番活躍したか、どこが一番報酬を貰うべきかと揉める場合があるので気をつけてください」

「わかりました。では、盗賊を討伐した後、そこで手に入れたお宝などはどういう扱いになりますか?」

「お宝については、基本的に見つけた人に優先権があり、それを自分たちのパーティーだけの報酬とするのか、それとも他のパーティーにも分配するのか、どうするのかはみなさんと話し合って決めてください」

 受付の女性は丁寧にいろいろと説明をしてくれたが、要は重要なことについては冒険者同士で話し合い解決するようにということで、報酬は支払うが、その後のトラブルについては基本的にギルド側は無干渉ということだった。

「あ、ちょうど他のみなさんもいらっしゃったみたいですね」

 そう言われて後ろに目を向けてみれば、しっかりと装備を整えた冒険者の男女がギルドの中へと入って来て、カマエルたちの前で足を止めるのであった。




「みなさん、今回は依頼を受けてくださり誠にありがとうございます。最初に依頼を受けていただいたみなさんには、お待たせしてしまったことに改めて謝罪いたします。先日もお話しいたしましたが、ようやく最後の参加パーティーが見つかりましたので、本日は集まっていただきました」

 女性の語りから始まったこの場所には、現在5つのパーティーが集まっており、合計で23人もの冒険者が女性の話を真剣に聞いていた。

「ただ、最後のパーティーについてはご本人たちの希望により、二つに分かれて両方の依頼を受けていただくこととなりました。しかし、彼らの実力は私を含めた数名の職員と冒険者が見ておりますので、例え二つに分かれたとしても、問題ないと判断いたしました。

 もし不安がある場合には、同じグループごとに確認を行っていただいても構いませんが、依頼もありますので怪我はしないようにお願いします。では次に、依頼の詳細についてご説明します」

 それからは盗賊たちのいる場所や周辺の村や魔物の活動状況、そしてギルド側で調べた際の盗賊たちの数など、必要となる情報を全員に共有していき、15分ほどで全ての確認が終わった。

「以上が、我々ギルド側で調査した結果となります。洞窟の方については一度失敗しておりますので、以前よりも盗賊側の警戒が増している可能性がございます。十分に気をつけてください。では、これで確認を終わります。あとは各グループごとに話し合いを行い、準備が出来次第、各自の依頼場所へと向かってください」

 そう言って女性がその場から離れて隅の方に移動すると、冒険者たちも洞窟組と村組に分かれ、カマエルたちもそれぞれのグループへと向かう。

 そして、フィエラとソニアが向かった先には男が5人と女が4人おり、そのうちの男2人と女2人はフィエラが知っている人物であった。

「ソーニャとメイル?」

 同じグループにいたのはアドニーアの街で出会ったリック、フォール、ソーニャ、メイルの4人で、二年前よりも逞しくなった彼らは、以前よりも強者らしい雰囲気を放つようになっていた。

「あれ?私たちのこと知ってるの?」

「何処かでお会いしたことありましたか?」

 しかし、ソーニャたちは姿を変えているフィエラにすぐに気づくことができず、二人で誰だろうかと考え出す。

「ソーニャ、獣人の方で思い当たる人はいますか?こんなに綺麗な犬獣人の方であれば、忘れそうに無いんですが……」

「あー、まって。今すごく思い出せそう。うーん。んー?あれ、もしかして……あ!フィ……」

「だめ」

 ソーニャがフィエラの名前を口にしようとした瞬間、目にも止まらぬ速さで動いたフィエラは、すぐにソーニャの口を塞いで言葉を遮る。

「私はラフィ」

「んぐぐ……」

 フィエラが自分をラフィと呼んだことで、何か理由があるのだと察したソーニャはこくりと頷くと、フィエラも手を離して少し距離を取る。

「ふぅ。ラフィ、久しぶりだね!アドニーアの時以来かしら!!かなり姿が変わってたからすぐには気づかなかったわ!」

「ん。久しぶり」

「アドニーア……あ」

 アドニーアという言葉でようやく目の前にいるのが姿を変えたフィエラだと気づいたメイルは、未だ気づいた様子のないリックとフォールにこっそり教えると、彼らは少し驚いた様子を見せて頷いた。

「ラフィ、久しぶりだね。アドニーアで別れて以来だから、二年ぶりかな?」

「ん。リックとフォールも久しぶり」

「うむ。久しぶりだな。元気そうでなによりだ」

「ん。元気」

「それはよかったよ。ところで……」

「おほん。君たちは知り合いなのかい?」

フィエラたちが久しぶり再会を果たしたことで話が弾みそうになった時、近くにいたもう一つのパーティーのメンバーである男性が咳払いをして話しかけてくる。

「ん。そう。あなたは?」

「俺は君たちと一緒にこの依頼を受けることになったパーティーでリーダーをしている、アセントだ」

「ん。私はラフィ」

「俺はリックだ」

「ふむ。ラフィとリックだな。すまないが、久しぶりに会えたことでお互いに話したいこともあるだろうが、まずは依頼の件について話し合わないか?」

「おっと、これはすまない。久しぶりに会えたことで浮かれていたようだね」

「ん。りょーかい」

 今回の依頼に参加しているのが自分たちだけではないことを思い出したフィエラたちは、ひとまずお互いのことについて話すのは後にして、まずは依頼内容の確認とお互いの自己紹介、そして報酬について話し合うことにした。

 その結果、盗賊たちがいる村にはこの後すぐに向かうことが決まり、報酬については平等に分けるが、お宝の方は見つけたパーティーに優先権があるということですんなりと話が決まった。

 その後、速やかに準備を終えたフィエラたちは受付嬢に決まったことを報告すると、村に向かうためギルドを後にする。

 なお、カマエルのグループは報酬について意見がなかなか合わず、最終的には報酬は活躍した順に多く貰えるということになり、お宝についても最初に見つけたパーティーに優先権が渡るということで話がまとまると、彼らも盗賊がいる洞窟へと向かうのであった。





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